初めまして、Nihaと申します。人工言語は2年くらいだらだらやっていますが、作った言語についてこうして文字に起こして他人に公開するのはこれが初めてになります。これからちょこちょこ投稿していくと思うのでよろしくお願いします。
この記事では、シワン語の発音と名詞まわりについてメモがてら解説していきます。
シワン語について
シワン語は先週から制作を始めた屈折的な能格言語で、Śṛvan/ɕr̩.ˈvan/の谷あいで話されています。まだ文法の大半は出来ておらず単語も20語ほどしかありませんが、これからもっとちゃんとしたものになる予定です。
Śṛvanはチベット仏教の「ベ・ユル」が元ネタの「現実世界のどこかにあるけど物理的に出入りのできない隠れ里」って設定の架空世界、というより架空空間(東方Projectの幻想郷みたいな感じ)です。けっこう気に入ってる設定なんですけど、こうやって現実の宗教からネタ持ってくるのほんとは多分あんまり良くないですね。
シワン語の基礎語彙は基本アプリオリで、一部に古チベット語からの借用語が混ざる感じです。あとスパイスの名前や野菜の名前なんかは見慣れた形にしたいので、植物・動物に関連する語彙の多くは世界の諸言語からの借用になると思います。(例:kamuːn「クミン」)
音韻論
シワン語には25個の子音と12の母音、特殊鼻音/N/があります。音節構造は(C)(C)(C)(j)V(C)(C)で、/N/を除いて全ての子音が単純な頭子音として現れることができます。
また、シワン語は軽音節と重音節を区別します。音節の重さは頭子音に関わらず韻によって決定され、-V,-VCは軽音節、-Vː, -VːC, -VCCは重音節です。単音節語は全て重音節である必要があるため、軽音節かつ単音節の、CVCやCVのような形をした語幹ではしばしば音節核が延長されます。
子音
両唇 | 歯 | 歯茎 | 硬口蓋 | 軟口蓋 | 口蓋垂 | |
---|---|---|---|---|---|---|
無声破裂音 | p | t | k | q | ||
有声破裂音 | b | d | g | |||
無声摩擦音 | f | θ | s,ɬ | ɕ | x | χ |
有声摩擦音 | v | z | ʑ | ʁ | ||
鼻音 | m | n | ŋ | |||
接近音 | l | j | ||||
ふるえ音 | r |
- 特殊鼻音/N/は、後続子音の調音部位に逆行同化して実現されます。また、/N/,/r/,/l/は音節主音になることができます。
- 破裂音は/j/の前ではわずかな破擦化を伴います。歯茎音ではこの破擦化がさらに進み、ほとんど後部歯茎破擦音から歯茎硬口蓋破擦音に近い発音になることもあります。
- /lj/や/nj/は/ʎ/,/ɲ/として発音されることが多いです。
- /r/の自由異音として[ɹ]、/s/の語頭と母音後の異音として[h]があります。
- 特殊鼻音/N/が音韻論的に自然なのかはわかりません。今後の発展次第ではこれの扱いは変わるかもしれないです。
母音
前 | 中舌 | 後 | |
---|---|---|---|
狭 | i,iː | u,uː | |
中央 | e,eː | ə,əː | o,oː |
広 | a,aː |
- /ə/に強勢が置かれることはありません。また、無声阻害音の間などではしばしば無声化します。
- /ə/は強勢のある音節の一つ前の音節で[ɜ ~ ɐ]のように広く実現します。
- 非狭短母音は強勢のある音節に直接隣り合わない音節では/ə/に中和します。
- 強勢の置かれた/əː/は[ɘː ~ ɨː]のように狭く実現します。
名詞形態論
シワン語は絶対格・能格・後置格の三つの格と単数・複数の数を区別し、所有者を接頭辞で表します。
後置格はその名の通り後置詞に接続する格です。属格や与格などの”格”は日本語のように後置詞によって表されますが、限定詞は名詞と後置詞の間に挟まります。場合によっては形容詞が挟まることもあります。
身体語彙などの一部の名詞には語根頭の子音を重複した双数語幹(Ci-)があります。
所有接辞
基本的な所有接辞は以下の通りです。
人称 | 接辞 |
---|---|
一人称単数 | aː- |
二人称単数 | nə- |
三人称有性単数 | iː- |
一人称複数 | si- |
二人称複数 | Nʑi- |
包括的一人称複数 | mə- |
疑問 | ʁə- |
不定 | tə- |
- 母音始まりの語では一人称単数と三人称有性単数以外で母音が脱落します。
格・数
名詞はとる格・数の接尾辞と語幹のかたちによって弱変化1・弱変化2・強変化の三つのタイプに分けられます。
弱変化名詞1
単数 | 複数 | |
---|---|---|
絶対格 | -∅ | -i |
能格 | -sə | -si |
後置格 | -ə | -i |
- 語幹頭に強勢を持つ語と子音語幹の語が多いですが例外もあります。
例:maːm「母」
単数 | 複数 | |
---|---|---|
絶対格 | maːm | mami |
能格 | mamsə | mamsi |
後置格 | mamə | mami |
弱変化名詞2
単数 | 複数 | |
---|---|---|
絶対格 | -∅ | -jə |
能格 | -s | -si |
後置格 | -∅ | -j |
- このタイプの名詞は全て語幹末に強勢を持つか単音節語幹で、かつ母音語幹です。
例:zdoː「扉」
単数 | 複数 | |
---|---|---|
絶対格 | zdoː | zdojə |
能格 | zdoːs | zdosi |
後置格 | zdoː | zdoːj |
強変化名詞
単数 | 複数 | |
---|---|---|
絶対格 | -∅ | -i |
能格 | -s | -si |
後置格 | -∅ | -j |
- 語幹は絶対格ではCV₁C、それ以外ではCCV₂かCaˈCV₂の形を取ります。
例:ʑiːn「木」
単数 | 複数 | |
---|---|---|
絶対格 | ʑiːn | ʑini |
能格 | ʑnuːs | ʑnusi |
後置格 | ʑnuː | ʑnuːj |
その他
- 所有接辞は動詞不定形の能格接辞と同形です。
- 複合語は最後の要素の強勢を引き継ぎます。
- 基本語順はSOVで、形容詞は名詞の後ろにきます。
終わりに
音韻論はあんまり詳しくないので不自然なところがあるかもしれませんが、人工言語ということで見逃してもらえると助かります。次回はラテン文字での表記法か動詞まわりの文法について取り扱う予定です。それでは読んでいただきありがとうございました。
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