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アクァルヅァルゴ語の語形成を勝手にまとめてみる

 azid͡ʒɑː (こんにちは)! ふぃるきしゃです。今回は、矛盾と混沌氏によって制作されている人工言語「アクァルヅァルゴ語 (aqʼɑld͡zʌrɣo語)」の語形成を勝手にまとめてみました。大部分は以前に X のタグ#アクァルヅァルゴ語に投稿した内容です。出典は辞書文法書、矛盾と混沌氏のポストに依ります。


語根

 アクァルヅァルゴ語の単語は子音のみの語根から成ります。例えば、「歌・歌う」を表す語根は -ʔt- です。この語根を元に母音を挿入することで、名詞や動詞を作ることができます。


単純名詞

 まずは単純名詞を作る場合です。最も単純な構造の名詞は、単子音の語根に格語尾が付加されたものです。to「人」や ɖo「愛」などがこれに当たります。
 語根が複数の子音から成る場合、先頭の子音と残りの子音の間に母音を挟みます。この母音はモノ・生物・道具などのカテゴリを表し、これを交替させることで ʔato「歌」と ʔɑto「歌手」のような派生語を作ることができます (この母音を仮に「カテゴリ母音」と呼ぶことにします)。語末には格語尾が付加されます。
 名詞は、辞書では主格の -o の形で掲載されています。結果的に、単純名詞は Co または CVCo という構造になります。


カテゴリ母音の種類

母音 カテゴリ
a 抽象的な語彙・非物質・生物
ɑ 人物
u 物質・物体 (a との使い分けは緩いらしい)
y 道具
ɤ 場所
ɛ 指小辞
œ 数値・程度
ʌ
ʉ 集団

派生名詞

 派生名詞は VCVC...V という構造です。カテゴリ母音は語頭に置き、語根を並べ、それらの間に格接辞を挟みます。格接辞は基本的には格語尾と同じ母音です。-VC の形の格語尾は、接辞として使用する際には子音を脱落させ、母音を長母音化させて使用します。派生名詞も、語末には単純名詞と同様の格語尾を持ちます。つまり、派生名詞は母音始まりで -o で終わる語形になります。

例:ɑtoːɹkʰaɖo「ケモナー」

ɑ- 人物を表すカテゴリ母音
-t- 「人」
-oː- 格接辞 -om「~のような」の変形
-ɹkʰ- 「獣」
-a- 対格接辞
-ɖ- 「愛する」
-o 名詞主格接辞

つまり「人のような獣を愛する人」の意

 格接辞の部分には、修飾を表す接辞 ɨ が用いられることもあります (i が使われている単語もあるけど違いが分からない……)。

例:alqʼɨstro「攻撃戦」

a- 抽象を表すカテゴリ母音
-lqʼ- 「攻撃する」
-ɨ- 修飾を表す接辞
-str- 「戦う」
-o 名詞主格接辞


動詞

 アクァルヅァルゴ語の動詞は、文法範疇を表す母音で語根を挟んだ eCa の形が基本形です。例えば「歌う」ならば eʔta が基本の形であり、辞書にもこの形で掲載されています (つまり、辞書で e で前方一致検索すれば動詞が全部出てきます)。ちなみにアクァルヅァルゴ語には形容詞はなく、「かわいい」とか「奇妙な」なども動詞に含まれます。
 動詞には他にも様々な文法範疇が表示されたり、他の語根が抱合されたりします。全ての文法範疇を表示した場合、以下のような構造になります。

1-2-3-4-5-6-7-8-9
ŋ-oː-dŋg-u-vŋʷ-e-i-r-k
あなたが鈍器で殴られていないようであったならば

  1. 敬語・モダリティ
  2. 極性・態
  3. 抱合された名詞語根
  4. 格接辞
  5. 動詞語幹
  6. 法・時制
  7. 主語の人称
  8. 接続

このうち、義務的なのは2・5・6・7で、残りの表示は任意です。前述した辞書形の eCa は2・5・6が出現した、肯定/能動態/直説法/現在時制の形です。


派生動詞

 動詞に他の動詞や名詞の語根を抱合して派生語を作る際は、極性・態を表す母音と動詞語幹の間に語根および格接辞を挿入します。

例:ecmiɣŋatqɯspa「奇妙な言語を作って遊ぶ」

e- 肯定・能動態を表す接辞
-cm- 「奇妙な」
-i- 修飾を表す接辞
-ɣŋ- 「言語」
-a- 対格接辞
-tq- 「作る」
-ɯ- 並列接辞
-sp- 「遊ぶ」
-a 直説法・現在時制を表す接辞

上記のように、-cm- から -ɯ- の部分が espa「遊ぶ」に抱合されています。


まとめ

 アクァルヅァルゴ語では内容的な意味は子音に、機能的な意味は母音に集約されているのが分かるかと思います。辞書で調べたときに複雑な派生語が出てきたら、母音に挟まれた子音の塊をコピペして部分検索すると元の意味が分かったりします。語根の元の意味が単純名詞だと、間にカテゴリ母音が挟まってしまうのでちょっと検索するのが大変です。語根の最初の子音で前方一致検索して地道に探しましょう。
 いずれにせよ語形成が分かってしまえば長大語でも簡単に形態素解析ができます。面白い派生語を見つけたら、語構造を調べてみるともっと楽しめますよ!


あとがき

 アクァルヅァルゴ語、語形成が非常にシステマティックで大好きな言語です。日本語を始め多くの言語は、語根を合成する際に格の情報が失われてしまいますけど、アクァルヅァルゴ語は語根が子音、格接辞が母音から成るおかげで、語形が冗長になることなく格の情報を埋め込める点がよくできていますよね。文をそのまま一単語に圧縮できるので、複雑な概念でも容易に造語できる点が非常に優秀だと思います。
 文面が結構特徴的な言語なので、ZpDIC の「今日の例文」などを見て気になっている方もいるのではないでしょうか。これを機に、文法書で学習してみては?
 それでは今回はこの辺で。mbrʉɦʁʷɑ (さようなら)!

人気順のコメント(6)

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mujunkonton profile image
矛盾と混沌

まさか私より詳しいかも!?記事書いていただきありがとうございます!!!!!

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fruksha_bidima profile image
ふぃるきしゃ(FILUKISJA)

コメントありがとうございます!ちなみに記事にも書いたんですが、接辞の i と ɨ の違いが分からなくてですね……教えて頂けませんか?

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mujunkonton profile image
矛盾と混沌 • Edited

-i-は「~の、属格/副詞/合成語」的に使われるのに対して-ɨ-は「~な、連体形」的に使われるという使い分けが現在の標準です!ただ、この使い分けはazid͡ʒɑː(良い日である)のような昔からある単語にはありませんし、動詞的な働きをしていそうな語根に見えても「合成語」として-i-で繋げる例もあるので、わかりにくく思われたかもしれません(例:axpikmbo,乾燥昆布)
Image description
↑今作った図です

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fruksha_bidima profile image
ふぃるきしゃ(FILUKISJA)

詳しい説明ありがとうございます!つまり基本的には名詞による修飾なら -i-、動詞による修飾なら -ɨ- になるということでしょうか?ecmiɣŋatqɯspa も現在の用法だと ecmɨɣŋatqɯspa になりますかね?

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mujunkonton profile image
矛盾と混沌

なります!

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fruksha_bidima profile image
ふぃるきしゃ(FILUKISJA)

ありがとうございます!!