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ふるくしゃ(Frukca Kaimbista)
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即興で「歌唱用言語」を作る

この記事は「語学・言語学・言語制作 Advent Calendar 2022」の6日目の記事として執筆されたものです。ゆっくり読んでいってね!

はじめに

こんにちは。ふるくしゃと申します。2018年頃からLukša語やその他の人工言語を作っている者です。Migdal への投稿はこれが初となります。どうぞよろしくお願いします。

皆さん「歌唱用言語」って聞いたことありますか? まあ読んで字のごとく、歌唱のために作られた言語のことなんですが……もしかしたら、平沢進の Aria や Sign のような、特に意味のない単語を歌詞に当てはめたものを思い浮かべた方もいるかもしれません。そういったものは「造語歌詞」と呼ばれているようです。そのような「言語」も、響きの良さや異質な世界観を演出するという点では有用なものと言えるでしょう。一方で、造語歌詞には単語の意味や文法がなく、正確には「言語」とは呼べません。

そうです。かりぐらさんの「ピース語」のような言語を思い浮かべたあなた、それが正解です。私がここで言っている「歌唱用言語」とは、一つ一つの単語に意味があり、文法がある。それでいて、歌唱に適した美しい音の響きや発音のしやすさ、音数の合わせやすさや豊かな表現力を併せ持つ歴とした「言語」のことです。

私は以前から、このような言語を作って作詞や歌詞翻訳を行いたいと思っていたのですが、納得いくものが作れず、作って壊してを繰り返していました。ですが、そんな生活にもこれでさよならバイバイ。この場を借りて「歌唱に適した言語」とは何なのかを自分なりに考察し直し、今度こそ納得のいく歌唱用言語を作ろうと思います。とりあえずこの記事での最終目標は、「YOASOBIの「祝福」の歌詞を歌唱用言語に翻訳すること」。執筆時間足りないけど頑張るぞ!

なお、この記事で考察する人工言語は、架空の文化的背景を持つ言語、いわゆる「架空言語」ではなく、文化設定を持たず現実での使用のみを想定した言語となります。予めご了承ください。

何はともあれ早速、やってみましょう!

まず、「歌唱に適した言語」に盛り込むべき要素とは何か、列挙していきたいと思います。私が思うに、歌唱用言語に求められる資質とは大きく分けてこの3つ!

①「曲に乗せる」ことに適した音韻
②音数の合せやすさ
③語彙の表現力

これだけでは何のこっちゃ分かりません。一つずつ詳しく見ていきます。

1.「曲に乗せる」ことに適した音韻

歌唱用言語は、歌詞として曲に乗せる言語です。ですから、それに適した音韻を探っていきましょう。

1.1.阻害音の有声性

 まず考察すべきは、阻害音の有声性の対立です。一般に、有声音の方が無声音よりも「強い」イメージを想起させると言われます。例えば、「ガンダム」と「カンタム」のどちらの方が強そうかと聞かれたら、多くの人が前者を選びます。このことから、優しい響きの言語を作りたければ無声阻害音を含んだ語を増やし、力強い響きの言語を作りたければ有声阻害音を増やせば良い、と言えそうです。

ですが歌唱用言語の場合、その言語の使用される音楽ジャンルはさまざまであることが考えられます。そのため汎用性を重視すれば、阻害音の有声性の対立をなくし、使用環境によって有声性を異音として使い分ける、という方略が無難だと考えられます。これにより、穏やかな曲調の曲では阻害音を無声音として実現させて歌唱し、激しい曲調の曲では有声音として歌唱するといった使い分けが可能になります。

一方で、阻害音の有声性による対立をなくすことは、音素の減少に繋がります。対立をなくした分、調音点の対立によって阻害音の音素を増やす必要があるでしょう。

1.2.音節構造

歌唱用言語の音節構造はシンプルな方が良いでしょう。なぜなら、長い子音結合を含む音節は短い音符が連続した際に単純に歌いにくいからです。CV や CVC あたりが無難でしょう。語末は開音節でも閉音節でも良いと思いますが、なるべく語形を短くしたいなら閉音節の方が良いと思われます。なぜなら、閉音節の方が区別できる音節の数が増えるからです。尾子音として出現する子音には、s や 共鳴音など、なるべく聞こえ度の高い子音を選ぶ方が良いと思われます。

1.3.アクセントとイントネーション

 歌唱用言語とはいえ、曲に乗せずにそのまま音読する場合も十分に考えられます。単語のアクセント位置は定めておく必要があるでしょう。ですがここで注意すべきは、高低アクセントや声調による単語の区別は行わない方が良いということです。なぜなら、曲に乗せた際にこれらのアクセントや声調は無視されてしまうからです。例えば TWO-MIX の JUST COMMUNICATION の歌詞。「雨に打たれながら♪」の部分の「雨」は、本来は頭高で「あ」の方が「め」よりも高いです。しかしこの曲では「あ」がファ、「め」がソで、「め」の方が高くなっています。これでは舐める方の「飴」と同じです。このように、歌唱用言語に高低アクセントによる単語の区別を設けても、結局は無視されてしまいます。ですから、アクセント位置は規則的に定めておき、単語の区別には役立てない方が良いと思われます。

また、イントネーションについても同じことが言えます。世界的に、諾否疑問文は平叙文の末尾のイントネーションを上げるだけで表される場合が多いです。しかし、歌唱用言語の諾否疑問文の表し方でこれを採用してしまうと、やはり曲に乗せたときに平叙文との区別ができなくなります。歌唱用言語の諾否疑問文には、語順の変更や、疑問文を表す形態素の付加を伴った方が良いと思われます。

1.4.既存語に似た単語の回避

ある意味で一番重要かもしれない点です。自分のせっかく作った歌唱用言語の歌詞が空耳され、あらぬ意味で面白がられてしまったら残念ではありませんか。もちろん、音の配列パターンは有限ですから、全ての既存語と被らないようにするのは到底不可能です。ですがせめて卑語に似た音の単語は避けておく必要があるでしょう。まあこれも、世界のどこの言語の卑語と重複しているかなんていちいち調べようもないのですが、日本語圏で言語を発表することを想定するなら、せめて日本語と英語の卑語は避けておくのが無難です。

ですがここで注意すべきことが一つ! 音韻の話からは逸れますが、後々単語に屈折形を持たせるなんてことになった場合、屈折形によっては思わぬところで既存語の卑語に似た語形になってしまうことがあります。例えば有名どころで言うと、エスペラントの manki 。品詞語尾の規則に従って名詞化すると……manko になってしまいます(元号が令和に変わった時に少し話題になった単語ですね)。このように、意図しないところで卑語に似た語形が出現してしまうことを考えると、規則的な語尾屈折は実装しない方が良いのかもしれません。

2.音数の合せやすさ

当然ながら、歌詞翻訳したり曲を作った後に作詞したりする場合には、音節数を音符の数と合わせる必要があります。そこで歌唱用言語に必要となってくるのは音数の合わせやすさです。ここでは、そのための方略をいくつか挙げたいと思います。

2.1.音節数の異なる別形

これは、屈折語尾や接辞、機能語などに音節数の異なる別形を用意して選択式にし、音節数を合わせやすくする方法です。日本語の例でいうと「でも」「だけど」「だけれど」のような感じでしょうか。機能語は内容語に比べて使用頻度が高いので、別形を複数用意しておく意義は十分あると思われます。

2.2.柔軟な語順

歌唱用言語において語順の柔軟性は重要だと考えられます。語順が柔軟であれば、音節数の異なる文の要素を入れ替えたり、韻を踏める単語を文末に持ってきたりできるからです。そのためには、格変化や格接辞、接置詞で格を明示するのが望ましいと思われます。また、名詞と形容詞に格の一致を義務づければ、場合によっては形容詞を名詞から離して置くことも可能になります。

2.3.意味の希薄な語

これは、特に意味のない間投詞や終助詞を用意しておき、音節数合わせのために挿入する方法です。日本語だと「ねえ」「ああ」「さあ」のような語が挙げられます。しかし、他の方法に比べてあからさまな(?)数合わせに見えやすいので、多用は禁物です。

2.4.音節数の異なる類義語

歌詞において頻出の語彙には、音節数の異なる類義語を用意しておくのが良いでしょう。こちらのサイトは、2010~2020年の人気ボカロ曲500曲の歌詞に出現する単語の上位100語を紹介しているものです。このランキングを見ると、人称代名詞や「世界」「愛」「心」「夢」といった単語が頻出単語であることが分かります。このような単語に音節数の異なる類義語を用意しておくと音節数合わせに有用でしょう。また同じ単語の繰り返しによるマンネリを防ぐ効果も期待できます。

3.語彙の表現力

せっかく意味のある言語を作るのですから、語彙の表現力は伸ばしたいところです。そのための方法を見ていきましょう。

3.1.複数の人称代名詞

2.4.と同じサイトのランキングによると、ボカロ曲の頻出語彙第一位は「君」、第二位が「僕」です。つまり、二人称単数代名詞と一人称単数代名詞で2トップを占めているのです。ここから一つ分かることがあります。それは、歌詞とは話し手がある一人の、特定の聞き手に何かを伝えようとしている内容であるということ。このことから、話し手と聞き手の関係性を表現する人称代名詞を充実させる必要性が浮かび上がります。話し手にとって、聞き手はどんな相手なのか? 好きな相手なのか、嫌いな相手なのか? 親しい相手なのか、疎遠な相手なのか? 対等な関係なのか、目上や目下なのか? こういった区別に基づいた複数の人称代名詞を用意すると、歌詞の表現力が向上すると考えられます。

3.2.モダリティや感情に関わる語彙

一人称単数代名詞が歌詞に頻出なことから分かるように、歌詞は話し手の主観的な感情を描写したものがほとんどである可能性が極めて高いです。そのため、モダリティ表現や感情に関する語彙を充実させることは肝要です。また、感情の強さや証拠性の確信度などに基づいた語彙の区別や語形変化を取り入れると、さらに感情表現が充実すると思われます。

3.3.文法範疇の表示は任意に

動詞の主格人称や時制、証拠性、名詞の単複や定性、名詞と形容詞の格の一致……。ある文法範疇の表示を義務化するか任意にするか、これは人工言語制作の上で多くの人が頭を悩ます問題だと思います。文法範疇の表示を義務化すれば文の曖昧性は排除され、より詳細なイメージを組み立てることができます。一方、任意とすれば、多くの部分が聞き手の想像に委ねられ、解釈の幅が広がります。
歌唱用言語の場合、文法範疇の表示は極力任意にするのが望ましいと思われます。なぜなら、文の意味を明確にするか、曖昧にするかは作詞者の好みによるものが大きいと思われるからです。このような自由度を持たせることは歌唱用言語の汎用性を上げるだけでなく、音節数の合わせやすさにも繋がります。

4.実際に作ってみる

では、以上にまとめた「歌唱用言語に適した」特徴を盛り込んで、実際に言語を作ってみましょう!

4.1.音韻

4.1.2.音素

4.1.2.1.単母音

無難に /a/, /i/, /o/, /e/, /u/ の5母音とします。

4.1.2.2.二重母音

阻害音に有声性の対立がないことを考慮した上で、区別できる音節を増やすため /ai/、/oi/、/ei/、/ui/ の4つの二重母音を許容することにします。

4.1.2.3.子音

子音は以下の15種類とします。

p /p/, t /t/, k /k/
c /ts/, č /tʃ/
f /f/, s /s/, š /ʃ/, h /h/

m /m/, n /n/
l /l/, r /r/
w /w/, j /j/

先に考察したとおり、阻害音の有声性による対立をなくしました。また、一般的と思われる鼻音・半母音4種を取り入れました。流音は1種類にするか2種類にするか迷いましたが、やはりなるべく音素を増やすために2種類としました。

4.1.3.音節構造

許容される音節構造はV、CV、VC、CVCとします。尾子音として出現できる子音は /s/, /š/, /m/, /n/, /l/, /r/ の6種類です。

4.1.4.アクセント位置

強弱アクセントを採用し、アクセント位置は必ず語頭にあるものとします。

4.2.文法

語順は SOV-AN、主要部後置を基本とします。

4.2.1.動詞と助動詞の屈折語尾

先に考察したとおり、動詞に時制や主格・対格人称などによる屈折は持たせないことにしましょう。ただし、叙述形・連体形・連用形の3つの屈折形を持たせることにします。
動詞の他に、アスペクトやモダリティを表す助動詞という品詞カテゴリを設定し、動詞とは別の語尾を持たせます。

叙述形の語尾は動詞が -ti、助動詞が -fi とします。叙述形は文の述語となります。

連体形の語尾は動詞が -ten, 助動詞が -fen とします。連体形には形容詞のように名詞を修飾する用法と、「~する人・もの」と言う意味の名詞として使用する用法を持たせます。

連用形の語尾は動詞の場合は無語尾、助動詞は -fo とします。連用形には後続する助動詞に接続する用法と、「~すること」という意味の動名詞として用いる用法、「~しながら」という意味の接続表現として用いる用法を持たせます。

4.2.2.助動詞

助動詞は態、アスペクト、モダリティなどを表します。連用形の動詞の後に置かれます。意味が破綻しない限り、複数置くことを可能とします。通常、態→アスペクト→モダリティの順に置きますが、否定助動詞を置く箇所は自由で、置かれた場所より前の内容を否定します。また、動詞語尾を助動詞語尾に変えることで、動詞を助動詞させることを可能とします。

maifi ~ない
sepifi いつも~している、~したものだ(習慣相)
kulefi 何度も~する(反復相)
palefi ~しようとしている(未然相)
fašfi ~し始める(開始相)
tusfi ~している(進行相)
šofi ~し終える(終止相)
tafi もう/すでに~した(完了相)
pelkufi ~と言われている(証拠性・一般論)
čarfi ~だそうだ(証拠性・伝聞)
lifi ~であるようだ(証拠性・推定)
aifi ~だろう(証拠性・推論)
folfi ~な気がする(証拠性・無根拠)
rokafi 無理矢理~させる(使役・強制)
werafi ~させる(使役・指示)
lissefi ~するのを許可する(使役・許可)
polofi ~するがままにする(使役・放任)
čutafi 不本意ながら~される(受身・被害)
kufi ~される(受身)
hawafi ~してもらう(受身・恩恵)
lisfi ~できる(許可)
mefi ~したい(願望)
nolfi ~する必要がある(必要)

4.2.3.終助詞

疑問や命令などを表すため、終助詞という品詞カテゴリを設定します。終助詞は、述語の直後に置きます。

ra ~しろ・しなさい(命令)
ne ~か?(疑問)
lei ~ですよね?(肯定の要求)
mai ~ではありませんよね?(否定の要求)

4.2.4.人称代名詞

人称代名詞には、距離感と評価の指標に基づき、それぞれ 4つの語形を用意します。距離感は、話者が指示対象(一人称の場合は聞き手)と疎遠か・親密かを表します。疎遠なら敬称、親密なら親称を使います。評価は、発話時に話者が指示対象に対し好感を抱いているか・悪感を抱いているかを表します。デフォルトは敬称・好感です。
代名詞は、形容詞として用いることも可能とします。

一人称敬称・好感 pile
一人称親称・好感 lale
一人称敬称・悪感 picu
一人称親称・悪感 lacu

二人称敬称・好感 kile
二人称親称・好感 fale
二人称敬称・悪感 kicu
二人称親称・悪感 facu

三人称敬称・好感 nile
三人称親称・好感 sale
三人称敬称・悪感 nicu
三人称親称・悪感 sacu

4.2.5.指示・疑問・否定代名詞

指示代名詞には近称・中称・遠称の区別を設けます。近称は話し手の近くにあるもの、中称は聞き手の近くにあるもの、遠称は話し手からも聞き手からも遠くにあるものを指します。日本語の「これ」や「それ」とは違い、文脈的な指示には用いられず、そのような場合は三人称代名詞を代わりに使います。
また、指示対象が不定の場合の不定代名詞や、疑問代名詞、否定代名詞も用意します。これらも人称代名詞と同様、形容詞として用いることができます。

ka これ(近称)
tu それ(中称)
po どれ(遠称)
fi ある(不定)
no どれ・何(疑問)
mai どれも~ない、何も~ない(否定)

4.2.6.数量語尾

名詞の複数を表す接辞 -ša を設けます。日本語の「~たち」同様、使用は義務的ではありません。ただし、「~たち」とは違い、名詞の有声性にかかわらず付加が可能です。また、人称代名詞や指示代名詞にも付加できます。

4.2.7.名詞・形容詞の格接辞

語順に自由度を与えるため、接尾辞による格表示を行います。名詞と形容詞は、格の一致を行います。それぞれの格接辞には1音節の弱形と2音節の強形を設け、話者が自由に選択できるようにします。

主格 -na -naja ~が(主節のみ)
主格 -ki -kija ~が(従属節)
対格 -ju -juwi ~を
与格 -se -seja ~に・まで
奪格 -fan -fani ~から
処格 -tis -tisi ~で
経格 -tus -tusu ~を通って、~(時間)かけて
向格 -pal -pale ~の方へ・まで、~のために
時格 -tum -tuma ~(時間)に
様格 -len -lene ~として、~のように
属格 -mi -miwi ~の・~について
具格 -ken -kene ~で・によって
共格 -mel -mela ~と共に

4.2.8.接続詞

接続詞にも、音節数の異なる弱形と強形を設けます。

sas sasas ~と…
lal lalal ~か…
loi loju ~だから…
sui suju ~だが…
tel tetel ~ならば…
metel metelu ~だとしても…

4.3.語彙

次に、内容語を作っていきます。複合語によって語彙を増やしていますので、どの単語とどの単語を組み合わせているか探してみてください。

4.3.1.名詞

am 全て、全部
amtalan 世界
ajamis 話、物語、ストーリー
cui 中、内側
fas 光
hesrus 昔、過去
jun 人、人間
kai (関係節を作る代名詞)
kam こと
kol 心
koltesmis イメージ
lai 前、前方
lan 場所
limis 視界、景色、光景
loju 原因、理由
mis もの
nefa 夢
palrus 未来
posmis 記憶、思い出 
rus 時間
tai (従属節を作る代名詞)
tel 場合、条件
tem 道
wal 台
šenawal 舞台、ステージ
šolan 終わり、終点、最後
šuka 星

4.3.2.形容詞

amsawa 孤独な
amtellum 絶対の、確実な
heno 若い、幼い
kolcuilum 心からの、精一杯の、目一杯の
lum ~的な、形容詞化接辞
mas 甚だしい、非常な
sawa 遠い

4.3.3.動詞

ati [与格]である
ajati [対格]について話す、語る、物語る
cuisalti [与格]に入る
emiti 眠る
faiti [対格]を願う
falti 生まれる
fasti 光る
hesti 過ぎる、経過する
jufeti 浮かぶ
kati [対格]を持つ
keliti [対格]を続ける
kesti [対格]を作る、他動詞化接辞
kišti [対格]を祝う
koltesti [対格]を想像する 
koti [与格]に来る
koseti [対格]を[与格]に来させる、連れてくる
laisalti [与格]に進む 
lalti [対格]を選ぶ
liti [対格]を見る
lusti 生きる
maiti [与格]ではない
mejati [対格]を愛する
melfasti 輝く、きらめく
melkišti [対格]を祝う、祝福する
melti [対格]と共にいる、同行する
meti [対格]を[与格]に与える
nusati [対格]を恐れる
palti [与格]に向かう、目指す、(道などが)続く
penti 跳ぶ、ジャンプする
pisiti [対格]をやめる
posti [対格]を覚える
salti [与格]に行く
sumati [奪格]から逃げる
tati [与格]にいる、ある、存在する
toti [対格]をする
testi [対格]を描く
waspeti [対格]を捨てる、放棄する
čarti [対格]を聞く
šenati 踊る、ダンスする
šuleti [対格]を祈る

4.4.翻訳してみよう!

では、最初に立てた目標通り、早速作った歌唱用言語で YOASOBI の「祝福」を翻訳してみます。体力が限界なので1番(機動戦士ガンダム 水星の魔女のOPサイズ)のみです。音節数を合わせるため、意訳となっています。公開されている英語歌詞も参考にしています。

YOASOBI「祝福」

Muslen sawatis jufekaiju šukaju ai
非常に-遠くに-浮かぶ-星を-思い
Falena emiti sas nofase salti
君は-眠る-そして-夢に-行く
Faleki saskaina palrusna sasas temna
君が-選ぶ-未来が-そして-道が
nofarse šolanse palti metel
どんな-最後に-向かう-にかかわらず
julena falemel lusti
僕は-君と-生きる

Sawami hesrusmi posmiscuitisi
遠い-昔の-記憶の中で
henona falena kase šukase kokes kufi
若い-君は-この-星に-連れて来-された
sasas faimisju kati
そして-願いを-持っていた
polantis melfasseja limisseja
あの場所で-輝く-景色に
pen sas cuisal lisfi tel nofarlen kišti ne
跳び-そして-入り-できる-ならば-どれだけ-嬉しい-か

Maijunkija akaitis
誰も〜ない-いる
amtalantis šule sasas faiti
世界で-祈り-そして-願う
nofaju testi sasas palrusju liti
夢を-描き-そして-未来を-見る
Falena sumaju pisi nusaju waspe
君が-逃げることを-やめ-恐怖を-捨て
laisal keliju sasti tetel
進み-続けることを-選んだ-ならば

Fijunkija teskaise koltesmisse maiti
誰かが-描いた-イメージ-ではない
Fijunkija saskaise šenawalse maiti
誰かが-選んだ-ステージ-ではない
Kaju ajamisju šulena kesti
この-物語を-僕たちが-作る
Amtellumlen finaju amsawakes maifi
絶対に-君を-孤独にさせ-ない

Katis šukatis falekija faltai
この-星で-君が-生まれたこと
Katis amtalantis falekija lus kelitai
この-世界で-君が-生き-続けること
Falena saju amju meja lisfi pal
君が-それら-全てを-愛-できる-ように
kolcuifani
心の中から
falemi kišju šuleti
君の-喜びを-祈る

おわりに

以上のように、歌唱用言語に必要な要素とは何か考察し、実際に言語を作ったわけですが、歌詞翻訳してみると頭で考えるだけでは分からないことがいろいろと見えてきました。

まず、自由語順にしたものの、その恩恵は思っていたより少ないかもしれないということ。結局は基本語順の SOV-AN に従ってしまい、あまり文中の要素を並び替えることはなかったように思います。また、人称代名詞を複数用意した割には、翻訳では一種類しか使わなかったということ。これに関しては、他の曲を翻訳すれば使う機会はあるかもしれません。

一方、格接辞や接続詞に音節数の異なる別形を設けたことは本当に有用でした。あと1音節足りないって時に軽率に埋め合わせができるし、後から内容を少し変更したい時の柔軟性も確保できます。まあ、ちょっとセコい手段だとは思いますが……。

人工言語って最初から規則ありきで作ってしまいがちなので、実際に使ってみると思っていたより不便だったり非合理的だったりすることが多いのではないでしょうか。まめに翻訳や創作を行って実際に使用しながら改善を行う必要性を改めて感じました。

今回の言語制作と記事執筆、実は3日間ぐらいの突貫だったので、正直粗の多い言語になってしまったと思います。でも、今までずっと悩んでいた歌唱用言語に対する考えを整理し、少しでも形にすることができたのでその点では進歩があったと思います。これからもっと多くの歌詞翻訳を行い、さらに文法や語彙を洗練させていきたいです。

というわけで、今回の記事はここで締めたいと思います。長ったらしい文章でしたが、お付き合いいただきありがとうございました。では(書くか分かんないけど)次の記事でお会いしましょう!

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