おことわり
「間接的借用」というのは私が勝手に言っているだけの表現なので、前置きなしに indirect borrowing などと言っても通じない公算が高いです。ご了承くださいませ。
概要
グロバサは基本的に複数の語団1に跨って使用される語彙を優先的に取り入れることになっています。しかし、語彙によっては必ずしも広く通用する語形が存在するとは限らず、そうした境界事例をどのように処理するかは世界派言語の悩みの種のひとつです。間接的借用はこの課題を部分的に解決するための試みです。
実装
通言語的に見られる語形が存在しないとき、通言語的に使用されている複合語(現実的にはギリシャ語かラテン語に由来する学術語彙ばかり)を探し、その構成要素を語形として採用する(場合がある)。
具体例
termo「熱」はギリシャ語の θερμός に由来します。日本語では「サーモスタット」「サーモメーター」などの「サーモ」にあたります。
mamo「乳」はラテン語の mamma に由来します。日本語では「マンモグラフィー」などの「マンモ」にあたります。
功罪
幅広い言語に見られる語形を取り入れることは、より幅広い学習者にとって馴染み深い言語をつくることに繋がります。このことは世界派言語の中立的立場を象徴するために有効ですが、それとは別に、知っている語形は学習しやすいという実利もあります。
他方、このような造語方法がわかりやすいものであるかということについては、疑問を呈する声もしばしば聞かれます。「マンモグラフィー」くらいであれば(この語彙の意味をあらかじめ知っているという前提に立てば)「マンモ」の意味を理解することはそう難しくもないと思いますが、どのくらいの人が「モノローグ」「ダイアログ」の「ロ(ー)グ」の意味を理解しているのかというと怪しいところです。もっといえば、複合語の意味は各構成要素の原義からは必ずしも導けない(tele-vision「遠く-見ること」)というような事情を鑑みると、語源を見ても釈然としない気持ちになる学習者も少なからずいるものと思われます。
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famil。グロバサの造語に際して参照される区分のひとつ。基本的には言語学での語族と一致するものの、言語の均一性を基準にした区分けなので、(同じ印欧語族に属する)ヒンディー語と英語とが別の語団として扱われるといった差異がある。 ↩
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