穏永 (wái hès)!かえるです。
先日、ついに雰語が制作開始から3周年を迎えたのですが、実はこの3年間りんご文をちゃんと雰訳したことが一度も無かったことにふと気づきました。
そこで今回は、雰語の簡単な文法紹介を兼ねて一文づつ解説を挟みながらりんご文(ざすろんリストのみ)を見ていきたいと思います。
引用元はざすろんさんのサイトです。
なお、文中の斜体は雰語であることを表しています。
1: 私はりんごを食べる.
我食赤果。
xe3 bua1 vuos1 baon2.
雰語の基本語順はSVOである。
対等な1人称代名詞としては我を使う。
赤果は熟した果実またはりんごを指すが、ここでは後者の意味で用いられている。
食は「食べる」という意味の動詞である。
2: 私はりんごを食べた.
我去食赤果。
xe3 fes2 bua1 vuos1 baon2.
去は副詞で、過去の動作であることを強調する。雰語には時制が存在しないが、このような副詞により時制に相当する表現ができる。
また、副詞は動詞に前置される。
3: 彼はりんごを食べている.
侶現食赤果。
duo2 vaim1 bua1 vuos1 baon2.
侶は3人称男性単数対等の代名詞である。
現も副詞で、今まさに行われていることを強調する。
4: 彼女はりんごを食べ終わっている.
媛在終食赤果。
lun3 suo2 ki3 bua1 vuos1 baon2.
媛は3人称女性単数対等の代名詞である。
在は副詞で、動作による結果が持続している状態(完了相に相当する)を表す。
終も副詞で、動作が完結した状態を表す。
5: 彼女はりんごを食べ終わっていた.
媛去在終食赤果。
lun3 fes2 suo2 ki3 bua1 vuos1 baon2.
4に去がついたもの。
6: 私の妻はりんごを食べたことがある.
我妻有食赤果。
xe3 hang2 no2 bua1 vuos1 baon2.
雰語は前置修飾を主とする。
有はここでは副詞として用いられており、経験について表す。
7: 私の妻はりんごを毎日食べる.
我妻通日食赤果。
xe3 hang2 faong3 kuang1 bua1 vuos1 baon2.
通日は「毎日、日に日に」という意味の副詞である。
8: 私と私の妻は昨日りんごを食べた.
我来妻食赤果在去日。
xe3 huas3 hang2 bua1 vuos1 baon2 suo2 fes2 kuang1.
一文中で代名詞が重複する場合には省略したほうが自然であるため、ここでは我妻の我が省略されている。
来は複数の名詞を並列する助詞である。
在は前置詞で、時間や場所を表す。去日は「昨日」という名詞である。
また、文脈から過去の出来事であることが理解できるため去は置かれていない。
9: 私と私の妻は6日前にりんごを食べた.
我来妻食赤果在六去日。
xe3 huas3 hang2 bua1 vuos1 baon2 suo2 lis3 fes2 kuang1.
8の去日が六去日に置き換わっただけの文だが、これを去六日としてしまうと「ここ6日間」の意味になってしまうので、数詞を置く位置に注意する必要がある。
10: 彼らは明日りんごを食べる.
侶衆先食赤果在先日。
duo2 mail2 taol3 bua1 vuos1 baon2 suo2 taol3 kuang1.
侶衆は3人称男性複数対等の代名詞である。
先日は「明日」という名詞である。
先は未来に対する意思を示す副詞だが、未来の出来事であることは在先日から理解できるため強調する必要がなければ置かなくてもよい。
11: 彼らは6日後にりんごを食べる.
侶衆先食赤果在六先日。
duo2 mail2 taol3 bua1 vuos1 baon2 suo2 lis3 taol3 kuang1.
先程と同じ構造で、先日が六先日に置き換わった文である。
12: 彼女らは3日間りんごを食べている.
媛衆食赤果跨去三日。
lun3 mail2 bua1 vuos1 baon2 yum1 fes2 gaol3 kuang1.
媛衆は3人称女性複数対等の代名詞である。
跨は「~に亘って」という意味の前置詞であり、ある期間について述べるときに用いられる。
去三日は(当日を含めて)「ここ3日、過去3日」を指す。
13: 彼女らはりんごを5分間食べ続けている.
媛衆現食赤果跨五分。
lun3 mail2 vaim1 bua1 vuos1 baon2 yum1 luong1 gual2.
現を使うことで意味をより明確にしている。またここでは便宜上五分と表記しているが、これは現世での約4分10秒に相当することに注意。
14: 彼は常にりんごを食べている.
侶通食赤果。
duo2 faong3 bua1 vuos1 baon2.
通は「いつも」などの意味を持つ副詞である。
15: りんごが3つある.
三赤果居。
gaol3 vuos1 baon2 baim3.
数詞を前置することで量を表す。
居は目に見える存在を表す動詞である。
16: りんご達がテーブルの上にある.
多赤果居上机。
jo3 vuos1 baon2 baim3 ling3 las3.
多は「たくさん」という意味の形容詞である。
机は主に上半身の高さで使う台を指す。
17: 誰かがあのりんごを食べてしまった.
或人去食彼赤果。
gai1 ha1 fes2 bua1 heng3 vuos1 baon2.
或は「ある、何かの」という意味の形容詞で、不特定の存在を指す。
彼は遠称の指示代名詞で、話し手から遠くにあるものを指す。
18: 誰かがこのりんごを食べそうだ.
或人可食之赤果。
gai1 ha1 bua1 kua1 vuos1 baon2 fai2.
之は近称の指示代名詞で、話し手の近くにあるものを指す。
可は副詞で、未来の推量表現(将然相に相当)を作る。
19: 誰かがこのりんご,そのりんご,あのりんごを食べたそうだ.
曰或人去食之赤果、其赤果、彼赤果。
lua1 gai1 ha1 fes2 bua1 kua1 vuos1 baon2, cen1 vuos1 baon2, heng3 vuos1 baon2.
曰は「伝える、教える」などの意味を持つ動詞だが、目的語に従属節を取ると伝聞を表す。ここでは曰以降の全てが従属節となっている。
また、雰語では主語は必須でない。ここでは曰の主語が省略されている。
其は指示代名詞で、以前出てきたものを指す。日本語のような中称の意味は含まない。
20: りんごがひとつもない.
万赤果不居。
vuos1 baon2 vaim1 ki1 baim3.
不は否定の意味を持つ副詞である。
万~不…で「~は全く…ない」という意味になる。
21: 私はりんごを食べない.
我不食赤果。
xe3 ki1 bua1 vuos1 baon2.
不により述語の食を否定している。
22: 私はりんごを食べられない.
我不能食赤果。
xe3 ki1 ail1 bua1 vuos1 baon2.
能は副詞で、可能を表す。
23: 私はりんごを床に落とした.
我去落赤果於地。
xe3 jua3 vuos1 baon2 e1 ho3.
落は「落ちる、落とす」という意味の動詞で、ここでは目的語が後続しているため「落とす」と他動詞的に解釈される。
於は間接目的語を表す前置詞である。
24: りんごが床に落ちた.
赤果去落於地。
vuos1 baon2 fes2 jua3 e1 ho3.
この文では目的語が現れていないため、落が「落ちる」と自動詞的に解釈される。
25: りんごは食べられない.
赤果不能食。
vuos1 baon2 ki1 ail1 bua1.
ここでは赤果が主題として用いられている。
26: 私はりんごを食べたい.
我欲食赤果。
xe3 i3 bua1 vuos1 baon2.
欲は副詞で、要望や意欲を表現する。
27: 私はりんごを買いたい.
我欲買赤果。
xe3 i3 kaom2 vuos1 baon2.
買は「買う」という意味の動詞である。
28: このりんごは汚い.
之赤果為汚。
kua1 vuos1 baon2 xel3 paim2.
為は肯定コピュラ動詞として機能する。
汚は「汚い、不潔な」という意味の形容詞である。
29: このりんごは綺麗ではない.
之赤果非清。
kua1 vuos1 baon2 vai1 jai1.
非は単体で否定コピュラ動詞として機能する。他の動詞とは異なり、コピュラを否定する際に不為と表現することはない。
清は「清潔な、綺麗な」という意味の形容詞である。
30: あのりんごは食べられそうだ.
- 解釈1 (受け身の推量)
彼赤果可被食。
heng3 vuos1 baon2 fai2 je1 bua1.
被は副詞で、受け身を表す。
「あのりんごは(近いうちに誰かに)食べられそうだ」というような意味である。
- 解釈2 (可能の推量)
彼赤果概能食。
heng3 vuos1 baon2 tam1 ail1 bua1.
概は時間軸に関係なく、真である可能性が高い推量を表す。
「あのりんごは食べることが可能でありそうだ」というような意味である。
31: あれはりんごではない.
彼非赤果。
heng3 vai1 vuos1 baon2.
特に説明する事項はない。
32: これはりんごではなくみかんだ.
之非赤果為柑。
kua1 vai1 vuos1 baon2 xel3 tul1.
この文は「之非赤果」と「(之)為柑」という2つの節から構成されている。後者は本来の主語である之が省略された形になっている。雰語では主語が同じで因果関係を持つ複数の節を並列させることが出来るため、このような構造を作ることが可能である。
柑は柑橘類の全般を指す名詞である。
33: あなたはみかんを食べるか?
汝食柑如?
kus3 bua1 tul1 lol1?
如は情詞(終助詞)であり、疑問文を作る。雰語の情詞は文の末尾に置かれ、語調などを表現するために用いられる。
通常の文に如を加えることで是非疑問文(Y/N疑問文)にすることが出来る。
34: はい,私はみかんを食べます.
食。 / 為、我食。
bua1. / xel3, xe3 bua1.
是非疑問文に応答する場合は、動詞の肯定/否定か為/非を使う。ただし後者の方がややフォーマルな言い回しとして用いられる。
35: あなたはみかんを食べないのですか?
汝不食柑如?
kus3 ki1 bua1 tul1 lol1?
特に説明する事項はない。
36: ええ,私はみかんを食べません.
不食。 / 為、我不食。
ki1 bua1. / xel3, xe3 ki1 bua1.
否定の疑問文に答える場合も、動詞の肯定/否定か為/非を使う。ただし動詞では答えが否定文であることを表すために否定動詞を使うのに対し、コピュラの場合では為が否定文を表すことに注意。
この場合では不食と為が同じ意味の返答となる。
37: あなたはみかんを食べたかった.ですよね?
汝去欲食柑、為真如?
kus3 fes2 i3 bua1 tul1, xel3 nim3 lol1?
為真は熟語で、「その通り」という意味である。疑問文として用いられた場合には「その通りであるか」、つまり相手に自分の言ったことが正しいかを確認する表現となる。
38: いいえ,私はみかんを食べたくはありません.
非、我不欲食柑。
vai1, xe3 ki1 i3 bua1 tul1.
質問されている動詞が為であるため、表現はこの1通りである。
ちなみに、「非~如?」のような質問をされた場合には為が否定文(相手に対する肯定)、非が肯定文(相手に対する否定)と解釈される。
39: あなたはりんごもみかんも食べないのですか?
汝不食赤果岐柑如?
kus3 ki1 bua1 vuos1 baon2 co3 tul1 lol1?
岐は「または」という意味の助詞である。この質問の場合、「りんごを食べない」かつ「みかんを食べない」場合に肯定返答となる。
40: いや,私はりんごを食べます.
食。 / 非、我食赤果。
bua1. / vai1, xe3 bua1 vuos1 baon2.
動詞に目的語が存在する場合には做で置き換えることはしない。
41: 私はみかんを食べない.だから,みかんは食べられない.
我不食柑、故柑不被食。
xe3 ki1 bua1 tul1, don2 tul1 ki1 je1 bua1.
故は接続詞で、順接の意味を持つ。
42: りんごは食べることができない.なぜなら,りんごは綺麗ではないから.
赤果不能食。其由非清。
vuos1 baon2 ki1 ail1 bua1. cen1 pis3 vai1 jai1.
由は「理由」という意味の名詞だが、この例文では品詞転換により動詞として扱われている。雰語では名詞を「(名詞の語義)にする」という意味の動詞として用いることが出来るため、2文目は「それは綺麗でないことを理由とする」と解釈できる。
43: りんごは汚い.一方で,みかんは綺麗だ.
赤果為汚。回柑為清。
vuos1 baon2 xel3 gaim2. pel1 tul1 xel3 jai1.
回は接続詞で、逆接の意味を持つ。
44: みかんを食べましょうよ?
伴食柑。
nuo2 bua1 tul1.
伴は副詞で、勧誘を表現する。
45: いいえ,お断りします.
我僻其。
xe3 waing1 cen1.
比較的フォーマルな断りの表現。僻は「離れる、遠ざける」などの意味を持つ動詞である。
46: あそこでみかんを食べろ.りんごは食べるな.
食柑在彼焉。制食赤果焉。
bua1 tul1 suo2 heng3 del1. bom1 bua1 vuos1 baon2 del1.
雰語には命令を表す文法表現が存在せず、主に単独の動詞に焉などの情詞を加えることで表す。
また、「あそこ」は基本的に彼処で訳すが、ここでは前置詞の在で場所を指すことが理解できるために処が省かれている。
制は禁止を表す副詞である。
47: りんごを頂いても宜しいですか?みかんは差し上げます.
徒賜赤果為倫如?行仁与柑。
bao2 jel2 vuos1 baon2 xel3 tuo2 lol1? yaom1 hao2 qil2 tul1.
最も単純な雰語の敬語表現は、代名詞を特定の形に変化させるものである。
ここでは我がへりくだった一人称である徒に置き換えられ、汝も敬意を表す二人称である仁に置き換えられている。
また、前置詞を使うなどして代名詞を各文の先頭に移動させる必要がある。
48: 私は「りんごは食べるな,みかんを食べろ」と言った.
我去曰「制食赤果焉、食柑焉」。
xe3 fes2 lua1 "bom1 bua1 vuos1 baon2 del1, bua1 tul1 del1".
「言う」に相当する動詞には、
- 言(複数人での会話)
- 曰(特定の人物への伝達など)
- 声(相手のいない呟き)
の3つがあるが、内容が命令文であることから曰を用いている。
49: あなたはりんごを食べろと言うのですか?
汝曰食赤果焉如?
kus3 lua1 bua1 vuos1 baon2 del1 lol1?
特に説明する事項はない。
50: 貴様はりんごを食べたいと言った.
爾去曰欲食赤果。
si1 fes2 lua1 i3 bua1 vuos1 baon2.
爾は目下の者に対して使う二人称代名詞である。
51: 私はりんごを食べたいと言った覚えがない.
我不憶曰欲食赤果。
xe3 ki1 mul2 lua1 i3 bua1 vuos1 baon2.
憶は「記憶する」という意味の動詞である。
52: あなたは確か「私はりんごを食べたい」と言ったはずだ.
汝概去曰「我欲食赤果」。
kus3 tam1 fes2 lua1 "xe3 i3 bua1 vuos1 baon2".
特に説明する事項はない。
53: 私はもしかしたらそう言ったかもしれない.
我思態去曰其。
xe3 sao2 xos2 fes2 lua1 cen1.
思態は副詞で、可能性が低い推量を指す。
54: あなたは絶対に私に対して「りんごを食べたい」と言った.
汝万定去曰「欲食赤果」於我。
kus3 ao1 lua3 fes2 lua1 "i3 bua1 vuos1 baon2" e1 xe3.
万定は副詞で、話し手が真であると確信している状態を指す。
55: 彼は私にりんごを食べさせる.
侶遣食赤果於我。
duo2 cuo1 bua1 vuos1 baon2 e1 xe3.
遣は副詞で、使役に相当する表現を作る。使役の対象は間接目的語として於で表す。
56: みかんは私に食べられていない.
柑不被在食使我。
tul1 ki1 je1 suo2 bua1 hu3 xe3.
使は動作主を表す前置詞である。雰語ではこれを用いることで任意の位置に主語を移動させることが出来るため、強調などの際に使われる。
57: りんごは彼によって私に食べさせられた.
赤果被遣食於我使侶。
vuos1 baon2 je1 cuo1 bua1 e1 xe3 hu3 duo2.
基本的に今まで出てきた文法事項の複合である。ただしこの文では侶遣食於我という節が核となっているため、使侶を末尾に置き構造を理解しやすくしたほうが自然であることに注意。
58: ここには何もない.
万不居在之。
ao1 ki1 baim3 suo2 kua1.
20で紹介した構文の応用である。
以上58文でした!
もし文法の不備や誤植などを発見された方がいましたら、是非気軽にコメント等で教えていただけると嬉しいです。
最後まで読んでいただきありがとうございました~!
それでは、伴活穏 (nùo vù wái)!
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