今まで学んできた言語(英語、フィンランド語、イヌクティトゥット語、アイスランド語など...)や、言語学オリンピック対策で解いてきた問題を振り返ってみると、めちゃめちゃ面白いところが山ほどあるのにマイナーで世に知られないのが悲しくなってくるんです.
そこで、面白いところだけを切り取って新しく言語を作ってみることにしました😊
名前は、mmáákeel「私たちの言語」という意味の、マーケートル語にしようと思います.
僕の好みにより、アルゴンキン語派から取ってきたものが多いです.
語彙はこのZpDICから確認できます.
1. 文字と発音
⓪文字はアルファベットを使います.
また、文の始まりには「.」を、文の終わりには「:」を、疑問文の質問箇所には「;」を、文中の特に強調したい箇所には「!」をそれぞれ置きます.
①使用文字とその発音を表に示しています.
文字がIPAと違うものには個別に発音を示してあります.
| 子音 | 唇音 | 歯茎音 | 軟口蓋音 | 声門音 | |
|---|---|---|---|---|---|
| 舌尖 | 側面 | ||||
| 鼻音 | m | n | |||
| 閉鎖音 | p | t | k | 7 /ʔ/ | |
| 破擦音 | c /t͡s/ | l /t͡ɬ/ | |||
| 摩擦音 | f | s | |||
| 接近音 | r /ɹ/ | ||||
| 母音 | 前舌 | 後舌 |
|---|---|---|
| 狭 | i | w /ա/ |
| y | u | |
| 中 | e | |
| 広 | ó /ø/ | o |
| á /a/ | a /ɑ/ | |
声門閉鎖を表す「7」はアメリカの言語学者がよく使用するもので、
無声歯茎側面破擦音[t͡ɬ]についてもƛがよく使用されますが、入力が大変なのでlで代用しました.
②母音調和があり、前舌母音と後舌母音が対立、その中でも広母音と狭母音が対立します.
つまり、区切り*の中の母音は「i,y,e」「w,u,e」「ó,á,e」「o,a,e」のどれかの組み合わせでできます.
- 区切りとは、分割接辞-e7-で区切られた、自立語を一つだけ必ず含む文中の要素のこと.
③各母音は長母音になれます.
④区切りの中では動詞か名詞(自立語)の母音グループに従います.
⑤付属語の母音は母音調和によって変化することがあるので、
便宜上「i,w,ó,o」をまとめて「O」、「y,u,á,a」をまとめて「A」と表記します.
たとえば接辞-lAOk「(一日以内の)過去」を、
- 動詞laa「~である」に付けると、laalaok-
- 動詞lelutte「遊ぶ」に付けると、lelutteluwk-
- 動詞nóó「見る」に付けると、nóóláók-
- 動詞syyn「食べる」に付けると、syynlyik-
になります.
⑥アクセントは、動詞を含む節なら動詞の最初の母音に、名詞のみ含む節なら節の最初の母音につきます.
アクセントが付いた部分は強く発音します.
⑦-kk-,-pp-,-tt-のつづりでは、最初に息漏れの音が挿入されます.つまり、それぞれ/ʰk/,/ʰp/,/ʰt/のように発音されます.
⑧節の最後や子音の前の-rは、/ʃ/のように発音されます(正確には無声のr、/r̥/です).
⑨-fn-のつづりでは、/pn/の発音になります.
2. 人称
①人称には順位があり、主語/目的語の区別に大きく関わります.
3人称>2人称>1人称>疑問代名詞であり、同一人称の場合は双複数*>複数>双数>単数です.
- 双複数は、2つで一対をなすものが複数あること.
②主語と目的語を持つ文では、順位が大きい方が主語になります.
主語と目的語を逆転させるには、逆転接辞-OO-を付加します.
③主語や目的語が名詞の場合は、3人称/不定称代名詞を使用(使い分けは④を参照)して、分割接辞-e7-を最後に付けてその後に名詞を置きます.
これからはこのことを、「代名詞が名詞を受ける」と呼びます.
.mmáá--nóó-láók--e7-cu-pwwru:
1PL-3SG-見る-PST.DAY-DIR-DIV-ART.INANIM-木
「私たちはその木を(1日以内に)見た.」
.mmáá--nóó-láók-óó-e7-cu-pwwru:
1PL-3SG-見る-PST.DAY-INV-DIV-ART.INANIM-木
「その木は私たちを(1日以内に)見た.」
④代名詞は次の通りですが、不定称は「何か」に対応します.また、一般的なことを述べている名詞を受けるときにも不定称を使います.
たとえば、「水は100度で沸騰する.」の水は一般の「水」について述べているので、不定称代名詞で受けます.
| 代名詞 | 1人称 | 2人称 | 3人称 | 不定称 |
|---|---|---|---|---|
| 単数 | mAA- | sOA- | ø- | lA- |
| 双数 | semA- | seOA- | se- | selA- |
| 複数 | mmAA- | sOsA- | see- | lO- |
| 双複数 | semmAA- | sesA- | sesee- | selO- |
3. 一つの節からなる文
①動詞を含む節は、次の順番で接辞を付加します.
主題-法-態-動詞-*助動詞-時制-否定-日時・頻度など-それ以外の接辞-逆転接辞
- 助動詞は、-tOre-「~し始める」などの、補助的な意味を動詞に付け加える接辞のこと.
かにー イヌクティトゥット語は、簡単な内容の文なら空白無しで書けるほど接辞が発達しています.
②主な接辞を次に示します.
| 法 | 意味 | グロスでの表記 |
|---|---|---|
| lAtef- | ~させる | CAUS |
| AA- | そして~ | AND |
| kOOn- | ~しよう | HORT |
| 態 | 意味 | グロスでの表記 |
|---|---|---|
| e7lA- | ~される | PASS |
| pO- | ~(自分自身に;お互いに)する、中動態 | MID |
| 時制接辞 | 意味 | グロスでの表記 |
|---|---|---|
| -lAAk | (一日以前の)過去 | PST.DAYS |
| -lAOk | (一日以内の)過去 | PST.DAY |
| -lOk | (数時間以内の)過去 | PST.HOURS |
| -mA | 今まさに行われている | PROG |
| -nOk | (数時間以内の)未来 | FUT.HOURS |
| -nAOk | (一日以内の)未来 | FUT.DAY |
| -nAAk | (一日以降の)未来 | FUT.DAYS |
接辞の-kは、子音の前で-rになります.
-nAAk + -tOte → -nAArtOte
| 日時の接辞 | 意味 |
|---|---|
| -mOOe | 春に |
| -tOte | 夏に |
| -kOte | 秋に |
| -fOOe | 冬に |
| -mOrOO | まだ~している;(否定なしで)まだ~していない |
| 重要な接辞 | 意味 | グロスでの表記 |
|---|---|---|
| -nnOt | 否定 | NEG |
| -ø | 主語目的語の順位をそのまま適応 | DIR |
| -OO | 主語目的語の順位を逆にして適応 | INV |
| -e7 | 文中の要素を分割する | DIV |
| -kOn | 主題を作る | TOP |
| -e7kOn | 主題の名詞を受ける | DIV.TOP |
③名詞には前置詞がつきます.例外として、代名詞によって所有されるときは、冠詞は付きません.
また、不定称によって名詞が受けられるときにも冠詞は付きません.
| 前置詞 | 意味 | グロスでの表記 |
|---|---|---|
| ce- | 生物につける定冠詞 | ART.ANIM |
| cA- | 非生物につける定冠詞 | ART.INANIM |
| fe- | 不定冠詞 | ART |
| ssA- | ~(の中)で | IN |
| lA- | ~(の表面)で | AD |
| pO- | ~(道具)で | INS |
| AAn- | ~へ | ILL |
| stA- | ~から | ELA |
| kAns- | ~と | COM |
.see--syyn-nyyr-fi-teety--e7-cá-ááfpó:
3PL-3SG-食べる-FUT.DAYS-また-してしまう-DIR-DIV-ART.INANIM-りんご
「男たちはまたそのりんごを食べてしまうだろう(一日以降).」
.uu-e7lu-muu-pwpw-twre-mu:
AND-PASS-1SG-かむ-始める-PROG
「そして私は今嚙まれ始めている.」
④主題を示す接辞-kOn-は文の最初にしか置けません.
主題に名詞を置きたい時は、対応する3人称/不定称代名詞を-kOn-の前に置き、主題を受ける分割接辞-e7kOn-を用いて名詞を配置します.
.lu-kwn-selu-renku-e7-cáá-e7kon-moommaasoo:
USG-TOP-UDU-長い-DIV-穴-DIV.TOP-ゾウ
「ゾウは鼻が長い.」
⑤英語のhaveに当たる、~を持つや~を飼っているという文は、主語をを表す代名詞にADをつけ、対象を目的語に置きます.動詞は~があるという意味のlááを使います.
.lá-ló-lá-láá-káó--e7-miinyt-e7-synykiryyrli:
AD-UPL-USG-ある-しばしば-DIR-DIV-若者-DIV-スマホ
「若者はスマホを持つ人も多い.」
(e.g. "Minu-lla on koira.",「私には犬がいる.」)
4. 複数の節からなる文
①名詞を動詞で修飾するときは、分かち書きをし、主語を修飾する部分はDIR、目的語を修飾するときはINV、それ以外の名詞を修飾するときは接尾辞-eを、修飾節の一番最後に置きます.
②修飾節は普通被修飾語のうしろに置きます.
.--syyn--e7-cá-ááfpó-e7-ce-namman pyinen-ii:
3SG-3SG-食べる-DIR-DIV-ART.INANIM-リンゴ-DIV-ART.ANIM-女 赤い-INV
「女は赤いリンゴを食べる.」または「リンゴは赤い女を食べる.」
.sesee-láá-e7-cu-wwtw ssa-taro new-e:
3DUPL-ある-DIV-ART.INANIM-靴 IN-家 新しい-e
「新しい靴(複数)は家にある.」
③代名詞は名詞の前に置くことで所有関係を表します.
特に、身体部位や親族関係などは必ず所有関係を明示する必要があります.
.--laa--e7-semy-iisi-e7-ce-miis see-syyn-lik-ii-e7-cá-ááfpólsááná-:
3SG-3SG-である-DIR-DIV-1DU-父-DIV-ART.ANIM-人 3PL-食べる-PST.HOURS-INV-DIV-ART.INANIM-オレンジ-DIR
「そのオレンジを(数時間以内に)食べた人は私たち2人の父である.」
④名詞同士の所有関係を表すには、「XのY」→「X-eh-Y-tAAn」のように、所有される側の名詞に接辞-tAAnをつけます.
.-see-lelutte-luwr-nnwt-ww-e7-muu-miinyt-e7-ce-miinyt-e7-fe-lelu-tuun:
3SG-3PL-遊ぶ-PST.DAY-NEG-INV-DIV-1SG-子供-DIV-ART.ANIM-子供-DIV-ART-おもちゃ-POSS
「私の子供は子供のおもちゃを遊ばなかった.」
⑤時間を表す名詞にADをつけると、行為がいつかを表せて、INをつけると行為の期間を表せます.
ただし、-eeren「昨日」、-7AAmennO「明日」など、接辞として存在する表現ではそれを優先して使います.
.sema-naemeen-laar-cak lá-pááppá fenó7ràesee:
2DU-結婚する-PST.DAYS-ちょうど AD-日 5である-e
「私たち2人はちょうど5日前に結婚した.」
.mmáá--nóó-má-óó-e7-cy-teerepii ssu-wwuu fenw7pwruusu-e:
1PL-3SG-見る-PROG-INV-DIV-ART.INANIM-テレビ IN-時間 3である-e
「私たちはテレビを三時間ずっと見ている.」
現在はここまでです.
最後まで見ていただきありがとうございました😆
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