Ⅴ.表現
「わたしはあなたが好きです/I love you」を例として、alowixem語でどのような表現ができるか見ていきます。
〇語彙
asastomos 動詩”好きである”
irok 詩核”あなた”
ext 詩核”わたし”
序奏によるニュアンスの違い
例1. uhisijoh:asastomosirokext
uhisとijohはともに意味を持たない心印・志標です。続く「わたしはあなたが好き」という内容に矛盾するので断符「:」が用いられています。こころを持たない人形に、愛の言葉を語らせているような印象です。
例2. owuxexak-asastomosirokext
owuxは「決意」、exakは「受け入れる」を意味します。どんな結果になってもこの気持ちを伝えようとする強い意志と、まっすぐな愛の言葉を調符「-」で繋いでいます。
例3. uwarulip:asastomosirokext
前述の例2の返答を想定しています。uwarは「嬉しい」、ulipは「拒む」です。断符によって導かれる「わたしはあなたが好き」は、あなたがわたしに向けた”好き”とは違うものであるという意味です。「あなたの好意は嬉しいし、あなたのことが好きだけど、あなたの想いには答えられない」というニュアンスが込められています。
例4. anispulip:asastomosirokext
別の返答例です。例3とは心印のみが異なります。anispは「善意」ですが、あくまでulipが続く以上、断符以下の内容はいわゆる「お世辞」であるということです。
善音・悪音によるニュアンスの違い
例5. anispulïp:asastömösirökext
例4に似ていますが、悪音がちりばめられています。ulïpには先ほどとは違う明確な嫌悪感が、asastömösには「お世辞とはいえ言いたくない」気持ちが感じられます。irökに至っては、「あなた」をどう思っているのか明らかです。しかし、各部の第一音節には悪音を用いていないことから、負の感情には「一定の線引き」があるように見えます。
例6. anïspulip:asastomosirokëxt
例5とは悪音の位置のみが異なります。anïspには善意に対する後ろめたい気持ちが、ëxtには自虐的なニュアンスを感じます。「わたしもあなたのことが好きだけど、こんなわたしじゃあなたを受け入れるのにふさわしくない」という複雑な感情が読み取れます。
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