※この記事には、「モダリティ」という語に対する独自の解釈が含まれます。鵜呑みになさらないでください。
唐突ですが、「モダリティ」という単語を耳にしたことはありますか? 皆さんの多くは、「ああ、また法性の話か」と思われたことでしょう。しかし、私がこれからお話しするモダリティは、そのモダリティとは意味が異なります。
モダリティとは、コミュニケーションの媒体のことです。「音声言語は聴覚モダリティを用い、手話は視覚モダリティを用いる」というような言い方をすることがあるので、おそらくこの解釈で合っていると思います1。
言うまでもなく、コミュニケーションにはモダリティが不可欠です。私たち人間は、思念やイメージを直接相手に伝えられるわけではありませんからね。
ところで、モダリティにはどのような種類があって、どのように分類できるでしょうか。私なりの分類法を以下に述べてみます。
視覚 / 聴覚 / 触覚
あらゆるモダリティは、五感で知覚できる形をとります。相手に伝わらなくては意味がないので、当然ですね。また、五感の中でも、嗅覚と味覚はふつう用いられません。これらの感覚を生じさせるには特定の化学物質を用いなくてはならず、手間がかかりすぎるためです。
以上を踏まえると、モダリティは関与する感覚に応じて三つに大別されます。視覚モダリティ・聴覚モダリティ・触覚モダリティです。身振り・表情・文字・絵などは視覚モダリティ、声・口笛・楽器の音などは聴覚モダリティ、点字などは触覚モダリティです。
ただし、あるモダリティが感覚の異なるモダリティに転用される場合があります。墨字と同じ字形を相手の手のひらに書いて意思疎通を図る「手のひら文字」はその一例です。
また、複数の感覚にまたがるモダリティも存在します。例えば、ハイタッチは当事者間では触覚的に働きますが、第三者に対しては視聴覚に訴えます。
道具の使用
モダリティの中には、声・表情・身振りのように、特に道具を必要としないものがあります。一方で、絵画・文字・楽器の音のように、道具を必要とするものもあります。
保存性
モダリティの中には、声・表情・身振りのように、時系列に沿って表現され、ただちに消えてしまうものがあります。一方で、絵画や文字のように、時間が経ってもすぐには消えないものもあります。これを、後者は前者に対して「保存性」が高い、と称することにします。
道具を用いるモダリティは保存性が高い傾向にあります。
リニア性
絵画と文字列を比べると、絵画を見る視線の流れる向きは、文字列を読む視線の流れる向きよりも自由です。絵画はどの部分から鑑賞しても絵画として成立するのに対し、文字列は決まった方向に読まなくては意味が通じません。この違いを、絵画は文字列に比べて「リニア性」が高い、と称することにします。
保存性が低いモダリティはリニア性が高い傾向にあります。
言語性
コミュニケーションには言語的なものと非言語的なものがあります。そのため、モダリティにも、言語的コミュニケーションに用いられるものと、非言語的コミュニケーションに用いられるものがあります。
ただし、この区分は使用する言語によって変動するものであり、モダリティ自体が帯びている特徴ではありません。そのため、モダリティの分類法としてはあまり有効でないかもしれません。
最後に、いくつかの言語が使用するモダリティを列挙します。空欄は私が知らないことを意味します。
言語 | 言語的モダリティ | 非言語的モダリティ |
---|---|---|
音声言語(音声) | 声(音素と音高) | 声量・表情・身振り |
音声言語(墨字) | 墨字(字形) | フォント・字の大きさ |
音声言語(点字) | 点字(字形) | |
手話 | 身振り・表情 | |
口笛言語 | 口笛 | |
ソルレソル | 声など(音階) |
誤りなどがあれば、遠慮なくご指摘ください。最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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この意味合いでの「モダリティ」の例文があまりに少なかったので、正確な意味や用法が分かりません。どなたかお教えください。 ↩
古い順のコメント(2)
モールス信号(音or光)なんかもありますね。ここで言う非言語的モダリティが極力排除されている例だと思います。
なるほど。モールス信号は失念していました。