前書き
私は主に降雨急行という名前で活動しており、11回目の人工言語コンペでは出題を行いました。
さて今回は出題者としてコンペ提出作品を見ていこうという記事です。
あんまり期待してみるモノではないです。
お題
苛烈な気候によって、歴史的に独特の言語や文化が形成されてきた……とある地域。
過酷な気候を持つその地域は、特殊なエネルギー源によって産業革命を成し遂げ、高い生活水準を手に入れたという。さて、産業革命によってこの地域の言語や文化はどのように変質したのでしょうか?
・過酷な地域の様相について。
(ケッペンの気候区分のA区分,B区分,E区分など)
・気候によって形成された独特の言語や文化。
・特殊なエネルギー源の詳細。
・産業革命による言語や文化への影響。
これらを説明してください。
余談 ちなみに、このお題の出所の一部はDishonored(ディスオナード)というゲームから来ています。
このお題結構難しいという話が多く、ちょっとだけ反省しています。
ゴールデンウィークがあるから調べられるだろうと思って出題したのですが……
色々な人がいますからね。
工業化した島国で、魔法を使いながら敵の居場所に潜入するという。
工業化に用いられているエネルギー源が鯨油であり、鯨油によってラジオや列車、警備用のタレットなどが作動しています。
ここからお題を考慮して決定したという訳です。
遅れてしまって申し訳ない。最初は張り切ったんですが……
体調悪くしたり、予定が入って忙しくなったりちょっとサボってしまったのもあるんですが……
こんな遅くなってしまって悪いことしたかな……と思っています。
期待していた方々には申し訳なく思っています。
自分の言語の解説はないです。遅滞があるから……
本文
作品の通し「作品名」(作者)
上記のように表示する。
またここに全ての提出作品が掲載されている。
感謝。
第1グループ
A「ミッドウェー語」「ミッドウェー島王国について」(Lanthanite氏)
ハワイにほど近い島嶼において話されていた、そして大いに変貌した言語とその話者である人々の記録のようです。
ミッドウェー島は実在しますが、形が異なっていますね。
海水面が低いのかな……
言語の母語話者が戦争などによって離散し、現代になって元々いた土地に戻ってきました。しかしもはや同じ言葉ではなく、多くの言語的な部分を英語と同様にされた。という。
ハワイ語にごく近いモノであったそうで、名詞の複数化など一部だけでも古い形を保ったことは喜ばしいことです。
ヘブライ語のようにはいかないモノだね。
B「雷の街」(シラミィ氏)
労働者階級の二名が世間話をして、栄転を通達される。
そう言う場面のようです。
ここら辺の人々は雷頻発地帯に住んでいるらしく、雷を蓄えて直接機械を動かしているそうです
例文が三つあるだけとかなり攻めた形式ですが、なかなか面白い試みだと思います。言語には慣用句がつきものですから。
評価されるのも難しかろうけどね……
C「ペルベの言語」(U川氏)☆
夜の来ない、熱帯雨林のような箱庭で生きている小柄な「ペルベ人」によって話されていた言語が、日本人一人の手によって大きく変質してしまった。変化は言語だけには留まらず文化や価値観にも影響を与えたとのこと。
あちらの人が通信して地球の人々に解説しているそうです。
女傑だね。ひいおばあちゃん……
「時間感覚が無い」というのは、環境が色濃く出ている。と思います。
赤道直下や極地では夏冬があまり区別できないので、語彙がないといいますから……
昼夜もない場所では、起きたり眠ったりだけで時間を感じるのは当然でしょう。
実にゆったりと生きていたのでしょうねえ。
「個人の名前を「n番目の~」と表す」と言うのもペルベ人のゆったりとした、厳密ではない気性を表しているように思えて良いです。
とはいえ、「~」の部分を変えていろいろなモノを表現しているようなので、なかなか実用的だと思います。
しかし日本人との接触によってクレオール語となった様に見えます。
死人はいっぱい出るわ、格差が生まれるわで大変そう。
個人的には「小説家になろう」で投稿されて面食らいましたが、作り込みを感じます。
D「niemai語」(Red_camellia52氏)
イベリア半島西部の独立国家に生きているブラックホールが現れ、それによって踊りを用いた言語が発生したという。
ローマ帝国に屈服しなかった強大な王国だったそうですが、カトリックやラテン文字を導入しているということで現地の人々は柔軟な思考を持っていたのでしょう。
もしかしたらオランダのように移民の多い国なのかもしれませんねえ。
言語について書きましょう。
近現代に発生した「ニカラグア手話」というものがあります。ニカラグア手話は世代交代を経ることによって、より小さな動きで疎通できるようになりました。しかしこの言語では、むしろブラックホールやその関連技術に振動を捧げるためにより大げさな動きになっていったそうです。
これはなかなか独特で、面白いと思います。
E「ヴァラール語」(夕向奏氏)☆
星全体が寒い地域であり、特に寒い地域ヴァラールに住む獣人の記事です。
ヴァラール人は獣人であり、オオカミのような姿や長い耳と角を持っているとかいいます。人間以外を言語の話者にすることも想定していましたが、これはかっこいい獣人ですね。
奇蹟的物質ラーリンロゲとその代用品たる魂に傾倒して倫理観や常識を砕いていく様は実に見事だと思います。
また、言語変化がしっかりとまとめられていて、楽に見られます。
音素が多いから表を作った方が良いと思いますが……
中近代で用いられた伝統的な綴りは、識字率の向上によって変わるのにも関わらず、Hが発音されなくなっても綴りは変わらないというのは……
多数派の力を感じますねえ。
OSVはあまり作ったことがないのでいつか作ってみたいですね。
F「ロディラウ共和国」(美夢 (bí-bāng)氏)★
カムチャツカ半島に首都を置き、アラスカやシベリア東部のおおよそウラジオストク程度までを領土とする共和国を舞台にしています。
17世紀に、氷を火山で溶かして発電することを始め、アラスカにて発見された氷を解かす鉱石ネルギスによって発電量を莫大に増やしたといいます。
現実において、初代電池といえるボルタ電池は1800年(18世紀末)に制作発表されることになります。
何が言いたいか。1600年代に電気を利用しているのは相当優秀です。
シベリアを開拓するロシア帝国にもネルギスを秘匿したということで……そりゃ米ソとも渡り合える強国となるでしょう。
国歌もあるし憲法もあるし、ロシア帝国とオスマン帝国の尊厳がない……
言語的には可食の魚と不可食の魚を区別するというのは、文化を感じます。
能格言語の抱合語というのも味があっていいものです。
あと一個言っておくならば、天皇海山群がどうなっているのか気になるモノです。
G「tpyàmi̋ȉ ‘íƞ トピャムィー語」(やみ瀬氏)
私達の知らない、違う惑星についての手記。
原語で書かれている部分が結構多いので、難解な所はありますがこういうのを読み解いてゆくのも乙なモノです……
さてさて、どうやら木星型惑星に浮いている氷に住んでいるようです。
水晶によって光が都合良く配分され、また、光量を操っているそうです。
人間はそこからエネルギーを得ていたようですが、現地民に感づかれており報復を受けた。という風に読み解きました。
言語は……音素がかなり多いです!
放出音を「はなてん」と表記する、そういうやかましいところ好きですよ。
品詞も多く、結構話すのには難儀するでしょうね。
TAMと言うモノがあり、相や法がこれによって決まるようです。
私の場合、あまり区別しない言語を作りがちなので……作ってみるのもいいかもしれません。
あと、船の絵が綺麗。いいですね。
第二グループ
A「オグルト語」(Cyano氏)★
恐ろしく寒い島国の言葉のようです。
山が爆発することによって島々が形作られ、またエネルギー源の発見につながったようです。
作者はトールキンの世界に影響を受けたようで、エルフやドワーフなどの種族がいるようですが……これはコーカソイドとモンゴロイドの言語の混交のようです。
(つまりおおよそ、白人とアジア人)
原住民であったアルジェバチュ人が住まう土地に、オグルト人が流れついたことで交友が始まったそうです。
突然として山が爆発し、その残骸からクォーチェシュ・シュタッシュ(力の石)と呼ばれる石が取れるようになり、暖を採れるようになった。
アルジェバチュ人とは対立したようですが……
言語は格が10個あり、(名詞も関わりますが)動詞は母音交替(アプラウト)によって活用するようです。
母音交替で動詞を活用させるの、作ってみたいモノです。
多分三人称代名詞は指示語で補うのでしょう。
これはあんまり発想の引き出しになかったな。参考になる。
B「作品」(slaimsan氏)
結構住みよい地域の言語です。
地域の人間は悉くアルコールを飲用しているらしく、一番過酷なのは発酵を司る出芽酵母かもしれません。
米を育てられて、かつ発酵させられるなら、かなり降るときは本当に降るのかもしれませんね。
そして飲用しているアルコールをもとにして機械を動かしたそうです。
そうなると酒で水を蒸留したりするのでしょうか?
言語の方はSOV-NA……つまり主語、目的語、動詞の言語で、名詞Nのあとに形容詞Aがくるという。
癖のある感じはなく、とてもまっすぐでいいと思います。
C「Aiaoaの世界」(せんちゃ氏)
そこかしこで落雷が起きるせいで音が通りません!
視覚に頼った言語を使うことになりました。
アイウエオという口の形だけで意思疎通します。
単語は六種類に分けられて、単語の最初が定まっているとのこと。
雷が最も単純な名詞「a」であるのは、文化を感じられていいですね。
時代と共に雷や、その音をエネルギーに変えることが出来るようになったらしく、話者は破裂音を使うようになったそうです。良かったね……
ところで、演劇などで役者が発音を鍛えるために「あ・え・い・う・え・お・あ・お」などと発音したりします。それを彷彿とさせるものでした。
あと茶茶入れなんですけど……
文を終わらせるために目と口を閉じるそうなので、スポーツ中に「行け行け」とか喋ると凄く危険だと思います。なんだったら隙を突かれるかもしれないですね。スポーツはやらない人々の言語かもしれませんが……
D「كباش وكانت」(矛盾と混沌氏)☆
13世紀のある男がサハラを彷徨っていると、穴を見つけその中には都市があったという。現代では既に滅んだという、その都市についての資料であるようです。
イスラム教徒の旅行家が都市に入りますが、珍妙な服装や、右に流れゆく絵画など……イスラム的ではない物体を見せられ、そしてスターリングエンジンだとか言われるものに見える。
とても良く出来た話だと思います。
言語の方を見てみましょう。
VSOやVOSの語順であり、動詞は大いに活用すると言います。
また、動詞の活用は前後に挟み込むことによって行われるそうです。
あと名詞に性がない。記事に書かれている通り、孤立言語の感があります。
本当に見せ方がウマい。人間の想像力をかき立てる文章をしたためていますよね。
あとひとつ、私はもじりのセンスも好きですよ。
E「Daltas語」(AmeAgari_風斗氏)
火山や乾燥した大気の島に住む人々。とくに「daltas」というエリアに住む人々について記されているようです。
Daltasは乾いておりかつ荒廃した気候です。そこは山と海に囲まれており、陸の孤島のようであるとされています。
そのような場所で、人々は火山の影響が少なく、しかも肥沃な大地を持っている汽水域に住んだといいます。
作物を育てる場合、塩害などがあるだろうから畜産がメインなのかな?と私は思いました。ただ実際は「peppana」という塩害に強い作物があったようで、農業が出来たようです。
さて産業革命は、フィリアムという素材によって成し遂げられました。
それは高い導電性を持っていて、植物によって作られたプラスチックと組み合わせることにより機械を作ることが出来たようです。
のちにDaltasは植民地となったそうですが、なんやかんやで居住可能なエリアを増やし、乾燥した土地ながら潤沢な水を手に入れた。
言語の方は実にまっすぐとした印象を受けます。癖がない。
現代語の方が長子音を使っているので、ストレスが強くなっている。そういうふうに思います。
受動態は前につけると言うことで、いい構造だと思います。同時に他言語からの借用を考えますね。
簡潔なコミュニケーションを理由に文字を持たなかったのは、道理が通っているかな……
一番世界を作り込んでいる作品だと思います。
F「産業革命後のカシュダグ語」(仙丹花氏)
世界一の国家カシュダグ連邦に留学した人間のメモのようです。
古い時代、カシュダグの人々は極寒の中、自然との調和を大切に生きてきたそうです。ようするに清貧ですかね。
しかしながら5年前にナユン人という異民族を征服し、しかも異民族の土地の「霊晶」という物質を用いて生活を豊かに変えたそうです。
信仰の場所はたんなる研究室へと変わり、神はうち捨てられ、伝統的な文化は棄損された。そういうことらしいです。
そもそも、カシュダグ語とナユン語は全くもって関連のない別の民族の言語であったらしいのですが、ナユン人は同化され言語も毀損されているとのこと。
カシュダグ語の方は国家によって再編され、伝統的な文法が変えられたそうです。
言語の方に入りましょう。元々、名詞は単複と七つ程度の格があったようです。
産業革命後には、単複による語形の変化はなくなり、格も二つになりました。
助詞を用いてその他の格を用いるようです。
動詞の方は大きな活用表が消され、名詞と同様に補助語を用いるようです。
(三人称単数が原形と同じ)複数の機能は/m/の音素が持っているのでしょうかね?
さて、「1984」のニュースピーク(new speak)を思わせる設定ですね。
簡単に言うと……国民に政治的思考を持たせないために、国家が作った言語です。政治的な語彙がないので、それらを表現できないという。
G「水星日本語」(不織布氏)★
西暦2278年。宇宙を行動する記者が、水星の内、日本領となる場所に行く。
水星は立ち入りが厳重に規制されているので、その場所に踏み入れるというのは珍しいそうである。
水星に移住した人間が話す言語であり、言語は訛りに訛った日本語であるそうです。
しかし、不織布氏の時間の不足によって、例文は数少なく文法の説明や単語などもまとめられていない。
その状況で優勝されるのだから魔術師のようだと思うわ……
話を戻しましょう。とはいえ、例文から文法などは分かります。
「n」や「ts」や「w」が控えめだったり、動詞の活用が見られないようになっているのでしょうかね。
さて聞いた話ですが、江戸時代には日本語は現代の形になったそうです。
つまり、だいたい200~300年は殆ど同じ日本語であるということですが、それなのに同じ年数で水星の日本語は大いに変化しています。
これはおそらく、水星の苛烈な環境が平均寿命の低下を招き世代交代が促進された結果なのではないでしょうか?
ちなみにエネルギー源の方は、現地の研究者によって岡田石というモノが発見されたそうです。
太陽光発電効率を上げる素材であるそうで、カルダシェフ・スケール(宇宙のエネルギーをどれだけ用いられるかの指標)が1になる偉業を果たしました。
大偉業ですが実感の湧くものではないですね……
その他
Ghrámia(グラーミア)で話されている言語たち(おにぎり にぎにぎ 屋さん (ONY)、五名による)
赤色矮星ほど近くの惑星。名前をグラーミアといいます。
ここは常に一面が恒星の方を向くので、片面は灼熱、もう片面は極寒のようです。だから多くの生命はその境目に暮らしているそうです。
「彼方のアストラ」にそういう星あったな……
その星のユーリスという住民が見つけた石版をもとに、古い時代の文明が作った装置を作成した。電力を用いて、光を出したり温度を調節できるようです。
それによって居住地域を広げると共に、戦争を止めたそうです。
ユーリスは人間ではなく、また発達した唇を持っていないようです。
それによって古い文明の言語を完全に発音することができず、自らの言語にも唇を用いた音が極端に少ない、とのこと。あと指も三本だけです。
言語面では、日本語に結構近いSOV-AN(主語-目的語-動詞かつ形容詞-名詞の順番)です。
指が三対だけなので、六進法を用いたりもします。
さて最終的に境目の言語である「夕語」は、母音を含む「昼語」と詰めて話す「夜語」に変化したとか。
地域のことを、この星の太陽に基づいて「昼」だとか「夜」だとか呼んでいる。というのは面白い。説得力があると感じますね。
クーオン語とリシュナクラ(みうこね氏)★
東の遊牧民から逃れるために大陸北部の極寒の地であるリシュと言う場所に王国をたてたそうです。(極地ゆえに寒いのか、高地ゆえに寒いのかは分かりませんが……※南ア大陸はアンデス山脈によって北部の赤道近くも寒い場所がある)
動乱の中で文字が失われ、音楽によって情報が口伝されるようになったxそうです。
洞窟暮らしをしていた彼らが「太陽の石」というモノを見つけて、その石の熱がエネルギー源となったそうです。
その後蒸気機関を制作し、その栄光は留まることを知らない。とのこと。
言語の方を見ましょう。
SVOの癖のない言語ですが、大変なこととして、文字を再発明したそうです。
象形文字を表音文字に単純化しているというので、優れた人々だと思います。
ところで、文字に「釣り針」や「帆」がありますが、若い世代はそれらがどんなものか理解できるのでしょうか。例えばワカサギ釣り?
せっかく文字があるのならば、書く方向などもう少し子細を知りたかったモノですね。
ちなみに、題名の隣にある「☆」はあることを示しています。
それは「産業革命と同時に大権力者が現れた」ということです。
国家が形成された。とも言い換えられますね。
それに対して「★」は「産業革命前にもともと大権力者がいて、国家によってエネルギー源が発見された」ことをあらわします。
これには、「元々大権力者はいたが、エネルギー源は既知のモノである」ものを含みません。
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