Migdal

降雨
降雨

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Civitay d'Universitay

お題

ラテン語の娘言語大展覧会でいきましょう

経緯


「しばらく山に登るのはやめておけ。お上が降りてきているから吹雪いているぞ……」
ここはアルプス山脈の中腹、のどかな村。
この村の住人である老人は我々にそう言った。
老人はしわの多く憂いを帯びた表情で山頂を見つめ、我々に登山の延期を助言している。
「そうはいっても……旅程が四日も遅延してて、もう休みがないんですよ」
仲間の一人、ドイツ出身だったかの男が食い下がる。
「なら山を降りることだ。無理に登れば、お上にさらわれて、帰ってこられない」
しばらく黙った老人は、そう言い捨てる。
「でも、登りたいよ。せっかくここまで来たんだからさ?」
もう一人の仲間が耳打ちした。
「なんにせよ、今は行くんでない」
老人はそれだけ言ってどこかに立ち去った。
さて、どうするか。
確かに見立てが甘かったかもしれない。
登山仲間とアルプス山脈縦走1計画を立てたのはいいが、こんなに遅延するだなんて想定外だった。
危険を冒して登るか、待つか、降りるか……
まず、待つことはできない。仲間の夏休みは終わりが近い。リーダーとして余計に休めとは言えない。
しかし、降りるのも皆乗り気ではない。
そもそも、我々は登山のやり方を十分心得ている。吹雪程度問題にはならないだろう。
お上というのが気になるが……
というのが、経緯で……

要するに、無謀な登山によって我々三人は仲間諸共遭難してしまったのだ。

病室にて


ここはどこだ? どうやら長い間眠っていたらしい。ふかふかとしたベッドの中にいる。
辺りを見渡すと、石造りの部屋に、三つのベッドが並べられているようだった。
私は真ん中にいる。
「te leves vi.(起きたか)cilamo medicam.(女医を呼ぶ)」
若々しい男の声がする。誰だ。おい、ここはどこだ。
そう問いかける間もなく、男は部屋を出ていった。
意味不明だ。そもそも何語だ? 
そう思っていると部屋に若い女が入ってくる。
「codea nivma(雪を食べるんだ)」
そう言って白いモノが乗ったスプーンを差し出してくる。
どういう意味だ? これはなんだ?
「お前達はなんなんだ!ここは……」
しかしこの女は私が喋る隙を見て、私の口にスプーンを突っ込んだ。
「喋れるか?」
「君はどうして来た?」
なんだ? 言葉が分かる。なにが起きているのか教えてくれよ。
自分の姿を見て察したのか、この女は私に対する警戒を解いた。
「……どうやら、本当に何も知らないらしい。なにから教えようか」
それならまずは、ここはどこか知りたい。
「ここは町のへび通り。医療施設の集まるところ。しばらく行けばこの町を治めている研究所 (universitay) に行くことが出来る……一等地さ」
つまりここは病院で、この女は女医か?
いやそれよりも研究所 (ウニウェルシテ) ? なんだそれは? というかそれよりも……
「何語を喋っている?」
ローマの言葉 (lingay dal romano)
女は答えた。ローマ? いや、ローマなんて数千年前には滅んだだろ……
「我々はローマの正当な子孫だ」
こいつ本気で言ってんのか? この話題はあんまり話すべきではないかもしれない。
「ああ、そうか? じゃあ……言語を習ったり出来るか?」
女は近くのベッドから本を取って渡してきた。
「これを見るといい。私の患者の女の子が、君のために残していった手記だろう。彼女はもう下の町に返したが……」
「そうか……仲間たちはもう帰ったのか」
私は口にする。
「仲間たち? いいや君たちは二人だろう?」
女は驚いたように叫んだ。

つまり、仲間の一人は帰ったそうだが、もう一人はどこかに消えた。
うーん……。とりあえず手記を読もうか……

手記「山の言葉 (lingay dal montay)

なんか……遭難したと思ったら、介抱してもらってて申し訳ないな……
隣にリーダーいるし。
彼はしばらく起きないみたいだから、怪我を治しながら……手記を書いておこうと思う。
面倒を見てくれる女医の言葉は聞いたことがないし、彼の助けになるハズ。

表記

  • 一般的なラテン文字っぽい。「H」「J」「W」「X」「Z」は使わず、「C」は/k/、「V」は/β̞/の音みたい。
    「ay」や「oy」の綴りは/e/になる。

  • あとは文字通り読むだけ。簡単ね。

文法

  • 名詞の性が三つ。男性、女性、中性。
    基本的に……
    男性名詞は語尾が「-o」、女性名詞は語尾が「-a」、中性名詞はそれ以外

  • 格が五つあるみたい。大変ね。
    主格、対格、与格、属格、奪所格。
    同形のこともよくあるみたいだけど……

山という意味のmontoy/monte/だと

\ 山(男性)
主格 montoy
対格 montema
与格 monti
属格 monti
奪所格 monte

他には……

\ 建物(女性)
主格 casa
対格 casama
与格 casae
属格 case
奪所格 casa
\ 雪(女性)
主格 nivs
対格 nivma
与格 nivi
属格 nivia
奪所格 niv

みたいな感じ。

  • 単数と複数がある。ただ「-s」とか「-es」をつけるだけ。

montoy --> montoys /montes/
casa --> casas /kasas/
nivs --> nivses /niβ̞ses/

こんなかんじ。

  • 動詞は二種類ある。 最後が-areのものと、-ereのもの。 are動詞、ere動詞と呼ばれているみたい。
are動詞 現在 未来 未完了過去 接続現在 接続過去
一人称単数 -o -abo -aba -em -arem
二人称単数 -as -abes -abas -es -ares
三人称単数 -ay -abe -abay -e -are
一人称複数 -amas -abamas -abamas -emas -aremas
二人称複数 -aes(-es) -abeis -abaes(-abes) -eis -areis
三人称複数 -an -aben -aban -en -aren
ere動詞 現在 未来 未完了過去 接続現在 接続過去
一人称単数 -o -ebo -eba -eam -erem
二人称単数 -es -ebis -ebas -eas -eres
三人称単数 -e -ebi -eba -ea -ere
一人称複数 -amas -ebamas -ebamas -eamas -eremas
二人称複数 -eis -ebeis -ebais -eais -ereis
三人称複数 -en -aben -eban -ean -eren

こういう表らしいけど……多いね。

完了、過去を表すには「vi」という単語を後につければいいみたい。

愛するという意味の「amare」と、見るという意味の「videre」を使って考えると……

amo ---> 私が愛する。
amas ---> 貴方が愛する。
vide ---> 彼・彼女が見る。

amabo ---> 私が愛していた。
videbais ---> あなたたちが見ていた。

amamasvi ---> あなたたちが愛した。
videnvi ---> 彼ら・彼女らが愛した。

代名詞を使えば、もっと多くの表現ができる。

tu/teello/lovestay(衣服)やdare(与える)を使って考えると……。

te amo ---> 私が貴方を愛する。
te da ---> 彼・彼女が貴方に与える。
da vesti ---> 彼が服を与える。
vedes vestema? la do. ---> 貴方は服を見たか?私はそれを与える。
※ただし、目的語が二つある場合、対格の方は「a」を使って表すみたい。
vedes vestema? te la doではなく、la do a teが正しい形ってこと。

研究所


とりあえず、もう一人の仲間を見つけるため建物から出てきた。
この町、雪山を掘って建物を作り、建物の間に足場をかけて作られているようで足場がとにかく不安定だった。
研究所 (ウニウェルシテ) なら何か知っているはずだよ」
そう言われて、一番大きく、立派な建物にたどり着いたが……
建物の中には講堂があり、様々な人間が授業を聞きながら羽ペンで内容を書き取ったり計算をしていた。
そのうちの、羽ペンを置いて立ち上がろうとした男に尋ねる。
「最近下から来た人は居ませんか」
「さあね。そういう政治のことは二階で聞くといい」
ぴしゃりと言って、彼は書き込んでいた紙と共にどこかに去った。
なんか邪魔したのかな……
彼の助言通り二階に上ると、そこには仲間が居た!
なんだ。簡単に見つかった。
しかしどうやら彼の胴体、足、腕は紐で縛られている。
なにやら尋問を受けているようで……
「なぜここに来た?我々の研究 (scienta nostri) を盗もうとしたのか?」
髭を蓄えた老人が問いかける。しかし仲間は言語が分かっていないようだ。
ドイツ人だろ? 語族が違う。そりゃあ当然理解できない。
「おい! 仲間に何をしている!」
叫んで老人に問いかける。
「お前達はこの町から知識を盗もうと、ここに来た。違うか?」
老人は私に言った。
そんな訳がない。無理に登山して遭難しただけなのに。
「そんなことが信じられるか。ここは世界一栄えている都市だ」
そんな訳なくない? ん? そんな科学力があるようには思えない。
仲間がさりげなく私に話しかける。
「もし望むなら、銃持ってるから撃ちますよ」
「銃があるのか!?」
思わず口にする。おっとまずい。仲間の言葉は分からなくても、私の言葉は通じるんだった……
しかし老人は言葉の意味を理解していないらしい。
「えっと……銃って分かる?おい、一発撃ってくれ」
老人、それはなんだ? という顔。
仲間は動かしにくい腕で床を撃つ。銃の爆音が部屋に響き渡る。
老人は辺りを見渡して、言葉を選ぶようにゆっくりと言った。
「それは……お前達の技術なのか? 」
そうだ。数百年前にはあったものだ。
「でも……わしらはローマ人の末裔で、ローマの元老院と人民 (Senato poupulo que romani) 」で……」
老人はひどく混乱している、今のうちに逃げるが勝ちだ。
仲間の拘束を解き、女医がいた建物に逃げ込んだ。
「なにか大きな音がしたようだけど……お仲間さんを救ってきたのか。なるほどね。来た、見た、勝った。 (venovi vidovi vincovi.) って感じだ」
女医は一瞬驚いたが、すぐに気を取り直して言った。
「帰りたいなら、息子に連れて行ってもらうといい。もう用事は無いだろう」
私達は何度も礼を言った。

写真?を送ります。
こういうのでいいのだろうか?

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  1. 山に登ったのち、下山せず他の山を渡り歩くこと。 

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