この記事は第十回人工言語コンペ参加作品です。
邪神、悪魔、亡霊、悪鬼…この世に存在する邪悪な者たち。
その邪悪な存在と交信し、召喚するのに使われるのはある特別な言語。
さて、それはどんな言語でしょうか?邪悪な存在に関する神話や伝説の体系と、交信や呪文に使われる言語を作り解説してください。
ただし、もし「本物」を召喚してしまった場合は自己責任となりますのでご注意>を…
人工言語コンペ初参加のかめりぁと申します。
人工言語を初めてはや三か月。
現在は自然言語の音韻やら音声やら癖を分析して人工言語に反映したものを発音して悦に浸る活動をしております。
さてさて、悪魔を召喚する言語でしたね?宗教は前々からいくつか作ってありましたが...
まぁ気楽にやってみました。
ー蝿王教
かつて世界のどこかに、七つの大罪の悪魔を崇拝する「大罪教会」があった。
しかし、暫くが経つと大罪教会は腐敗し、嫌気がさした者たちは七つの協会に独立した。
そのうちの一つが暴食支部、人呼んで「蝿王教」である。
概要
蝿の王であるベルゼブブと、彼が司る暴食を信仰する宗教
- ベルゼブブの像の前でひざまずき、手をこすり合わせて祈る
- ストレスは暴飲暴食で解決することにより、この世から犯罪は消え去ると説く
- 穏健派は「共食」「食への感謝」を大事にする
- 上記の理念を忠実に守る穏健派と、ストレスなき者にも過剰に暴食を進める過激派の対立が問題となっている
- 毎週日曜の集会では、各々が好きな料理を沢山持ち寄り、食べながら司祭の話を聞く
- 12/2の蝿王祭では、大量の料理をみんなで食べることで、食事の幸せを分かち合う
- 暴食は「悪いことが無くなる」のであり、「良いことが増える」のではないと解釈される
- 「蝿の儀式」をすることで、「良いことが増える」
- 「蝿の儀式」をするための「蝿の皿」がある
蝿の儀式
1.司祭が、蝿の皿にワインを注ぐ
2.司祭がワインに杖を浸け、悪魔と交信し、望ましい効果をワインに付与してもらう
3.信者が一斉にグラスでワインを汲む(1人~複数人)
4.一斉に飲む
5.全員に効果が付与される
この儀式で使われるワインは、毎日司祭によって祈られたものである
杖は、初代司祭が使っていたものである
...
この宗教は昔、宗教創作にハマっていた時に作ったのを発展させたものです。
テーマと合う宗教が既にあってラッキーでした。
ーvɛʀzɪββ語
暴食の王、ベルゼブブ。そして彼を信仰するのが「蝿王教」
ベルゼブブは、時に信徒からの願いを聞き入れる。
その時に交信する際に使われるのが「vɛʀzɪββ語」である。
音声
子音
両唇 (Bilabial) | 唇歯 (Labiodental) | 歯 (Dental) | 歯茎 (Alveolar) | 後部歯茎 (Post-alveolar) | 軟口蓋 (Velar) | 口蓋垂 (Uvular) | |
---|---|---|---|---|---|---|---|
破裂音 (Plosive) | b | - | - | d | - | g | q |
摩擦音 (Fricative) | β | v | ð | z | ʒ | - | - |
振動音 (Trill) | - | - | - | - | - | - | ʀ |
母音
前舌 (Front) | 中舌 (Central) | 後舌 (Back) | |
---|---|---|---|
閉 (Close) | i | - | u |
半閉 (Close-mid) | ɪ | - | - |
中間 (Mid) | e | - | o |
半開 (Open-mid) | ɛ | - | - |
開 (Open) | æ | a | - |
統語
Aux V-Aux S O Adv
形容詞、疑問詞は前置。
分詞、敬称、複数形は後置。
否定語は二重に置く。
人称
一番の特徴であり、人称は7つある。
細かい人称により、どの立場の人が主語かを明確にする。
- 一人称
- 二人称
- 儀式人称 ... 儀式に参加している人
- 信徒人称 ... 入信している人
- 異徒人称 ... 入信していない人
- 子羊人称 ... 「蝿の儀式」を受けている人
- 命令人称 ... 命令文の主語
時制
過去、現在、絶対未来の3つ。
相
瞬間相、進行相、継続相の3つ。
法
可能、義務、許可、推奨、希望、丁寧の6つ
丁寧形で、悪魔への忠誠を表す。
用語
「食べる」の類義語を多く含有。
例文
ある日の蝿の儀式にて...
司祭:偉大なるベルゼブブ様!この司祭の名のもとにおいて、ここに降臨し給え!
ðzʀig vɛʀzɪββ bɛzz! ʒæ βgagb dæ ʒɛ ʒdeʒq, ʀββev qzæʀʒ zeg ðgi.
ベル:なにごとだ、暴食の徒たちよ。何が望みであるか?
βqaʀð, ʒgægv zaq dæ vɛʀzɪββ. βqaʀð vdʒu vædv?
司祭:私の呼びかけに応じてくださり、感謝を申し上げます。
ʒæ ʀββev βzveɛgʒ βɪ βdægβ dæ zæ, gqʒɪ zæ βɪ dɛq.
司祭:この司祭の名のもとにおいて。この信者が持つ店の客足を増やすために、
彼の者に蝿王の加護を授け給え。
ʒæ βgagb dæ ʒɛ ʒdeʒq. ði geðʀ vædv vubð zɪgd dæ βaʀq æʒ vzðog vædv, ʀββev ʀðeʒg ɛdu βdβo dæ vɛʀzɪββ βɪ vædv.
ベル:よかろう。汝が持つ店の客足が増えるよう、
汝に商売の洞察を授けよう。
βɪð. ði vqʒa vædv ʒbða geðʀðgɪ vædv vubð zɪgd dæ βaʀq æʒ vzðog vædv, ʀðeʒg zæ dgu ʒβzo βɪ vædv.
司祭:ありがたき幸せ!これからも暴食の徒として絶えず万物を貪り続けよう!
gqʒɪ zæ βɪ dɛq! daʒ zʀu ððgub, ʒʒbæidʀ βðɪv zʀqa qvdob giv ʒgægv dæ vɛʀzɪββ bagd.
ベル:良い心がけだ。さぁ、ワインを飲むがよい。
gðe ðzʒɛð. vʒæ, bidq ɛdu ʒɛ zʒðob.
...
音韻はベルゼブブが悪魔ということで、喉音や有声音を使うなど全体的に禍々しさを追求してみました。ニャルラトホテプとかなら流音や鼻音を多く使っていたと思います。
統語は悪魔らしさを出すのが難しかったですね...人称にこだわることで「儀式用」感を強めました。
意味にも凝れれば良かったんですけども如何せん時間配分をミスり...次はもっと時間をたっぷり使おうと思います。
終わりに
我ながら良い言語が出来たと思います。
ぜひあなたの旅路に飽食と共食がありますように...
こちら今回のZpDICです。ぜひ僕の他の言語も見ていってください。
https://zpdic.ziphil.com/dictionary/3422
それでは、またどこかで。
Top comments (0)