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速習 ペルシア語講座

0. まえがき

この記事は、語学・言語学・言語創作 Advent Calendar 2022向けに書かれた記事です。
さて、なぜ今回ペルシア語をやろうと思ったかと言うと、そこにペルシア語のテキストが手元にあったからです。今回使用したテキストは、『基礎ペルシア語』(岡崎 正孝, ISBN: 9784475010467)で、これは大学院時代の時に先輩から譲り受けたものです。そしてかれこれ10数年、いい加減ちゃんと読まないとなと読み始めたところで、今回のアドベントカレンダーのお誘いがあったので、本腰入れて記事にしてしまおうとなりました


1. 文字と発音

1-1. 文字

文字は、ペルシア文字を使う。ペルシア文字は、アラビア文字から派生したもので、大部分が共通するが一部異なる。ここでは、アラビア文字は既知のものとして扱い、以下はアラビア文字との違いを述べる。(Wikipediaでささっと見てくると良いと思います。)

a. アラビア文字と書き方が異なる文字

音価 アラビア文字 ペルシア文字
[k] ك ک
[y] ي ی

b. アラビア語と音価が異なる文字

ペルシア語に無い音を表す文字は、ペルシア語にある音で近似される。(アラビア語に由来する単語内でしばしば使用される。)また、 و については、[v]に変更されている。

文字 アラビア語の音価 ペルシア語の音価
ث [θ] [s]
ذ [ð] [z]
ص [sˁ] [s]
ض [dˁ] [z]
ط [tˁ] [t]
ظ [ðˁ] [z]
ع [ʕ] [ʔ]
ق [q] [ɣ]
و [w] [v]

c. アラビア語には無く、ペルシア語にのみある音を表す文字

以下の文字が追加されている。

ペルシア文字 音価
پ [p]
چ [tʃ]
ژ [ʒ]
گ [ɡ]

1-2. 発音

a. 母音

  • 短母音は[æ], [e], [o]の3種類。ペルシア文字はアブジャドに属するため、これらの母音は通常、綴りに現れない。(たまに綴りに現れる。単語による。)ただし、アラビア語と同様に補助記号で表すこともできる。 ラテン文字へはa, e, oで転写する。

  • 長母音は[ɒː], [iː], [uː]の3種類。長母音は綴りに現れ、それぞれ、 ا ی و で表記される。ラテン文字へはā, ī, ūで転写する。

  • 二重母音は[ej]と[ow]がある。それぞれ、 ی و で表記される。これらは長母音と同じ文字であらわされるため、単語によってどちらの読み方をするか覚える必要がある。ラテン文字へはei, ouで転写する。 ی و は、子音[j], [v]も表すため、音価が多義になっている。辛いね。)

b. 子音

まとめると下記の表の通り。

唇音 歯音 後部歯茎/硬口蓋音 軟口蓋音 声門音
破裂/破擦音 p b t d tʃ dʒ k ɡ ʔ
摩擦音 f v s z ʃ ʒ x ɣ h
鼻音 m n
はじき音 ɾ
接近音 j
側面接近音 l

[ɾ]は条件異音で[ɹ]になるみたいな情報がWikipediaで見えたけど、速習なので無視。多分、なんとかなると思う。

ラテン文字への転写で注意するべき箇所は以下。

音価 ラテン文字転写
[tʃ] ch
[dʒ] j
[ʃ] sh
[ʒ] zh
[x] kh
[ɣ] gh
[ʔ] '

c. アクセント

  • アクセントは原則、語末に強勢がある。

  • 名詞に接尾辞が付いている場合は、語幹の部分の最後にアクセントがあることが多い。(適宜解説する。)

  • 動詞に接頭辞が付くと、接頭辞にアクセントが移動することが多い。(適宜解説する。)

  • 本記事内では、アクセントがあることを強調するときに、その音節を太字にして表すことがある。

d. 黙音の ه

ه は、基本的に[h]を表すが、語末に置いてしばしば[e]を表す。(単語によるから、覚えるしかないっすね。)

پرنده (parande 鳥)


2. 名詞と代名詞

2-1. 名詞

a. 性・名詞クラス

名詞に性やクラスはない。代名詞ですら性の区別が失われている。一部の要素に人と物の区別が残ってる程度。(楽ちんだね!)

سیب (sīb リンゴ)
پسر (pesar 少年)

b. 単数・複数

名詞に単数・複数の区別がある。単数形が基本で、複数形は単数形に接尾辞 ها (-)を付けることで表す。アクセントは ها の方に移動する。人間を表す名詞の場合は、 ان (-ān)という接尾辞も使われる。(人間に ها を使っても問題はない。)

سیبها (sīb 複数のリンゴ)
پسران (pesarān 少年たち)
پسرها (pesar 少年たち)も可

ان は名詞の末尾の音によって、若干変化する。まとめると以下。(そういうのもある、くらいで覚えておく。)

  • 黙音の ه (-e)で終わる単語は、 ه گ に変化して、 گان (-gān)になる。

  • -ā, -ūで終わる単語は、間に ی が挟まって یان (-yān)になる。

c. 格変化

格変化は(多分)ない。(テキスト内に出てこなかっただけで、本当はあるのかもしれないけど…でも格の要素が無くても、ちゃんと文が表現できてたから、無いと思う。)文の中で名詞の役割を示すために前置詞が使われる。

d. 目的語の定/不定

格変化は無いと言ったが、直接目的語の場合、接尾辞を付けて定/不定を表してもよい(表さなくても良いみたい)。定なら را (-rā)不定なら ی (-ī)を名詞の後ろに接続する。

سیبی (sībī とあるリンゴ)
سیبرا (sībrā 特定のリンゴ)

厳密には、 را は直接目的語を表すわけではないらしい。そして、 را はペルシア語の中でも難解らしい。初級のテキストなので、そこまで深入りして書かれてないので、私には分からない。

2-2. 代名詞

a. 代名詞のリスト

以下の通り。

単数 複数
1人称 من (man) ما (mā)
2人称 تو (to) شما (shomā)
3人称 او (ū) انها (ānhā)

b. 2人称の丁寧形/3人称の敬称

2人称単数について、丁寧に言いたい時は複数形の شما (shomā)を使う。また、3人称についても、敬意を表すために ایشان (īshān)という語を使うこともある。(この辺りは、他のヨーロッパ語と考え方が同じで助かる。)

c. 格変化

多分変化しないので、上記の表を覚えるだけで済む。(楽!)


3. 形容詞と副詞

3-1. 形容詞

a. エザーフェ

形容詞は基本的に名詞の後ろに置く(後置修飾)。修飾される名詞は、修飾されていることを表すエザーフェという接尾辞(-e)を付ける。エザーフェにアクセントは付かない。また、短母音なので基本的には表記されない。なんてこったい。厳密には、名詞の語尾の音によって、緩衝音が挿入されたり、綴りが変化したりする。まとめると以下。

  • 子音終わりの単語は、上記の原則通り綴りは変わらず-eを付けるだけ。

  • -e, -īで終わる単語は、綴りは変わらないが、緩衝音が入って-yeになる。

  • -ā, -ūで終わる単語は、綴りの末尾に ی を追加したうえで、緩衝音が入って-yeになる。

    سیب سرخ (sībe sorkh 赤いリンゴ)
    پرنده اٙبی (parandeye ābī 青い鳥)
    ماهی سرخ (māye sorkh 赤い魚)
    پای بلند (ye boland 長い足)
    موی سیاه (ye siyāh 黒い髪)

b. 人称代名詞の後置

名詞にエザーフェを付けて人称代名詞を後置すると、「誰々の」という意味を表せる。

دست من (daste man 私の手)

c. 接尾辞形人称代名詞

接尾辞化した人称代名詞を名詞に付けることで、人称代名詞の後置と同様に、「誰々の」の意味を表すことができる。アクセントは付かない。また、接尾辞形の場合は意味が軽くなる。(人称代名詞を使う方は強調的。)

単数 複数
1人称 م (-am) مان (-emān)
2人称 ت (-at) تان (-etān)
3人称 ش (-ash) شان (-eshān)

دستم (dastam私の手)

3-2. 副詞

特記事項無し。

3-3. 比較級と最上級

a. 比較級

比較級は、形容詞/副詞に接尾辞 تر (-tar)を付けることで表す。アクセントは تر に移動する。比較の対象は前置詞 از (az)で表す。

این پسر از من بلندتر است

īn pesar az man bolandtar ast
この少年は私より背が高い。

b. 最上級

最上級は、形容詞/副詞に接尾辞 ترین (-tarīn)を付けることで表す。アクセントは ترین に移動する。最上級の形容詞は基本的に名詞に前置する。(スペイン語とかも、こんな感じで前置だったはず。主観的なのが後置で、客観的なのが前置と聞いたことがある。)

این بلندتین پسر است

īn bolandtarīn pesar ast
この少年は一番背が高い。

c. 例外的な比較級/最上級

خوب (khūb 良い)の比較級/最上級は、例外で بهتر (behtar)/ بهترین (behtarīn)となる。(補充法ですかね。この辺もヨーロッパ語のパターンに当てはまっている。)


4. 数詞

4-1. 数字

数字は(今、日本人が使ってる算用数字のご先祖様にあたる)別な字形を使うが、面倒なので割愛する。知りたい人はWikipediaを参照。ちなみに、大きい桁を左側に書く。ここは英語や日本語の横書きと同じ。(つまり、ペルシア文字の方向とは書く方向が逆走兄弟Let's and Goになる。)

4-2. 数詞

まず覚えなきゃならない数詞を羅列。(この辺、覚えるのが大変なので、斜め読みして先に進んでも良いと思います!

a. 1から10

数字 単語
1 یک (yek)
2 دو (do)
3 سه (se)
4 چهار (chahār)
5 پنج (panj)
6 شش (shesh)
7 هفت (haft)
8 هشت (hasht)
9 نه (noh)
10 ده (dah)

ちなみに0は صفر (sefr)

b. 11から19

数字 単語
11 یازده (yāzdah)
12 دوازده (davāzdah)
13 سیزده (sīzdah)
14 چهارده (chahārdah)
15 پانزده (pānzdah)
16 شانزده (shānzdah)
17 هفده (hevdah) (※)
18 هیجده (hijdah)
19 نوزده (nūzdah)

(※)発音に注意。多分、[f]が有声化して[v]になってるが、綴りが元のままになっていると思われる。

c. 20, 30...90

数字 単語
20 بیست (bīst)
30 سی (sī)
40 چهل (chehel)
50 پنجاه (panjāh)
60 شصت (shast)
70 هفتاد (haftād)
80 هشتاد (hashtād)
90 نود (navad)

20だけ形が違うのは、双数の名残だったりするのかな?かな?

d. 100, 200...900

数字 単語
100 صد (sad)
200 دویست (devīst)
300 سیصد (sīsad)
400 چهارصد (chahārsad)
500 پانصد (pānsad)
600 ششصد (sheshsad)
700 هفتصد (haftsad)
800 هشتصد (hashtsad)
900 نهصد (nohsad)

e. 1 000, 1 000 000

数字 単語
1 000 هزار (hezār)
1 000 000 ملیون (meliyūn)

お疲れ様でした。

f. 上記以外

組み合わせで表される。数を足す時は接続詞 و (o)で繋ぐ。(cf. 6-1のaの項 )以下に例示する。

数字 単語
21 بیست و یک (bīst-o-yek)
111 صد و یازده (sad-o-yāzdah)
121 صد و بیست و یک (sad-o-bīst-o-yek)
2 000 دو هزار (do hezār)
2 022 دو هزار و بیست و دو (do hezār-o-bīst-o-do)
10 000 ده هزار (dah hezār)
100 000 صد هزار (sad hezār)

4-3. 名詞との組み合わせ

a. 数詞の前置

数詞は名詞に前置する。名詞は複数形にしない。(ここは英語とかとは違うところ。日本人としては嬉しい。)

دو سیب (do sīb 2個のリンゴ)
چهار پسر (chahār pesar 4人の少年)

b. 助数詞

数詞と名詞の間に助数詞 تا (tā)を置いても良い。人を表す名詞の場合は نفر (nafar)でもよい。助数詞にはエザーフェは付けない。これ以外にも助数詞に相当するものは多数あるが、割愛。

دو تا سیب (do tā sīb 2個のリンゴ)
چهار نفر پسر (chahār nafar pesar 4人の少年)

4-4. 序数

a. 序数

基数詞に接尾辞 م (-om)を付けると序数詞になる。アクセントは م に移動する。例外として、3の助数詞は * سهم にはならず、 سوم (sevvom)になる。2の助数詞は綴りは規則通りだが発音が変わって دوم (dovvom)になる。

b. 序数詞の位置

助数詞は名詞に後置する。名詞にはエザーフェを付ける。

کتاب یکم (ketāb-e yekom 1番目の本)

4-5. 分数

a. 分数の作り方

基数詞 序数詞 の組み合わせで分数を表す。(他のヨーロッパ語と同じだね!)

دو سوم (do sevvom 3分の2)

4-6. その他の序数詞、分数

یکم (yekom)の代わりに、アラビア語由来の اول (avval)もよく使われる。1/2は نیم (nīm)と نصف (nesf)という語も使われ、1/4には ربع (rob)もある。(この辺も英語と同じだね。)


5. 動詞

5-1. 過去形

a. 不定形と過去語根

不定形は、 رفتن (raftan 行く)や بودن (būdan BE動詞)のように、末尾が ن (-an)になっている。不定形から ن を取った形が過去語根となる。

b. 人称変化

過去語根に人称語尾を付けると過去形になる。人称語尾にはアクセントを置かず、過去語根の末尾にアクセントがある。

単数 複数
1人称 م (-am) یم (-īm)
2人称 ی (-ī) ید (-īd)
3人称 (なし) ند (-and)
من به بازار رفتم

man be bāzār raftam.
私はバザールに行った。

動詞が主語の情報も含んでいるので、無くても良い。

به بازار رفتم

be bāzār raftam.
私はバザールに行った。

c. 否定

動詞に接頭辞 ن (na-)を付けると否定になる。アクセントは ن に移動する。

به بازار نرفتم

be bāzār naraftam.
私はバザールに行かなかった。

d. 半過去

動詞に接頭辞 می (-)を付けると半過去になる。アクセントは می に移動する。半過去は、過去の習慣等を表す。

به بازار میرفتم

be bāzār raftam.
私はバザールに(習慣としてよく)行っていた。

5-2. 現在形

a. 現在語根

現在形を作るときに使う現在語根は、不定形とあまり対応しておらず不規則であり、それぞれ覚えるしかない。かなしみ。例えば رفتن (raftan 行く)の現在語根は رو (rav)である。

b. 人称変化

現在語根に接頭辞 می (-)と下記の人称語尾を付けると、現在形になる。アクセントは می にある。

単数 複数
1人称 م (-am) یم (-īm)
2人称 ی (-ī) ید (-īd)
3人称 د (-ad) ند (-and)

3人称単数以外は過去形と同じ。

به بازار میروم

be bāzār ravam.
私はバザールに行く。

c. 否定形

動詞に接頭辞 ن (ne-)を付けると否定になる。アクセントは ن に移動する。

به بازار نمیروم

be bāzār nemīravam.
私はバザールに行かない。

d. بودن の変化形

بودن (būdan)は英語のBE動詞、いわゆるコピュラで使い方も大体同じ。現在語根は باش (bāsh)のため、現在形は下記のようになる。

単数 複数
1人称 میباشم (bāsham) میباشیم (bāshīm)
2人称 میباشی (bāshī) میباشید (bāshīd)
3人称 میباشد (bāshad) میباشند (bāshand)

この形は書き言葉であり、あまり使われず、通常は次の人称語尾形を使うのが普通。

e. 人称語尾形の بودن

単数 複数
1人称 ام (-am) ایم (-īm)
2人称 ای (-ī) اید (-īd)
3人称 است (ast) (※) اند (-and)

(※)3人称単数だけ接辞化せずに離して表記する。
接続する語の末尾が子音の場合は、 ا を綴り上取り除く。

متشکرم

motashakkeram.
私は感謝しています。
این کتاب است

īn ketāb ast.
これは本です。

(見れば分かる。例文としてしか登場しない文章シリーズ。)

f. 人称語尾形の بودن の否定形

単数 複数
1人称 نیستم (stam) نیستیم (stīm)
2人称 نیستی (stī) نیستید (stīd)
3人称 نیست (st) نیستند (stand)
این کتاب نیست

īn ketāb nīst.
これは本ではありません。

(見れば分かる。)

5-3. 過去分詞

a. 作り方

過去語根に ه (-e)を付けると過去分詞になる。

b. 現在完了

過去分詞に بودن (būdan)の現在形を続けると現在完了になる。5-2のdの項にも書いたが、基本的に人称語尾形の方を使う。

به بازار رفتهام

be bāzār rafteam.
私はバザールに行ってしまった。

c. 過去完了

過去分詞に بودن (būdan)の過去形を続けると過去完了になる。こっちは人称語尾化しない。(元からそう。)

به بازار رفته بودم

be bāzār rafte būdam.
私はバザールに行ってしまっていた。

d. 受動態

過去分詞に شدن (shodan なる)を続けると受動態になる。現在語根は شو (shav)

این کتابرا خوانده میشود

īn ketābrā khānde mīshavad.
その本は読まれている。

5-4. 命令形

a. 作り方

現在語根に接頭辞 ب (be-)を付けると命令形になる。アクセントは ب に移動する。

این کتابرا بخوان

īn ketābrā bekhān.
その本を読め。

رو (rav 「行く」の現在語根)等 -av で終わる動詞は発音が変化してbo- になり、かつ語末も -ou になる。

به بازار برو

be bāzār borou.
バザールに行け。

b. 丁寧な言い方と"let's"

命令を丁寧に言う場合は、2人称複数の人称語尾 ید (-īd)を付ける。また、「~しよう」のように英語の"let's"に相当する表現は、1人称複数の人称語尾 یم (-īm)を付ける。(この辺の考え方も、他のヨーロッパ語と同じで助かる。)

به بازار بروید

be bāzār beravīd.
バザールに行って下さい。
به بازار برویم

be bāzār beravīm.
バザールに行きましょう。

c. 禁止

禁止を表す場合は、 ب (be-)の代わりに ن (na-)

به بازار نرو

be bāzār narou.
バザールに行くな。

5-5. 助動詞が付く表現シリーズ

a. 未来形 (助動詞が変化して本動詞が不変)

خواستن (hāstan ~するつもり)に過去語根を続けることで、未来形になる。

به بازار خواهم رفت

be bāzār khāham raft.
私はバザールに行くでしょう。

b. 仮説法現在形

後述する仮定法現在や助動詞の類と組み合わせる際に使用する仮説法現在形がある。現在形の می ب (be-) に置き換えた形が仮説法現在形である。

c. 助動詞と本動詞がどちらも人称変化するシリーズ

  • 「~できる」は توانستن (tavānestan)に本動詞の仮説法現在形を続けて表す。どちらの動詞も人称変化する。 توانستن を現在形にすれば「~できる」の意味になり、過去形にすれば「~できた」の意味になる。

    میتوانم به بازار بروم

    mītavānam be bāzār beravam.
    私はバザールに行くことができる。
  • 「~したい」は خواستن (khāstan)にに本動詞の仮説法現在形を続けて表す。なお、 خواستن は未来形を作る時も使用した動詞。変化形が異なることで、未来か意思かを使い分けている。同じ動詞で表すのは英語と考え方が同じで助かる。

    میخواهم به بازار بروم

    mīkhāham be bāzār beravam.
    私はバザールに行きたい。

おそらくだが、「~できる」も「~したい」も、本動詞で表される状況を実行可能にするのも実行するのも主語で表される動作主が共通しているため、どちらも同じ人称変化をしていると思われる。

d. 助動詞が不変のシリーズ

  • 「~しなければならない」は باید (bāyad)に動詞の仮説法現在形を続ける。 باید は人称変化しない。

    باید به بازار بروم

    bāyad be bāzār beravam.
    私はバザールに行かなければならない。
  • 「おそらく~だろう」は شاید (shāyad アクセントに注意)に動詞の仮説法現在形を続ける。これも人称変化しない。

    شاید به بازار بروم

    shāyad be bāzār beravam.
    私はバザールに行くだろう。

その状況を強いているの非人称的で、実際に行為をするのはその人だから本動詞は人称変化するという構造になっていると思われる。
調べたところ、 باید بایستن (bāyestan)という動詞の3人称単数形らしい。もっぱら非人称で使うから人称変化が化石化していると思われる。参考

5-6. 仮定法

a. 仮定法現在

اگر (agar もし~ならば アクセントに注意)に仮説法現在形の動詞の文を続けることで条件節を表し、続けて帰結節を置くことで、「もし(条件節)ならば、(帰結節)である。」の文章になる。帰結節は現在形か未来形が来る。

اگر به بازار بروم سیبی میخرم

agar be bāzār beravam sībī mīkharam.
もし私がバザールに行くなら、リンゴを買う。

条件節に過去形が来ても良いらしい。使い方の感覚は日本語と同様で良いとテキストには書いてあった。

b. 仮定法過去

現実には起きなかった「もし~だったら、~だっただろうに。」という、いわゆる反実仮想を表す言い方が仮定法過去。条件節も帰結節も半過去形か過去完了形にすると、この用法になる。よくあるパターンですね。

اگر به بازار رفته باشم سیبی خریده باشم

agar be bāzār rafte bāsham sībī kharīde bāsham.
もし私がバザールに行ったなら、リンゴを買ったのに。

6. 接続詞

6-1. 並列の接続詞 و

و (va/o)は英語の"and"に相当する接続詞。使い方も同等。発音は基本は va だが、口語では o となる。(cf. 4-2のf項)

a. 名詞の並列

単に名詞と名詞の間に و を置いて繋げばよい。

گاو و گوسفند
gāv va gūsfand
牛と羊

b. 定/不定の را ی の位置

名詞が並列されている際に、2-1のd(目的語の定/不定)で紹介した را ی が続く場合、最後の名詞のみに را ی を付ける。

گاو و گوسفندی
gāv va gūsfandī
牛と羊

c. 文の並列

単に文と文の間に و を置いて繋げばよい。

به بازار رفتم و سیبی خریدم

be bāzār raftam va sībī kharīdam.
私はバザールに行き、リンゴを買った。

動詞が文末にあるため、文の切れ目がハッキリしており、接続詞が何を繋いでいるのか曖昧にならない。上手い。

6-2. 関係代名詞

a. 制限用法

先行詞に ی (-ī)を付け、接続詞 که (ke)を挟んで関係詞節を置く。

سیبی که در بازار خریدم در خانه خوردی

sībī ke dar bāzār kharīdam dar khāne khordī.
私がバザールで買ったリンゴをあなたは家で食べた。

b. 非制限用法

先行詞に ی (-ī)を付けない場合、非制限用法になる。

6-3. 複文

a. 「〜」と彼は言った

接続詞 که (ke)を使って埋め込む。

گفتی که او به بازار میرود

goftī ke ū be bāzār mīravad.
彼がバザールに行くとあなたは言った。

Top comments (2)

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A.I.

充実した記事ありがとうございます。
細かい話ですが、4-3の小見出しの大きさが揃っていない(?)気がします。あと、5-6の最後の行がたぶん区切り線とくっついて見出しと解釈されています。6-1cの転写にvaがないですが、これは発音されないのでしょうか?

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スライムさん

ご指摘ありがとうございます!
修正しました!