Migdal

Ziphineko / Ziphil 🐱🐰
Ziphineko / Ziphil 🐱🐰

投稿

インタースラヴィクの紹介と感想

こんにちは!

Здрав, всекто!

皆さんは「インタースラヴィク」という言語をご存知でしょうか? インタースラヴィクは、スラブ語を話す人々の間で意思疎通をするために整備された人工言語です。いわゆる「補助言語」に相当します。

Знајете ли вы језык под назвоју «меджусловјанскы»? Меджусловјанскы јест сконструованы језык разработаны дља комуникације меджу говоритељами словјанскых језыков. Он јест, иными словами, «помочны језык».

ご存知の通り、私は人工言語が好きです。実は、私はスラブ語も好きで、特にその発音が好きです。ということは、インタースラヴィクはまさに私向けだったということですね。

Как вы вси знајете, ја љубју сконструоване језыкы. Заправду ја такоже љубју словјанске језыкы, особливо јих звукы. Такто меджусловјанскы јест дља мене!

そんなわけで、私の感想を交えつつインタースラヴィクの紹介をしたいと思います。

Тако ја хчу прєдставити меджусловјанскы, со својими впечетљенјами.

文法

代表的な国際補助語であるエスペラントは、習得を簡単にするために不必要な語形変化を排除し、語形変化するとしても規則的な形にしています。インタースラヴィクも補助語なのでそうかというと…、部分的にはそうです。

インタースラヴィクが目指すものは、あくまでスラブ圏内での補助語です。もっと言うと、インタースラヴィクは、スラブ語話者でさえあればインタースラヴィクを一切勉強したことがなくてもほとんど理解できる形を目指しています。したがって、スラブ語話者にとってあまりに不自然もしくは人工的に聞こえてしまう改造は避けられています。

したがって、多くのスラブ語に共通して見られる次の特徴は、インタースラヴィクにもあります:

  • 3 種類の名詞性 (男性, 中性, 女性) + 男性名詞の活動体/非活動体の区別
  • 2 種類の数 (単数, 複数)
  • 7 種類の格 (主格, 生格, 与格, 対格, 造格, 所格, 呼格)
  • 3 種類の名詞の格変化パターン (О 変化, А 変化, И 変化)
  • 動詞の人称と数による活用
  • 動詞の完了体/不完了体の語彙レベルでの区別

そんなわけで、スラブ語を 1 つでも知っていれば習得は比較的簡単かも知れませんが、スラブ語を全く知らない状態で習得しようとするとそこそこ大変です。私はついでにロシア語をちょっとずつ勉強しています。

語彙

インタースラヴィクの語彙は、スラブ祖語や古代教会スラブ語の語根をベースに作られています。

どのスラブ語でも同じ語根から派生した単語が使われていれば、インタースラヴィクも当然その語根を使います。

例えば、スラブ語において「本」を意味する単語は、ロシア語 книга (kniga), ウクライナ語 книга (knyha), ポーランド語 książka, チェコ語 kniha, セルビア語 књига (knjiga), ブルガリア語 книга (kniga) と、全てスラブ祖語の kъňiga に由来しています。そこで、インタースラヴィクで「本」を表す単語も、この語根を採用して книга (kniga) となっています。

しかし、全ての単語についてスラブ圏内で同一の語根が使われるほど、スラブ語は単一ではありません。一部のスラブ語でだけ別の語根由来の単語が使われていることは非常によくあります。

そこで、インタースラヴィクでは、スラブ語を 6 個のグループに分け、1 つのグループが 1 票を投じる形で多数決を行い、採用する語根を決めています。

例えば、「言語」を意味する単語は、ウクライナ語では мова (mova) と言いますが、それ以外のグループではスラブ祖語の ęzykъ に由来する形を使います。そのため、インタースラヴィクで「言語」を意味する単語は、ęzykъ 由来の језык (jezyk) になっています。

しかし、それでもどうしても決められない場合があります。例えば、「単語」を意味する単語は、東西スラブ語では slovo 由来ですが、南スラブ語では rěčь 由来です。このような場合、インタースラヴィクはなんと両方を採用するという形を取っています。そのため、インタースラヴィクで「単語」を表す単語には、 слово (slovo) と рєч (rěč) の 2 つあります。意味は一緒です。

このような事情で、インタースラヴィクには同じ意味の単語が 2 つあることがまあまああります。したがって、インタースラヴィクを使う際は、どちらかを選ばないといけません。本人がスラブ語話者なら、自分の言語で使われている方を採用すれば良いでしょう。スラブ語話者でないなら、スラブ語を 1 つ選んでおいて、その言語で使われている方を選ぶという形が良いんじゃないかと思います。

これによって、ある種インタースラヴィクの「方言」が生まれているのがおもしろいですね。「単語」を意味する単語として рєч ではなく слово の方を使うと、ある意味それは「インタースラヴィク東方言」を使っているとも言えるわけです。

語源的綴りとフレーバー化

インタースラヴィクの語彙はスラブ祖語や古代教会スラブ語をベースに作られていると述べましたが、だからと言って、インタースラヴィクの音素もスラブ祖語や古代教会スラブ語の音素をそのまま使っているわけではありません。

スラブ語は硬子音と軟子音の対立が特徴的ですが、どの程度の対立を示すかは言語によります。例えば、/t/ vs /tʲ/ や /s/ vs /sʲ/ の対立は、東スラブ語を除いて消えています。そのため、インタースラヴィクはこれらの対立を採用していません。したがって、これらの対立を残す東スラブ語の話者にとっては少し不自然に聞こえることになります。

また、スラブ祖語の ę /ẽː/ は、ロシア語では я (ja) になり、ポーランド語では ią や ię になり、南スラブ語では e になったりと、言語によってまちまちな変化が起こりました。インタースラヴィクでは、これに対応する音として е /e/ を採用したので、南スラブ語話者以外にとってはかつての ę を含む単語が非直感的に聞こえてしまいます。

そこで、インタースラヴィクは「語源的綴り (Етимологичны алфабет)」と「フレーバー化 (Флаворизација)」というシステムを備えています。

「語源的綴り」とは、インタースラヴィクの単語の語源的情報をより残した綴りです。語源的綴りにはアクセント記号付きのラテン文字を用います。例えば、「神聖な」を意味する svety の e はもともと /ẽː/ だったものなので、語源的綴りではそれを示して svęty と綴ります。また、「骨」を表す kost の t はもともと軟子音 /tʲ/ だったので、語源的綴りでは kos とします。

これを用いると、インタースラヴィクの単語を特定のスラブ語っぽく変化させて表記することができます。これを「フレーバー化」と呼びます。

例えば、ロシア語では /ẽː/ は я に変化し、/tʲ/ は ть として残っているので、svety (svęty) と kost (kost́) をそれぞれ святы と кость と綴ると、ロシア語っぽさが増します。

一方で、ポーランド語では /ẽː/ は ię に変化したので、svety (svęty) の代わりに svięty と綴ると、ポーランド語っぽくなります。

このように、語源的綴りから一定の規則を施すことで、特定の言語や地域っぽさを出せるのがインタースラヴィクの一番おもしろい点だと思っています。

学んでみよう

以下の公式サイトで文法を一通り学べます。公式のオンライン辞典もあります。

インタースラヴィクの Discord チャンネルもあるので、参加してみるとおもしろいかもしれません。サーバー内はインタースラヴィクが公用語です (というかインタースラヴィク以外での投稿は特定のチャンネルを除いて非推奨です)。結構活発です。

インタースラヴィクで書かれたものが見てみたいという人には、『星の王子さま』のインタースラヴィク訳があります。インタースラヴィクの非公式 Wikipedia もあります。

ということで、インタースラヴィクはおすすめ人工言語です! ぜひ学んでみてください!

Top comments (0)