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ンソピハ!
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ニョンペルミュ!(ミニマル系人工言語レビュー第3回)

ンソピハですっ

今回は、ニョンペルミュを、独断と偏見でレビューしたいと思います~
(前回からだいぶ遅れてしまった……)

ニョンペルミュは、「一音節の形態素を300持ち、それらの組み合わせによって語彙を実用レベルまで拡張させる」1言語です。

前回のダミン語とは違って国産の人工言語で、FILUKISJAふぃるきしゃ氏によって制作されています。

njonpelmjuとはニョンペルミュで「少ない言葉」という意味です。

出典

この記事の内容は、公式サイトに基づいています。

発音

母音は、一般的な5母音の体系です。/u/の異音として[ɯ]が認められているのは日本的ですね。

子音は以下の通り:
Image description
(文法書の記述に基づいて筆者の作成した表。なお/ʔ/は、一部の間投詞や借用語の音写にのみ用いられる。)

硬音(普通の音)と軟音(口蓋化した音)の対立が全ての調音位置に見られること、有声無声の区別がないことが特徴的ですね。

表中では示しませんでしたが、tj, sj, hj, nj,は[t͡ɕ~t͡ʃ], [ɕ~ʃ], [ç], [ɲ]のような異音があるそうです。また、/f/は[ɸ]と発音してもかまいません。これも、日本産の人工言語でよく見られる設定です。

可能な音節数は300個だそうです。これは、「基礎形態素」と呼ばれる、ニョンペルミュの語根の数に一致します。無駄のない体系ですね。

アクセントは1音節名に固定されているらしいです。分かりやすいです。

文字

ニョンペルミュはラテン文字で表記できますが、ニョンペルミュ用に文字として、njonkesmjuニョンケスミュというのもあるようです。

人工言語でよく見る素性文字ですね。
句読点はラテン文字と同じものを使うそうです。

文法

孤立語で、語順はSVO AN、対格言語のようです。
文法は比較的オーソドックスでした。

面白かったのは、hasaハサ(~に乗って)という前置詞です。

  • la hasa pusatol sa tanlan.
  • ラ ハサ プサトル サ タンラン。
  • 私 に乗って 電車 行く 職場
  • 「電車で職場へ行く」

同じ交通手段でも、自動車や自転車など、自ら運転している場合はkiキ(~を使って)を使い、電車や飛行機など自ら運転しない場合はこのhasaを使うらしいです。面白い区別です。

語彙

ニョンペルミュは、300の語根からたくさんの複合語を形成します。
2024年5月24日現在は、1685語が辞書に掲載されているようです。
300もあるので、pjalピャル(感謝する)、tjulチュル(灰色)とか、比較的意味の狭い語根もありました。

語源の面白い単語は多かったですが、個々の語の意味範囲はそれほど面白くなかったです。単語の意味は基本的に狭く、比喩的な派生も乏しい。論理的な言語を目指すという観点から言うと、きっと成功しているのでしょう。でも、一つ一つの語に広がりがないので、面白みには欠けます。
とはいえ、面白い単語もたくさんありました。以下に紹介します:

・ljafonasリャフォナス(心からの)
lja(全ての)+fo(心)+nas(形容詞化)
「心からの」って、素敵な言葉ですね。

・ljankjulリャンキュル(砂糖)
ljan(喜ぶ)+kjul(粒)
この語に限らず、ニョンペルミュでは〈甘みは喜び〉というメタファーがあるようです。他にも、例えばケーキはljantosリャントス(喜ぶ台)と言います。……あと、塩にはljalリャルという語根があるのに、砂糖は複合語で表しているようです。こういった非対称性も面白いですね。

・ljesリェス(星、天体、年)
〈星〉から〈年〉の意に派生するのは、少し不思議です。どういう経緯があったのか気になります。

・ljesljeリェスリェ(夜中に描いた絵などが、そのときは上手く見えるのに、朝になると下手に見えること。またはそのような作品)
ljes(星)+lje(絵)
星は朝になると見えなくなってしまうことから、このような表現があるそうです。とても意味の限定的な語ですよね。作者のふぃるきしゃさんは絵も描かれるそうなので、そういう経験をよくされているのかもしれません。

・masmantasマスマンタス(脳筋)
masman(筋肉)+tas(頭)
これもまた、かなり限定的な意味を持つ語です。語呂がいいですね。マスマンタス。

……また、個人的に面白く感じた語源もいくつか取り上げたいと思います。

・kusluntjunクスルンチュン(警察官)
kus(生活する)+lun(留める)+tjun(人)
「生活を守る人」みたいなイメージですね。警察官に対する作者の印象が反映されていそうです。

・ljessjoリェッショ(北)
ljes(星)+sjo(中心)
「星の中心」から「北」になるのは、少し面白いです。北極星を指しているのでしょうか? それとも、地球の地軸の中心という意味でしょうか。……ちなみに、南のことはfilljessjo(非北)と言うそうです。北半球中心主義的な造語ですね。

・ljestjelリェスチェル(宇宙)
ljes(星)+tjel(世界)
すごくロマンチックな表現ではないですか? 私には到底思いつきません。

・mjontjelミョンチェル(平和)
mjon(仲良くする)+tjel(世界)
これもまた素敵な造語だと思いました。微笑ましい気持ちにさせてくれます。……この語とは直接関係ありませんが、mjon(仲良くする)が単純語になっているのもいいですよね。

・palsjenパルシェン(爆発する、破裂する)
pal(表面)+sjen(投げる)

・putosプトス(階段)
pu(並ぶ)+tos(台)

・sjasnjoシャスニョ(パン)
sjas(命)+njo(塊)
……これは、作者の宗教観もしくは思想が反映されているのかなと思ったのですが、どうなんでしょう? すぐに思想に結びつけるのは安易かもしれません。

・talosタロス(火山)
ta(動く)+los(山)
tjalos(火の山)ではないのが意外に感じました。

・tashalタスハル(傘)
tas(頭)+hal(空)
面白い表現です!

・tiskjulティスキュル(米、稲)
tis(太陽)+kjul(粒)
太陽のもとですくすくと育っている様子が思い浮かびますね……。ちなみに、tismol(太陽の球)と言うと、「みかん」の意になるそうです。

そのほか、辞書を読んでいて気になった点としては、卑語があります。この語彙数の割には充実していました。
辞書はDiscord配信しながら読んだんですけど、あまり人前で読みあげたくないような語が出てくるんですよね……。例文に「la folta~! KOTO mi lontun na mel mel~!(感動~! 後藤さん■■■でかいのね~!)」が出てくる辞書って、なんなんですか。
(訳文では危ない部分を伏せました。)

話者

ニョンペルミュのコミュニティなどは特になさそうです。

学習資料は、個人制作の人工言語としてはかなり充実しています。教科書も、なんと初級中級に分けられているんです!

レビューまとめ

さて、レビュっていきましょう。

かわいさ:清濁の区別のない発音は響きがかわいいと思います。しかし、辞書に卑語が出てくるのはあまりかわいくないです。語根がぴったり300なところも、かわいいというよりキレイな印象です。……とりあえず、現在暫定1位のアラズ語よりはかわいいと思います。かわいさランキング暫定1位です。

おもしろさ:語根の選定や文法・発音などは、比較的オーソドックスな印象を受けました。語源の面白い語は多かったです。おもしろさランキング暫定3位です。

シンプルさ:辞書に1685語も載っているので、そこまでミニマルな印象は受けませんでした。そもそもミニマル言語を目指して作られたわけではないのでしょう。シンプルさランキング暫定3位です。

使いやすさ:作者による作文などを見る限り、使いやすそうです。語彙数が多いのもプラスに働いていますね。しかし、ダミン語とは違って、会話での使用実績はあまりなさそうです。ダミン語に次いで、使いやすさランキング暫定2位です。

学びやすさ:文法資料の作り込みが素晴らしくて、非常に学びやすいと思います。アラズ語に次いで、学びやすさランキング暫定2位です。

Image description

得点は9点、総合ランキングでは暫定3位です!

次回予告

次回、なににしましょうかね……。

トキポナでもいいんですけど、トキポナの批評なら私以外の人でもできそうだからな……。tuki tikiとかタコ語とかBleepとかScramblangとかあたりをやりたいかな。え語もいいけど、あれは完全に冗談言語だし……。

そういえば、新しいtuki tikiの文法書まだ読んでなかったので、次回はたぶんtuki tikiをやると思います!

(「この言語をレビューしてほしい!」など要望を随時募集中~)


  1. https://sites.google.com/view/filukisja/%E3%83%9B%E3%83%BC%E3%83%A0/%E3%83%8B%E3%83%A7%E3%83%B3%E3%83%9A%E3%83%AB%E3%83%9F%E3%83%A5?authuser=0 

人気順のコメント(4)

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fruksha_bidima profile image
ふぃるきしゃ(FILUKISJA)

待ってました!レビューありがとうございます!音韻と文法・形態素はオーソドックスで、語源は面白いが、意味範囲が狭く面白みに欠ける……ごもっともなレビューだと思います。

さて、記事の中で挙げられていたいくつかの疑問に回答します。

◯ljes「星・年」について
以前作っていた言語で「地球」を「年」に派生させていた名残です。ニョンペルミュでは地球が基礎形態素ではないので、代わりにljes「星」を割り当てました。また、一年経つと星が天球上の元の位置に戻ることも関係しています。

◯ljessjo「北」について
語源のljesは北極星を表しています。南は特に目印になるものが思いつかなかったので……。

◯sjasnjo「パン」について
「パン=生活の糧」という西洋的な価値観を安易に取り入れてしまった結果です。思想とかは特に関係ありません。

◯talos「火山」について
tjalosでも良かったんですけど、言うほど火山の噴火って「火」に見えるか……?と疑問に思ったので「活動する山」ということでtalosにしました。

◯卑語について
私が割と下ネタ好きというのもあるんですけど、意味の如何に関わらず思いついたものを辞書登録する方針なので数が多くなっています。不快だったと思います。申し訳ないです。

辞書やサイトの文法解説など、じっくり読んでくださる方がいるというだけで本当に嬉しいです。discordで読み上げを行ったというのも驚きです。今後機会があったら、スペースか何かでお話しながら解説できたらと思います。今回はレビューありがとうございました!

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nsopikha profile image
ンソピハ!

お、作者様のご光臨!!!
コメントありがとうございます。
疑問に対する回答を頂けて、とてもすっきりしました!
(申し訳ないなんてそんな……。思いついたようにどんどん造語しているからこそ、語源の面白い語がたくさん生み出されているのだと思うので、良いと思いますよ~)
スペース、いいですね……。またなにか機会があれば、よろしくお願いします!

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epikijetesantakalu_k profile image
epikijetesantakalu Keta

このシリーズ失踪したかと思ったから嬉しい
そのうちTrue Oonlangもやってくれねぇかな〜
ミニマルだし

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nsopikha profile image
ンソピハ!

お、やろっかな~