私がテー語で造語をする際に、少しばかり自分なりのルール…というよりは傾向を決めている。今回出す具体例はテー語のものだが、テー語以外の言語を作るときでも似たようなことを意識している。
同音異義語はまだ意図的に作らない
同音異義語があり読解が困難になるのは大いに歓迎なのだが、なるべくいろいろな音節を言語に取り入れたいという願望があるため、同音異義語を意図的に作ることは今の段階ではほぼしない。しかし、テー語の一部の語はかつて作っていたバター語の語から祖語の形を再構してそこからまた変化させることで造語しているため、音変化の結果として意図せず同音異義語が発生することはある。同音異義語ができたらラッキー。
ただし、単音節形態素が多く孤立語的で声調をもつ自然言語に似せて作る以上、どうしても音素の分布に偏りが生じたり、同音異義語ができたりするのは避けられないことであるので、あくまでも「今の段階では」というだけであり、語数が増え、いろいろな音節を十分に採用できて以降は、音素の偏りを演出していくつもりである。理想は「理論上は可能だが対応する語が存在しない音節が少しある」、つまり音節表に穴があるという状態だ。
なお、テー語には昔の発音を反映した旧書法と、現在の発音を反映した新書法があるが、バター語由来の語は昔の発音=旧書法から、テー語独自の語は現在の発音=新書法から先に考えている。
よく使う語は異質な発音に
わたしは異質な言語音を聞きたいがために言語を作っているところがある。異質な言語音とはなにか…説明が難しいが、私の母語である日本語にはまったく見られないような特徴を持ち、日本語のカタカナにうまく落とし込めないような言語音のことである。たとえば曲線声調・段位声調や母音の[ø][y]、鼻母音、成節子音などである。これらの音はたくさん聞きたいしたくさん発音したいので、先に述べたバター語の既存の語から作った語でなければ、感動詞以外のよく使う語に意図的に組み込むようにしている。たとえば(単語の意味は1項目だけ抜粋):
・buêu[bø˧˩](人を表す類別詞)
・býh[byʔ˦˥]「あの、あれ(この場から見えるもの)」
・hn̄g[hŋ˥]「来る」
・lm̂[lm˧˩]「言う、話す」
・m̄[m˥]「~の(所有や所属などを表す)」
・ng[ŋ˧](関係節をつくる…しかしわたしは統語論に興味がなく関係節がなんなのかについてあまり理解していない)
・ngeung[ŋøŋ˧]「~しながら」
・nggè[ŋge˨]「私たち」
・nn̂g[nŋ˧˩]「これ、この」
・phuêu[pʰø˧˩]「~するな、~しないでください」
・se:[sɿ˧]「友達」
・shū:[ʃʮ˥]「何」
・sū:[sʮ˥]「~させる」
・tshû:[tsʰʮ˧˩](指示代名詞について複数を表す接頭辞)
・tsú:[tsʮ˦˥]「鳥」
・zê:[zɿ˧˩]「(状況や許可によって)~できる」
など。これらは多くがバター語に同根語がない独自の語である。少数はバター語と同根だが意図的に異質な響きになるように語を(語義が離れていても)持ってきたり、祖語の音形を調整したりしてできた語である。
何回か「発音しづらくしている」「発音しやすいのは喜ばしい」などと書いた。たしかにそれも目的の一つではあるが、発音しづらくすることはむしろ「わたしがやってきた自然言語はほぼ何かしら発音しにくい音を含んでいるのに、なぜ人工言語は発音しやすいものが多いのだろう?」といった、一種の疑問というか反骨精神というか…の表明であり、第一の目的は異質な響きにすることである。
自然言語の語彙から取ってこない
自然言語の語彙を採用している人工言語もあるが、わたしはそれはしない。漢語や東南アジア大陸部諸語をリスペクトし、似せているとはいえ、あくまでもアプリオリ(使い方合ってるっけ?)な言語だからである。アプリオリであってもなんとなく自然言語に元ネタが設定されている場合もある(のをどこかで見た)が、それも避けている。ただし偶然発音が似てしまうことはある。
だいたいこれくらいかと思われます。
ここまで読んでいただき誠にありがとうございました。
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