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文字は後づけ論・改

3 年前(2021 年)にほぼ書き上げてた記事が,なぜか下書き状態でマイページから出てきたので発掘して投稿します。


下のは,最近 2021 年当時に したツイート1です。そういえばわたし,昔はこの界隈での一人称「僕」にしてましたね。忘れてた。by 2024 年の Xirdim

「架空言語制作では、音声言語として確立させた後で、文字をつけるのがよいのではないか」と主張するものですが、必ずしもそうとも言えないと(2021 年の時点で既に)考えを修正したため、折角なのでその論について、ここでまとめ直してみたいと思います。

「文字は後づけ」論

音声・文字・モールス信号の例は、ゆる言語学ラジオさんのサピアの回を参考にしたものです。

水野さん: 「書き言葉」はじゃあ何なんだというと、「字」っていうのは、〈聴覚による体系の翻案〉だと。だから、〈耳で聞いたものを写しとったもの〉ですよね、と。〔中略〕まず「音」っていうのは〈記号〉ですよね。[「字」は]それの記号でしょ、って[サピアは]言っているんです。つまり、「字」っていうのは、〈記号の記号〉だと。
— 中略 —
水野さん: 「書き言葉」っていうのは〈記号の記号〉であって、〈記号〉あるいはその〈記号の中にある本質〉に迫るためには、書き言葉じゃないほうが良くない?みたいな。
— 中略 —
水野さん: さらにもう一個例を足すとですね、「モールス信号」っていうのがあります。〔中略〕サピアは「モールス信号は〈記号の記号のそのまた記号〉」と言っているんですね。
— 中略 —
水野さん: 関係図としては、まず「言語」があって、それを表現するために、「音」があります。これは〈記号〉です。その下に、「字」があって、これが〈記号の記号〉。で、「モールス信号」を使う人は、〈記号の記号の記号〉です。

言語 → 音 → 字 → モールス信号

堀元さん: 「じゃあ言語のこと考えたいから、モールス信号を一生懸命やろう!」って言ってるやついたら、「え、馬鹿じゃないの?」ってなるのと一緒っていうイメージですよね。
https://www.youtube.com/watch?v=purzZplAHpI&t=1912s

ここでは、言語を「研究」する際に「字」よりも「音」のほうがより本質に近いというサピアの主張が取り上げられています。

それを言語の「制作」にも応用できるのではないかという発想によるものが、先の私のツイートです。つまり、「言語」を最初から「文字」≒「書き言葉」で作るのではなく、「音声」≒「話し言葉」を経由したほうが良いのではないかということです。

必ずしもそうもいかない

しかし、実際の言語においては、「言語 → 話し言葉 → 書き言葉」の順にのみ影響を与えるとも限りません。

例えば日本語の「を」の発音は、江戸時代の時点で既に「お」との区別が完全に失われていました。「を」がワ行に属していることすら分かっていなかったのですが、国学の研究によって「を」= ワ行オ段 であると判明したのだそうです。現在、強調して「を」と言うとき /wo/ のように発音することがあるのは、「を」= ワ行オ段 という認識の影響、あるいはローマ字で "wo" であることからの演繹であると思われます。2

ですから、「書き言葉」、あるいは更にその記号である「ローマ字」が、「話し言葉」に影響したという事例も存在するということです。それでは、先のツイートのように、完全に「基となる音声言語が既に確立し」た状態で文字を作る、というのは不可能ではないか、ということになります。

「文字は後づけ」論・改

架空世界の人工言語の体系を作るときは,成立順を意識するといいと思います。

…急に普通になった(


  1. Twitter(現 X)での投稿は「ポスト」に名前が変わりましたが,当時は間違いなく「ツイート」です。 

  2. 【オなのかウォなのか】わ行の「を」の発音を解説 - はちあの研究室 in YouTube 

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