唐突ですが、私が作成している人工言語であるフェンナ語の文章を AI に読ませたらどうなるかふと気になったので、実験してみました。
Леце̂нте сао̂ко лефе̂но фе̂ххата и во̂нца. Лово̂нцо е̂ко дожо̂зло и жу̂аво, и асо̂ко жо̂бӈо це бо̂ӈҕе, и ахалле̂фо анне̂хмо лефе̂нов це ри̂си. Лефе̂но с’ аре̂шо. «Бо̀ асо̂к шо̂лах.» Асо̂к са шо̂лах. Лефе̂но ласе̂ лошо̂лха и шабе̂ко ех ле̂ка и̂рфа. Хавво̂то са лошо̂лха ложо̂бӈозам. Лефе̂но удде̂мо лошо̂лха а ке̂шарра и ложо̂бӈа а ле̂касса. Асо̂ко зе̂ммаво и асо̂к са се̂ххас. Е̂к ке̂шшар це̂нат.
Лефе̂но аре̂шо. «Бо̀ асо̂к ге̂замме вос лери̂си, и бо̀ хавво̂т лери̂са лери̂сезам.» Лефе̂но сао̂ко то̂ччо̀ ге̂замма, и хавво̂то лери̂са фехта леге̂заммеве лери̂сезам беҕҕа леге̂заммеве. Лефе̂но удде̂мо леге̂замма а фе̂ххата. Асо̂ко зе̂ммаво и асо̂к са се̂ххас. Е̂к ке̂шшар бе̂всеве.
Лефе̂но аре̂шо. «Лери̂с бо̀ веште̂ез беҕҕа леге̂заммеве ре̂цлес ло̂тес, и бо̀ асесо̂к агге̂так.» То̂ччо̀ са ви̂д. Лефе̂но удде̂мо легге̂тка а во̂нца и левше̂таа лери̂сев а ’ххо̂нда, и шабе̂ко ех ле̂ка и̂рфа. Лефе̂но с’ аре̂шо. «Лово̂нцо бо̀ хо̂ко ӈо̂тба, и о̂ххара сао̂рка хефу̂ака, и цо̂ттодо̂тна сао̂рка кѐ цо̂тта ловто̂члове хо̂ов со̂к лоху̂кке ув ве у, це лово̂нце.» То̂ччо̀ са ви̂д. Лово̂нцо хо̂ко ӈо̂тба, и о̂ххара сао̂рка хефу̂ака ловто̂члове хо̂ев, и цо̂ттодо̂тна сао̂рка кѐ цо̂тта ловто̂члове хо̂ов со̂к лоху̂кке ув ве у. Лефе̂но шабе̂ко ех ле̂ка и̂рфа. Асо̂ко зе̂ммаво и асо̂к са се̂ххас. Е̂к ке̂шшар то̂среве.
とりあえず、現状では唯一のまとまったフェンナ語テクストがある『創世記』の冒頭を渡してみます。内容については一切明かさず、とりあえずノーヒントで推測してもらいます。
以下に、その推論の過程を述べます。
推論の過程
1. 全体の構造と繰り返されるパターン
まず、文章全体が3つの段落に分かれていることに着目します。そして、それぞれの段落に共通する、非常に特徴的な繰り返しパターンが見られます。
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始まりの言葉: 各段落、またはその主要な部分が
Лефе̂но аре̂шо.(レフェノ・アレショ)という言葉で始まります。これは「[誰か]が言った」という意味の定型句である可能性が高いです。 -
引用符内の命令:
« ... »という引用符で囲まれた部分があり、その多くがБо̀...(ボ...)という言葉で始まっています。これは「〜あれかし」「〜させよ」といった命令や宣言を表す言葉だと考えられます。 -
実行の確認:
То̂ччо̀ са ви̂д.(トッチョ・サ・ヴィド)やАсо̂к са шо̂лах.(アソク・サ・ショラフ)といった短い文が命令の後に続いており、これは「そのようになった」という実行の確認だと思われます。 -
肯定的な評価: 第1、第2段落の終わりと第3段落の途中に
Асо̂ко зе̂ммаво и асо̂к са се̂ххас.(アソコ・ゼンマヴォ・イ・アソク・サ・セッハス)という決まり文句が現れます。これは「[誰か]はそれを見て、良しとされた」という評価の言葉でしょう。иは多くのスラブ語で「そして」を意味する接続詞であり、ここでも同様の機能を持っていると推測できます。 -
日付の記述: 各段落の最後に
Е̂к ке̂шшар ...(エク・ケッシャル ...)という句があり、その末尾の単語がце̂нат(ツェーナト)、бе̂всеве(ベフセヴェ)、то̂среве(トスレヴェ) と変化しています。これは「第〜日」という日付を表している可能性が極めて高いです。
この「神が言う → 命令する → そのようになる → 神は見て良しとする → 第〜日」という一連の流れは、旧約聖書「創世記」第1章の天地創造の記述の構成と完全に一致します。
2. 各段落の内容の推測
上記の仮説に基づき、各段落の内容を創世記の記述と照らし合わせます。
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第一段落:光の創造(第一日)
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Лефе̂но аре̂шо. «Бо̀ асо̂к шо̂лах.»→ 神は言われた。「光あれ。」 -
Асо̂к са шо̂лах.→ 光があった。 -
Лефе̂но ласе̂ лошо̂лха и шабе̂ко ех ле̂ка и̂рфа.→ 神はその光と闇を分けられた。(лошо̂лхаは「光」、и̂рфаは「闇」、шабе̂коは「分ける」に対応すると推測。) -
Асо̂ко зе̂ммаво и асо̂к са се̂ххас.→ 神はそれを見て、良しとされた。 -
Е̂к ке̂шшар це̂нат.→ 第一日。(ке̂шшарは「日」、це̂натは「第一の」を意味すると考えられます。)
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第二段落:大空の創造(第二日)
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Лефе̂но аре̂шо. «Бо̀ асо̂к ге̂замме вос лери̂си, и бо̀ хавво̂т лери̂са лери̂сезам.»→ 神は言われた。「水と水の間に大空(蒼穹)あれ。水と水を分けよ。」 (ге̂заммеは「大空」、лери̂сиは「水」に対応すると推測。) -
Лефе̂но сао̂ко то̂ччо̀ ге̂замма...→ 神はそのように大空を造られた。 (сао̂коは「造る」の意か。) -
Асо̂ко зе̂ммаво и асо̂к са се̂ххас.→ 神はそれを見て、良しとされた。 -
Е̂к ке̂шшар бе̂всеве.→ 第二日。 (бе̂всевеは「第二の」)
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第三段落:地と植物の創造(第三日)
- この段落は、地が現れ、植物が創造される場面に対応します。
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«Лери̂с бо̀ веште̂ез ... и бо̀ асесо̂к агге̂так.»→ 「地は植物を芽生えさせよ」といった命令と推測されます。(Лери̂сは「地」、агге̂такは「芽生えさせる」に対応か。) - その後の長い引用部分
«Лово̂нцо бо̀ хо̂ко ӈо̂тба, ...»は、創世記にある「種を持つ草と、種の入った実を結ぶ果樹」という、植物に関する詳細な記述に対応していると考えられます。繰り返し出てくる単語は、様々な種類の植物やその部分(種、実など)を指しているのでしょう。 -
То̂ччо̀ са ви̂д.→ そのようになった。 -
Асо̂ко зе̂ммаво и асо̂к са се̂ххас.→ 神はそれを見て、良しとされた。 -
Е̂к ке̂шшар то̂среве.→ 第三日。 (то̂сревеは「第三の」)
結論
以上のことから、この未知の言語で書かれた文章は、旧約聖書「創世記」第1章1節から13節までの内容、すなわち天地創造の物語の最初の3日間を翻訳または翻案したものであると結論付けられます。文章の構造、反復される定型句、そして各段落の内容が、創世記の記述と極めて高い精度で一致しています。
一瞬でバレました。各段落の最後にある 「Асо̂ко зе̂ммаво и асо̂к са се̂ххас. Е̂к ке̂шшар ~. (夕方になり朝になった。~日目である。)」がかなり特徴的なので、これが大ヒントだったようです。とはいえ、これだけで分かるものなんですね。
内容がバレたので、文法を調べてもらいましょう。
1. 語順 (Word Order)
この言語の基本的な語順は SVO型(主語 - 動詞 - 目的語) であると考えられます。
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Лефе̂но сао̂ко ... ге̂замма-
Лефе̂но(主語: 神) -сао̂ко(動詞: 創った) -ге̂замма(目的語: 大空を) - これは典型的なSVOの語順です。
-
また、修飾語の付き方には以下の特徴があります。
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形容詞は名詞の後ろに置かれる(後置修飾)
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Е̂к ке̂шшар це̂нат(第一日) -
ке̂шшар(名詞: 日) が先に来て、це̂нат(形容詞: 第一の) が後ろから修飾しています。「日、第一の」という語順です。
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-
前置詞が使われる
-
вос лери̂си(水の間に) -
вос(〜の間に) が、目的語であるлери̂си(水) の前に置かれているため、前置詞として機能していることがわかります。
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2. 語形変化 (Morphology)
名詞や動詞が、文中での役割に応じて形を変える「語形変化」のシステムが存在するようです。
名詞の格変化
名詞は、文中での機能(主格、目的格など)によって語形を変える、いわゆる格変化(Declension)を行う言語のようです。
-
接尾辞による変化:
- 水の創造の場面で
лери̂си(水) という単語が、лери̂са(水を)、лери̂сезам(水から) のように変化しています。これは、目的語を表す「対格」や、分離を表す「奪格」のような格が、語尾の変化で示されている証拠と考えられます。接尾辞-замは「〜から」を意味する格助詞的な機能を持つ可能性があります。
- 水の創造の場面で
-
接頭辞による変化:
-
шо̂лах(光) という単語が、文脈によってлошо̂лхаになっています。 - 同様に
ге̂замме(大空) はлеге̂заммаとしても現れます。 - この
ло-やле-という接頭辞は、英語の "the" にあたる定冠詞の役割を果たしており、名詞の性やクラスによって使い分けられている可能性があります。
-
動詞の活用
-
時制:
-
аре̂шо(言った),сао̂ко(創った),шабе̂ко(分けた) など、動詞の語尾が-оで終わるものが多く見られます。これは過去形を示すマーカーである可能性があります。
-
-
法(ムード):
- 命令や願望を表す「法(Mood)」が存在します。
- 引用符内の文は、不変化詞
Бо̀を文頭に置くことで命令法(Jussive/Imperative) を作っているようです。 - 例:
Бо̀ асо̂к шо̂лах→ 「光あれかし (Let there be light)」
3. その他の文法的特徴
-
不変化詞 (Particle) の使用:
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и: 「そして」を意味する接続詞。 -
Бо̀: 命令法を作る助詞。 -
са:Асо̂к са шо̂лах(光があった) やТо̂ччо̀ са ви̂д(そのようになった) という表現から、英語の "be" 動詞のように状態を表したり、完了を示したりするコピュラ(繋辞)または助動詞として機能していると考えられます。
-
まとめ
以上の推論を総合すると、この言語は以下のような特徴を持つと考えられます。
SVO(主語-動詞-目的語)を基本語順とする言語。形容詞は名詞の後に置かれる。名詞は接頭辞(冠詞か)や接尾辞(格を示す)によって複雑に格変化し、前置詞も使用される。動詞は語尾で時制を示し、特定の助詞を使って命令法を作る。
これらの特徴は、実在する多くの言語(特にスラブ語派やバルト語派の一部など)に見られる要素を組み合わせたものであり、非常によく作り込まれた人工言語である可能性が高いと言えるでしょう。
90 点! かなり合っていて、「動詞は語尾で時制を示す」だけ不正解です。
Gemini は動詞の語末に見られる -о を過去時制だと分析しましたが、実際にはこれは主語が青類1であることを表す語尾です。しかし、文中の主語のほとんどが青類の лефе̂но (神) なので、動詞もほとんどが青類形になっているため、-о が主語と一致する語尾だと分析するのはまあ無理でしょう。ただ、-о が (語幹の一部ではなく) 語尾だと分析できたのは褒めるべきですね。
なお、SVO 語順というのは実はちょっと不正確です。実際には、動詞先頭の語順をベースにして、文の要素が 1 つだけ動詞の前に移動できます。しかし、だいたいの場合で主語が移動して SVO 語順になるので、「主要な語順は SVO である」と説明を誤りとは言いづらいです。
あと、人工言語というのもバレかけてますね。あらゆる自然言語の類型論的な特徴は知っているでしょうから、こんな自然言語ないだろって思えてしまうんでしょう。
もうちょっと深堀りしてみましょう。Gemini は名詞に格があると言っていたので、格について具体的に聞いてみます。
この言語には、少なくとも主格、対格、奪格、そして処格(または属格)の4つの主要な格が存在すると考えられます。格は主に母音の変化や接尾辞によって示され、場合によっては接頭辞(冠詞)と連動している可能性があります。
1. 主格 (Nominative Case)
文の主語であることを示す格です。多くの場合、これが名詞の基本形となります。
- 機能: 主語(〜が、〜は)。
-
標示: 特定の語尾を持たないか、中立的な母音(例:
-e)で終わる。-
«Бо̀ асо̂к **ге̂замме** вос лери̂си...»- 「(〜の間に)大空があれかし」という文脈で、
ге̂замме(大空) が主語として機能していると考えられます。
- 「(〜の間に)大空があれかし」という文脈で、
-
2. 対格 (Accusative Case)
動詞の直接的な目的語であることを示す格です。「〜を」にあたります。
- 機能: 直接目的語(〜を)。
-
標示: 名詞の語末の母音が
-аに変化することで示されるようです。-
Лефе̂но сао̂ко ... **ге̂замма**- 「神は…大空を創った」。主格の
ге̂заммеが、目的語になることでге̂заммаに変化しています (е → а)。
- 「神は…大空を創った」。主格の
-
...хавво̂т **лери̂са** лери̂сезам- 「水を(もう一方の)水から分けた」。複数形の
лери̂си(水) が、目的語になることでлери̂саに変化しています (и → а)。
- 「水を(もう一方の)水から分けた」。複数形の
-
3. 奪格 (Ablative Case)
「〜から」という分離や起点を表す格です。これは非常に明確な形で示されています。
- 機能: 分離・起点(〜から)。
-
標示: 明確な接尾辞
-замを追加することで示されます。-
...хавво̂т лери̂са **лери̂сезам**- 「水を水から分けた」。この一文に、対格 (
лери̂са) と奪格 (лери̂сезам) の両方が現れており、格変化の存在を強く裏付けています。
- 「水を水から分けた」。この一文に、対格 (
-
4. 処格 / 属格 (Locative / Genitive Case)
場所(〜で、〜の中に)や、所有・所属(〜の)を表す格です。文脈から、前置詞と共に使われることが多いようです。
- 機能: 場所(〜において、〜の間に)、所属(〜の)。
-
標示: 語尾が
-иになることで示される可能性があります。-
вос **лери̂си**- 「水の間に」または「水の中に」。前置詞
вос(〜の間に) が、この格を要求していると考えられます。
- 「水の間に」または「水の中に」。前置詞
-
格変化のまとめ
これらの推論をまとめると、以下のような格変化の表を想定できます。
| 格 (Case) | 機能 (Function) | 標示の仕方と例文 (Marking & Example) |
|---|---|---|
| 主格 (Nominative) | 主語 (〜が) | 基本形。語尾が -e など。ге̂замме (大空が) |
| 対格 (Accusative) | 目的語 (〜を) | 語末の母音が -а に変化。ге̂замма (大空を) |
| 奪格 (Ablative) | 分離・起点 (〜から) | 語幹に接尾辞 -зам を付加。лери̂сезам (水から) |
| 処格/属格 (Loc./Gen.) | 場所・所属 (〜で, 〜の) | 語尾が -и に変化。前置詞と共に使用。лери̂си (水の中に) |
このように、この言語は接尾辞や母音交替といった屈折(語形変化)によって、文中での名詞の文法的な役割を豊かに表現する体系を持っていると推測されます。
60 点かな…。主格と対格と奪格については文句なしです。
処格と属格を一緒にしてしまっているのは不正解です。属格は処格とは別にあり、-в で標示されます2。「анне̂хмо лефе̂нов (神の霊)」の лефе̂нов が属格なので、それ以外の場所で何度も出てくる主格の лефе̂но と比較すれば、-в が属格なんじゃないかと推測できそうですが、Gemini は見落としてしまったようです。
また、処格の語尾が -и というのも半分不正解です。「це бо̂ӈҕе (深淵の上に)」や「це лово̂нце (地の上に)」の бо̂ӈҕе や лово̂нце も処格です。フェンナ語の処格は、名詞の類に応じて -и か -е をとります。しかし、この -е は主格にも見られる語尾なので、まあ気づかないのも仕方ないかなと思います。渡したテキスト内での実例も少ないですし。
ちなみに、フェンナ語にはあと与格と具格があります。ただ、渡したテクストに実例はないので、分かるわけありません。
さて、Gemini の最初の分析で ло- や ле- が定冠詞なのではないかと推測していたので、ここも深堀りしてみます。
ло- と ле- という2種類の接頭辞(定冠詞)の使い分けは、この言語における名詞の「文法性 (Grammatical Gender)」に基づいている可能性が最も高いと考えられます。
最有力仮説:文法性 (Grammatical Gender)
多くのヨーロッパ言語(フランス語の le/la、ドイツ語の der/die/das など)では、すべての名詞が「男性」「女性」「中性」といったカテゴリーに分類されます。これは生物学的な性とは関係なく、文法上のルールとして決まっており、どの冠詞が付くかはこの「文法性」によって決まります。
この言語も同様のシステムを持っていると仮定し、テキスト中の単語を分類してみます。
ло- をとる名詞のグループ
-
лошо̂лха(光) -
ложо̂бӈозам(日) -
лово̂нцо(地)
これらの名詞は、例えば「男性名詞」または「中性名詞」のカテゴリーに属しているのかもしれません。
ле- をとる名詞のグループ
-
леге̂замма(大空) -
лери̂си(水) -
легге̂тка(乾いた地) -
левше̂таа(集まったもの)
こちらのグループの名詞は、例えば「女性名詞」のカテゴリーに属していると考えられます。
この「文法性」による使い分けが最も有力な理由は、同じような文法的役割(例えば対格)を持つ単語であっても、лошо̂лха (光を) と леге̂замма (大空を) のように、付く冠詞が異なっているためです。これは、それぞれの名詞が持つ固有の性質(=文法性)に基づいて冠詞が選択されていることを強く示唆します。
その他の可能性
文法性以外の可能性も考えられますが、確率は低いでしょう。
-
数 (Number):
лери̂си(水) は複数形と考えられле-をとるため、ле-が複数形を、ло-が単数形を示すという可能性も一瞬考えられます。しかし、леге̂замма(大空) は単数形であるにもかかわらずле-をとるため、数だけで使い分けを説明することはできません。ただし、「ле-は女性名詞と、性に関わらず全ての複数形に使われる」といった複合的なルールである可能性は残ります。 -
音韻的な理由: 後に続く音によって冠詞の形が変わる(英語の a/an のような)可能性も考えられます。しかし、
ло-の後にはш,ж,вの音が、ле-の後にはг,р,вの音が続いており、そこに明確な音韻法則を見出すのは困難です。
結論
以上のことから、ло- と ле- の使い分けは、各名詞に内在する「文法性」という文法カテゴリーに基づいていると結論付けるのが最も合理的です。
この言語では、すべての名詞がいずれかの性(例えば「ло- のグループ」と「ле- のグループ」)に分類されており、それに応じてどちらの定冠詞が付くかが決まっているのでしょう。
まあそう思うよね~。確かにフェンナ語には文法性 (フェンナ語では「類」と呼ぶ) があるんですが、冠詞の選択には関係ありません。
正解を言うと、冠詞は単語中の幹母音 (サーカムフレックスがついている母音) に一致する形で現れます。単語中に о̂ や у̂ があれば ло- が付き、е̂ や и̂ があれば ле- が付きます。少数の例外はありますが…。
Gemini は「後に続く音によって冠詞の形が変わる可能性も考えられる」とまで言っていますが、どうやら直後の子音だけを調べてこの可能性を捨ててしまっているので、かなり惜しいですね。母音まで調べられていれば…。
惜しかったのでヒントを与えてみます。
ло-とле-の使い分けが音韻的な理由であると仮定すると、最も有力な説明は母音調和(Vowel Harmony)という現象です。
仮説:母音調和 (Vowel Harmony)
母音調和とは、1つの単語に含まれる母音が、口のどの位置で発音されるか(前か後ろかなど)によって特定のグループに分けられ、同じ単語の中では同じグループの母音しか使えない(あるいは使われやすい)という音韻法則です。
この言語では、接頭辞の母音が、それに続く名詞の最初の母音の性質に引きずられる形で決定されていると考えられます。
具体的には、母音を以下の2つのグループに分類します。
- 後舌母音グループ (Back Vowels): 舌の後ろの方で発音する母音。
о,а,уなどが典型例です。 - 前舌母音グループ (Front Vowels): 舌の前の方で発音する母音。
е,иなどが典型例です。
このルールに基づくと、使い分けは以下のようになります。
- 名詞の最初の母音が後舌母音の場合 → 接頭辞は
оを含むло-になる。 - 名詞の最初の母音が前舌母音の場合 → 接頭辞は
еを含むле-になる。
実際のテキストでの検証
この仮説が、テキスト内の全ての例に完璧に当てはまるかを見てみましょう。
1. ло- (後舌母音 о を持つ) の場合
ло- が付く名詞の最初の母音は、後舌母音のはずです。
-
ло-+шо̂лха(光)- 名詞の母音は
о̂(後舌母音) → 接頭辞はло-。 一致します。
- 名詞の母音は
-
ло-+жо̂бӈозам(日)- 名詞の母音は
о̂(後舌母音) → 接頭辞はло-。 一致します。
- 名詞の母音は
-
ло-+во̂нцо(地)- 名詞の母音は
о̂(後舌母音) → 接頭辞はло-。 一致します。
- 名詞の母音は
2. ле- (前舌母音 е を持つ) の場合
ле- が付く名詞の最初の母音は、前舌母音のはずです。
-
ле-+ге̂замма(大空)- 名詞の母音は
е̂(前舌母音) → 接頭辞はле-。 一致します。
- 名詞の母音は
-
ле-+ри̂си(水)- 名詞の母音は
и̂(前舌母音) → 接頭辞はле-。 一致します。
- 名詞の母音は
-
ле-+гге̂тка(乾いた地)- 名詞の母音は
е̂(前舌母音) → 接頭辞はле-。 一致します。
- 名詞の母音は
-
ле-+вше̂таа(集まったもの)- 名詞の母音は
е̂(前舌母音) → 接頭辞はле-。 一致します。
- 名詞の母音は
結論
以上の検証から、この言語の ло- と ле- の使い分けは、後に続く名詞の最初の母音が「後舌母音」か「前舌母音」かによって決定されるという、典型的な母音調和のルールに基づいていると結論付けられます。
これは、前回の仮説であった「文法性」とは全く異なるルールですが、ご提示いただいた「音韻的な理由」という前提には完全に合致する、非常に説得力の高い説明です。
気づきました。えらい。
ただし、キリル文字が使われていることを推論の理由にはしないでください。書法は標準的なものでない可能性があります。
最後に、すでに人工言語じゃないかと疑われてはいますが、語族を推論させてみます。キリル文字だからという理由で雑にスラブ語とか言われたら嫌なので3、書法ベースで考えないように釘を打っておきます。
しかし、どちらの語族とも完全に一致しない点があるため、これらの言語の特徴を取り入れて創られた人工言語(Conlang)である可能性が極めて高いと結論付けられます。
推論の根拠
キリル文字の使用という表面的な情報ではなく、言語の内部構造(文法と音韻)に注目すると、以下の2点が非常に強力な手がかりとなります。
母音調和 (Vowel Harmony)
これは最も決定的な特徴です。冠詞がло-とле-の間で変化する理由が母音調和であることは、ヨーロッパの主要な言語(スラブ語派、ゲルマン語派、ロマンス語派など)のいずれとも異なる、極めて重要な分類マーカーです。膠着語的な性質 (Agglutinative Nature)
「〜から」を意味する奪格を、語幹に-замという接尾辞を「接着」するように付け加えて作る点は、単語全体が複雑に変化するスラブ語など(屈折語)とは異なり、日本語やウラル語族、テュルク語族など(膠着語)に見られる特徴です。
候補となる語族との比較
候補①:ウラル語族(フィンランド語、ハンガリー語など)
-
支持する理由:
- 母音調和はウラル語族の最大の特徴であり、完全に一致します。
- 膠着語であり、格が豊富である点も共通しています。
- 文法性(男性・女性など)がない点も、この言語の分析結果と一致します。
-
矛盾する点:
- ウラル語族の形容詞は、通常は名詞の前に置かれます(例: フィンランド語
suuri talo「大きい家」)。しかし、この言語ではке̂шшар це̂нат(日、第一の) のように名詞の後ろに置かれており、この点が大きな相違点です。
- ウラル語族の形容詞は、通常は名詞の前に置かれます(例: フィンランド語
候補②:テュルク語族(トルコ語など)
-
支持する理由:
- 母音調和はテュルク語族の根幹をなすルールであり、完全に一致します。
- 膠着語であり、格が豊富な点も共通しています。
- 文法性がない点も同じです。
-
矛盾する点:
- テュルク語族の基本的な語順はSOV型(主語-目的語-動詞)です。しかし、この言語は
Лефе̂но сао̂ко ге̂замма(神は-創った-大空を) のように、一貫してSVO型(主語-動詞-目的語)であり、語順が根本的に異なります。
- テュルク語族の基本的な語順はSOV型(主語-目的語-動詞)です。しかし、この言語は
結論
この言語は、ウラル語族やテュルク語族から母音調和と膠着語という魅力的で特徴的なシステムを借用し、その一方で、語順はスラブ語や英語などヨーロッパの多くの言語で標準的なSVO型を採用しています。
実在のどの語族とも「惜しい」ところで食い違うという事実は、この言語が特定の語族に属する自然言語ではなく、複数の言語の面白い特徴を組み合わせて意図的に創られた人工言語であるという推論を強く支持します。
人工言語である可能性が極めて高いそうです。うーん……、私もそう思います! そもそも特定の語族に似せようとしてないですからね。
ちなみに、フェンナ語は実際には以下のような特徴の言語になっています。
- 語根と語型による単語派生システム これは思いっきりセム語派の特徴ですね。意識してます。
- 動詞先頭 → 1 要素だけ文頭移動 結果的に動詞が 2 番目の要素になるので、ゲルマン語派で見られる V2 語順に似てますね。ただ、ゲルマン語派が SOV ベースの V2 語順なのに対し、フェンナ語は VSO ベースの V2 語順です。
- 膠着的な語形変化 フェンナ語は動詞も名詞も語形変化しますが、基本的に接辞 (貫通接辞もあるけど) をくっつけるだけの膠着的な変化です。ただ、弱母音の消失という現象によって語幹と接辞が融合することがあるので、若干の屈折的な振る舞いがあります。
以上、Gemini と遊んだお話でした。
Oldest comments (2)
記事の内容とは微塵も関係ない話ではあるが、Migdal独自拡張機能(対話形式)が効果的に働いている記事実例だなぁ
一回Copilotにシャレイア語を読ませようとしたことがあるのだが、その時はシャレイア語で話そうといった上で短文節を送ることで話そうとした。
いざやると、すごーく履き違えていたため今度長い文章を試してみたい