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エスペラント祖語の文法

エスペラント祖語は多岐にわたるエスペラント諸語から祖先言語を想定して復元しようという試みである

英語版
エスペラント版

目次

*音韻論
*子音
*母音
*アクセント
*文法
*格変化
*代名詞
*冠詞
*定冠詞
*不定冠詞
*中性不定冠詞(部分冠詞)
*名詞と形容詞
*中性名詞
*曲用
*第一変化
*第二変化
*中性変化
*動詞
*現在時制
*第一活用
*第二活用
*過去時制
*不規則動詞
*未来時制
*意思法
*条件法
*完了相
*進行相
*持続相
*動詞の強調
*副詞
*参考言語
*エスペラント諸語への展開
*語尾ǝ>aの変化
*学者語(偽ラテン語)による影響

音韻論

子音

両唇音 歯茎音 後部歯茎音 そり舌音 硬口蓋音 軟口蓋音 両唇軟口蓋音 声門音
鼻音 m n
破裂音 p b t d ɖ? k g kʷ ɡʷ
破擦音 t͡ʃ d͡ʒ ɖ͡ʐ?
摩擦音 f s(z) x? h
ふるえ音 r
接近音 j w
側面音 l
  • ラテン語の語末のtrがそり舌音(ɖかɖ͡ʐのいずれか)に変化している。以下では便宜上zrと表記する。
  • ギリシャ語のχに由来する発音はkhまたはx
  • 前舌母音に先行するk及びgは口蓋化しt͡ʃ d͡ʒとなる。以下では便宜上c及びgxと表記する

母音

前舌 中舌 後舌
i y u
半狭 e ø o
中央 ə
半広 æ
a
  • ラテン語の語末の狭〜半狭の短母音は弱化してəとなっている
  • 二重母音ae、oeは変化してæː、øːとなっている(語末の場合は短母音化)
  • それぞれ短母音と長母音がある

アクセント

アクセントは強弱アクセントと高低アクセントを併用する。
強弱アクセントは自由アクセントであり、単語が活用や曲用をしても位置が変わらない
高低アクセントは固定アクセントで単語が変化した時に位置が変わることがある

文法

基本はSOVだが、ラテン語同様語順は自由である。
強調する句を文頭に持ってくることが多い。
話題は話題を表す専用の文法形式が存在する。

格変化

代名詞以外は基本の格変化は主格と斜格のみである。
ここに後置された前置詞などが加わって格を表す。

主格は主語または呼びかけなどに使われる。
斜格は直接目的語として使われるほか、具格、分詞や不定詞、動名詞の意味上の主語を表す。

与格は間接目的語と着点を表す。
分格は「……の一部分」を表し、否定文の時の目的語、分詞や不定詞、動名詞の意味上の目的語を表す。

また、代名詞と名詞には定冠詞や前置詞が後続し縮約される時に使われる「弱形」が存在する。所有の意味を表す時には奪格を用いる。

代名詞

一人称と二人称は基層言語の影響で双数形が存在する

一人称

単数 双数 複数
主格 ego mej nos
与格 mihǝj mis ni
斜格 me mes nose
弱形 me- mis- nostr-

二人称

単数 双数 複数
主格 tu tuj wos
与格 ti tis wi
斜格 te tes wose
弱形 tue- tes- wostr-

冠詞

定冠詞はその名詞が話題である時には前置、そうでない時には後置される。
後置される時は特に強調する場合を除いて縮約され、定語尾となる。

定冠詞は中性名詞(後述)には付けることができない。中性名詞はそのままで定冠詞が付いているのと同じ意味を表し、不定の場合に分格を用いる。

定冠詞

単数 複数
主格 ullǝ ullj
斜格 ullǝm ullǝs

前置詞と結合した形
adは単数で斜格、複数で主格を取る

単数 複数 由来
与格 alm alj 前置詞a(ad)+斜格(複数は主格)
奪格 ellu ellj 前置詞e(eks)+主格
分格 ulunde(ulne) uljde(uljne) 主格+前置詞unde(ne)
内格 inul inulj 前置詞in+主格
入格 inlum inlos 前置詞in+斜格

不定冠詞

不定冠詞は話題化された時にのみ使われる。

単数 複数
主格 unnǝ unnǝj
斜格 unnǝm unnǝs

中性不定冠詞

(部分冠詞のようなもの)

単数 複数
主格 neul neulj
斜格 neul neulj

名詞と形容詞

名詞と形容詞に文法的な違いはない。
名詞はそのままで形容詞として使うことができ、形容詞はそのまま名詞として使うことができる。形容詞はそのままの形では中性名詞となり概念を表す。定冠詞や不定冠詞が付いた場合は〜なものという実体を表す。

また、形容詞として特定のものを修飾する場合は中性名詞のときは奪格、そうでない時には与格を用いる。内格、入格も形容詞的用法を持ち、〜の中の、〜の中へのといった意味を表す。

中性名詞

中性名詞は概念、抽象名詞、物質名詞、数えられないもの、外来語、無生物名詞として扱う形容詞などが該当する。
主格と斜格が同型で、複数では女性単数と同じ扱いになる。

曲用

名詞の曲用はラテン語よりも簡略化している。
第一変化、第二変化、中性変化の3つである。

第一変化

第一変化は有生物かそうでないかで変化が異なる。
ラテン語の第一変化と女性接辞-issaの混合した形である。
斜格は後述の中性変化複数形分格に影響されている。
有生物の場合は主に女性を表す言葉に使われる。
弱形の形が主格と斜格で異なる。

第一変化有生物

単数 複数
主格 -a
主格弱形 -a
斜格 -issne -as
斜格弱形 -issne -a

定語尾

単数 複数
主格 -awl -awlj
斜格 -issnewlm -awls

第一変化無生物

単数 複数
主格 -ane -as
斜格 -ane -as
弱形 -ane -ane

定語尾

単数 複数
主格 -anewl -anewlj
斜格 -anewlm -anewls

第二変化

第二変化はラテン語の第二変化、第三変化に由来する。

単数 複数
主格 -əs
斜格 -əm -əs
弱形

この「Ø」は無語尾を表す。

定語尾

単数 複数
主格 -ul -ulj
斜格 -ulm -uls

中性変化

中性名詞がこの変化になる

単数 複数
主格 -əm -a
斜格 -əm -a
弱形 -a

不定の時は斜格が分格となる

単数 複数
-əne -ane

動詞

動詞の時制は過去、現在、未来である。
相は完了相、進行相、持続相、将然相があり、受動態と能動態の区別がある。
現在時制と未来時制、過去と現在完了を区別しない。区別する必要がある場合には完了相や進行相などを用いて迂言的に表す。(後述)
法は直説法、接続法、意思法、条件法がある。命令は接続法を使う。
不定詞は能動不定詞と受動不定詞が存在する。
未来能動不定詞と未来受動分詞は現在能動不定詞+iːrǝ(行く)の活用形で表される。
未来受動不定詞と未来能動分詞は現在能動不定詞+コピュラessǝの活用形で表される。(通常縮約される)

動詞の活用

動詞の活用は第一活用と第二活用がある

現在時制

第一活用

ラテン語の第一活用に由来する。
現在能動不定詞-Ø
現在受動不定詞-arə
動名詞-ǝm
未来能動不定詞-Ø em ad(-em ad)
未来受動不定詞-Ø forǝ(-orǝ)
現在時制-a-
接続法-ə-
未来能動分詞-Ø fuːzrǝs(-uːzrǝs)
未来受動分詞-Ø endǝs (-endǝs)
現在分詞-antəs

現在 直説法能動態 直説法受動態 接続法能動態 接続法受動態
一人称単数 -ər -əm -ər
二人称単数 -as -arjs -əs -ərjs
三人称単数 -at -atər -ət -ətər
一人称双数 -amə -amər -əmə -əmər
二人称双数 -aməns -amən -əməns -əmən
一人称複数 -aməs -arjməs -əməs -ərjməs
二人称複数 -atəs -arjtəs -ətəs -ərjtəs
三人称複数 -ant -arjnt -ənt -ərjnt
第二活用

ラテン語の第二〜第四活用に由来する。
現在能動不定詞-Ø
現在受動不定詞-ərə
動名詞-ǝm
未来能動不定詞-Ø em ad(-em ad)
未来受動不定詞-Ø forǝ(-orǝ)
現在時制-ə-
接続法-a-
未来能動分詞-Ø fuːzrǝs(-uːzrǝs)
未来受動分詞-Ø endǝs(-endǝs)
現在分詞-əntəs

現在 直説法能動態 直説法受動態 接続法能動態 接続法受動態
一人称単数 -ər -am -ar
二人称単数 -əs -ərjs -as -arjs
三人称単数 -ət -ətər -at -atər
一人称双数 -əmə -əmər -amə -amər
二人称双数 -əməns -əmən -aməns -amən
一人称複数 -əməs -ərjməs -aməs -arjməs
二人称複数 -ətəs -ərjtəs -atəs -arjtəs
三人称複数 -ənt -ərjnt -ant -arjnt

過去時制

過去時制は活用形関係なく下記の活用となる。過去時制に接続法は無い。
(ラテン語の第一変化は-awi->-oj->-əj-、第二変化は-ui->-uj->-əj-、第三変化は-i->-ij->-əj-、第四変化は-iwi->-uj->-əj-と変化、)

受動不定詞-əjssə
能動不定詞-əj
過去時制-əj-
過去分詞-ǝjtǝs

過去 直説法能動態 直説法受動態
一人称単数 -əj -əjr
二人称単数 -əjs -əjrjs
三人称単数 -əjt -əjtər
一人称双数 -əjmə -əjmər
二人称双数 -əjməns -əjmən
一人称複数 -əjməs -əjrjməs
二人称複数 -əjtəs -əjrjtəs
三人称複数 -əjnt -əjrjnt

不規則動詞

不規則動詞はessǝ(〜である)とiːrǝ(行く)の二種類のみ

essǝの活用

現在分詞を欠く。

現在不定詞essǝ(ess-)
未来不定詞forǝ
過去不定詞fuǝ
未来分詞fuːzrǝ(ラテン語のfuturusに由来する)
過去分詞fuǝs

現在 直説法能動態
一人称単数 sum
二人称単数 es
三人称単数 est
一人称双数 sumə
二人称双数 esəməns
一人称複数 suməs
二人称複数 estəs
三人称複数 sunt
過去 直説法能動態
一人称単数 seram
二人称単数 eras
三人称単数 erat
一人称双数 sumə
二人称双数 erəməns
一人称複数 eraməs
二人称複数 eratəs
三人称複数 erant
iːrǝの活用

未来の能動不定詞は動名詞+adで表される。

能動不定法iːrə
受動不定詞iːrərə
動名詞em
未来能動不定詞em ad
未来受動不定詞iːrə forǝ(iːrorǝ)
未来能動分詞ezrǝs
未来受動分詞endǝs
現在分詞entəs
過去分詞etəs
「行く」は自動詞であるが、同時に「~をし続ける」という他動詞の用法もあるため、「行く」という自動詞の意味に限定するための受動態がある。また、この受動態は「〜されつづける」という意味も表せる。

現在 直説法能動態 直説法受動態 接続法能動態 接続法受動態
一人称単数 ew iːrrǝ ewm ibǝrjm
二人称単数 is iːrrjs ibǝs ibǝrjs
三人称単数 it iːrtər ibǝt ibǝtǝr
一人称双数 imə iːrmər ibǝmǝ ibǝmǝr
二人称双数 iməns iːrmən ibǝmǝns ibǝman
一人称複数 iməs iːrrjməs ibǝmǝs ibǝrjmǝs
二人称複数 itəs iːrrjtəs ibǝtǝs ibǝrjtǝs
三人称複数 ewnt iːrrjnt ibǝnt ibǝrjnt
過去 直説法能動態
一人称単数 iːwm
二人称単数 iːs
三人称単数 iːt
一人称双数 iːmə
二人称双数 iːməns
一人称複数 iːməs
二人称複数 iːtəs
三人称複数 iːnt

未来時制

未来のことがらは現在時制で表すことができるが、未来の意味に限定したり強調する際には未来不定詞または未来分詞とessǝを組み合わせて述べるが、以下のような違いがある。

単純な未来時制
  • 未来不定詞が単純な未来時制を表す。
意思法未来
  • 未来分詞は「するつもりだ」という意思の意味になる。

その他、接続法現在を用いて今すぐに起きるかもしれない未来(将然相)を表すことができる。将然相分詞は未来受動不定詞にiːrəの現在分詞または過去分詞で作る。通常縮約されて-ontǝs、otǝsとなる。

意思法

上述した意思法未来の他に接続法+esǝで意思法現在進行相(〜しようとしてしている)、不定詞+iːrəの接続法で意思法現在持続相(〜しようとしてしつづけている)を表すことができる。
行為者が一人称の場合は通常意思法を使う。直説法の場合は不服、不本意など本人の意思に反して行ったという意味になってしまう。

条件法

  • 過去分詞+orə+esで条件法過去を表す。
  • 過去の能動不定詞+uːzrə+esで条件法現在を表す。

完了相

essǝの過去分詞fuə(通常は縮約されて不定詞+uとなる)を使う。

進行相

英語の進行形と同じ。
能動不定詞+ad+essǝで表す。
essǝを過去形にすれば過去進行形(未完了過去)となる。
縮約されて-assumのようになることも多い。
進行相分詞は能動不定詞+adにiːrəの現在分詞または過去分詞で作る。通常縮約されて-antǝs、atǝsとなる。

持続相

持続している事柄、習慣的なことを表す。
能動不定詞+助動詞iːrǝで表す。
iːrǝを過去や未来にすれば過去や未来の習慣を表せる。

使役態

不定詞+ag(第二活用の使役動詞)で作る。

動詞の強調

動詞を強調するときには分詞+essǝの形を使う。

副詞

副詞は名詞や形容詞から派生させた場合は奪格の-eksや-elluの形を使う。(エスペラントの派生副詞の由来)
それ以外に元々副詞である形もある。(エスペラントの本来副詞の由来)
また、位置や時間を表す-izrという接尾辞があり、副詞を作る。(エスペラントの-aǔやアルカイカムエスペラントムの-ezの由来)

参考言語

Aiola
Arcaicam Esperantom
Arlipo
Atlango
Esperanto
Farelix
Farlingo
Ido
Linguna
Mezepoka Esperanto (Sperantu)
Международно-Научный язык I
Mundolinco
Mondlingvo
Pra-Esperanto
・Lingvo Universala
・Lingwe Universala
Reformed Esperanto (Esperanto 1894)
Popido
Romániço
 ・Old Romániço
Uniëspo
Unitario

ゲルマン系統と思われるVirgorantoやFolkssemは系統分析には含まないが参考とした。
また、VolapukやAmauboなどもエスペラントと関係が深いことからArcaicam EsperantomやPra-esperantoに影響を与えたものとして考える。

エスペラント諸語への展開

多くの言語では、語尾でǝ>oやǝ>uなどの変化が起き名詞語尾がoに変わる流れが起きる。
語尾のaについては次のような変化が起きた。
・aがそのままaとして残る
・a>ǝとなり、その後ǝ>oやǝ>uの変化が起きる(Arcaicam Esperantomなど)
・a>ǝとなるが、後ろに定冠詞が付いた-aulのような形はaːに変化しaの形が残る(LingunaやMundolincoなど)
・ǝ>aの変化が起きる(後述)
動詞は現在形の語幹ǝ>oが起きると同様に未来不定詞が縮約された未来形語幹-o-と衝突するとこになるが、現在時制が直近未来の意味も含んでいることから未来時制に吸収される。
ただし、Mundolincoでは未来時制に吸収されることなく現在時制として保たれた。
Mezepoka Esperanto(Sperantu)ではǝ>uの変化が起き名詞語尾はu、動詞現在形は接続法に吸収される。
現在形がなくなったことにより進行相の縮約された形を継承した-a-という語幹が現在時制を表すようになる。
ただし、一部の言語では持続相の語尾が変化した-e-が現在時制を表すようになる(Lingvo Universalaでは-a-は過去進行形を表す形に変化)
動詞の活用が混乱する中で活用形が一種類に単純化されていく。
過去形はǝj>iの変化により過去時制が-i-という語幹を持つようになるが、Mezepoka Esperanto(Sperantu)ではǝj>ajに変化した。
一部の言語では完了相や過去時制として-av-、-u、-avi-などがあるがこれは完了相を表す不定詞+uの形から変化したものである。
エスペラント諸語の一人称単数は-mであることが多いが一人称が主語の場合に接続法を使っていたことに由来するものとsumの語尾に由来するものがある。
Arcaicam EsperantomとLingunaでは、それぞれ一人称単数語尾が-ms、-ym(Lingunaは現在形のみ)となっているが、これは語尾が縮約される際に一人称単数語尾がsumのsに縮約され-sとなったのちに二人称単数の語尾-sと区別するために他の形が使われるようになったものである。
Arcaicam Esperantomは一人称複数からの類推か意思法現在進行相の接続法+esǝに由来し、Lingunaは過去習慣相のewmに由来する。
語尾の縮約はさらに格変化語尾を変化させた。次のようなパターンがある。
・斜格が-nとなり分格を吸収(多くの言語)
・分格が与格の意味に変化
・分格が属格に変化
・斜格が具格となり、分格が対格に変化(Arcaicam Esperantomではさらに具格が主格に変化)
形容詞は特定のものを修飾する場合の与格-alに由来する形か出格-elに由来する形のみが使われるようになり名詞と形容詞が区別されるようになる。
与格が形容詞の意味に変わる中で他の格が与格に転用される。Arcaicam Esperantomでは向格、Lingunaでは入格から与格が生まれる。(前述の分格が与格に変わる流れも同じ)

膠着語化

Arcaicam EsperantomやLingvo UniversalaはVolapükの影響で膠着語化が進んだ可能性がある。ただし、Arcaicam EsperantomとVolapükは音韻差が大きいため、失われたVolapükの方言である可能性もある。

語尾ǝ>aの変化

Romániçoでは語尾でǝ>aの変化が起きた。
これにより動詞では現在形と現在進行形が合流し動詞の変化が一種類になる。
名詞では語尾が-aとなるが与格-alに由来する形容詞語尾と合流してしまい区別が付かなくなったため、定冠詞語尾の付いた形(-au のちに-oに変化)が名詞として扱われ、定冠詞語尾がない場合は形容詞として扱われるようになった。これは冠詞を前置した場合も同様であり、現行のRomániçoでも形容詞を名詞化するときの「冠詞+形容詞」の形で残っている。
また、語尾の子音の磨耗が強めで格変化は早々に無くなり、動詞の人称変化も単純化した。
動詞の人称変化は三人称複数から(その他、動詞の強調で使われていた分詞+essǝの影響)
斜格や与格など主格以外の格は全て-nに統一されたが中世にはそれも消滅。

学者語(偽ラテン語)による影響

エスペラント地域には特有のラテン語の発音様式があり、これを偽ラテン語または学者語と呼ぶ。

エスペラント諸語のラテン語に由来する語彙の中にはロマンス諸語のように音韻変化を起こしているものと、ラテン語そのままであるものの両方が存在する。
エスペラントなどでは、ラテン語とアクセント位置がずれているものも多い。
ラテン語から借用されたとも考えられるが高級語ではない語彙も多い。
そこで、この地域に共通語として存在していたラテン語の亜種を考える。
ラテン語は古くから各地域で伝統的な読み方が存在し、有名なところでいうとイタリア式、ドイツ式などがあり今ではほとんど使われていない英語式やフランス語式などもある。
ラテン語そのままの語彙をこの地域に特有のラテン語の読み方(エスペラント式)があると考えて、各方言間の共通語として話されていたために日常語へ借用されたとする。
アクセントは通常地域の発音に影響を受けやすい、かつ、アクセントが少し変わったくらいでは共通語として意思疎通が困難になる程でないことから、地域ごとに異なったアクセント位置で読まれたことにより借用された先でラテン語と違う位置にアクセントが置かれるようになったと考えられる。

そうすると、ラテン語そのままの語彙しか使っていない言語についても説明が可能になる。これらの言語は文語体で、曲用や活用、代名詞などの機能語を除いて、このラテン語の語彙を基調とした文章で書かれているためと考えられる。
また、エスペラントは接頭辞mal-を使って生成された言葉や細かい形態素を組み合わせた語彙が多くを占め、同様の特徴をもつエスペラント諸語も多い。これは自然言語としては不自然とも言えるが、もともと文章語としての語法や様式として厳格に守られていたものが流入してきたと考えられる。

まとめるとこうなる。

この地域では、ゲルマン語との接触によりラテン語の語尾が磨耗、文法も変化して上記のエスペラント祖語が生まれた。
同様にラテン語の文章を読む時も語尾が磨耗した形を使っていた。
ラテン語は上流階級では口語でも使われていた。それにより、時代が下って、各方言が分化していった際にはラテン語が共通語として使用されるようになった。
しかし、語尾が磨耗したことによりラテン語の曲用が判別できなくなり、中心地(当時)であるRomániçoの地域(首都かもしれない)の曲用が付加された言葉で話されるようになった。
これにより、ラテン語の語彙が各方言へ受け継がれると同時に、Romaniçoの文法(動詞の活用が一種類になったこと、形容詞と名詞が明確に区別されること、格変化が単純化されたことなど)が、エスペラント諸語の共通の特徴になった。
さらに、「何らかの学者」によってこの文語体が整備され、接頭辞mal-を使って生成された言葉や細かい形態素を組み合わせた語彙を多用するようになった。(逆に言うとこのような語彙を持たない言語はこの「学派」の影響下にない地域である)これを「学者語」と呼ぶ。
さらに時代が下ると、それぞれの地域でも方言を文章化する試みが生まれ、その中で方言の文法形態素や機能語とラテン語(学者語)の語彙を使った文章が書かれるようになった。
この時代になるともうラテン語とは呼べなくなり、偽ラテン語と呼ぶこととする。
近代はさらに口語で文章が書かれるようになったが、Esperantoは標準語となる際に学者語の特徴を引き継いだ。
と言う流れとなる。
なお、エスペラント諸語は「世界語」のような名称の言語が多いが、これはもともとラテン語の雅称であり、口語として普及する中で地域の言語の名称に変わっていったものと考えられる。

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