coi rodo mi'e .slaimsan.
今回、プレ開催ですが、人工言語コンペ復活させました。別記事にサーバーへのリンクがあるので、気になる方はそちらからご参加ください。
今回はDiscord上で上手く開催できるかを試すプレ開催なので、お題は主催者の私からの出題になります。出題者は最終的な評価の対象にはならないルールなのですが、出題しておいて自分は何もしないというのも微妙なので、自分も自分のお題に対して回答を作ってみることにしました。
0. お題
架空の文化と言語を設定して、そこで使われている挨拶を3つ程度作成して紹介してください。
紹介には、以下のような内容が含まれるようにしてください。
- どのような場面で使われる挨拶か
- 直訳的な意味
- どうしてそれが挨拶の意味になったか
例: こんにちは
日中に広く使われる挨拶。ただし、早朝は別な挨拶を使う。その日初めて会った人に使う。
直訳すると「今日は…」の意味(ここは日本語だと分かりづらいですね…例が悪かったです。)
「今日は良い日和ですね」や「今日はご機嫌いかがですか」の後半が省略されて挨拶となった。
今回は試しで、正味2日間しか作成期間がないので、簡単に作れるお題にしてみました。(参加者の皆様、難易度的にどうでしょうか?)
0-a. お題を思いついた経緯
亜空世界という大規模なシェアワールドがありまして、そこでラテン語たんさんが作成しているガフィーク語というのがあります。ガフィークという国で使われている設定の言語なのですが、この国は通商で成り立っている国でして、「こんにちは」に相当する挨拶を直訳すると「新しい取引があらんことを!」みたいな感じになるんですね。流石、通商の国! で、そういえば人工言語作ってる人って、文法とかは作るけど、挨拶の表現は後回しにしてるイメージがあるなと。ここは挨拶に絞ってお題にしてみるのはどうかと思い、今回のお題に落ち着きました。
1. 構想
八卦の考え方で大切なのは陰と陽のバランスで、どちらがが多くなり過ぎるのは良くないとされる。これは元々、農耕文化において晴れと雨のバランスが良いのが望ましいという考えに由来しているらしい。今回、これを起点に文化設定を考えることにした。
- 挨拶の直訳は「太陽と雨のバランスが良いことを祈る」にしよう。長いので省略されて「太陽と雨の」で挨拶になってることにする。
- 恐らく農耕民族の言葉なのだろう。となると、田畑を耕して植えて収穫するという周期を基本とする文化なのだろう。
- 天候のバランスを重視するということは、収穫量が少し不安定なのではないか? 安定してたら、天候不順をそんなに気にしないかも。
- 「人事を尽くして天命を待つ」の精神で、やれることはやる勤勉な文化ではなかろうか?
- 収穫できた時の喜びは大きそう。収穫祭は盛大にやりそう。オクトーバーフェストみたいな。
- 収穫祭限定の乾杯の音頭があったら面白そうじゃない! ついでに音頭に対する返答もセットにしよう。
- 勤勉なので「来年の収穫にそなえよ!」と乾杯の音頭をとり、皆が「もちろんだ!」と応じて飲み始める。音頭の文言が長いな。「収穫に備えよ!」まで短くなっていることにしよう。
- 日本語には無いような挨拶があると面白いかも。R.I.P. みたいな、死者を弔う言葉とかそういうのはどうか? 冬に枯れた草木が、春には復活する様子を見て生命が循環していることを直感的に理解していて、「生命が循環することを祈る」みたいなフレーズが死者に向ける言葉かもしれない。
というわけで、今回作成する挨拶は下記の3つにすることにする。
「太陽と雨の(バランスがあらんことを)」
「(収穫に)備えよ!」とその応答「もちろんだ!」
「生命が循環(せんことを)」
2. 今回作成すべき語彙と文法
2-a. 作成すべき語彙
- 太陽
- 雨
- バランス
- ある (存在する)
- 収穫
- 備える
- もちろん
- 生命
- 循環
2-b. 作成すべき文法事項
- 属格
- 対格
- 与格
- and
- 形容詞の修飾順序
- 希求法
- 命令法
3. 音韻論
時間がないので、既存の言語の音韻論を借りてくる方針にする。(時間が限られている人工言語コンペでは、このような割り切りも必要。)
今回は、何となく古代ギリシア語のものを使うことにした。(散歩してる時に何となく決めた。)
3-a. 子音
唇音 | 歯音 | 軟口蓋音 | 声門音 | |
---|---|---|---|---|
無声(無気)破裂音 | p | t | k | |
(無声)有気破裂音 | ph | th | kh | |
有声破裂音 | b | d | g | |
破擦音 | dz | |||
摩擦音 | s | h | ||
鼻音 | m | n | (ŋ) | |
はじき音 | r | |||
側面接近音 | l |
3-b. 母音
概ね古代ギリシア語のものにするが、eとoの広狭の区別は面倒なので無視する。後、母音の長短も無視。
音価 | ラテン文字転写 |
---|---|
a | a |
e | e |
i | i |
o | o |
y | u |
※ u の発音だけ注意すれば今回は十分。
4. 語彙
語彙も既存の言語を参照して作り出すことにする。ギリシア語から離れたところが良いな。よし、韓国語にしよう。(これも散歩中に適当に決めた。)韓国語は詳しくないから、ネットの辞書で引いて出てきたもの適当に引用することにする。
引いて出てきた韓国語を今回の音韻体系に合わせて変換してみたのが下記の表。
欲しい語彙 | 韓国語 | 今回の語彙 |
---|---|---|
太陽 | 해 | he |
雨 | 비 | bi |
バランス | 균형 | gunhon |
ある | 있다 | is |
収穫 | 수확 | sohek |
備える | 갖추다 | gasu |
もちろん | 그럼 | girom |
生命 | 목숨 | moksom |
循環 | 돌다 | dol |
無理やり当てはめてる部分もあるので、微妙な感じもあるが、今回はスピード重視のため妥協。
5. 文法事項
この辺はオリジナリティを出していきたいので、ちょっと考える。
5-a. 格
この辺は印欧語っぽさを出してみる。主格が基本計で、よく使う属格と対格は主格の形に格標識的なものが後ろに接続され、比較的出現率が低めの与格は前置詞的なものを前に置いて、名詞自体は属格にすることにする。
格 | 語形 |
---|---|
主格 | xxx |
属格 | xxx-(d)a |
対格 | xxx-(e)n |
与格 | the xxx-(d)a |
括弧書きになっている部分は、名詞の語尾が母音だったり子音だったりで接続が悪くなりそうな時に挟まる部分。母音の連続を嫌う言語ということにしておく。
5-b. 接続詞
"and"だけ作れば良いのでここは楽。何となく khi にしておく。多分、ギリシア語の kai のイメージから来てる。
5-c. 法
これも最小限の部分だけ決める。
命令法は動詞の語幹に -te を付けることにする。
希求法は、よく見たら今回のフレーズの中には三人称単数っぽい主語でしか出てこないので、この形だけ作れば良い。何となく -phi を動詞の語尾に付けることにする。
5-d. 語順
形容詞は名詞の前に置くAN語順とする。挨拶で残った部分から、この語順なのではないかと想像した。同様に、文末に動詞が来る語順と想像。(日本語で考えたのが影響しているかも。これは今後、言語を作成する時に心に留めておいた方が良いかもしれない。)
6. お題への回答
さて、上記の内容を踏まえてお題への回答をまとめることにする。
heda khi bida.
直訳:太陽の と 雨の
使用場面:人と人が出会った時に、広く使われる挨拶。時間帯等は問わない。
経緯:元々は「太陽と雨のバランスがあらんことを」みたいなフレーズだったが、冒頭の部分だけが残り、このような表現になった。元々のフレーズとしては "heda khi bida gunhon isphi."
(the soheka) gasute! ---- girom!
直訳:(収穫に)備えよ! ---- もちろんだ!
使用場面:収穫祭における乾杯の音頭とそれへの返事
経緯:収穫は彼らにとって非常に重要なことで、それらを祝う収穫祭もまた重要である。しかしながら勤勉な彼らは、その乾杯の席においても次の収穫について考えており、このような表現が乾杯の音頭になっている。
moksom dolphi.
直訳:生命が循環せんことを
使用場面:死者を弔う言葉。埋葬の際や墓石に刻まれたりする文言。
経緯:農業や自然の観察から、世界は大きく循環していることを肌感覚で理解している彼らは、死者の生命もまた循環するであろうと考えている。そのため、死者に手向ける言葉として定着していったと考えられる。
A. 作成してて気づいたこと
今回やっていて思いついたのですが、使う音韻のセットを予め大量に用意しておくと便利かもしれないです。コンペで使うのも良いし、将来作るかもしれない言語のために取っておくのも良いし、突発的に言語を作る時にそこから適当に持ってくるのも良い。言語開発の効率を改善することができるかもしれないです。
B. 作成の際に反映されなかった裏設定
こういう慣用表現やことわざがあるのでは、と考えたフレーズ集
- 「毎年、同じ畑で同じ作物を作ることはできない。」連作障害のことだが、同じことをやり続けると疲労することを表す表現。
- 「一粒が育つのにも一年かかる。」物事が完成するには時間がかかるという意味。
- 「来年の収穫は畑を耕すことから始まっている。」準備が大切という意味。
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