レスゲム語の方角に関する語彙は以下の通りである。
北 nirn / niron
南 dren / drenon
東 kepn / kepon
西 kinden / kindon
例えば北を例に取るなら、左記のものは方向、右記のものは場所を指している。(nirn (北の方向), niron (北の場所))
これらの語彙は祖語において次のように再構される。
北 *nur-ni / *nur-un
南 *nurən-ni / *nurən-un
東 *rukəp-ni / *rukəp-un
西 *rukid-ni / *rukid-un
niは方向を表す名詞であり、-unは場所を表す名詞を派生する接尾辞である。これらの形態から予想される形態は次の通りである。
北 nurn / nuron
南 dren / drenon
東 rokepn / rokepon
西 rokind / rokidon
北
北を表す*nurという形態素は「行く」を意味する*nurと同一であると考えられている。これはレスゲム語話者の原郷と比定されている地域の北に山脈があることに由来するとされており、霊山信仰と結び付けられている。
現在知られているnirnという形態は*nurniの第一音節の母音が第二音節の母音と同化した、*nirniという形態に由来し、*nurunもそれの類推から*nirunに変化したと考えられている。
南
南を表す*nurənという形態素は*nurに分離を表す形態素*-ənを加えたものである。この形態素が南を意味する理由は北で述べたのと同じである。北を表す*nurとコントラストを生むために第二音節にアクセント位置があると考えられる。
東
東を表す*rukəpは太陽を表す*rukと上昇を表す接尾辞*-əpに由来すると考えられており、つまり日が昇る方角を意味しているとされる。想定される形態であるrokepnの第一音節は脱落している。
西
西を表す*rukidは太陽を表す*rukと下降を表す接尾辞*-idに由来すると考えられており、つまり日が沈む方角を意味しているとされる。
rukidniはdn > nd /V_Vの音韻変化の影響を受け、rokindeを経てrokindになることが期待されるが、他の方角からの類推でrokindeneとなり、またkepnと同じように第一音節が脱落してkindenとして実現されている。またkidonはkindenの類推を受けてkindonとして実現される。
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