※ 2024/12/08 14:52 編集:
laso を誤って「イスクイル単語として読める」側に含めてしまっていたのを修正しました。
トキポナは単純な音節構造(大半がCV)を採用していて、発音しやすい言語です。ときぽなですね。
イスクイルは短くて発音しやすい音素列をできるだけ余さず単語として利用しようと設計されています。ときいけですね。
この2言語の特性がいい感じに作用して「トキポナの単語の大半はイスクイルの単語としても読める」状態になりそうですが、実際のところどうなんでしょうか。
気になったので調べました。
ルール設定
とりあえず今回調べるトキポナの単語は、Wikibooks のトキポナ辞書 の見出し語になっている 139 語 とします。(ale, ali は別単語扱いとします。) なお今回の試みには、トキポナの語彙数が 139 語である(ほうがよい)と主張する意図はありません。どうか見逃してください。
イスクイルは、バージョンが4つあってそれぞれ音素も形態も異なりますが、今回は私が最も慣れている イスクイル3(elartkʰa) を採用します。
トキポナ話者の発話をイスクイル話者が聞き取ったという状況を想定し、ラテン文字の綴り自体ではなくそれが示す音声に基づいてイスクイル化します。
トキポナの a, e, i, o, u, p, t, k, s, l, m, n, w はイスクイルにその字(音素)のまま写されます。トキポナの j[j] は、イスクイルの y[j] に写されます。たとえばトキポナの pimeja は仮想のイスクイル単語 pímeya[pimeja] へ変換されます。
また、多くのトキポナ話者が /np/ を [mp] と発音しています。今回はこれに従います。たとえば tenpo は [tempo] と発音されると見なし、仮想のイスクイル単語 tempo[tempo] へ変換します。
強勢は、単語の長さによらず最初の音節に置きます。
声調は、すべて下降調とします。
予想
このルールでトキポナからイスクイルに写したとき、139 語のうち 100 語(72%) くらいが単語として成立する、と予想しておきます。
調べ方
まず、トキポナの単語の綴り(例えば pimeja) から音声重視でイスクイルの綴り(例えば pímeya) に写す関数をスプシで作ります。
まず SEQREP 関数1 用の正規表現テーブルを書いて~
Wikibooks からコピペしてきた単語に関数を適用して~
これで全単語がイスクイル化された状態で見えるようになりました。
あとは単語になるかどうかを人力で確認します。 2
本当は全部の単語について品詞とグロスと和訳と使用可能性を書きたかったんですけど、さすがに時間と気力がないので断念しました。気になる単語があればここのコメント欄か苔バベルかイスクイルのひろばで私に言ってください。
結果
139 語のうち 117 116 語(83%) がイスクイルの単語として解釈できました!!
思ったよりだいぶ多かった。
イスクイル3の単語として解釈できたもの (116 語):
a, akesi, anu, ala, alasa, ale, ali, ante, anpa, ike, ilo, insa, uta, utala, unpa, e, esun, en, epiku, o, oko, ona, open, olin, kasi, kama, kala, kalama, kipisi, kili, kiwen, kin, ku, kute, kulupu, kule, kepeken, ken, ko, kokosila, kon, sama, sike, sitelen, sina, sin, sinpin, supa, suli, suwi, seme, seli, sewi, sona, soweli, tawa, tan, tu, toki, tonsi, n, nasa, nasin, namako, nanpa, ni, nimi, nena, noka, pakala, pana, pali, palisa, pan, pi, pini, pipi, pimeja, pilin, pu, poka, poki, pona, ma, mani, mama, mi, misikeke, mije, mu, musi, mute, mulapisu, mun, meli, moku, moli, monsi, monsuta, jasima, jo, la, laso, lanpan, lape, lawa, li, lipu, lili, linja, luka, lukin, lupa, lete, len, loje, lon
そのうち
- 79 語は Formative
- 31 語は Referencial Adjunct
- 3 語は Aspectual Adjunct (a, e, o)
- 1 語は Case Adjunct (yo(<jo))
- 1 語は Bias Adjunct (n)
- 1 語は Affixual Adjunct (en)
- 0 語は Verbal Adjunct
イスクイル3の単語として解釈できなかったもの (23 語):
awen, ijo, kijetesantakalu, sijelo, suno, selo, soko, taso, telo, tenpo, tomo, meso, jaki, jan, jelo, laso, leko, waso, walo, wawa, wan, wile, weka
そのうち
- 15 語は CVCo などの形で format に対応する Cx が無い (suno, taso, ...)
- 1 語は 強勢位置が語末から遠すぎる (kijetesantakalu)3
- 8 語は モデル化したときに対応する品詞が無い (awen, waso, jan, ...)
用例など
公式で用例がある(🤔)語はおそらく e, tawa, tu だけです。e は Uňk’àtân の歌詞で、 tawa は Ozkavarkúi の歌詞で、tu は 4章の例文など複数の箇所で使われています。
あと残念ながら「単語として解釈できる」もののうち実際に使い所がありそうなものは半分以下です。
特に CVCV の形で1つめの母音が a 以外のものは「一応分析できるけど、有生物しか取れなさそうな格を無生物が取っていて意味的におかしい」という状態になりがちで、あまり使えません。例えば sona は「変化が(能格)」とかになっちゃう。
ちなみに、イスクイルで同じ意味になるような組もあります。
- sin, sina 「私とあなたが(~体験する)」
- pan, pana 「~という名の有生物が」
- ko, oko 「あなたが(意図的な動作の主体)」4
- la, ala, lawa 「皆は/皆である」
実用(?)
トキポナにしか聞こえないイスクイル文を作って頭をバグらせて苦しむという遊びができそうですね。早速やってみましょう。
Mama sina o útala pímeya.
「私とあなたはいつも、対照的なあなたたちと彼らで作られた植物の印象を受けている。」
ウワーッ!!!
~ 終わり ~
※ この記事は《苔むしたバベルの塔》Advent Calendar 2024 の 12/7 の記事として投稿されました。5
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私が文字列処理を丸投げするための ike mute な自作スプシ関数。別のシートの指定の行範囲を参照して上から順に regexreplace で置換していくもの。 ↩
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パーサはあるにはあるけど、3音節以下の短いものならすぐ分かるのでほとんど使いませんでした。特に怪しいものだけパーサに突っ込みます。 ↩
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強勢位置が語末から1~4番目のどれかなら formative として成立しそう…… と思ったけど語根 -k- は VxC 派生しないから無理か ˛ı ; ;̂˒ ↩
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Ôrödyagzou の歌詞の中にある ete の使われ方から憶測すると、ko と oko は微妙に使い分けられるのかもしれない。oko の方がより強調してるような…… ↩
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かなり遅刻しました ; ; ↩
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