未完成ですが公開します
プロローグ
西暦2278年12月23日、午前2時33分、
民間旅客航宙船「おおたに」船内___
「まもなくとよあしはら宇宙港に到着いたします。シートベルトをお締めになって___
限られた乗客しかいない旅客キャビンに、船内アナウンスが響く。
宙際ジャーナリストである私は、日本領水星の辺境にある少数言語コミュニティを取材するために現場へと向かっていた。
コロニーの名前は「とよあしはら」またの名を現地語でDöjascar。蒸気機関、超人工知能に次ぐ第三次産業革命発祥の地。
日本政府は出入りを禁じているため、普通ならば立ち入ることはできないのだが、今回は特別に許可を得ることができた。
ところで、とよあしはらでは孤立した環境から日本語が訛りに訛り、一般に「水星日本語」と呼ばれる独自の言語になっているそうだ。一応ここ一ヶ月ほどはDuolingoで言語を練習したものの、通じるかどうかには自信がない。けれどもとにかく物は試しだ。とりあえず第一村人に話しかけてみることにした。
会話
私 : こんにちは!
Köniezca!
村人 : ああ、こんにちは!
あなたが記者の方ですか?
A,Köniezca! Aada kisca-n itö ska?
よかった。とりあえず挨拶は出来た。
次は聞かれた質問に答えてみる。
それにしても、滅多に人が来ない所だからだろうか。私が来ることは随分大きな噂になっていたようだ。
私 : はい,日本からです。
Un, riönka des.
村人 : 良いですね!
ii des ne!
村人 : 首長には会いましたか?
案内しますよ!
Söözcöö-ni otee ska? Sretek mas jö!
私 : 本当ですか!ありがとうございます!
Mazci ska! Azamas!
こうして、私は首長に直接取材をすることになった。首長とは、本土から送られる「総督」と共に非主権コロニーを統治する役職である。平たい言い方をすればコロニーの代表と言ったところだろうか。とよあしはらは第三次産業革命、そのきっかけとなったウカデーシュ採掘で豊かになったので、宥和政策が取られ例外的に首長による実質的な自治が行われている。
まあ、「昼」は渡航できない水星の性質上、自治権が拡大するのは当然ではあるが…
とにかく、そうこうしてローバーに揺られ、クレーターを走ること十数分。首長の家や政府組織が位置する行政棟に着いた。
外観はガレージのようだが、中に入ると広大な地下空間が広がっていた。
私 : こんにちは、よろしくお願いします。
Köniezca, jörsik des.
首長 : はい、よろしくお願いします。
ウカデーシュは知っていますか?
Un, jörsik des.
Ökadeesc a scuutee ska?
私 : はい。ここの生活はウカデーシュでとても豊かになりましたよね。
Un, kökö-n seekas a ökadeesc a mazci ber nota des ne.
首長 : はい。ウカデーシュのおかげでどこでも生活が出来るようになりました。
Un, ökadeesc a dökö-m ikerer sita des.
私 : なるほど。
Ane.
その後、私は首長直々にとよあしはら、Döjascarの歴史や言語について詳しく説明を受けた。
どれも非常に興味深い情報ばかりだった。例えば「ありがとう」Azamasが昔の日本語のスラングに由来するとか...
とにかく、ここに書こうとすると長くなるので、これらの情報は別でまとめようと思う。
私 : 今日はありがとうございました。
Kiuu a azamas ta.
首長 : また帰る時にぜひ来てください!
Könd kaar toki nia kuu krasee!
設定解説 - とよあしはら
国連宇宙条約で規定された86の非主権コロニーのうちの一つ。現代日本で言うところの「リキュウ・クレーター」に位置する。
日本領水星の最大都市であるホクサイ(こちらは自治コロニーである)からは大きく離れている。
地理・概史
とよあしはらは開拓以来ずっと寂れた植民地であった。本国の国粋主義潮流に乗ろうとし、名称を利休から「豊葦原」とすることで住民の増加を図ったものの失敗。
元々本土との交流は少なかったが、第二次東アジア戦争の結果日本が軌道エレベーターを喪失してから孤立はより一層進行し、この頃に独自のラテン文字表記などが立案された。
その後も大きな発展はなかったが、2236年に岡田恋音博士がウカデーシュを発見してからは同素材の採掘地として急速な発展を遂げた。
ウカデーシュは日本経済復興の生命線であることから、現在は政府の厳重な管理下に置かれており、一般人の立ち入りは禁止されている。
ウカデーシュ
別名「岡田石」「オカダイト」と呼ばれる鉱物資源で、日本人科学者の岡田恋音(おかだあまね)博士が発見した。
平たく言えば太陽光発電の効率を極限まで向上させる素材で、これによって人類のカルダシェフ・スケールは1.0に到達した。
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