私が制作している「ボウニム語」は、架空世界コバルディアでは、自然言語という設定の言語なので、自然言語らしい言語を目指している。
この創作論は、文法や音韻などの基本的なものができた後に役に立つ。
語彙制作についての話である。
1.アプリオリじゃなくてもいい
「アプリオリ言語」ってすごいと思われがちだが、完全なアプリオリな言語は存在しません。人工言語アルカだって、アプリオリ言語と謳っているが、実際は、ファイナルファンタジーのキャラクターであるリディアやその他のキャラクター名を語彙にしたものや、実在の言語から取り入れたにしかみえない語彙があったりします。
しかも、言語を学習してしまったうえ、柔らかいものは共鳴音で、とんがったものは阻害音など、なんやかの先入観もあり、アプリオリで作ろうとしても、実在の言語と似てしまうこともあります。
ボウニム語では、ほとんどが、アポステリオリだと思います。人工言語アルカと同じ作者のフィルヴェーユを元にした単語が多く、現実世界の言語の語彙を変形したものも多く存在します。
私は、アプリオリ性にこだわる必要はないと思います。
2.借用語を取り入れよう
借用語を入れると、リアリティーを感じさせることができます。
①「耕す(ボウニム語:aþar)」、「馬(ボウニム語:maba)」、「アスパラガス(ボウニム語:aspara)」「サトウキビ(ボウニム語:sukura)」のような農業や牧畜に関する言葉
②「教会(ボウニム語:kirke)」、「劇(ボウニム語:þeatre)」などの他の文化圏の文化に関する言葉
③「コンピュータ(ボウニム語:komputre)」などの技術関連の言葉
④「文法(ボウニム語:xutlaša)」、「試練(ボウニム語:misošal)」、「料金(ボウニム語:gebir)」などの難しい言葉
これらの語彙は、借用語になることが多い。
ボウニム語では、
- デンマーク語(コバルディアにおいてはフラダランド語)、
- 古ノルド語(コバルディアにおいては北パスティア祖語)
- ゲルマン祖語(コバルディアにおいてパスティア祖語)
- コバルディアの言語であるサムワジア語系言語
からの借用語という設定がある。
古い時代に借用された思われる語彙は、借用語だと思えないほど馴染んでいるような形にする。
ボウニム語では、「耕す(ボウニム語:aþar)」、「馬(ボウニム語:maba)」などは、古代から存在していた語彙で、これが借用語だったとはわからないほど、固有語に馴染んでいる。
借用語を創作言語に取り入れると、リアリティを感じさせるが、現実の言語では、借用語は、音訳だけではなく、「翻訳借用」という手法がある。
日本語やドイツ語などの言語で見られる。
例)Fernseherは、ドイツ語でTelevisionを意味し、これは、Tele(遠く)とVision(見ること)をドイツ語に訳したもの。
例)鍵盤は、日本語でKeyboardを意味し、これは、Key(鍵)とBoard(盤)を訳したもの。
ボウニム語でもこのようなものがある。
þezine(窓)は、Windowの語源である、風の目を意味するþeze waineが訛ったもの。
3.単純な固有語を作ろう
まずは、その世界の固有名詞や専門用語よりも、単純で素朴な固有語を作っておいた方がいい。つまり、原始時代、古代、中世の時代でも必要となりそうな語彙は、まずは作る必要があるということ。
(例外もあるが)スワデシュ・リストに載ってそうな語彙は、固有語が多く、または、複合語ではないことが多い。
さらに、少しだけ難しい語彙は、単純な固有語を形態素として、複合語を作ると、いいだろう。
ボウニム語の例では、
hek (与える) + ju(受動態語尾) + al (名詞語尾)
→hejural (課題, 任務)
ed (見る) + mjuren(〜ことができない)
→edemjuren (珍しい)
4. 必要な語彙数
固有名詞や、専門用語などを除いて、最低限でも、3000語がないと、言語を運用するうえで、必要である。
(ただし、ボウニム語や英語のように、一つの単語で広い意味を持つ言語に限る。)
(日本語のような一つの単語で狭い意味しか持たない言語だと、10000語ほど必要だろう。)
固有名詞や専門用語なども含めれば、1.0 × 10 4 〜 1.0 × 10 6 語も必要である。ただし、人がこれほどの単語を造語することは不可能であるため、基本的には、固有名詞や専門用語を造語する必要がない。
専門用語は、大抵が、借用語だったり、複合語だから、翻訳する度に、造語すれば問題ない。しかも、こういう語彙がなくても会話に困ることはない。
むしろ、固有名詞や、専門用語などを除いた3000〜10000語ほどの語彙がないと、そもそも、会話するすることも執筆することもできない。
専門用語は、1.0 × 10 4 〜 1.0 × 10 6 語も存在するから、語彙の大量生産ができるけど、固有名詞や専門用語を多く追加しても、会話できるレベルにはならない。
NaOH dolforix
NaCl xialšuti dorfagil
......
......
H2 akašut
He paferion
.....
B raxias
......
F seleošut
Ne sepion
Na dolfagil
........
........
Cl xialšut
.....
Ca honsgil
.....
As giberas
Sn fantagil
......
Ac xirogil
Pa lisxirogil
(128語 (元素) + ?????語(化合物))
はい! 大量生産!!!
でも、100語彙生成しても、物質名だらけでは、会話できませんよねw
こういう語彙は、ある程度語彙が増えた後に、作らないと、言語として使えませんね。
昔は、化学に興味があったのか、こういう語彙ばかり作ってしまい、語彙数の割には、翻訳できる文章が少なかったりした問題がありました。
5. 語彙の長さ
一般的な言語の語彙は、
- 後置詞や前置詞は、単音節であることが多い。
- 名詞は、素朴な言葉は、2音節ほど
- 複合語になってくると、3音節ほど
- 高等語彙では、3音節以上になる
となっている。
高等語彙のような難しい語彙なのに、単音節だと不自然だろう。
理想の人工言語の姿は?
自分のオリキャラが話している言語ですねw
フィルヴェーユから、比較言語学的に派生した、言語ですね。
→それ、ボウニム語じゃないかw
私が、好きな人工言語は、やはり、私の作成した人工言語であるボウニム語でしょう。
自分の作成した言語を自分で愛せることは、理想の人工言語像だと思います。
制作者も愛着を持たないって、よくないですよね。
言語や語彙を、ゴミやスクラップのように、扱うのではなく、
しっかりと、丁寧に育てて、自分と共に、成長していくような感じがいいですよね。一度作ったら、語彙を大きく変えたりしたくないです。
ボウニム語は、あまり改訂を行なっていません。そのため、単語や文法も2018年か2019年ぐらいから大きく変わっていません。
今思うと、当時は比較言語学の知識が乏しく、音韻変化において、言語学的に変だなという語彙もあるけど、今でも残しています。
mit (見る)は、2016年〜2018年の間に作成した語彙だが、今思うと、フィルヴェーユやアルカから派生したとすると、比較言語学的にedやitの方がふさわしいです。
でも、mitという単語は、頻出単語だし、愛着持っていたので、変更しませんでした。
他にも、
フィルヴェーユでlaapは、ボウニム語のlob
フィルヴェーユでHaanは、ボウニム語のxan,xen-
フィルヴェーユでraabyuは、ボウニム語のrave, kereval
フィルヴェーユでbyakは、ボウニム語のwiax
フィルヴェーユでbyuは、ボウニム語のbule
のように、音が1:1に対応していないという比較言語学的なミスがあります。
でも、これも同じ理由で、変更しませんでした。
2024年に、これを説明するために、
フィルヴェーユとボウニム語の共通祖先(ミーア祖語)を仮定し、
辻褄を合わせている。
Proto Miia ɑː > Filveeyu aː
Proto Miia ɑː > Bohnimic o
Proto Miia æː > Filveeyu aː
Proto Miia æː > Baka a
Proto Miia æː > Bohnimic e
Proto Miia by > Filveeyu by
Proto Miia by > Bohnimic v /[長母音]_
Proto Miia by > Bohnimic w /[a,o]
Proto Miia by > Bohnimic b
Proto Miia k > Bohnimic x /_#
*lɑːpw (望む)
*xæːn (変化)
と再建できるという設定にした。
ある意味、比較言語学のように、音変化が例外ないよりも、
例外的な複雑な音韻変化があった方がリアルだとして、妥協している。
(例外的な複雑な音韻変化も説明できるようなものを1ヶ月ぐらいかけて見つけようとしたけど、完璧にはできなかった。)
自然言語でもそうじゃないですか、話者自身が、自分の話す言語サイコーと思うことがあるじゃないですか?(特にフランス人は顕著?)
言語には優劣はないというべきと同様、人工言語にもないのです。
アルカをディスっているのも、結局、自分のエゴだし。
言語は、コミュニケーションできれば、いいのです。
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