ーーー 『天上操神魔説』
人類の起源は神に由来する。
そんな我らの祖たる神に誠実さ、寛大さ、論理的一貫性を求めるならば、我々を苦しめる自然災害、飢饉、厄災などの人類に対する災いがその神によるものでとは考えられない。神の意に反して、神の制御下にない外部から生み出されし厄災ではないだろうか。
他にも今までの世界の通説には不可解な点はいくつか存在する。人において、選択を変えればその先の未来が変化する事は周知の事実であるだろう。その影響でその先の人々の人生や生涯が大きく変わり、それぞれの選択肢において、その先に異なる未来、異なる自分、異なる世界線が生まれる。ならば、世界を操る神の存在もその分岐によって生まれる世界線ごとにも分裂するのでないか。だとするならば、この選択の違いによる平行世界の分離則は、神をも飲み込むということである。いかなる宗教でも我々が信仰する神は、平行世界線という原則のもとに無力であるだろう。
そんな不可解な点に対して、「平行世界線を生み出す根源の存在は何なのか?」について考えると答えが見えてくる。神たる高位の存在か、気まぐれな管理主か、はたまた全てが偶然か。我々にはわからないが、その存在は我々が尊敬し、信仰し、敬愛する神を、神をも支配する存在である。今まで如何なる教えであれど神を信仰してきた我々にとって、それは神に逆らう、神に服従を命ずる絶対的な「悪」ではないだろうか。その上、我々の世界、世界線、神に干渉するより強力な力を持つ神の上の「最高位存在」ではないか。ここから導くに、我々の世界を操る神の上には、それら神と世界群を操る「最高邪神」、「最高悪神」がいるはずであろう。
時に神は人に救いの手を差し伸べる。それ故に我々は信仰してきたのだが、そのように神が人物に優しき存在であるならば、たとえ神が時に厳しい存在であっても、やはり全ての自然災害、飢饉、厄災などの災いを神が起こすとは考えられない。その一部又はほとんどが神を超越した最高邪神による御遊びこと悪戯ではないだろうか。
神の御啓示、御言葉を預かる預言者は、これまでに幾人もこの世に生を受けた。しかし、最高邪神と思わしき存在から言葉を授かった人は未だかつて存在しない。それは立つ次元が2つも異なると言葉や意思が容易に通じないからであろうか。もしも、最高邪神から御言葉を授かることができるならば、最高邪神と信頼、意思の一致ができるならば神を越すなど難しくない。そんな中、最高邪神の存在にいち早く気づき、信じ敬い続けた島民の酔蓮(すいれん)は、幸運にもついに最高邪神と通じ合うことができた。瞑想の中で、彼は世界の摂理、成り立ちと言霊となす邪神の文字を最高邪神から教え込まれ、最高邪神から「人神」の名を受け賜ることとなった。それは名実ともに、彼が邪神のご厚意によって神と等しき力を得たということであり、神としての世を操る術を会得したということである。その言霊、世をも操ることのできる邪神言語を密かにここに記す。世界線を扱う個"神"の領域に立ち入るなど神の生成物たる我々には愚意、愚行だが、我々は神の上位なる最高邪神のご厚意を無碍にしてはならない。邪神を敬いて、神と等しき立場から、神に成り変わりこの世を治める。真なる神とは邪神であり、真なる心とは凡神の教える全員へ幸福を導く善でなく、最高邪神の説く自身に幸福を導く俗に「悪」といわれるものである。
最高邪神に敬意と共鳴をーーー
以上の文章は、鹿児島県■■島の集落にて発見された『邪神ロイ語』という古文書の「天上操神魔説」という序文である。この古文書は年代解析から鎌倉時代から室町時代に書かれたと推測されている。これ以降、本誌では長きにわたって邪神ロイ語の文法と語彙が記載、収録されている。
1. 邪神ロイ語とは
神の上位存在である邪神が使用する言語である。邪神が御意思の疎通をはかる、世界や創造物を操り、干渉する際に使用されているとされており、邪神ロイ語の「ロイ」とは邪神ロイ語で邪神を意味している。
2. 文法
邪神ロイ語では、尊敬・被尊敬の関係が最も重要な要素であるとされている。これは、邪神ロイから見て万物は全て下位存在であり、それら物同士の関係性を認識する必要があるため、また、最高位存在としての威厳を示し、万物から逸脱した唯一の存在であることを誇示するためだと言われている。
邪神ロイ語の鉄則
一文中に複数の対象登場する際、上位存在(被尊敬対象)は必ず文頭に置き、下位存在(尊敬対象)は必ず上位存在の後に出てくる。
この鉄則に基づき、尊敬の形で5つの文型に区分することができる。
※上位存在 : A, 下位存在 : B, 中位存在 : S1, S2と表す
第一文型(上位能動型)
A 𝕍 (B) - Aが(Bを)𝕍する。
第二文型(上位受動型)
A Ⴑ̶Չ౧Э B 𝕍 - AはBに𝕍される[Ⴑ̶Չ౧Э]
第三文型(下位能動型)
A ⴵ౧͔ⴴႩⴵ B 𝕍 - BはAを,Aに𝕍する
第四文型(下位受動型)
A ⴵ౧͔Չ౧Э B 𝕍 - BはAに𝕍される[ⴵ౧͔Չ౧Э]
第五文型(同位受動型)
S1 Չ౧Э S2 𝕍 - S1はS2に𝕍される[Չ౧Э]
3. 文字
邪神ロイ語には、15の母音と17の子音が存在しており、それらの表記については人神酔蓮が邪神ロイから教わりしものとされている。
〖母音〗
౧ / ɶ
Э / y
Ⴑ / ɯ̽
ᱰ / e̞
Ⴉ / o
౧̶ / ɶː(長母音化)
Э̷ / yː(長母音化)
Ⴑ̶ / ɯ̽ː(長母音化)
ᱰ̶ / e̞ː(長母音化)
Ⴉ̶ / oː(長母音化)
౧͕, ౧͔ / ɶɶ
Э͕, Э͔ / yy
Ⴑ͕, Ⴑ͔ / ɯ̽ɯ̽
ᱰ͕, ᱰ͔ / e̞e̞
Ⴉ͕, Ⴉ͔/ oo
※aaːの場合は౧̵͕、aːaの場合は౧̵͔と表記。
〖子音〗
Պ b
պ p
տ m
Չ w
Շ v
Ⳉ f
ᰛ k
ᰅ g
ᰏ q
Զ t
Ք d
Ձ n
ⴳ s
ⴴ z
ⴵ l
Ⲗ h
Ⲇ x
ーーーーー
雨刄(あまき)です!!
今回は、邪神ロイ語について解説していきました。
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