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矛盾と混沌
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8a65語(第9回人工言語コンペ作品)

この記事は第九回人工言語コンペ参加作品です。

一般に言語には「上下」「東西南北」といった方向を表す語彙があります。このような概念は、重力と地軸が存在する地球上での生活に特有のものと考えられます。では、もし「地球外の無重力空間で生活する人々」が存在するとしたら、どのように方向を表すでしょうか? 彼らの話す言語を作り、方向を表す語彙を使って道案内する文章を作ってください。


やあ!私はムジューン・ト・コントーン。宇宙調査隊の一般研究員だ。私の仕事は宇宙人との接触と、宇宙人の言語の調査、そして通訳。宇宙は広い。それはそれはもういっっっろんな言語があるんだよ!

おや、君は言語が好きなの?素晴らしいね、言語っていいよね!うんうん。
私が調査した言語には色々面白い特徴を持つ言語があってね、例えば「名詞クラスが『目玉の数』で決まる言語」とか、「縞模様で会話するまるでバーコードみたいな言語」とか、「一単語発音(?)するのにおそらく3年くらいかかる言語」とか!

あ、そうそう「惑星」の宇宙人の言語か「星間」の宇宙人の言語でも結構違ってね、「星間」つまり星と星の間の宇宙空間で生活する宇宙人の言語は惑星に住む私たちの言語とは全く違って、そりゃもう面白くてさ!

ちょっと教えてあげるよ、864ad34が話す「8a65語」のこと。


8a65語の文法

8a65語電波(マイクロ波)によってコミュニケーションをとる言語である。電波波長を変化させパルス状に発し、音素として使う。要するに、色付きの光で会話しているんだね。(色とはいっても、我々地球人には見えない波長なんだけど。)

音素(?)

音素は「色(?)」なんだけど、便宜的に私たちは数字をふって表している。

彼等が識別できる波長は広いから音素(?)も多いと最初は思われたんだけど、なんとたったの13種類しかないことがわかった!

1 2 3 4 5 6 7 8 9 a b c d

"1"は帯域70GHzくらい,"d"が帯域100GHzくらい。

パルスの間隔は、小型の人は1.0~1.5秒光って0.2~0.8秒休むくらい、大柄な人で5.0~6.0秒光って1.5~3.0秒休むくらい。光る長さによる弁別は存在しなかったが、これは個人のサイズ差により長さが変動するためだと考える。単語の間は休みがちょっと長い。

文法

文法、地球の言語と結構似てる!宇宙の言語には地球人の言語と似た文法のが意外と多いんだよね。文法が全然違う言語では線条性に抗った二次元的な言語とかある。マジでやばい。きっと発狂してしまう。

この言語の文法を説明しますよ。

zpdic

語順

語順は地球人の言語風に表すと

V S O後置修飾

あー…文法は地球人の言語とかけ離れていないと言ったけど、さあどうなんだろう。地球上にもこういう言語あったっけか??ってなる部分がいくつかあるんだよねー。
これなんだけど、まあ理解はしてもらえると思う。

全ての動詞は0~1個とる。その一つの項は大体主語で、動詞の後ろに置かれる。
動詞の項になれなかった語は、項との関係を明示する接続詞によって項の名詞の後ろに置かれる。

あと特徴的な例として、「文の開始の合図」を示す単語系("d1","d1d1d1"など)があるよ。地球の人工言語ロジバンみたいだね。彼らは普段宇宙空間で漂っているから、話の開始が分かりやすいと便利なのかも。

d1 5ab347 1324 d80 c5a6
文開始 摂取する.IND.PFV 1324(人名).NOM "…は~によって破壊された物" 炭素片
1324は炭素片(1324が食べたので破壊された)を摂取した。

これが前置詞ではなく接続詞として扱われるのは、必ず"A 接続詞 B"という形になって両側に名詞がこなきゃいけないから ってかんじ。気にしなくていいよ。

品詞

名詞、副詞、動詞、接続詞、間投詞

名詞類

格の概念が無いので、名詞類には格の標示はない。名詞クラスもない。
ただしの標示はある。

数/形態 まとまっている ばらけている
単数 ×
双数 a- a5-
複数(数えられる量) a2- a25-
複数(数えきれない量) b- d1-

地球人の言語よりちょっと複雑かも…いや、嘘。地球にはもっと複雑なヤバい言語があったな!人工言語だけど。

動詞類

接辞によりを示す。人称変化はない。

法/相 将然・起動相 継続相 完了/完結相 反復相
直説法(確信法) -11 -12 無し -18
観察法 -7b -a1 -17 -bb
伝聞法 -63 -28 -83 -94
命令法 × -d1d2 -d1d -d1d8
希求法 × -312 -31 -318

継続相の命令法は「~し続けなさい」という意味を表す。

修飾・副詞など

形容詞という品詞は無い。"AはB(抽象名詞)という性質を持つ"をという意味の接続詞"5"によって示される。
副詞は文の終わりに置かれる。名詞を副詞化する接尾辞"-31"がある。名詞と動詞と副詞は全く別の品詞だよ。

コンペの主題、方向の概念

彼らは方向を示すものがない宇宙空間で生活しているから、方向の概念が地球人とは違うんだ。

ここで彼らの姿を見てみよう。

Image description

これは正面から見た姿。知性を感じる見た目をしているね。

彼等は正面に向かってロケット噴射で飛ぶ。そして、無重力の宇宙空間という要因から常に回転しているんだ。

相対方位(話し手↔聞き手の方向を基準とする)

無重力空間なので、上下は無い。体の構造的に言って前後はあるが。上下左右が区別できない。これに彼らはどう対処しているかというと、『相手への方向』
だ。図を見てほしい。

Image description

図のように、進行方向に垂直な、相手の方向を指す方向を"51"、そこから時計回りに90度ずつ191,871,411と呼ぶ。

え?正対しているときや、真後ろについてくるときはどうなるかって?まず、正対・真後ろについていくなんて危ないことはしないよ、宇宙空間では普通でしょ?
宇宙空間では「ブレーキが効かない」…とまでは言わないまでも、停止するのが難しい。そのため、正対するとぶつかる可能性がある。真後ろについていくのも、彼らがロケット噴射しながら進むことや速度の調整が難しいことなどが原因であまりない。

あ、「複数人と話すとき」?
複数人と話すときは、相対方位はそもそも「使わない」!

絶対方位(恒星系内)

絶対方位を考えるとき、宇宙空間で目印になる物と言ったらだよね!

連星じゃない恒星系内

恒星が一つしかないので、とても簡単。
恒星と話者の関係からは二つの方位が導けて、一つ話者から見た恒星の方角"21"、もう一つは恒星の方角と垂直で、話者の公転方向(進行方向)を向いている方向"91"。それらを元に絶対方位の名前が付けられている。

Image description

連星系内

恒星が複数あるので、簡単には行かなくなる。
まず、どの恒星が基準になるかは簡単で、「自分たちが来た方角の星」となる。

Image description

しかし、彼らが来たのが「どちらの星の方角か判断できない」場合は、話し合いで判断されるしかないのだ!

恒星系外

これは単純に、「~の星の方角"1 ~"」や、「銀河のバルジ(天の川の膨らんでるところ)の方角"d11"」などが使われる。普通に恒星系内でも使われる。


よしっ!じゃ、試しに彼らと話してみるから、見ててね。このマイクロ波ライトとマイクロ波受信機を使って会話するんだ。

あそこに人がいる!ちょっと話を聞いてみよう。

ムジューン:d1d1d1 397-12 6
こんにちは! 調子はどう?
415:d1d1d1 415 8 d1 7a697-12 8
こんにちは。私は415です。私は迷っています。

おや、道に迷っているみたいだね。

ムジューン:d1 887-31 6 3 3989
あなたはどこに行きたいのですか?
415:d1 887-31 8 3 3a456
私は地球に行きたいです。
ムジューン:d1 5a8697838 88 d1 7a42-123 88 d1 887-d1d 6 3 21
ここは太陽系です。ここは火星の近くです。あなたは太陽の方向に行きなさい。
415:d1 562 8 5 6
ありがとうございます!

人助けした後って気分がいいよね。こういう他人の為になれる仕事はやっぱ好きだわ。忙しいし給料は安いけど

あ、さっきの会話の詳細がほしい?いいよ。

d1 887-d1d 7 3 21
文開始 行く-IMP.PRF 2SG ~が…に移動する 恒星の方向
あなたは太陽の方向に行きなさい。

こんなかんじ!どう?8a65語、面白いでしょ!

あ、地球から連絡だ。なになに?

え?どうしたの?

もしもーし?

…864ad34が侵略しに来ている!助けてくれ!頼む!うわあああああ…

おわり

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