Migdal

Fafs F. Sashimi
Fafs F. Sashimi

投稿

ウォルツァスカと甘酸っぱい記憶達

Image description

まあ、レトルトとかインスタントでも旨いもんは旨い。
「Curry König: Sebastian macht Mikrowellen-Wurst wie Curry King und Co. | Lege packt aus」より


ドイツ語学習に疲れ果て、それでもドイツ語に触れたいという謎の欲によってZDF besseresserの動画を回していた。
ドイツで食される様々な料理を解説しながら、再現して作ってみようという番組らしい(ドイツ語まったく分からん民なので内容の説明は大目に見て欲しい)。その中で目についたのがカレーソーセージの回だ。“Curry king”というのは、人口に膾炙している“カレー”風味のレトルト食品のようだ。タミル人とのハーフとあって、カレーと聞くと微妙な顔をせざるをえないのだな。ここで、人口に膾炙しているレトルト・インスタント食品というのは、結構エモい存在なのではないだろうかと思い立った。インドだとマギーヌードルとかだろうか。最近Apexに実装された新しいレジェンドではない。

インドに渡航すると、タミル・ナードゥ州の古都タンジャーヴールに居る祖父母の家によく行った。幼い頃は、マギーヌードルを作ってもらって喜んだものだ。タミル・ナードゥ州政府がマギーのMSG(グルタミン酸ナトリウム)と鉛の保有量が規定量を超えているとして規制を求め、一悶着起きたのは記憶に新しい1が、それでも私はマギーのあの素朴な味が忘れられない。ノスタルジックな味とはこういうものを指すのだろうか。この記事を書いているとまた食べたくなってくる

私がこういった俗な食文化に興味を持つのは、「異文化の食文化」として説明されるものがナショナリズム的で、硬直して、生々しくないところに起因する。インスタントやレトルトは「まともな料理」と見做されないことが多い。しかし、それでも私達はインスタントやレトルトを食べる。美味しいと言って、そして共同体の中によく食べるそれを(何らかの恥や俗を許容する在り方を伴って)共有する。そんな人間のむき出しさに私は魅力を覚える。食のサブカルも、ハイカルチャーのそれと同じくらいにエモい文化なのではないか。そう思うわけだ。

ここまで読んだ読者は既に分かっているだろうが、こういう思考に至ると私は大体自分の言語創作に結びつけがちだ。この記事ではリパライン語とそういった食のサブカル(?)のような話をしてみたいというわけだ。

リパライン語が話されるユエスレオネで国民的な食べ物といえば、まず思いつくのがバスパック( baspak )だ。

革命直後のユエスレオネ連邦は第一次社会主義体制といって、集産主義的な体制であった。ユエスレオネ政府は、それまで旧政府の元で非効率的に馬車馬のように働かされていた肉体労働者に対して、水分と塩分を補給する飲料水を科学的観点から開発して提供した。それが「バスパック」である。これはアイル人に伝わる「エナジードリンク」を元に、当時の医学的見地から改良されたもので国民の間では広く好まれた飲料水であった。ピリフィアー歴2004年にショレゼスコ経済危機が起こると、不況の煽りを受けてバスパックを製造していた企業は倒産した。一方で、ショレゼスコによって民主化された企業は、このバスパックに似た飲料を発売することで市民の人気を集めようとした。市民はこれら水分補給系の清涼飲料水一般を「バスパック」と呼ぶようになり、今に至る。

第一次社会主義体制を越えて、国民的な食べ物になったものと言えばリカリア製菓が主要な生産元として有名なウォルツァスカ( woltsaska )がある。革命前である2002年、リナエスト系リパラオネ人のスールプスカスコ・ウォルツァスカイユ・インファヴェスティシャフ( Curlpuskasko woltsaskaiju infavestixaf )通称スールウォリンが古代リナエストの君主の名を取って起業したのがリカリア製菓である。革命が起こると、スールウォリンはフェンテショレーとして社長の座を追われ、リカリア製菓は集産主義体制に組み込まれた。民主化(ショレゼスコ)以後、リカリアは民営化して2005年に「スールウォリンのウォルツァスカ」と呼ばれるお菓子を発売することになる。

ウォルツァスカは戦時中からその後まで広くユエスレオネ人に好まれたお菓子だ。ヴァルカーザの果汁を砂糖とゼラチンで固め、オブラートで包まれたもので甘酸っぱい味が革命以降も愛されている。子供たちが地域のお菓子屋さんで買う駄菓子のような感覚だ。

ちなみにウォルツァスカは名前にもなる。先に出てきたスールウォリンの分家名はウォルツァスカイユだし、四代目ユエスレオネ連邦首相の名前はウォルツァスカイユである。故に彼は国民から「お菓子」( lersene )と呼ばれ、親しまれた(?)のだった。大分個人的な政策を進めたことで批判の多いウォルツァスカイユ首相だが「お菓子効果」は首相を終えるまで続いていたと言われる。

第三政変世代( lertasarjurmiler 、2020年代産まれ)の人間はウォルツァスカを食べるときに彼の政策やまた新イェスカ主義学生運動によって起こった混乱を語るのだという。美味しく人口に膾炙したお菓子から引き出される記憶は、ユエスレオネ人にとって甘酸っぱい記憶であると言えよう。


  1. https://www.thehindu.com/news/national/Maggi-Noodles-row-Gujarat-JampK-ban-sales-of-Maggi-noodles/article60327604.ece 

新しい順のコメント(0)