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改めて自治型言語とは?

これは「語学・言語学・言語創作 Advent Calendar 2022」の16日目の記事です。
15日目の記事は蓮谷彗さんのお手軽にフォントを作る話です。読もう!!!
web上だけでフォント作りが完結するなんて素晴らしい時代ですね...

本文

正しい言語、正しい文法、正しい言葉遣いとは一体何であろうか?日本語であれば文化審議会国語分科会、フランス語であればアカデミー・フランセーズなどの「言語統制機関」が訓令したものが正しい言語の在り方だといえるかもしれない。

一方で正しい言語が存在するということは、”正しくない言語”も存在することになる。この仮定が正しいとすると、昨今において物議を醸している「ら抜き言葉・若者言葉・バイト敬語」などがそれに当たることになるだろう。

しかし、”正しくない言語”も実際に使用されて機能しているのにも関わらず、正しくないとは何事であろうか。つまるところ”正しい言語”は”機能している言語”と乖離しており、実情に追いついていないと考えることもできる。

この乖離の原因は何に起因するものであろうか?

まず第一に多くの言語統制機関はクローズドな環境であり、少なくとも先に挙げた二つはそれに当てはまるということ。それぞれの会員数は二桁程度であり、最新の変化や話者の要望を汲み取るにはあまりに小さく非民主的な環境である。

第二に社会的慣習により古い言葉の使用を強制しようとする人々が一定数いるということ。言葉を変化させないのが是でありそれが守られ続けてきたならば我々は古文の学習に労力を割く必要はなかったであろうし、日本語と中国語になんら違いはなかったかもしれない。

これらの問題を解決するには、オープンで民主的で最新の変化や要望を汲み取ることのできる仕組みを作る必要がある。

筆者はこれを備えた言語のことを「自治型言語」と呼んでいる。(今後この志向に賛同する言語がいくつか出てくるようであれば、モユネ分類の項目に追加することを提案するようなことがあるかもしれない。)

OSSライクな仕組み

先ほど述べた「オープンで民主的で最新の変化や要望を汲み取ることのできる仕組み」に近いものはすでに存在している。オープンソースソフトウェア、OSSというものを聞いたことはあるだろうか。

ネット上にソースコードを一般公開することで、世界中の人と共にひとつのソフトウェアを開発できるというものだ。LinuxやFireFoxなどを普段から利用している人がいるかもしれないが、それらはこれに該当する。

ネット上に文法書などを一般公開し誰でも修正・改善・更新を提言できるようにすることで、この仕組みを再現することができる。自治型言語を実現するための現実的な手法だ。

だが、もしあなたが国際補助語としての自治型言語を望んでいるのならこの方法には大きな問題がある。共同開発のための文法書や連絡は何かしら特定の言語に依存してしまい、言語的平等を保つことができなくなってしまう。

言語的平等を保とう

人工言語の文法を記述する際、何かしら他の言語を使用しなければいけないというのは確かである...初版に限定するならば。

仮にA語なる自治型言語の文法書の初版を英語で記述したとする。もちろんこの時点で言語的不平等性を解決できているわけではない。

しかし、文法書を参考にしてA語自身でA語の文法書を記述すれば言語的不平等性を解消することができる。A語の開発に取り組む意欲がある人は、必然的にA語を学習しているであろうからだ。

このように文法書を記述する言語をすり替える手法を、筆者は「文法書のセルフホスティング」と呼んでいる。

betterって何よ

ここまでの手順を踏めば自治型言語として運用していく準備が整った...訳ではない。

ネット上に文法書などを一般公開し誰でも修正・改善・更新を提言できるようにすることで、この仕組みを再現することができる。自治型言語を実現するための現実的な手法だ。

先ほど私はこのように述べたが、何をすれば「修正・改善」をしたことになるのだろうか。いや、もちろんその言語をより良い方向にしていくことなのは間違いない。

しかし、世の中にはさまざまな主義主張や立場が存在しており、それは言語においても同じであることが予想される。

「活用を増やして情報を圧縮するか、不規則性の温床を排除するため孤立語的アプローチを維持するか」というように、お互いが良い方向を目指していても対立する可能性がある。もちろんそこで比較検討することで最良の改善案を見つけられるかもしれない。

ただ、人工言語の離散の歴史(エスペラント→イド語、ログラン→ロジバン)などを考えるに、方向性があまりにも異なる対立がないに越したことはない。

そこで、全体の大まかな方向性を定める「憲章」を定めるという発想に至った。目指すべきものとそうでないもの、絶対的に優先すべきものなどを定めておき、文法書そのものよりも改変のハードルを高くしておくのである。これはskytomoさんの人工言語22のrfc-5に影響されていることを追記しておく。

人工言語Loggishについて

ここまで自治型言語について解説してきた。三ヶ月前にも類似の記事を投稿したが、今回は改めてまとめ直した上に加筆したような形である。これだけで終わってしまうのは寂しいので、鋭意開発中の人工言語、仮称Loggishについて紹介したいと思う。
※初版文法書製作中なので、この情報は変わるかもしれない。

  • 国際共通語になり得ること
  • 文化依存を最低限にすること
  • 規則的であること
  • 構文厳密であること
  • 後方互換性維持の努力をすること
  • 上記を実現可能な範囲で利便性を追求すること
  • 上記を実現可能な範囲で学習コストを抑えること

Loggishは以上の憲章を元にした世界初の自治型言語である。
現在は日本語で初版の文法書を作成していて、「構文厳密であること」を満たすためにPEGを利用した語順の定義なども行なっている。

最後に

まずはここまで読んでくれてありがとうございます。「自治型言語っていう概念があるんだな〜」というところだけでも覚え帰ってもらえれば幸いです。

もし仮称Loggishに興味がある、あるいは開発に参加したい方はぜひ私にコンタクトをとってください!
Twitter - @See2et
Discord - See2et#6230
Misskey - @See2et

Loggish開発も行っているD-Lang Labもよろしくお願いします!
Discord - D-Lang Lab

人気順のコメント(2)

たたむ
 
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Yudai Sensei

何年もかかるかもしれませんが、参加する人が増えて実現すればきっと面白いプロジェクトになると思います。

たたむ
 
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see2et Author

何年かけても実現する所存です!