coi rodo mi'e .slaimsan.
まえがき
この度、人工言語コンペ復活となりました。作成期間2,3日という短期間ではありましたが5人の方にご参加していただきました。誠にありがとうございます。個性溢れる作品が集まりまして、大変うれしく思います。
今回の記事では、それぞれの作品を紹介しつつ、ここが良いなと思ったところを上げていきます。
1. お題の再掲
架空の文化と言語を設定して、そこで使われている挨拶を3つ程度作成して紹介してください。
紹介には、以下のような内容が含まれるようにしてください。
- どのような場面で使われる挨拶か
- 直訳的な意味
- どうしてそれが挨拶の意味になったか
例: こんにちは
日中に広く使われる挨拶。ただし、早朝は別な挨拶を使う。その日初めて会った人に使う。
直訳すると「今日は…」の意味(ここは日本語だと分かりづらいですね…例が悪かったです。)
「今日は良い日和ですね」や「今日はご機嫌いかがですか」の後半が省略されて挨拶となった。
2. 参加作品一覧
提出順で列挙します。
A. シン・訓民正音【第一回人工言語コンペDiscordプレ開催】 ( 作者: 相州/人工言語ユキュア )
B. 人工言語コンペ discordプレ開催 提出作品 ( 作者: ふぃるきしゃ(FILUKISJA) )
C. 人工言語コンペ(Discordプレ開催) ( 作者: rain=sailen [rɛn sɛlin] )
D. ディースンゼイン語(人工言語コンペ Discordプレ開催用作品) ( 作者: さなすの )
E. 挨拶【#人工言語コンペ / Discordプレ開催】 ( 作者: Atridott )
3. 講評
3-a. シン・訓民正音 (相州さんの作品)
「愚民達は言いたい事があっても書き表せずに終わることが多い。予は其れを哀れに思い、新たに言語を制定した。民が簡単に学べまた日々の用に便利にさせることを願っての事である」
(相州さんの記事から引用。太字は筆者によるもの。)
そうきたかー。ハングルを作った世宗が言語を作ったらですか、なるほど。過去の偉人が現代に転生するタイプのラノベみたいなやつですね。最近だと漫画で『パリピ公明』とかあった、そういうやつ。良いですね。誰かこのアイディアで小説書いてみませんか?
それは置いておいて、言語の構造もハングルの時と同様に簡単さを追い求めた構成になっていますね。母音も子音も最小限。音節構造もCVのみと非常に簡素。文字は由緒あるハングルを使いつつもアブジャドにするという、表記に関しても簡素さを求めた構造になっていて面白いです。(でも、アブジャドを読むには言語への慣れが必要で学習性の面で大丈夫だろうか?)
挨拶の例文も、簡単さを前面に押し出した構成になっていて非常に面白いです。「3日で!」「半日だ!」の応答は実際にやってみたい。
「簡単さ」という一つのテーマで全体がまとまっていて、非常に面白かったです。
3-b. ウタシア語 (ふぃるきしゃ(FILUKISJA)さんの作品)
詩の掛け合いで挨拶するという、中々洒落た案です。日本でも昔、和歌のやり取りでコミュニケーションしていましたが、それがフランクになったような世界だと考えると、イメージしやすいかもしれないです。
今回の作品の中で一番可能性を感じている作品でして、この案の応用を思いつきました。挨拶によく使われる定形の詩は、挨拶のために初学者は暗記しておく必要があると思います。ここで高めの学習負担が発生するわけですが、ここで一工夫すると、総合的に学習負担を軽減できるかもしれません。その言語で出てくる文法事項を網羅するような形で定型詩の挨拶が存在していれば、挨拶を覚えると同時に文法事項まで覚えることができるようになります。基本的な語彙も含めておけば、語彙まで学習できてしまいます。挨拶を覚えるだけで、文法事項の学習が完了する、そんな言語が作れるかもしれません。
誰かそういう言語を作ってみませんか?
3-c. rain sailenさんの作品
植民地の歴史を絡めて、本国と先住民の言葉が混ざり合う形で出来上がっている言語。架空世界の言語として正統派のという感じです。挨拶の擦り切れ方も歴史を感じられます。
個人的にツボにはまったのが、「すみません」が直訳すると「私は人間ではありません」になるというもの。Webでアカウントを登録する時に出てくる「私は、ロボットではありません」にチェックを付ける画面を思い出してしまいました。
話は少しそれるのですが、トキポナでは名前などの固有名詞の前に、人を表す jan を前置するのですが、この部分は自認によって soweli(哺乳類) とか akesi(爬虫類) とかに変えたりして遊んでいたりします。トキポナで自認が人間以外の人は、この言語ではどう挨拶するんだろうと意味不明な疑問が湧いていたりしました。
3-d. ディースンゼイン語 (さなすのさんの作品)
自分が呼ばれたい名前が挨拶のフォーマットに含まれるという発想は初めて、良いなと思いました。名前が分からない初対面の相手にはどう話しかけるんだろうとか、「この人にはこの名前で呼ばれたいけど、あっちの人にはその名前では読んでほしくないから別な名前を使う」とかできるなと、色々と妄想が捗る設定です。文化的な設定も面白くて、この死生観で他の文化設定を考えたら面白そうだなと思います。
死ぬ間際の挨拶、使うタイミングが難しそうだなと思いました。「いや、まだ自分は死ぬつもりはないから、この挨拶は使わないぞ」と思ってたら言えずに亡くなってしまったり、挨拶を使ったのに死ななかったり(このパターンについては記事の中で言及有り)果たして、無事挨拶をして難なく亡くなることはできるのか、ドラマが生まれそうですね。
3-e. Atridottさんの作品
ザ・ディストピアの言語という感じで、非常に面白いです。主観に基づく表現、価値判断を含む表現が使えないということで、ただただ事実を述べる文が挨拶になるという面白い設定です。
「人がいなくなるでしょう」と言いたいけど推量を含む表現だから避けて、「ここにはまだ人がいます」と、言いたいことと表面上は真逆のことが述べられているあたり、あぁ~心がディストピアするんじゃ~となりますね。謝罪の言葉も真逆で「私はしていない!!!!」と絶叫するのも、びっくりするほどディストピアです。
あとがき
いかがでしたでしょうか? こんな感じで色んなアイディアが出てくるのが、コンペの良いところだと思います。新しいアイディアは、また別の新しいアイディアを生み出します。コンペというとこで競争の形はとっていますが、アイディアを刺激して人工言語の発展に寄与するのが本当の目的です。これを見た皆様も、このアイディアの原石を基に何か新しい言語を作ってみてはいかがでしょうか?
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