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スライムさん
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第3回 #人工言語コンペ 投稿作品

coi rodo mi'e .slaimsan.

先ほど人工言語コンペのルール説明の記事を書いたのですが、やはり実例が無いと分かりにくいかなと言うことで、実際に当時自分が投稿した言語を記事として投稿しようと思います。

0. お題

百人一首を訳す、ただし、直訳である必要はない。新たな詩歌形態を考案したり、架空文化にのっとった意訳してもかまわない。歌番号1〜10までを最低条件とする。

1. 思考過程

  • プロシージャ語に1から100番まで百人一首を登録し、番号をコールするだけで、その和歌の意味になる。…ジョークです…
  • 詩の形式をどうするか。これは言語の形式が決まらないと決められない。先に文法事項を決める。ただし、詩に向いている構成にする。
  • クレリカのような標識を使うと、語順が自由になるし、語尾が統一されて自然に韻が踏める。
  • 感情のカテゴリはプルチックを使う。基本感情に母音を割り当てて、応用感情はその組み合わせとする。
  • 語彙をアプリオリにすると死にそうなので、なんらかの言語を参照したアポステオリとする。
  • 架空文化を考えてもいい。
  • 詩の形式について。一行16文字以内、4行構成とする。
  • 感情を逐一示すのはなぜかと考えた時に、「これはコンピュータに詩を理解させるために作られた言語なのでは?」と想像。コンピュータ向けの言語という想定とした。そこから字数で詩の形式を決めるという案に至った
  • 語彙はエスペラントから借りてくる。語根の後ろに感情語尾をつけることで単語とする。

2. 文字と発音

以前考案したロジバン式のアルファベットでエスペラントの発音を表すことにする。

文字 音価
a [a]
b [b]
c [ʃ]
d [d]
e [e]
f [f]
g [g]
h [h]
i [i]
j [ʒ]
k [k]
l [l]
m [m]
n [n]
o [o]
p [p]
r [ɾ]
s [s]
t [t]
u [u]
v [v]
w [w]
x [x]
y [j]
z [z]
ts [ts]
tc [tʃ]
dj [dʒ]

3. 感情語尾一覧

プルチックの感情の輪に基づく感情とそれを表す語尾を以下とする。

基本感情                 

感情 語尾
喜び ia
信頼 uy
心配 ay
驚き ua
悲しみ aw
嫌悪 ew
怒り oy
予測 io

応用感情

感情 語尾
楽観 iayo
uya
服従 ayuy
畏怖 way
失望 uaw
自責 awew
軽蔑 ewoy
攻撃性 oyo

4. 文法事項

内容語の後ろに感情語尾を入れなければならない。これ以外の文法事項はない。
感情語尾は、話者がその内容語で表される概念についてどう思っているかを明示するものである。

5. 百人一首の翻訳

  • 1.天智天皇
    秋(あき)の田(た)の かりほの庵(いほ)の 苫(とま)をあらみ
    わが衣手(ころもで)は 露(つゆ)にぬれつつ

    Awtunia kampia 秋の畑[嬉しい]
    Muy en tenduy テントの中の私[信頼]
    Akvua el fendua 隙間からの水[驚き]
    Malsekuya tukuya 濡れた布[愛]

  • 2.持統天皇
    春過(はるす)ぎて 夏来(なつき)にけらし 白妙(しろたへ)の
    衣干(ころもほ)すてふ 天(あま)の香具山(かぐやま)

    Printempio finio春、終わり[予測]
    Someria someria 夏だ、夏だ[嬉しい]
    Blanktukio sekio白布、干されている[予測]
    Tce montpiedio 山の麓で[予測]

  • 3.柿本人麻呂
    あしびきの 山鳥(やまどり)の尾(を)の しだり尾(を)の
    ながながし夜(よ)を ひとりかも寝(ね)む

    Montio birdio 山の鳥[予測]
    Vostio longio尻尾、長い[予測]
    Ankaw noktaw 夜も(長い)[悲しい]
    Nur maw dormaw わたし一人寝る[悲しい]

  • 4.山部赤人
    田子(たご)の浦(うら)に うち出(い)でて見(み)れば 白妙(しろたへ)の
    富士(ふじ)の高嶺(たかね)に 雪(ゆき)は降(ふ)りつつ

    Tce bordio Tago 田子の浦に[予測]
    Mio estio, vidio 私は居て、見る[予測]
    Blankua nedjua 白い雪[驚き]
    Sur la montkapua 山頂に[驚き]

  • 5.猿丸大夫
    奥山(おくやま)に 紅葉踏(もみぢふ)み分(わ)け 鳴(な)く鹿(しか)の
    声聞(こゑき)く時(とき)ぞ 秋(あき)は悲(かな)しき

    Atserua rudjua 紅葉、赤い[驚き]
    Tservua tretua 鹿、踏む[驚き]
    Awdaw kantaw 鳴くのを聞く[悲しい]
    Awtunaw Awtunaw 秋だ、秋だ[悲しい]

  • 6.中納言家持
    鵲(かささぎ)の 渡(わた)せる橋(はし)に 置(お)く霜(しも)の
    白(しろ)きを見(み)れば 夜(よ)ぞ更(ふ)けにける

    Laktovoyio estio 天の川は[予測]
    Pigio plumio カササギの羽[予測]
    Blankua pluynua 白い霜[驚き]
    Malfruua noktua 晩い夜[驚き]

  • 7.阿倍仲麻呂
    天(あま)の原(はら) ふりさけ見(み)れば 春日(かすが)なる
    三笠(みかさ)の山(やま)に 出(い)でし月(つき)かも

    Vastua tcelua 広大な空[驚き]
    Lunuya samuya 月は同じ[愛]
    Montuya Mikasa 三笠の山[愛]
    Templuya Kasuga 春日の神社[愛]

  • 8.喜撰法師
    わが庵(いほ)は 都(みやこ)の辰巳(たつみ) しかぞ住(す)む
    世(よ)をうぢ山(やま)と 人(ひと)はいふなり

    Muy Kalmuy 私は静かに[信頼]
    Lodjuy tce Uji 宇治に暮らす[信頼]
    Onewoy direwoy 人は言う[軽蔑]
    Tcuya afliktuya すべて(=世の中)を憂いて[愛]

※この短歌は感情語尾が非常に有効に機能している。「人々は『私が世の中を憂いている』と言っている」が、むしろ私は世の中を愛おしく思っているし、私のことを誤解している人々を軽蔑している、というニュアンスを感情語尾を活用することで表している。

  • 9.小野小町
    花(はな)の色(いろ)は 移(うつ)りにけりな いたづらに
    わが身世(みよ)にふる ながめせしまに

    Longaw pluvaw 長い雨[悲しみ]
    Floraw velkaw 花、枯れる[悲しみ]
    Maw pensaw 私も物思いにふけって[悲しい]
    Ankaw velkaw (私も)枯れる[悲しい]

  • 10.蝉丸
    これやこの 行(い)くも帰(かへ)るも別(わか)れては
    知(し)るも知(し)らぬも 逢坂(あふさか)の関(せき)

    Venua, revenua 来る、帰る[驚き]
    Konua, malkonua 知っている、知らない[驚き]
    Aridjua, disirua 集まる、別れる[驚き]
    Barilio Awsaka 逢坂の関[予測]

6. 付録の辞書

内容語 意味
aflikt- 思い悩む
akv-
ankaw ~も
aridj- 集まる
atser- 紅葉、楓
awd- 聞く、聞こえる
awtun-
baril-
bird-
blank- 白い
blanktuk- 白布
bord- 海岸
dir- 言う
disir- 別れる
dorm- 寝る
el [前置詞]~から
en [前置詞](場所の)中で
est- 英語のBe動詞
fend- 隙間
fin- 終わる
flor-
kalm- 静か
kamp-
kant- 歌う、鳴く
kap-
kon- 知っている
Laktovoy- 天の川
lodj- 住む
long- 長い
lun-
m-
malfru- 晩い
malsek- 乾いていない、濡れている
mond- 世界
mont-
montkap- 山頂
montpied- 山の足元、山の麓
nedj-
nokt-
nur ~だけ
on- 一般の人
pied-
pig- カササギ
plum-
pluv-
pluyn-
post [前置詞]~の後ろ
printemp-
renkont- 出会う
reven- 帰る
rudj- 赤い
sek- 乾いている
somer-
sudeost- 南東
sur [前置詞]~の上に
tc- すべて
tce [前置詞](場所)で
tcefurb-
tciel-
templ- 神社
tend- テント
termitey- 庵、隠れ家
tret- 踏む
tserv- 鹿
tuk-
-ul- [接尾辞]~する人
vast- 広大な
velk- 枯れる
ven- 来る
vid- 見る
vost- 尻尾

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