ランディは、7セグメントを用いた文字を使用する人工言語であるため、無制限に「造字」ができません。この制約の中で、文字の形状に適した発音体系が決められているため、5種類の母音と13種類の子音が定義されています。また、ランディの単語はすべて (C)V(ん) の単音節であることが先に決められています。この形に適合した単語しか造語できません。Cには、f / h / m / l / n / s / ʃ / p / b / t / d / k / g を入れることができ、Vには、u / i / a / e / o を入れることができます。なお「ん」は、後続音により、m / n / ŋ などに変化しますが、ここでは面倒を避けるために、一律 (C)V(n) と書くことにします。さて、では早速、単語を作っていきましょう。作れる単語の数は、14×5×2=140 が上限になります。
トキポナで「愛」は olin で「性」は unpa です。olin の後半部分と、unpa の前半部分を取り出すと、in と un になります。これは発音にも対称性があって良いですね。なので、ランディの単語に取り入れましょう。これで2個の単語が決まりました。
タイ語で「良い」は di です。仮にこれをランディの単語に取り入れたとして、反対語である「悪い」を仮に din としてみます。ここで、タイ語で「捨てる」は tin であることを思い出すと、din と tin を関連付けてみたくなります。日常の中で「良い部分は残し、悪い部分は捨てる」ということは一般的によくあることなので、din と tin には関連性があります。そこで、tin に「不要な/汚い」という意味を持たせてみると、この tin の反対語、つまり「必要な/きれいな」という意味の単語は、理論的には ti になるはずです。しかし、この ti と、先ほどの「愛」を意味する in を比べてみると、ほとんど意味が同じように思われます。「これは私にとって tin だ」と言うのと「これは私にとって in だ」と言うのは、「嫌いだ/ゴミだ」と言うのと「好きだ/お気に入りだ」と言うのに等しいとすぐに理解できます。この in と tin は、発音にも関連性があって良いですね。これで、di ⇔ din ⇔ tin ⇔ in という単語間の関連性も美しく整理され、また ti という発音(単語)を、別の意味に充てるためにキープして(残して)おくこともできるわけです。これで3個の単語、di, din, tin が新たに決まりました。
タイ語で「見る」は du です。韓国語で「聞く」は tu です。発音に対称性があって良いですね。仮に「見る」を du とし「聞く」を tu としてみましょう。さて「見る」と「目」は同じ単語で良いでしょうか?これは意見が割れるところですが、私は「聞く」と「耳」は同じ単語でイケると思いますが、「見る」と「目」は単語を分けたいのです。タイ語で「目」は ta なので、仮に「目」を ta としてみましょう。目と耳が、ta と tu になり、発音に関連性があって良いですね。私は du には「見る/読む/会う/視界/景色」の意味を与え、ta には「探す/調べる/目/中心」の意味を与えることにしました。これで3個の単語、du ⇔ tu ⇔ ta が新たに決まりました。
タイ語で「家」は ban です。「家/部屋」とは、人間などを入れる「入れ物」ですが、「鞄/器/箱/篭」なども「入れ物」です。これらは、物品などを入れる「入れ物」です。ところで「鞄」は英語で bag ですよね。なので「鞄」に ba の発音を充ててみましょう。すると、ban は「人間などを入れる鞄」で、ba は「物品などを入れる家」となり、意味と発音に関連性が持てるので良いですね。これで2個の単語、ba ⇔ ban が新たに決まりました。
ところで、「棒」と「ボール」って、反意語ではないけれど、なんとなく逆っぽい形状ですよね。でも発音は似ています。なので「棒」を bo とし「ボール」を bon としてみましょう。タイ語で「玉」は bon ですし、分かりやすいですね。これで2個の単語、bo ⇔ bon が新たに決まりました。
さて、この手法でどんどん単語を作っていくと、簡単に100語くらいは造語することができます。しかし、すべての単語がすんなりこの手法で決まるかというと決してそうではありません。このような造語は、確かに中盤までは上手くいくのですが、後半になると苦戦を強いられます。なぜなら、余っている使える発音が残り少なくなってくるので、充てたい発音にすでに単語が設定されている場合が頻発するようになります。すでに決めた単語を移動するとなると、その単語に関連して設定されている単語も移動しなければならず、破綻してしまいます。破綻しないように気をつけながら設定の見直しを重ねに重ね、巧みに単語と発音を設定し直していく必要があります。
この調整作業は、終盤戦になると指数関数的に困難になってきます。「この意味の単語に何故この発音を充てるのか」その合理的な理由がないならば、その設定は認められないので、そうなるともはやこの作業は「造語」ではなく「パズル」です。「創作」する作業ではなく「発掘」する作業になります。単語が140個ならば、140の階乗の組み合わせがある中で、最善の組み合わせを「発掘」する作業です。これを見つけるのは、もはや「神業」です。
さらに、ランディの造語には、これとは別のもう一つの「神業」が必要です。それは、各単語が持つ意味の範囲の調整です。すべての前提として、まずこの調整をしておかなければなりません。ランディは、文法上の理由により、nu, nun, lun, sun の4個の音節が単語として使用できないので、単語の総数は136個になります。そのため、この世界のすべての概念を136個の単語で表現できるように調整しなければなりません。137語ではダメで、135語でもダメなのです。そうなるように、各単語が持つ意味の範囲を調整しておかなければなりません。これが、もう一つの「神業」です。
ランディの造語は、この2つの「神業」を達成してこそ可能になります。しかし、私は神ではないので、その領域に到達することはできません。でも、精一杯、頑張って、それに近いものを見つけ出したつもりでいます。
以上、ランディの造語法についてのお話でした。
人気順のコメント(1)
長文ですが、本記事の全文はこちら↓
ameblo.jp/shimizu-tknr/entry-12847...