私が作った(作ろうとした)言語は例外(タコ語など)を除いてすべて絵文字から語を生成する方法の実践でした。今回はPaibbai languageを例にしてその手法と利点、課題について説明します。
動機・目的
私がこの造語法にこだわる理由は次の3点です。
① 音素配列の自然な偏りの達成
せっかく/g/の音素を導入したのに、作者がその響きを好まないために/g/の音素があまり使われない、というように、人間一人の脳でアプリオリに造語をしようとすると音素や音素配列の頻度に不自然な偏りができてしまうと思っています(自然言語の語は響きが良いものばかりではないため)。はじめに音声とは無関係に絵文字を作っておくことでその偏りを解消できると考えています。
② 造語よりも作文を重視する言語制作の実現
文法書と辞書しかない言語はなく、まずはじめに文章があり発話があります。言語制作においてもその順番に従い自然な言語の記述をするためにまず絵文字で作文を行い、替次式暗号の要領で音声言語へ変えていきました。絵文字を使うことで文全体を見渡すことができます。
③ ムンビーナ語の影響
言語制作の思想はほとんどムンビーナ語の丸写しです。
手法/Paibbai language の例
絵文字を単純な記号に分解し、それと音節を対応させます。
子音は大まかな形、母音は方向と大きさに対応します。
CV型音節
P:☐ 閉じた四角形
B:Π 一辺が開いた四角形
W:= 横の平行線
S:◇ 斜めの四角形
T:△ 閉じた三角形
D:Λ 一辺が開いた三角形
R:// 斜めの平行線
K:◸ 斜めの閉じた三角形
G:Γ 斜めの一辺が開いた三角形
∅:| | 縦の平行線
-E 上向き横長
-A 上向き
-O 上向き縦長
-I 下向き横長
-UI 下向き
-U 下向き縦長
-WE 横向き横長
-WA 横向き
-WO 横向き縦長
P:☐はB:Πに辺が追加されたものととらえ、元のΠの向きを☐の向きとします。
W:=
S:◇
R://
∅:||
は上下左右の区別をせず、母音はE/A/Oしか付きません。
K:◸
G:Γ
は左右の区別をせず、母音WE/WA/WOは付きません。
例
>:横向きの一辺は開いた三角形。縦長でも横長でもない
→TWA
||:縦向きの平行線。縦長
→O
音節末要素
I:| 縦の直線
B:- 横の直線
D:/ 斜めの直線
Iは前の母音を二重母音に変えます。語頭では母音のIになります。
Bは音節末子音のB、語頭では母音のU、母音の前では単音節WIになります。
Dは音節末子音のD、語頭では母音のUI、母音の前では単音節RIになります。
例
- > : B + DWA → udwa
> - | | : DWA + B + A → dwawia
声調
絵文字を分解した要素は上から下、左から右に読みます。
次の要素が下にある場合はその要素は中声調、右にある場合は高声調、内側や重なっている場合は下降声調が音節に付きます。
造語例
例(日本で使われる絵文字を転写したもので、Paibbai語の単語とは関係ありません)
(^^) ( →|^^| )
→ 横長の平行な縦棒の中に縦向きの一辺が開いた三角形が横に並んでいる。
→ | | 内側 ^ 右 ^
→ E 下降声調 DA 高声調 DA
→ e`da'da
OTZ ( ☐ΠL )
→ 横向きの四角形の右に上向きの四角形、その右に縦長なL字
→ ☐ 右 Π 右 L
→ PWA 高声調 BA 高声調 GU
→ pwa'ba'gu
例(実際のPaibbai languageの語)
目👁(→ <☐> )
→ 横長の斜めの四角形(<>)の内側に縦向きの平行線
→ <> 内側 | |
→ SE 下降声調 A
→ se`e (響きの調整のために最終音節をA→eとした)
口👄(→ ▽ )
→ 横長の下向きの三角形
→ ▽
→ TI
→ ti
課題
この造語法の課題を書き散らしておきます。
・トキポナのように表現できる概念が貧弱になる。
・「平和」「科学」そのものをどのように絵文字にするか
・自然言語と同じく、適当なほかの語から派生させれば良い?
・時制、受動態などの文法的な要素
・鯖と鯵のような絵文字で区別しづらい概念がある。(鯖そのものの絵文字は描けない)
・(自分の解決法)動物の特徴的な部位の絵文字をその動物の絵文字として使用
・例 くちばしの絵文字→くちばしが特徴的な鳥の一種
鳥の絵文字+唇の絵文字→くちばし
・仕組みが替次式暗号と同じなので、完全なアプリオリではない。
・同じ絵文字の体系からは同じような言語しか作れない。
・私が今まで作ってきた言語の単語間にも音韻対応があるはず
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