Salom! グロバサたんです。
たまにはグロバサを離れて、日本語圏で知名度の低い他の人工言語について紹介する記事を書いていこうと思います。
概要
Kah は人工言語のひとつで、補助語としての使用を意図して設計されました。文化的に中立であることを謳う、いわゆるアプリオリ型の言語です。
公式のウェブサイトはここで、辞書はKah-英語版と英語-Kah版とがあります。英語版にはかなり多くの語彙が収録されています。日本語版の作成も進められていますが、現在(2025-08-25)のところ収録語数は極めて限定的で、実用には耐えません。
基本的な文法事項
語順
Kah の基本語順は SVO です。ただし、日本語と同様に、文脈上明らかと判断された項は省略可能です1。
- Wa nenju awau.「私はこれが好きだ。」
- Nenju awau.「これが好きだ。」
- Wa nenju.「私は好きだ。」
- Nenju.「好きだ。」
文法上、形容詞が存在しません。状態動詞(stative verb)がその役割を兼ねます。状態動詞、限定詞、数詞など、名詞を修飾する要素は、いずれも名詞に後置されます。
- chai「お茶」→ chai sham「暖かいお茶」
(項をひとつだけとるような)状態動詞を名詞に前置すると、文法書でいうところの叙述用法をつくれます。結果的に、そうした動詞に関してだけは VS 語順が適用されているような形になります。
- Sham chai.「お茶が暖かい。」
複合動詞構文
いくつかの動詞は自然言語でいうところの前置詞のようにふるまいます。この点は中国語の介詞に少し似ています。
tunti「超える」
- Li nenje tunti wa「あなたは私よりも賢いです。あなたは賢さについて私を上回っています。」
bo「内側にある」
- wa bo vando「私はシェルターの中にいる」
- soza chai bo vando「シェルターの中でお茶を飲む」
語の派生
Kah では複合語や畳語が多用されますが、いくつかの場合には語根と語根をそのままくっつけるだけではダメで、若干の語形変化を伴う場合があります。
たとえば、音節末の m, n, ng は、後続する子音に同化します。
- kim「王家の」+ ti「上(に、の)」-> kinti「王冠」
- kom「虚偽」+ ka「言う」→ konka「嘘をつく」
また、m, n, ng に後続するのが f, v, h, l, r だった場合、m, n, ng の手前にある母音が語根の間に挿入されます。
- lam「白い」+ vun「金」-> lamavun
おわりに
これ以外にも説明したい部分はたくさんありますが、ひとまずここで一区切りとします。質問があれば是非受け付けます。
-
補助語でこのような性質を有するものは実は大変稀です。 ↩
人気順のコメント(0)