作文したいけど、テーマが無い!
という言語創作あるある。
これを解消するために伝統的(?)にりんご文や不思議の国のアリスなどが使われている。
このうち、りんご文はどちらかというと文法事項の確認が目的。
この記事で紹介するのは同じような目的で使えそうな東京外大語学研究所の『語学研究所論集』に含まれる特集とそのデータベース。
語学研究所論集は1996年から毎年刊行されていて、2009年(14号)から2018年(23号)には特定の文法現象について様々な言語からデータを集めた「特集」がある。
たとえば2009年の特集は「受動表現」、2010年の特集は「アスペクト」。「AはBにたたかれた」「~さんはもう来た」みたいな例文をいろいろな言語で言うとどうなるか調べている。
特集で集められた例文データは語研論集データベースで一覧できる。UIがやや微妙だが同じ文がいろいろな言語でどう表現されているか見れてうれしい。
例文は基本的に以下の形式で載っている:
- 日本語訳
- 原語
- グロス
特集『他動性』のトルコ語の記事から引用するとこんなかんじ:
01a:: 彼はハエを殺した。
O, sineğ-i öl-dür-dü.
彼 ハエ-acc 死ぬ-caus-past
原語はたいていハイフン(-)で形態素に分けられていて、その下の行にそれぞれの要素の逐語訳(グロス)が書いてある。ここにはacc(対格)、caus(使役)、past(過去)みたいな略語が使われている。略語の意味は論集本体のPDFを見ると書いてある。そのうちたいていはLeipzig Glossing Rulesに載っているのでとりあえずこっちを見ることにしてもよい。
論集本体のPDFには(あたりまえだけど)データベースに載っていない情報がたくさん書いてある。各例文についての説明があったり、言語によってはその文法現象全体の概説が載っていることもある。
あと、実は特集が終わった後も『特集補遺』という形でたくさんデータが拡充されている。しかし、これらはデータベースにぜんぜん反映されていなくて、そういうのはPDFで見るしかない。
以上、語学研究所論集の特集を人工言語の作文のテーマにどうですか?という記事でした。「これさえ訳しておけば文法は一通りOK」みたいな網羅的なものではないけど、いろんな自然言語のデータを見ながら自分の言語の文法を考えるのも楽しいんじゃないでしょうか。
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