先日、話題のチャットボット「Chat GPT」のアカウントをつくり、いろいろなことを試していた。
そのとき、ふと「人工知能に人工言語をつくらせることはできるのか。」と思い、Chat GPTを使って人工言語を作ってみることにした。
日本語的には「人工」言語というと「ヒト」が作ったものというニュアンスが強いが、英訳の constructed language は「創作された言語」なので、本記事ではこちらの意味で「人工言語」という語を使う。
目次
対話型人工言語制作
まず、流石に優秀な人工知能といえど、ただ一言「人工言語をつくって」といっても、言語学や人工言語について無知な人間がそうであるように、AIも具体的な内容を伴った人工言語は作ってくれないだろうと考えた。(この部分については、興味本位で追加実験を行うと、面白い結果になった。詳しくは後述「自立型人工言語制作」)
そこでまず私は、「対話」によってAIに人工言語をつくってもらう、つまり、AIと人工言語を「共同制作」することを試みた。
以下に、その対話を引用する。
私は今、新しい人工言語を作っているのだけれど、「猫」を指す語は何にしたらいいかな?
おそらく「ネコ」という語を使うのがいいと思います。
アプリオリにしたいんだ。それ以外で頼む。
おそらく「ニャー」という語を使うのがいいと思います。
それでは、「犬」は何という語にしよう?
おそらく「イヌ」という語を使うのがいいと思います。
アプリオリにしたいんだ。それ以外で頼む。
おそらく「ワン」という語を使うのがいいと思います。
それでは、「私」は何という語にしよう?
おそらく「ワタシ」という語を使うのがいいと思います。
アプリオリにしたいんだ。それ以外で頼む。
おそらく「アタシ」という語を使うのがいいと思います。
もう少し独自性がほしいな。
おそらく「ウチ」という語を使うのがいいと思います。
もっとオリジナルなのがいい。
おそらく「オレ」という語を使うのがいいと思います。
もっと。
おそらく「ジャナ」という語を使うのがいいと思います。
それでは、「あなた」は何にしよう?これもできるだけオリジナルがいいな。
おそらく「アナタ」という語を使うのがいいと思います。
もっと独自性があるのがいい。
おそらく「キミ」という語を使うのがいいと思います。
もっと。
おそらく「ミナ」という語を使うのがいいと思います。
それでは、この言語では「彼」や「彼女」と「これ」や「それ」や「あれ」を、違う言葉で表すべきだろうか、それともいっそ、一つの言葉にするべきだろうか?
それは、あなたの新しい言語なので、どちらでも構いません。最終的な決定はあなた次第です。
君ならどうする?
私の場合は、「彼」や「彼女」を「カレ」と「カノ」という言葉に、「これ」や「それ」や「あれ」を「コレ」と「ソレ」と「アレ」という言葉に分けるようにします。
それでは、次のそれぞれの言葉は、何という語で表そう?
「彼」
「彼女」
「これ」
「それ」
「あれ」
おそらく「カレ」、「カノ」、「コレ」、「ソレ」、「アレ」という語を使うのがいいと思います。
もう少しオリジナリティーがほしいな。
おそらく「ケイ」、「カゥ」、「コオ」、「ソゥ」、「アゥ」という語を使うのがいいと思います。
では、この言語で「こんにちは。」は何にしよう?
おそらく「ハロー」という語を使うのがいいと思います。
もっと独自性がほしいな。
おそらく「ヤッホー」という語を使うのがいいと思います。
もっとオリジナリティーのある挨拶がいいな。
おそらく「ハイー」という語を使うのがいいと思います。
もうちょっと。
おそらく「ハロウィーン」という語を使うのがいいと思います。
それちゃったな。既存の言葉は使いたくないんだ。
もっと独自性に富んだ「こんにちは。」を考えてほしい。
おそらく「ハイド」という語を使うのがいいと思います。
それでは、「さようなら。」は何て言おう?
おそらく「サイー」という語を使うのがいいと思います。
違うので頼む。
おそらく「バイバイ」という語を使うのがいいと思います。
既存の言葉は使いたくないんだ。もっと独自性のあるもので頼む。
おそらく「サヨウナラ」という語を使うのがいいと思います。
もっとオリジナリティーがあるのがいい。
おそらく「バイバイー」という語を使うのがいいと思います。
もっと独自性のある語がほしい。
おそらく「バイバイータ」という語を使うのがいいと思います。
もっと。
おそらく「バイバイィー」という語を使うのがいいと思います。
一旦「バイバイ」という語から離れよう。
「さようなら。」は、何という語で表そう?
おそらく「サイレー」という語を使うのがいいと思います。
それでは、この言語で「する」は何と言おう?
おそらく「シュル」という語を使うのがいいと思います。
もう少しオリジナルさがほしい。
おそらく「カラム」という語を使うのがいいと思います。
いいね。
よし。では、「生きる」は何て言おう?
おそらく「イキル」という語を使うのがいいと思います。
それでは、別の意味にとられてしまうかもしれない。
別ので頼む。
おそらく「イキム」という語を使うのがいいと思います。
もっと。
おそらく「イクス」という語を使うのがいいと思います。
いいね。
では、「死ぬ」は何にしようか?
おそらく「シルム」という語を使うのがいいと思います。
いいね。
それでは、「ありがとう。」は何て言おう?
おそらく「ドウモ」という語を使うのがいいと思います。
別のがいい。
おそらく「アリガトウ」という語を使うのがいいと思います。
もっと。
おそらく「サンキュウ」という語を使うのがいいと思います。
もっと。
おそらく「アップレイ」という語を使うのがいいと思います。
ありがとう。今日はこれくらいにしよう。
おはよう、昨日は12月3日で、今日は12月4日だから、昨日から一日経ったよ。
ところで、この言語の形態論的な分類は、孤立語、膠着語、屈折語、抱合語のうち、どれにしようか。
おそらく「屈折語」を使うのがいいと思います。屈折語とは、単語の意味を変えるために表現形を変える語形変化法です。
では、この言語の格アラインメント、特に、自動詞の主語、他動詞の主語、他動詞の目的語については、対格型、能格型、中立型、三立型のどれにしよう?
おそらく「対格型」を使うのがいいと思います。対格型とは、自動詞の主語、他動詞の主語、他動詞の目的語のどれも、基本的に同じ語形を使うことを指します。
では、授与動詞の目的語、授与対象、受取手についての格アラインメントは、間接型と二次型のうち、どれにしようか。
おそらく「二次型」を使うのがいいと思います。二次型とは、授与動詞の目的語、授与対象、受取手のどれも、同じ語形を使うことを指します。
二次型の説明としては間違っているが、つまり君はこれらのアラインメントを中立型にしたいんだね。
この言語の語順は、SOV、SVO、VSO、VOS、OSV、OVSのどれにしよう?
おそらく「SVO」を使うのがいいと思います。SVOとは、主語、述語、目的語の順番を意味します。
修飾の順番は、前置修飾、後置修飾、どちらにしよう?
おそらく「前置修飾」を使うのがいいと思います。前置修飾とは、修飾語を主語などの前に置くことを指します。
わかった。
修飾する語についてだが、名詞を修飾する語、動詞を修飾する語、名詞を修飾する語を修飾する語、動詞を修飾する語を修飾する語は、それぞれ分けた方がいいかな?それともこの4つをいくつか、もしくは1つのグループとして扱った方がいいかな?
おそらく、この4つを分けて扱う方がいいと思います。名詞を修飾する語、動詞を修飾する語、名詞を修飾する語を修飾する語、動詞を修飾する語を修飾する語の4つを、全て異なるグループとして扱うことが望ましいでしょう。
...どうだろうか。的確な応答ができている。
字数制限が 4,000字なのでこれ以上続けることはできなかったが、言語が制作されていく様子がわかる。
もちろん、このタイプのAIは、大量の文章や対話のサンプルを取り込んで、不自然ではないように返答するようにできているので、実際に「制作」したかは微妙である。
しかし、初歩的な人工言語の制作においては我々人間もそれと似たプロセスによって言語を制作するので、「人工言語初心AI」としては上出来ではないかと思う。
自立型人工言語制作
前述したように、単に「人工言語をつくって。」という命令から開始した結果を、以下に引用する。
人工言語をつくって。
『チョーウェ』
チョーウェは、新しい人工言語です。この言語は、2つの言語を組み合わせたもので、古代ギリシャ語と中国語の架空の言語です。それぞれの言語を混ぜ合わせ、新しい独自の言語をつくりました。
チョーウェは、抽象的な概念を表現するために使用されます。例えば、抽象的な思想や感情を表すことができます。また、複雑な文法を使用して、文章を構築することもできます。チョーウェでは、語順は特に重要ではありませんが、単語を適切に組み合わせることが重要です。単語を使い分けるだけで、明確な意味を伝えることができます。
『チョーウェ』における、具体的な語彙の例を示して。
・フィローー:愛
・フィーラマー:憎しみ
・ウェーナー:希望
・マルーラ:怒り
・テージー:勇気
・ドーラ:努力
『チョーウェ』の例文を示して。
ピーラウェー、フィローーのテージーを感じる。(私は、愛の勇気を感じる。)
全チョーウェ文で書くと?
フィローー テージー ピーラウェー。
では、「私たちはあなたに感謝する。」をチョーウェに訳すと?
ウェーナー マルーラ ピーラウェー。
「私は怒りを希望する。」という意味になるけれど、
あなたは、怒りたいの?
ここで、応答停止の警告文が出たので終了した。
しかし、最後の文は一体何だったのだろうか。
まず「『チョーウェ』の例文を示して」に対しての出力は、
「ピーラウェー、フィローーのテージーを感じる。(私は、愛の勇気を感じる。)」
次に、「全チョーウェ文で書くと?」に対して、
「フィローー テージー ピーラウェー。」
ここから、「私は」にあたる語が「ピーラウェー」であることがわかる。
初めの『チョーウェ』の説明で「語順は特に重要ではない」と言っているので、「ピーラウェー」は一人称の主格のみを表すと考えてよいだろう。
そして最後に、「では、『私たちはあなたに感謝する。』をチョーウェに訳すと?」という質問に対して、
「ウェーナー マルーラ ピーラウェー。」
という返答をした。
「『チョーウェ』における、具体的な語彙の例を示して。」と命令したときの出力を参考にすると、
「ウェーナ」は「希望」、
「マルーラ」は「怒り」、
そして「ピーラウェー」は前述より「私は」などと訳すことができる。
よって、この文を解釈しようとすると、
「私は怒りを希望する」
もしくは、
「私は希望を怒る」
となるが、言語的により自然なのは前者であろう。
そこで私は、「あなたは、怒りたいの?」と尋ねた。
するとそこで応答が止まった。
おわりに
あくまで「不自然にならないように返答するシステム」なので、最後の実験結果は偶然によるものかもしれないが、ともかく、全体を通してAIの「人工言語をつくる」という新たな可能性を発見することができたと思う。
今後、さらなる実験を続けていきたい。
Top comments (4)
オチがAI倫理で好き
大変申し上げにくいのですが、、
私AIには詳しくないので、「AI倫理」という言葉を知りませんでした。
検索をかけてもいまいちわかりません...
よろしければ、簡単にでも説明いただけますか?
すみません。通知を見落としていました…
「AI倫理」というのはAIが人間に害をなすような判断をしないためにどうするか、という話題でよく取り上げられるものですが(参考)、ここではただ「AIが何かまずいこと言って強制終了させられた」っぽいシチュエーションだ、というネタで使っただけで特に深い意味はなかったです。
なお僕は人間です。
参考リンクまでつけていただいて、ありがとうございます!
なるほど、そういうことでしたか (´∀`*)