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スライムさん
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電化製品の報知音パターンに基づいた言語の検討

coi rodo mi'e .slaimsan.

以前リズムによる言語打語の紹介をしました。今回はその続きとなる記事です。
今回着目したいのは、リズムによって受ける印象を利用するというものです。

実は家電製品が音で報知する情報はある程度のガイドラインがあり、推奨されるパターンというものがあります。今回は、このガイドラインの内容の紹介と、これに基づく言語への応用を考えてみたいと思います。

1. 家電製品における操作性向上のための報知音に関するガイドライン

現代日本社会に住んでいて、家電製品に全く触らずに生活している人というのは稀かと思います。毎日使う家電製品から色々な報知音が出ているかと思いますが、その音のパターンのガイドラインを示しているのが、前述の資料になります。典型的には洗濯機を思い浮かべて貰うのが良いかなと思います。
洗濯機を使うときの流れを整理してみましょう。

  1. まずユーザーが電源を入れる
  2. ユーザーが洗濯するコースを選択
  3. ユーザー洗濯開始のボタンを押す
  4. 洗濯が終わったら洗濯が終わったことをユーザーに知らせて止まる
  5. もし洗濯中に異常があれば一旦止めてユーザーに異常を知らせる

という流れで使うことになるかと思います。
この中で洗濯機がユーザーに情報を伝えるために鳴らす音が報知音です。この音のパターンで推奨するものを前述の資料は列挙しています。

2. 報知音の種類

前述の資料で定義されている報知音は、ざっくり言うと下記の9種類です。

# 分類 音の名称
1 操作受付音 受付・スタート音
2 操作受付音 停止音
3 操作受付音 基点音
4 操作無効音 受付無効音
5 操作無効音 動作不備音
6 終了音 終了音(遠)
7 終了音 終了音(近)
8 注意音 注意音(弱)
9 注意音 注意音(強)

一つひとつ見ていきましょう。

1の受付スタート音は洗濯機の電源を入れた時とかメニューを選択するためにボタンを押した時に、「ボタンが押されてるよー」的な感じで鳴る音ですね。これが無いとボタンを押したのが受付られたのかどうか分からないですね。

2の停止音は「電源付けたけど、やっぱりやめた」ということで電源を切ったときに「電源オフにするね」って意味合いで流れる音ですね。

3の基点音は、若干分かりにくいのですが、我が家の洗濯機には存在する音です。洗濯のコースを選んでいるときに、メニューの最後まで行ってもう一度次のメニューに進むボタンを押すと、「最初のメニューに戻ったよ!」という意味で別な報知音が流れるんですが、これが基点音ですね。晴眼者には不要な情報かもしれないのですが、視覚障害者の観点から考えると、この音は非常に有用なのです。つまり「基点音から何回目のメニューで洗濯する」というのができるわけでです。なるほど、これは上手い報知音です。

4と5はどちらも、「そいつはできねぇ相談だぜ」と拒否される報知音です。4は例えばエアコンの設定温度を変更しようとして、それ以上上げられない、あるいは、それ以下に下げられない時に「駄目だよ」と知らせる音と言えそうです。5は設定に不備があって受け付けられないようなパターン、上手い例が思いつかなかったので元の資料からケースを調べてみると、チャイルドロックが掛かってる時に操作しようとした場合などが想定の要です。

6と7は終了音で、遠近で使い分けることになっています。洗濯機は仕掛けたらその場から立ち去ると思うので、洗濯が終わったときに洗濯機から離れた場所にいることが多く、その想定で流すのが6の終了音(遠)です。人が近くにいることが想定される場合は7の終了音(近)です。電子レンジで温め終わったことを知らせる時とかが想定されるケースかと思います。

最後、8と9は機械が異常を検知して止まった時の音です。その切迫度で強弱が設定されているようです。洗濯機で洗濯物が寄ってしまって止まったりした場合は強く人間の介在を必要とするので9の注意音(強)かなと思います。(先日、まさにこの音が鳴りました。)そこまでではない注意音が8の注意音(弱)かなと思います。空気清浄機の加湿用の水が切れた時とかが想定ケースかなと思います。

3. それぞれの報知音で推奨される音のパターン

推奨される音のパターンが元の資料にあります。厳密には色んな制約があるのですが、ここでは簡単にするためにモールス符号の様に短い音と長い音の組み合わせで表現してみます。ここで "."(ピリオド)は短い音を表し、"-"(ハイフン)は長い音を表しています。

# 音の名称 推奨される音のパターン
1 受付・スタート音 .
2 停止音 -
3 基点音 ..
4 受付無効音 .- / ... / ....
5 動作不備音 .- / ... / ....
6 終了音(遠) -(繰り返し) / ..- / ....- / .-(繰り返し)
7 終了音(近) - / ..-
8 注意音(弱) -(繰り返し) / ..(繰り返し)
9 注意音(強) .(繰り返し) / -(繰り返し)

リズムから受ける印象と表したい意味がなるべく一致するように設計されていると思います。

4. 言語としての解釈案

元の資料に基づく話はここまでで、ここからは私の考えとして言語への応用を考えてみることにします。
まず、上記の表で音が表したい意味を、言語的に解釈してみます。

# 音の名称 言語としての解釈
1 受付・スタート音 肯定的な相槌、「うん」
2 停止音 自分の発話が終わったことを表す
3 基点音 話題が変わったことを受け入れる合図
4 受付無効音 否定的な相槌、疑問、「ん?」
5 動作不備音 良く聞こえなかった、理解できなかった、pardon?
6 終了音(遠) 会話を開始する時に呼び掛ける挨拶
7 終了音(近) 会話を終了する挨拶
8 注意音(弱) 弱い注意
9 注意音(強) 強い注意

1の受付音は、相槌に対応するものかなと思います。人と人が対話している中で相手が何か言った時に「聞いてるよ」とか「そうだね」とかを示す意味で相槌を打つと思いますが、まさに受付音は機械からの相槌と言って良さそうです。

2の停止音は、自分の発話が終わり、相手の発話を待つ番になったことを表すものに対応するかなと思います。通常の対話ではあまり見られないですが、トランシーバーで会話してる時に自分の発言が終わった後に、相手に「発言して良いよ」という意味で「どうぞ」と言う習慣があり、それに相当するのが2の停止音と言えそうです。

3の基点音は、対応するものが存在するのかちょっと怪しいのですが、無理くり捻り出してみました。会話の中で「ところでさ」という感じで話題が転換することがありますね。聞いている方は話題が転換したことを受け入れる合図をしてあげると対話として良さそうです。これが基点音に対応するのではないでしょうか。

4の操作無効音は、相槌の中でも否定的な相槌に対応するかなと思います。1の受付音が肯定的な相槌だったのに対して、4は逆転裁判的な「異議あり!(Objection!)」のような意味合いのものです。

5の動作不備音は、聞こえなかったか理解できなかったかで聞き返す行為に相当するかなと思います。英語の "Pardon?" みたいなやつです。

6と7の終了音は遠近で使い分けることになっていますが、会話をしてるなら基本的に近くに居るはずで終了音(遠)に対応するものをそのまま想定するのは難しいかなと思いました。ただ、洗濯機が「洗濯終わったよ」と遠くから言ってくる状況は「おーい、おーい、洗濯終わったから干して」と対話開始の挨拶をしているようにも見えます。なので6の終了音(遠)には対話開始の挨拶を対応させてみました。逆に対話終了する時には近くに居るはずなので、終了音(近)がこれに対応するかなと考えました。

8と9は注意を促す合図なので、そのまま対応させられますが、強弱については考慮の余地があります。対話においては、語気を強めて言うなどの方法で注意を強くすることができるので、あえて強弱の区別をせずに統合してしまっても良いように思います。

5. 言語への応用

最後に、今までの話を言語に応用してみます。
9種類の意味は前章で検討した案をそのまま流用します。後はそれぞれの意味に対して音をパターンを割り当てていきます。元の音のパターンを参考に割り当ててみた表が下記になります。

# 言語としての意味 音のパターン
1 肯定的相槌 .
2 発話終了 -
3 話題変更の相槌 ..
4 否定的相槌 .-
5 理解不足 ...
6 会話開始の挨拶 -..
7 会話終了の挨拶 --
8 弱い注意 -.
9 強い注意 -.-.

5番までは元の音パターンにあったものを使っています。6番からは繰り返しがあったりするので、推奨パターンを参考にオリジナルで考えたパターンを割り当てています。

使用する場面として想定しているのは、モールス符号の様に短音・長音が使える環境下において手短にレスポンスを返したい、相槌を打ちたいような場合にこのような符号を使うことを想定しています。

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