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りめすとり
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不思議の国のアリス 1-2

このページに表示されている自言語は全て音素表記です。日本語訳は拙訳。

本文

Ī nǿudut (ʁrom fónit ʃat anat lī vok fonrúʁyven ʁroʁvírat jēt ek énoven púliʁyt ýduf) pypsvī́ grónnrān psróʒi pē ksro bín jēn grónnrāt laglák péʒit frit ani fil, zǿtunit, drǿdut óʁumm jēt ȳʃuf ōh gler ipnǿu dóntek sóbrantʃyk.

原文

So she was considering in her own mind, (as well as she could, for the hot day made her feel very sleepy and stupid,) whether the pleasure of making a daisy-chain would be worth the trouble of getting up and picking the daisies, when suddenly a white rabbit with pink eyes ran close by her.

解説及びグロス

Ī nøu-du-t (ʁrom fónit ʃat an-at lī vok fonrúʁyven ʁroʁvírat-∅ jēt ek énoven púliʁ-yt ýduf)
so.that consider-PFV-ACT deeply SUP (in.one's.mind person-IND.GEN be.NOM hot drowsiness.POS haunt-REL 3.ANIM.GEN and spirit.POS go.out-REL.PFV 3.ANIM.ABL)
なのでアリスは心の中で(暑かったので眠かったしぼうっとしていたのですが、できる限り)考えました。

今回は前回に増して難しい構文が多いので頑張っていきましょう。
fónit は形容詞に後置され、最上級表現に用いられます。
ʃat は「心の中で」という副詞として用いられ、実際ここではその意味で使われていますが、「~の中心で」という後置詞として用いられることがあるため、ここでは ʃat は虚の目的語(anat以下)を伴っています。これは、続く「眠くぼうっとしていた」という「人物」アリスの描写と「心の中で」という表現を繋ぐ一種のテクニックであると捉えてもらえば結構です。

anat 以下の大まかな構造としては、fonrúʁyven ʁroʁvírat jēt と énoven púliʁyt ýduf の二つの関係節が anat にかかり、また lī vok が二つの関係節を修飾しています。

lī + 形容詞は「形容詞なので」という表現です。次にfonrúʁyven ʁroʁvírat jēt と énoven púliʁyt ýduf という表現についてです。まず、関係節において先行詞の格を明示するために代名詞を置くことがあるということを念頭に置いてください。fonrúʁyven ʁroʁvírat は「GENは眠気を感じている」という文学的表現です。口語的には fonrū (ACCは眠い)を用います。また énoven púlī は「ABLはぼうっとする」という表現です。また、ʁroʁvírat が púliʁyt と違って完結形をとっていないことに疑問を抱かれるかもしれませんが、ʁroʁvírat は l 動詞(状態動詞のようなもの)であり完結相をとり得ないことに留意してください。

pypsvī́ grónnr-ān psróʃ pē ksro bín jēn grónnr-āt laglák pé-ʒit frit ani fil,
rise.ABL daisy-IND.ACC pick.up.POS self.ACC torture.REL make.POS 3.INANM.DAT daisy-IND.GEN chain.IND.ACC self-DAT benefit.ACC or not
起き上がってヒナギクを摘むのは面倒だけど花輪を作るのは楽しいしどうしようかしらと(考えました)

ここは nøudut の目的語なので述部の frit は不定詞になっています。(尤も frit は -it 型動詞であり述部に現れるときも不定詞と同形ですが) ここで frit の主語に当たる bin (作ること)に注目していただきたいのですが、bin は倒置により目的語が後ろに送られている上に、関係節によって修飾されています。この動詞が関係節によって修飾される構文のことを連動詞構文と呼びます。この場合無理やり訳出しようとすると「(それをするために)起き上がりヒナギクを取りに行くのが面倒であるところの花輪を作るという行為が」みたいな感じでしょうか。ksraf は「POSにとってNOMは面倒である」という表現です。

zǿtun-it, drǿ-du-t óʁumm jēt ȳʃuf ōh gler̆ ipnǿu dónt-ek sóbrantʃyk
time-DEF.GEN do-PFV-ACT suddenly 3.ANIM.GEN close.by run.ACC rabbit.IND.POS white eye-DEF.INS pink
そしてその時突然にピンクの目をした白いウサギが彼女のそばを走って行ったのでした。

この箇所では二回の倒置が起こっています。まずここでは迂言的に dēt を挟んで gler ʃø̄hudut ではなく gler̆ ōh drødut という表現になっていますが、drødut と ōh の順序、そして gler̆ と ōh の順序が変わっています。(補足しておきますが ōh が完結相で述語として用いられる場合 ʃø̄hudut という形になります。)また、gler̆ は前置詞格をとっていますが、不定詞の主語は前置詞格をとります。ここでこのような倒置が起こっているのは一種の引きを作るためで、特に oʁumm などとよく共起します。

また、原文では "run" としか書かれていませんが、ウサギはアリスの周囲をグルグルと走り回っていたわけではなく走り去っていったものだと思うので ō (走る)ではなく ōh (走り去る)を用いました。

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