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かいねっしゅ
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Kainex版 人工言語の創作論

ンソピハ! さんの記事に触発されて書くことにしました。

※創作論などと大それたタイトルをつけていますが、そんな大層なことを述べるつもりはありません。しっくりくるタイトルがこれしかなかったのです。

なぜ人工言語を作るのか?

 簡単に言えば、架空世界の重厚さを増すためです。
 私は昔から空想癖があり、架空の世界を頭の中で作り上げていました。文明がある世界なので当然言語もあるだろうと思い、人工言語を作ったのが始まりです。
 当時は現実の言語をほぼそのまま流用したものでしたが、徐々に架空へシフトし、人工言語アルカを知って本格的に架空の言語の製作を始めました。
 通常の文明社会で話されているという都合上、自分の好みを反映させながらも現実の言語に比較的近い言語づくりを心掛けています。

人工言語製作のステップ

 架空世界で用いる言語の作り方です。おそらくみなさんの参考にはあまりならないと思います。

1. 固有名詞をつくる

 かなり異端だとは思いますが、私の人工言語づくりは固有名詞(人名、地名など)から始まります。架空世界について記述するのに、固有名詞さえあればとりあえず困らないというのが理由です。
 そうして作っていった固有名詞から単語を逆生成することでいくらかの単語を作ります。例えば、Sekexiyamus(セケシヤムス)という固有名詞を Sekexi + Yamus に分解し、Yamus に「国」の意味を与えます。

2. 発音をつくる

 1. と前後しますが、どんな音韻にするかを決めていきます。

3. 基礎的な単語をつくる

 文法の記述をするための最低限の単語を作っておきます。50もあれば十分でしょう。

4. 文法をつくる

 言語の骨組みである文法を作ります。基本的なレベルだけで構いません。
 なお、だいたいどんな言語にするかは3. までに決めておくと楽です。膠着語、屈折語、孤立語どれにするか、語順はどうするか、などです。このあたりは決めておかないと固有名詞の製作にも影響しますので、最初に決めておくのが一番良いでしょう。

5. 語彙を増やす

 語彙は言語の基礎の一つです。語彙が少なければ物事を表す幅はその分狭くなります。理想的には10000語ほど作れればよいのですが、何年かかるか分かりませんのでとりあえずは500くらいを目標にしましょう。
 文化により語彙の特性は異なりますので、文化や地理を考慮して作っていきましょう。例えば砂漠ど真ん中で話される言語で魚に関する語彙が豊富だとは考えにくいです。
 語源については現実の言語を参照するなどして対応します。なんにしても調べることは重要です。

6. 公開する

 個人の中で封じておくのでなければ、言語を公開するのはとても有用です。PDF, ウェブサイトなど方法がありますので、適した方法で公開しましょう。公開時期は自分がある程度自信を持ってからで大丈夫です。

7. 言語を改良しつづける

 人工言語づくりに終わりはありません。語彙や文法、発音を改良し、例文を作るというのが代表的な作業です。現実の文章を訳してみるのはとてもよい作業ですので、ぜひやってみるとよいでしょう。そのたびに人工言語の表現が広がっていくはずです。
 また、外国語を学んだり、言語学の知識を身に着けたりするのもよいでしょう。知識が増えるほど創作の深みが増していきます(「何も知らないからこそ独創的なものができる」という意見も多少の理がありますが、やはり知っていることには敵いません)。
 ときには言語の仕様を大きく変えることもあるでしょう。大変な作業ですが、理想の言語に近づくには不可欠なことです。

製作上、心がけていること

その言語らしさ

 発音の「らしさ」は常々意識しています。
 例えば「げみふる」というのは日本語らしくないと感じる方が多いと思います。このように、人工言語でもその言語らしい響きを帰納的に作ることができます。製作の際には、その「らしさ」を造語していく中で摑んで、それに沿った造語を行うようにしています。ただし、例外も作っておかないと自然ではありません。代表的なのが外来語です。

単語の細かさや領域を決める

 単語の意味をどのレベルまで細かくするか、あるいはどこを空白(一語で表せない部分)とするか、はたまたどこまでを意味に含むか、ということです。
 日本語では、"雨" を一つとっても「大雨」「土砂降り」「小雨」「霧雨」「豪雨」「驟雨」「五月雨」「にわか雨」「時雨」など様々な表現があります。しかし日本語には「砂漠で稀に降り注ぐ大雨」を言い表せる単語はありません。これが日本語の雨に関する空白部分の例です。
 また、英語では「牛」についても ox, bull, cow, cattle, heifer, carf と、状態や役割によって細かく単語が分かれますが、日本語だと、合成語を含めなければ「牛」しかありません(合成語を許すと、「雄牛」「仔牛」などが可能となります)。これが分割の細かさの例です。
 最後の事柄については、「救う」と訳される ○○ という単語が「手伝う」という意味にも適用できるのか、といったような話です。
 
 たとえばレーゲン語では、「(単なる)箱」と「ものを収納するための箱」が別の単語になっています(それぞれ、vat, banz)。

 なお、造語においては、もともとは一語一義を徹していましたが、自然言語らしさを求めるうちに緩まっていきました。レーゲン語に一義しかない単語がちらほらあったり、語義が少ない単語が多いのは、その名残です。

最初の人工言語は出来がよくない

 絵だろうと小説だろうと同じことですが、一番最初に創った人工言語はどうしてもクオリティが低くなります。レーゲン語だってそうです。矛盾やおかしな点は両手でも数えきれません。
 しかしそれは必然に近いことなのです。失敗や過ちから学ぶことで、次の人工言語はよりよいものとなっていくのです。最初に創ったものがうまく作れなくても、落ち込まないでください。

理想の人工言語の姿は?

「実用的で、かついい響きの言語」です。そんな言語は現実にはまだありませんので、自分で近づこうと試みています。そういった点からすれば、理想に一番近いのはレーゲン語ということになるでしょう(自画自賛です)。

さいごに

 人工言語(架空世界)は時間と知識があればいくらでも作っていけるのでお金はあまりかかりません。知識も深まりますし、いい趣味だと信じています。
 少しでも興味がわいたら、頭の中でしばし妄想する程度からでいいので始めてみましょう。

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