オ゛ェジュルニョェーッ語で最も興味深いことの一つは、アクセントが不明瞭で、何ら意味的弁別を為さない点である。
また、オ゛ェジュルニョェーッ語のc,qは前期祖語の音節kiとgiにそれぞれ由来すると考えられるが、一部の単語にはci,qiという文字列が見られ、矛盾してしまう。これらを解決する方法の一つとして、前期祖語にアクセントを再構することが挙げられる。
前提:前期祖語とは?
(以下ConsenceのBrxōdƣez, lanva?!より引用、一部改変)
(使用時期:紀元前6世紀~紀元)
一般的にオ゛ェジュルニョェーッ祖語といえばこれを指す。単語レベルの内的再構はある程度出来るものの資料が絶無のため詳細な文法などは不明である。しかし、近縁の古ウシェルニェクや不可解な文法の痕跡の研究により、以下の事が判明している。
・現代語と異なり、文章でも中立型のアラインメントを有していた。
・語順はコピュラの構造、及び古ウシェルニェクの動詞構造からSVOであった可能性がある。
・音節構造は子音連続が許されなかったが、母音連続は許されていたらしい。
・子音は無声無気、無声有気、有声無気、有声有気の対立があったが、説によってはここに放出音が加わる。
・母音は6個あったとされるが、長短の区別があったかは論争がある。
・接辞仮説によると、全ての単語は従属接頭辞形、従属接尾辞形、独立形に変化し、それらが結びついて新たな単語を作っていた。後置修飾が基本であった。
・数は単数、複数のみならず、全ての数が従属接尾辞形で表されていた。
・二十進法だった可能性がある。
・母音調和があった可能性がある。
アクセント
高低、強弱かは不明なものの、現代オ゛ェジュルニョェーッ語でci,qiと書かれる音節、古ウシェルニェク語の長母音の音節は、アクセントが存在したと推定できる。以下、その例を1~10の数詞を以って説明する。
現代オ゛ェジュルニョェーッ語の数詞
1: aku
2: жo
3: qru
4: nalo
5: ko'uc
6:lyeger
7: ƣeiф
8: vok
9: ъwani
10: cwir
中期古ウシェルニェク語の数詞
1: ēku
2: rozo
3: iru
4: koqwi
5: nago
6: yēr
7: ʕe'i
8: voko
9: pani
10: iwiro
前期祖語の数詞
1: ǽku
2: rəzó
3: girú
4: naɡʰo?
5: kóquki
6: ɡʰiʔéɡer
7: ʕeʔitʰ?
8: vókə
9: kʼuʔani or kʷʼani?
10: kiwírə
なお、?はアクセントが推定できない単語である。
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