前書き
最近、ごくわずかながらにオ゛ェジュルニョェーッ語を学習しようとする者がいる。このことは大変喜ばしいことであるものの、遺憾ながら検索して最初に出て来るMigdal Conlang Wikiの情報は初期に作られたまま更新されず、編集も不可能であるため役に立たない。学習希望者は必然的にすべての資料が乱雑に存在するConsenceに潜り、暗中模索せざるを得ないのが現状である。増してや、辞書に載っている単語はあまりにも少なく、Discordの単語欄から検索せざるを得ないのは、早急に改善するべきである問題である。
そこで、比較的アクセスしやすいこのサイトに、オ゛ェジュルニョェーッ語の作文において重要な役割を果たす動詞の活用を、Consenceからの転載という形ではあるものの纏めておきたい。
これが初学者の手に届くことを期待している。
なお、これらは現代文語を基準としているのに留意せよ。
文法:基本事項
アラインメント
オ゛ェジュルニョェーッ語は活格的能格言語である。自動詞について、自分が制御出来るもの(ex.)歩く)は能格、制御出来ないもの(ex.)震える)は絶対格を用いる。
※上記の例も、「自然と足が寄る」「自らを震い立たせる」と言った意味でも使えるので、どちらの格を主語で使うかは決まっていない。
ex.)Savus brāp Kāsiмix. カーシムは震えていた。
Savus brāp Kāsiм ūzugwix.カーシムは彼自身を震い立たせていた。
語順
語順は基本的にはVSOであるが、格の存在により語順は自由であり、また本来省略される代名詞を強調の意味で使う場合には、しばしば文頭に配置される傾向があった。また、副文の語順はSOVである。場所を表す語句は、修飾句と被修飾句の間を除き自由に挿入できる。
動詞の構成・活用
統語論(文法)
基本的に動詞はコピュラ(+付加副詞)+動詞本体で表され、動詞本体は文法範疇自体による変化は起きず、文法範疇はコピュラへの接辞で表明される。
コピュラは動作主の人称+数+態+語幹+時制+相+法
動詞本体は(態(用法)+)語幹(+法(用法))
このほかに動詞にしかつかない接辞が幾つか存在する。(poi- 何度も など)
そのため、一つの動詞を極端に長くすることが出来る。
ex. wor(見る)→hiшetalivirusigwei-ge-zapoiworadivrasopazeloal(神々が遠い昔(習慣的に)何度も見られているはずがないのに違いなかった時までは)
接尾辞の語末母音と次の接尾辞の語頭母音が同じ場合、一つの長母音として扱う。
複合動詞は、それ自体を一つの動詞と見なして活用する。
なお、コピュラを本来の用法として扱う場合、動詞本体の語幹が無いものであると見做して活用する。ただし、法の用法を使うときは代動詞tasを使う。
形態意味的な範疇のほか、人称もコピュラへの接辞で表明される。自動詞、他動詞に関わらず、人称は動作主を参照する。
形式張った接続方法である-ira(順接)、-irag(逆接)は、通常は動詞に接続し、コピュラ本来の用法では代動詞があれば代動詞に、無ければコピュラに接続する。
動詞の否定は、コピュラに付加副詞として否定副詞のgeを後置して表現する。
ex.)Ƣiv ge glūxk Ƣeznē'bixix.
(私はオ゛エジュルニョェーッ語を喋らない)
語用論(語法)
用法を明示する時にのみ動詞本体に接辞が付く。また人称変化するため、代名詞は頻繁に省略される。
但し、会話などで粗野な文体かつテンスが明確な場合、コピュラが省略されることがある。その場合、本来は省略される代名詞の主格が主語を明確にするために使われることがある。
修飾
名詞が名詞を修飾する際には、A+(B+属格語尾)で「BのA」となるように後置修飾する。
これに対し、形容詞が名詞を修飾する際には、必ず前置修飾する。
文法:文法範疇:人称
人称は接頭辞で表し、一人称・二人称・三人称・四人称・五人称・六人称・七人称の七種がある。
第一人称:ƣi-: 話し手
第二人称:'e-: 聞き手
第三人称:sa-: 同じ場にいる話し手・聞き手以外の人/物。また、文章中で直前に現れた(あるいは直後に現れることが予期される)内容のように、話し手と聞き手の意識の表層にあることが(比較的当然に)期待されるもの
第四人称:twa-: そのときに話し手の認知が(比較的強く)及んでいる対象で、期待される既知性を満たす人/物
第五人称:мa-: そのときに話し手の認知が(比較的強く)及んでいる対象で、期待される既知性に達しない人/物
第六人称:жe-: そのときに話し手の認知が、強くあるいは細かくは及んでいない対象。不定人称
第七人称:hiшe-: 神仏などの神聖な対象
第四・五・六人称の体系
既知性\認知の強度・詳細度 + −
+ 四 六
− 五 六
視覚に例えると、このようになる:
四 近くから見ていて、ふつうに見えている
五 近くから見ているが、期待される解像度より低い
六 遠くから見て(眺めて)いて、ぼやけている。あまり意識してない
ぼやけているため、既知性の区別は中和する
「既知性」は、そのときに期待される解像度と比べた相対的なものである
具体例:
第五
知らん人の場合
「ジョェヘふア゛ッさん?、みたいな人が〜」みたいな
期待される解像度と比べて、得られている解像度が相対的に低いことを表している
「ジョェ(ry」のことをより詳しく知ろうという必要/意識がない場合は第四人称にもなりうる
動作主が存在するけどわからない場合(で、動作主が誰なのか知りたい場合)の主語
なにか掴みかねる対象として話す場合
「素数は規則性を持つのだろうか」の「素数」のように、未知の属性を意識するときなど
「素数は、正の約数をちょうど2つ自然数である」なら、期待される既知性(素数の定義が、ここでの「既知の内容」)を満たしているため第四になる可能性が高い
第六
動作主(必ずしも人でなくてもよい)が存在するが、話題に載せる必要がなく意識しない場合、における主語。漠然と
不特定多数の人々
遠くから眺めるという視覚的イメージに合う
事物の一般的性質
これも、個別の事例ではなく全体を俯瞰するイメージである
文法:文法範疇:数
数は単数・双数・鼎数・複数の4種がある。動詞は語中に、名詞は語末(格語尾の前)に接続する。
単数:-∅-:指示対象が1つ
双数:-жo-、-(a)ж:指示対象が2つ
鼎数:-ru-、-(a)r:指示対象が3つ
複数:-ta-、-(a)t:指示対象が4より多い
(※複数形は前期祖語の*-tiに由来。数ある複数形化する方法の一つであり、後に統合していった。 また双数と鼎数はそれぞれ「2」と「3」の従属接尾辞形が化石化したものであり、かつては全ての数字で生産的な表現であった可能性がある。)
ex.1) Saruv wor ūzaжix.
彼ら三人は男二人を見ている。
ex.2)ƣaqē-t,isep-at
人間たち、鳥たち
なお、現代語では双数と鼎数は衰退し、代わりに複数形が使われることが多い。
文法:文法範疇:態
態そのものはコピュラへの接頭辞、用法は動詞本体への接頭辞で示す。能動態と使役態の2態のみがあり、その内に6用法がある。用法を明示したい場合は表記の接頭辞を動詞本体に接続する。
能動態:∅-
能動用法:∅-
通常の文章に使用される。
自発用法:a'u-
自分から始める時に使う。
ex.)Savuswe a'uqaks isepix. 彼は自分から鳥を食べた。
再帰用法:gu-
目的語が主語と一致することを示す。
ex.)Savus guwor. 彼は自分を見ていた。(なおこの文章は「それは鏡だった」とも解釈できる)
使役態:li-
使役用法:o-
使役を示す。
ex.)Salivuswe oqaks nace' isepix. 彼は私に鳥を食べさせた。
受動用法(使役受動含む):za-
逆受動文を表す。動作主は絶対格、主語は斜格で表される。
ex.)Salivus zaqaks isepe' babix. 鳥は彼女に食べられていた。
交互用法(共同含む):ēм-
お互いに行動をしていることを示す。
ex.) Saжolivus ēммor ūzapra ba. 男と女は互いを支えあった。
文法:文法範疇:時制
時制には大過去、過去、弱過去、現在、弱未来、未来、大未来の区別がある。接尾辞で表明される。
大過去:-irus
その行動が(話者の主観で)かなり昔に起こったことを示す。
ex.)Ƣivirus eli oqōal nacic, tas xiritatyugu isonya v.
遠い昔、私が子供の時、魚は川べりで捕まえられるものだった。(直訳:かなり昔の私の子供の時に、私は川べりで魚を自らに得させることが出来た。)
過去:-us
その行動が(客観的に)前に起こったことを示す。
ex.)Ƣazeca 'evuswe yuмuм lotouъe bāko kaiƣic?
何故君は頂上で君の女に向けて大声で叫んだんだ?
弱過去:-exus
その行動が(話者の主観で)直ぐ最近に起こったことを示す。
ex.)Ƣawe' twalivexus zanāelen cwar мorexix lyegerazeloal usnasoal?
六日前に何によってあの橋が壊されたのか?
現在:-∅
その行動が(客観的に)今起きていることを示す。
弱未来:-exoz
その行動が(話者の主観で)直ぐ起きるだろうということを示す。
ex.)'Evexozeш ge eпutunē 'evoz-пixras ter ūzic.
君がその男に従うなんて決めることは無いだろうよ。
未来:-oz
その行動が(客観的に)起きるだろうということを示す。
ex.) Satavozad alyēп ƣeznē' kaiƣix?
人々が君を許すだろうか?
大未来:-iroz
その行動が(話者の主観で)遠い未来に起きるだろうということを示す。
ex.)Nwir ƣaqē' savirus wōr, tsadix ƣeznē'u'e, satavi жnaм savirozeш-'iwexunērasix-Wethewlic sav-ъaguшūt rwīpyūko.
ある賢者が遠い昔に高らかに罵って言った、人々よ、地球が遠い未来滅ぶのは間違いないと主張する狂人に注意せよと。
文法:文法範疇:相
継続相 -∅
継続相はゼロ語尾で表され、「~しているところである」「~の状態が続いている」という意味を示す。
普遍相 -ōge
普遍相は-ōgeを時制に後置し、「不変の動作」「不変だと考えられていた動作」という意味を示す。
ex.) Savōge ge Tēcēbix Planseb.
東京はフランスの中には位置しない。
※1 名前は死ぬまで同じとは限らないので、自分の名前を言うときは普遍相では無く継続相で表す。
ex.) Sav hal Gwelyahi. 彼の名前はグヲェひャフュです。
※2 「~から来ました」という文脈でendを使う場合、「自分の住んでいる町から来た」というニュアンスを含む為、普遍相ではなく継続相で表す。
ex.) Ƣivira azō Бersinend, savōge ƣek ƣeznē' clir шiyoriazaprac.
私はベルリンから来ていて、そこにはこの都市より多くの人がいる。
反復相 -igwe
反復相は、-igweを時制の後に接続し、反復している動作や習慣的な動作を表す。
ex.) Ƣivigwe qaks aku isepix.
私は(習慣として)鳥を一羽食べる。
アオリスト相 -oдi
アオリスト相は、-oдiを時制の後に接続し、完結した行為、結果、始めと終わりが意識した全体、過去の動作の羅列を示す。完了相に該当する場合のうち、その結果が継続している場合は完了相でなくアオリスト相を用いる。
ex.) Savusoдi xaker-krūg xakrexarix.
彼は記事を三つ編集した。
完了相 -we
完了相は-weを時制の後に接続し、「(継続していた動作が)し終わった」「(継続していた)動作が完了・終了した」という意味を示す。
ex.) Savuswe ge gesalōn.
彼は喋り終えていなかった。
開始相 -ux
開始相は-uxを時制の後に接続し、「~し始めた」「動作が開始された」という意味を示す。
ex.)Savusux lanvabix nacic.
私の世界が始まった。
中止相 -au
中止相は-auを時制の後に接続し、「終わる」「(単に動作が)終了する」という意味を示す。完了相とは違い、動作が最後まで為されず、中断されることを示す。「終わっていないけど無理やり終わらせた」というイメージ。
ex.) Satavau ceko isepatix.
鳥達が鳴き止む。
未然相 -ar
未然相は-arを時制の後に接続し、「~しようとしている」、「まだ始まってはいないがいずれそうなるだろう」という意味を示す。
ex.)Ƣivus zrabī, tsad ƣadyonix lxāt satavusar.
私は彼らが家を必要とするだろうと思っていた。
将終相 -yeш
将終相は-yeшを時制の後に接続し、「~し終わろうとしている」「動作の完了が成されようとしている」といった意味を示す。
ex.) 'Eжovyeш qaks isepaжix.
貴方達二人は二匹の鳥を食べ終わる寸前だ。
文法:文法範疇:法
法そのものはコピュラへの接尾辞、用法は動詞本体への接尾辞、表現は副詞付加で示す。次の7法10用法4表現がある。用法を明示したい場合は表記の接尾辞を動詞本体に接続する。
なお、コピュラを本来の用法で使う場合、動詞の語幹が無いものとして扱う。
ex.)savix oni.
なお、[## 太文字-接尾辞]はコピュラに、[# 文字ー接尾辞]は動詞に、それぞれ接尾辞がつく。
直説法 -∅
話者がそのまま事実を語る時に用いる。
ex.) Ƣiv wor.
私は見ている。
懐疑法-eш
懐疑用法-∅
名前の通り、何かを疑うときに用いる。
ex.) Ƣiveш wor.
私は自分が見ているか疑っている。
確信用法-ite
何かを確信しているときに用いる。英語のmust beにあたる。
ex.) Ƣiveш worite.
私は見ているに違いない。
推量用法-unē
「~かもしれない」の意味。英語のmayにあたる。
ex.) Ƣiveш worunē.
私は見ているかもしれない。
可能性用法-ani
「~の可能性がある」の意味。推量用法と違い一定の信頼の置ける根拠があることを示す。英語のcan・may・might・ought toにあたる。
ex.) Ƣiveш worani.
私は見ている可能性がある。
伝聞用法-ok
「~だそうだ」の意味。
ex.) Ƣiveш worok.
私が見ているそうだ。
命令法-i
命令用法-∅
一般的な命令文を示す。主語は呼び掛ける相手である。一人称への命令には「~しなくては」といった意味となる。
ex.1) 'Evi wor!
君は見ろ!
ex.2)Ƣivi wor!
見なくては!
推奨用法-iv
「~した方が良い」という意味。英語のshouldにあたる。
ex.) 'Evi woriv.
あなたは見た方が良い。
義務用法-adiv
「~しなければならない」という意味。英語のmust・should・have to・ought to・shallにあたる。
ex.) Ƣivi woradiv.
私は見なければならない。
条件法(希望)-ix
希望用法-∅
「~したい」といった意味で用いる。
ex.) Ƣivix wor. 私は見たい。
仮定用法 -oni
「~であるなら(現実的に可能な)」「〜でありますように」といった意味に用いる。
ex.) Ƣivix woroni babix, sav zrabī ƣaubix?
もし彼女を私が見たら、彼女は何を思うだろうか?
接続法(仮定・反実仮想)-on
反実仮定用法 -∅
「~であるなら(現実的に不可能な)」という意味を表す。ロマンス諸語と違ってあまり頻繁には使われない。
ex.)Ƣivon isep, ƣivigwe qaksadiv ƣaubix?
もし私が鳥なら、何を食べなければならないのか?
願望用法-ixe
「~していたらなあ」のように、実際には出来てないことを言うときに使う。英語のif onlyに相当する。
ex.) Ƣivon worixe babix!
彼女を見ていたらなあ!(良かったのに)
勧誘法-ye
「~しよう」と呼び掛けるときに用いる。主語は呼び掛ける相手になる。
ex.)'Etavye wor!
君たち、見よう!
疑問法-ad
疑問文を作る際に用いる。他の法と併用が可能である。その場合、-adは必ず最後に接続する。
ex.) 'Evad wor?
あなたは見ていますか?
表現
次の4表現はそれぞれ該当する副詞を付加する。
禁止表現 (命令法命令用法+副詞付加(否定、ge))
ex.)'Evi ge wor!
君は見るな!
懇願表現(勧誘法+副詞付加(強意、adet))
ex.) 'Evye adet wor!
お願いですから見てください!
判断表現 (懐疑法推量用法+副詞付加(判断、xā))
Ƣiveш xā zrabī, tsad worras жex sav.
私は、見ることは正しいと考えられると思う。
意思表現 (命令法義務用法+副詞付加(意思、qoc))
英語のwill・shallにあたる
Ƣivozi qoc woradiv!
私は絶対に見ているだろう!
文法:品詞関係:動詞の他品詞への転用
動名詞
動名詞を作るには名詞化接尾辞-rasを動詞語幹につける。動名詞は動名詞句の最後に置かれ、動名詞句は全てハイフンで繋ぐ。話者の意識では動詞とrasにはスペースが挟まっているものだとして発話している。
ex.) satavusi-poyazōdivras
彼らが再び来たに違いないこと
動形容詞
動形容詞を作るには形容詞化接尾辞-ūtを動詞語幹の一番後ろにつける。動形容詞は動形容詞句の最後に置かれ、動形容詞句は全てハイフンで繋ぐ。
ex.) ƣadyonixic-nacic-sav-worūt ƣaqē
私の家を見る人
動詞以外の構成要素たる名詞がある場合、既に存在してある場合を除き必ず属格語尾-icをつける。
なお、文語の文章では英語のように不定詞を関係代名詞のように使うことは認められず、必ず上記の方法で表現しなければならない。それらを使用した場合、口語的と見做され、粗野な文章に取られる場合がある。
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