ここは?
2025年秋の第13回人工言語コンペの感想を自分なりにまとめてみます。素人なのであまり期待はしないでくださいね。
また、自分は間に合わず出せなかったので、せめて爪痕を残そうと書いております。
お題
平たく言えば「表意文字を作ろう」
さらに、今回はフォントを作ることが条件でした。(実際は撤回されましたが。)
また、世界人権宣言序文を全文訳すというお題も入っていました。こちらも可能ならばという形に落ち着いたようです。
A.さすなのさん ─ 色繋語
発音がない言語ですね。今回のお題は「表意文字」なので、確かに音もいらないです。こりゃ一本取られた。
4つの領域に分け、中央の語幹領域で意味を表し、周りの領域で相や数、時制を表す。また、文字に色が振られ、それによって修飾関係、接続関係を示す。
表意文字なので、とことん見た目にこだわった印象です。接続も、接続先の色がついているのでわかりやすい。
ただ、複数の色を使うということで、さすがに自然に生まれることはないのかなーとも思います。人工言語ならでは。
各領域の図形によって意味に変化が起きているので、なかなかに面白いと感じました。
(ただ、PC上ではうまく作れなさそうです)
しかも、「この字はどこに接続するか」が字ごとに表現されているので、語順がないことはうれしいです。まず並べてから、色を振って、接続すればいいだけですからね~
この言語では訳文は無いようです。
B.シラミィさん ─ エレザネン語
ガチで作ってますね。フォントの作り方だったり表示の仕方だったりも書いてくれています。
SOV言語で、少し機能語がありますね。
それから語彙数もとても多い。翻訳するお題が人権宣言ですから、多くなるのは当然でしょうが、はじめ見たとき「世界人権宣言の単語が並んでる...」と思いました。まさにこのコンペのために作られた言語のよう。フォントはアルファベットに充ててるのではなくひらがなまで入っているとのことで、ちょっと意外でした。アルファベットか漢字かなぁと思っていたので...
しかもこの方、フォント配布までしてくれてますね。ありがたいです。
かなりの熱量を感じました。この三週間でここまで仕上げるのはとても大変だったんだろうなぁと、他人事ながら思っております。
C. Red_camellia52さん ─ kɛːɛːɸyːksa語
(発音記号の[]が出せなかったのでないですごめんなさい。実際は[kɛːɛːɸyːksa]語です)
...読めない!自分はIPAがわからない!ChaGPTさんにきいたところ、「ケーエーフュークサ」だそうです。まあいいや。
数学の「ベクトル」を使った言語です。
「そんなのあり!?」
と最初思いました。どうやらAIなんかにも使われている、単語ごとにベクトルを設定し、近い意味は近いベクトル、みたいになっているもので使うそうです。さすがに全部設定するのは苦痛でしかありませんが、先人がいるようでよかった。
しかしそれでも中身は途轍もなかった。もともと300次元あるようで、とても作業はできないらしいから次元を減らして、分割して、角度を求めて距離を求めて...と、めっちゃ大変だなぁと思った。(他人事)
言語の名前の由来はベクトルだそうですが、本当...?
ベクトルを重ねて、ようやく文字の完成のようです。長かった。難しかった。
ただ、やっている内容はそこまで難しいものでもなかったような気もしないでもない。この仕組みを考えるの、大変だったろうなぁと思う。
数学的な小ネタも含まれていますしね!
この方も訳文は無いようです。
D. スライムさん 投稿作品
既存言語の表意文字、という方向へ向かっている作品です。(既存といっても人工言語なのですが。)
既存言語だと文法や音素を考えることがない分、中心である文字制作に打ち込めそうなので、この方法もありだな...と思っています。今回はフェンナ語の表意文字。
フェンナ語は三子音語根なので、文字を割り当てるのに向いているとのこと。確かに音の数が増えていかないのは楽ですね。
そして、スロットにあたる部分を文字の上下に置く仕組みにしました。
...おや?色繋語と似たにおいがしますね。ただこの作品は接続は単に左右なので、そこは違います。
それから、字形が40セグメントディスプレイですね。大きい!再現可能なのは11兆以上ということで、足りなくなることはないでしょう。
セグメントディスプレイではありますが自由度が大きいので、かなり文字のスタイルに幅がありそうです。近い意味を持つなら似た形にすることも可能そうですね!
この作品も訳文は無いようです。
E. OH!藝斗さん ─ 城彎語
漢字において形声文字と象形文字の違いが分かりにくいところに焦点を当てています。今までなかった視点。
品詞では、糊文詞と文様詞という独自の品詞が追加されています。糊文詞はいわゆる接続詞、文様詞は機能語をひっくるめた形のような気がします。にわかなのでわかりませんが。
ハングルのように音を表す部分と、漢字のように意味を表す部分がくっついています。形声文字ですね。
実際の文字は見ることができませんが、続けていく可能性があるそうなので期待して待っていましょう。
F. Cyanophanēsさん - ニャーメリ語
設定が、凄い!こういう設定・時代背景があると、本当に存在するのではないかと疑ってしまいそうです。世界中にあるスぺオポリスや、そこを行き来できる高速な移動方法、さらには各地域特有の方言や訛りまで!
ニャーメリたちが友好的でよかったなぁと思います。
言語の方も、かなりしっかり作られている印象です。母音は6種類、さらに長短区別あり。ɒの発音がいまいちわからなかったのですが、IPAChartというサイトを使ってみたらすっごいわかりました。あのサイト偉大。
それから格が多いです。9個ありますね。時制や法といった部分は、字の左右や上に置く、と位置が決まっているようです。これで3つ目ですかね。表意文字で格などのものを表そうとしたときに、周りに置くとなるのは皆さん共通なのかもしれません。
また同時に表意文字もあり、新しい単語などはそちらを使うようです。拡張性もばっちりですね!
G. チームDLISTOLON=MALS ─ スターナ書語
とある場所で使われていた言語。しかし話者が途絶えてしまったため、発音がわからないようです。世界人権宣言の訳の神が見つかったらしいですが、これは焼失したんですかねぇ...焦げ跡のような気がしています。よく作ったなぁ。
格、助詞、接続詞の代わりに「静的修飾詞」という品詞が追加されています。
ちょっと時代背景も凝ってますね。地球平面主義の方々だったのでしょうか。
単語は、概ね象形文字のようです。しかし、何となく意味が見ただけでもわかりそうですね。単語を組み合わせて文字を作るようなので、拡張性も広いといえます。感じでいうところの部首みたいな雰囲気がありますが、あれとは別にこちらは意味をすべてつなげるので、ちょっと違うかも?
この方は世界人権宣言の訳分がありますが...短いな、という印象を受けました。単語一つ一つに含まれる意味が大きいので、ここまで短いのだな、と思います。
H. やみせふぇさん ─ tpyàmi̋ȉ語v2
音多いなーという印象でした。それから音素名(?)のネーミングセンスがいいですね。むるむるそくめん好きです。それから、かなり語彙の方も作られていますね。前に作りかけた言語からもってきたようなので、もともと語彙はあったのかもしれませんが。
この方は訳文がありますね。逐語訳ですが、日本語、英語ではほとんど見かけない文字がたくさんあったので、「人工言語っぽさ」が最大限発揮されていると思います。ただ、一つ一つの語やまとまりが長いので、全体としてはとても長い文章になっています。
(実は世界人権宣言の全文って一文なんですよ。)
文字はまだできていないようですが、とてもQRコードっぽさを感じます。
I. 降雨急行さん ─ 知恵話(pejav-sez)
文の種類(否定文とか)によって文系がころころ変わる言語!それから文字の方も漢字を崩した形のようでまったく知らない形のようで、とても面白い文字でした。
しかし、何といってもその設定の深さ!宗教や文学について、かなり詳しい設定が連なっております。もはやこの世界観だけで小説が書けるのではないかと思うほど。フィクションとノンフィクションの中間のような存在で、現実に存在していてもおかしくないと思います。
歴史も細かく書かれているので、どうやってこの短期間で作り上げたのか疑問に思うほどです。普段から世界創作をしていたとしても、ここまで密度のある設定は作れないんじゃないかなぁ...
この人は世界人権宣言の訳分があります。どうやってここまで...?
終わりに
ここで今のところ提出されている作品は以上です。自分は提出できなかったのでせめてもの償いに。
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