coi ro do mi'e .slaimsan.
以前、トキポナの単語をアルファベット3文字に圧縮する3-letter toki ponaを紹介しました。これを応用すれば、速記も作れるのではと思い考えてみました。
1.速記システム概論
自分は英語向けの速記はGregg式を学んだことがあり、これを流用しようと思います。速記をやったことが無い人にも分かる説明をしますが、Gregg式から変更した部分については適宜補足します。
(ザックリまとめたチートシート。以下、この画像を念頭に読み進めて下さい。)
1-1.速記で書き分ける要素
速記では一般的に
- 線を書く方向
- 線の長さ
- 直線か曲線か
の要素を区別します。(ここに線の濃淡を区別する方式もありますが、Gregg式は濃淡を利用しないので省きます。)
1-2.線の方向
線の方向は、時計の針の方向で呼ぶことが多いです。Gregg式では
- 斜め上(2時)
- 真横(3時)
- 進行方向斜め下(4時)
- 逆進斜め下(7時)
を使い分けます。しかし、今回4時方向の線は使わなかったので、2,3,7時の3種類しかないです。
1-3.線の長さ
長さは
- 長い
- 短い
の2種類です。長い線は短い線の2倍くらいの長さにします。と言っても、今回の方式では長短を使い分けるのは1対しか存在しないので、そんなにシビアになる必要はないです。(本来のGregg式では、無声音を短線、有声音を長線にするという法則があるのですが、トキポナでこの対立は失われているため、書き分ける必要がほとんどないです。)
1-4.直線と曲線
線の書き方は
- 直線
- 曲線(2方向あるので、2種類)
の3種類があります。曲線は片方を正方向の曲線、もう一方を負方向の曲線と言うことがありますが、名前は何でもいいです。形を覚えましょう。
1-5.円とフック
上記までで述べた線の符号に加えて、線と線の間に挟む要素として、円とフックの記号があります。円は大小を区別します。またフックは下に凸か上に凸かを区別します。
2.符号の割り当て
上記までで述べた符号に音素を割り当てていきます。線の符号には子音字、円とフックは母音に割り当てます。
2-1.子音字
子音字は下記の符号を使います。(冒頭の画像と比較しながら読んでください。)
文字 | 方向 | 線の種類 | 長さ |
---|---|---|---|
P | 7時 | 左凸曲線 | 短 |
T | 2時 | 直線 | 短 |
K | 3時 | 上凸曲線 | 短 |
S | 2時 | 曲線(凸方向自由) | 短 |
M | 2時 | 直線 | 長 |
N | 2時 | 直線 | 短 |
L | 3時 | 下凸曲線 | 短 |
W | 7時 | 右凸曲線 | 短 |
Y | 7時 | 直線 | 短 |
Gregg式から以下のように記号の割り当てを変更しています。
Gregg | トキポナ |
---|---|
TH | S |
R | L |
V | W |
SH | Y |
2-2.母音字
文字 | 記号 |
---|---|
A | 大円 |
E | 小円に点付加 |
I | 小円 |
O | 下フック |
U | 上フック |
Eに添える点ですが、基本的には省略して問題ありません。ほとんどの単語ではこれらを区別しなくても判別可能です。(puに記載のある語彙だと、kenとkinくらいしか混同は起きないです。これについては、kenの方をknと綴ることで区別することにします。後は、aleとaliもありますが、同じ単語としては統合されてるので、支障がないです。)
2-3.書き方
記号は単語毎に繋げて書くのが原則になります。トキポナの単語は基本に子音と母音が交互に並ぶので、子音の線、母音の円やフック、線、円やフック、と交互に書かれるのが特徴になります。
3.語形の短縮
上記までの説明によって、通常のアルファベットを使うより少ないストローク数でトキポナの単語が書けるようになりました。慣れればこれでも、そこそこ速くかけるのですが、速記では通常、省略の規則を整備します。トキポナ向け速記でも単語の短縮規則を適用することにします。
3-1.単語縮約の規則
と言っても、縮約規則は既に作ってあります。以前書いた記事3-letter toki ponaにある通りに単語を縮約することにします。これにより、どの単語も3文字以下に縮約することができます。速記において、これを利用しない手はないです。
3-2.縮約による弊害と対応
トキポナ速記においてEとIは点を打つかどうかの差ですが、ほとんどの場合打たなくても単語が区別できると言いました。しかし単語の縮約規則の影響で、点を打たないと区別できないパターンが一つだけ増えてしまいます。
lenとlinjaがこれに該当します。linjaの縮約形はlinになるため、lenの方に点が必要になっています。それは面倒。そこで速記においてはlinjaの縮約形をlnjにすることで、点無しで区別するようにします。
3-3. U記号の省略
縮約形で単語を書いてみると、子音と子音に挟まれた上に凸のフックが若干書きにくいパターンがあります。(Uは英語ではあまり現れない文字なので、書きづらい符号が割り当てられているという背景がありそうです。)
そこで、子音に挟まれたUのフックは省略して良いというルールを設けることにします。これが適用される単語は以下です。
- kule(kl)
- kute(kt)
- luka(lk)
- lupa(lp)
- musi(ms)
- mute(mt)
- suli(sl)
- suno(sn)
- supa(sp)
- suwi(sw)
munだけは例外で、Uを省かない方が書きやすいのでそのままとします。
一部の単語はこの後に出てくる一筆化も併せて適用されます。
3-4.縮約形で利用できる符号の一筆化
速記の世界では、符号が良い感じで並んでいる時に、2個の符号を合成した符号を1つのストロークで書くことがあります。これを一筆化と言います。縮約形を使うようになったことで、一筆化できるパターンが出てきたので、その紹介になります。(そもそも、Gregg式の符号は、頻出するパターンが一筆化しやすいように設計されているので、この恩恵を享受できるようになったわけです。)
a) K+L, L+K
KとLはどちらも3時方向で、向きの異なる曲線です。なので続けて書くと波線のようになり、楽に書けます。この恩恵を受ける単語は以下です。
- kalama(klm)
- kule(kl)
- kulupu(klp)
- luka(lk)
- lukin(lkn)
b) N+S, S+N, M+S
Nから下に凸のSを続けると、長めのS符号(下に凸)みたいに一筆化できます。同様に上に凸のSにNを続けると、長めのS符号(上に凸)の様に一筆化できます。この恩恵を受ける単語は以下です。
- insa(ins)
- nasin(nsn)
- musi(ms)
- sina(sna)
- suno(sn)
編集中に気付いたのですが、sinpinをsnpと縮約することにすれば、S+Nの一筆化が可能ですね。こっちを採用しましょう。
c) S+L, L+S, P+L, S+W
上に凸のSとLを続けると、上にニョロニョロする波線で楽に書けます。また、Lの後に下に凸のSを続けると、大きな半円みたいな形になり一筆化できます。P+L, S+Wの組み合わせも大きな半円となり、一筆化できます。これらのパターンは種類が少ないですが、以下の単語が対象になります。
- seli(sli)
- selo(slo)
- suli(sl)
- alasa(als)
- palisa(pls)
- suwi(sw)
3-5.縮約形と一筆化のまとめ
以上のルールのまとめとして、全ての単語を書き出した写真を貼り付けておきます。
3-6.実践
最後に、実例として『夜に駆ける』のトキポナ訳(Xirdimさん訳)の冒頭を速記に転写した画像を貼り付けておきます。
4.終わりに
2日前に基本符号の割り当てと3-letter toki ponaの利用を思い付いて、ちゃちゃっと記事を書いてしまおうと書き始めたのですが、説明のために画像が多く必要だったり、使ってみて気付いた書きやすくするルールとか不具合とかが出てきて、思ったより時間がかかってしまいました。
速記は情報圧縮と関連があったり、人工文字の設計の参考になることもあるかと思うので、是非一度学んでみると良いと思います。(なお、私は速記字で書くと遅くなります。)
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