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スライムさん
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Speon Habeanto

本記事は、人工言語コンペ2025年夏(第12回)の参加作品です。

お題

ラテン語の娘言語大展覧会でいきましょう

概要

Speon Habeantoはルドヴィコ・ザメンホフによって創案された設定の言語である。

最初、ザメンホフはラテン語の復権が言語問題の解決策になると考えていたが、ラテン語を学んでみたザメンホフは、ラテン語は国際語としては複雑すぎると判断した。一方で英語を学んだ際には、英語は名詞の文法上の性や複雑な格変化、動詞の人称変化といった文法がラテン語より遥かに単純であることから、言語の文法体系をより単純にできる可能性に気づいた。

また、言語を学習するにはたくさんの単語を暗記しなければならない問題があった。彼は接辞を使って、一つの単語から一連の単語群として作り出すことで、暗記すべき単語数を減らすことを思いついた。

基本となる語彙は、学術用語として広く使われていて、既に死語となっており変化しにくく、誰にとっても平等な言語であるとみなされていたラテン語から採用された。

文字と発音

文字 発音
a /a/
b /b/
c /k/
d /d/
e /e/
f /f/
g /g/
h /h/
i /i/, /j/
l /l/
m /m/
n /n/
o /o/
p /p/
r /r/
s /s/
t /t/
u /u/, /w/
z /z/

※j, k, q, v, w, x, yは外来語でしか使用しない。

16条の文法

1. 冠詞

冠詞は存在しない。

2. 名詞

エスペラントと同様
  • 名詞は、語根に語尾 -o を付ける。
  • 複数形は、名詞の語尾にさらに -i を加える。
  • 名詞は、主格と対格の2格を持つ。原型が主格で、主格に対格語尾 -n を付けたものが対格である。
  • その他の格は前置詞を用いて表現する。

3. 形容詞

エスペラントと同様
  • 形容詞は、語根に語尾 -a を付ける。
  • 形容詞の数と格の表し方は、名詞と同様である。
  • 比較級は、 pli という語を形容詞の前に置くことで表現する。比較対象は、 ol という語の後に置く。
  • 最上級は、 plei という語を形容詞の前に置く。

4. 数詞

基本数詞は、以下の通り。

単語
1 un
2 du
3 tri
4 cuat
5 cuin
6 secs
7 sept
8 oct
9 nou
10 dec
100 cent
1000 mil
  • 11以上の数詞は、基本数詞の組み合わせで表す。(例:234 ducent tridec cuat)
  • 序数詞は、形容詞語尾の -a を付ける。

5. 人称代名詞

単数 複数
一人称 mi ni
二人称 ti ui
三人称 li ili

※三人称単数は、人・物、人の性別に寄らず li を使用する。
その他の人称代名詞は、以下。

  • oni: 一般人称
  • si: 再帰代名詞

6. 動詞

エスペラントと同様
  • 動詞は、主語の人称や数によって変化しない。
  • 動詞は以下のように語尾が変化する。
意味 語尾
直接法現在 -as
直接法過去 -is
直接法未来 -os
条件法 -us
命令法 -u
不定法 -i
  • 分詞があり、形容詞または副詞として用いる。
  • 分詞は以下の語尾を持つ。
現在分詞 過去分詞 未来分詞
能動 -ant- -int- -ont-
受動 -at- -it- -ot-
  • 受動文を作るには、コピュラ動詞 esti と受動分詞を組み合わせる。
  • 受動文の動作を行っている主体は、前置詞 de で表示する。

7. 副詞

エスペラントと同様
  • 副詞は、語根に語尾 -e を付ける。
  • 副詞の比較級・最上級の表し方は、形容詞と同様である。

8. 前置詞と格

エスペラントと同様
前置詞は、後ろに来る名詞に主格を要求する。

9. 発音

エスペラントと同様
単語は、書いた通りに読む。

10. アクセント

エスペラントと同様
アクセントは、終わりから2番目の音節に置く。

11. 単語構成

エスペラントと同様
  • 合成語は、単純に単語を組み合わせることで作られる。主たる単語は後ろに置かれる。
  • 品詞語尾は独立した語とみなされる。

12. 否定語

エスペラントと同様
一文の中に否定の語は複数使用しない。

13. 方向を表す対格

エスペラントと同様
場所を表す名詞・副詞に対格語尾 -n を付けると、その場所への移動を表す。

14. 前置詞 ie と対格

エスペラントと同様
  • 前置詞は各々、一定の意味を持つ。
  • 適切な前置詞がない場合は、特定の意味を持たない前置詞 ie を用いることができる。
  • 誤解の生じる恐れがない場合、ie を用いる代わりに対格語尾 -n を用いても良い。

15. 外来語

  • 外来語、すなわちラテン語以外から単語は、speon habeanto語においての正書法に従う以外は変形することなく用いる。
  • 基礎的な単語から派生語ができる場合は、基礎的な単語のみ取り入れて、派生語はspeon habeanto語の規則に従って作る。

16. アポストロフィによる省略

音調をよくするために、名詞の最後の母音を脱落させ、アポストロフィで代用することができる。

例文 旧約聖書冒頭部分

In initio Deo caelon et terron creis. Et terro informa et deserta estis, et tenebro super abysso estis; et spirito de Deo super acuo adsurgis. Et Deo dicis: lucso estu; et lucso facata estis. Et Deo lucson uidis, ce li bona estis; et Deo lucson de tenebro separis. Et Deo lucson dion nominis, et tenebron nocson nominis. Et vespero estis, et mano estis, un dio.

あとがき

すみません、今回はあまり力を入れられませんでした。というのも、仕事の繁忙期と重なりまして、あまり時間が取れず。言い訳ですね、はい。

今回の発想は、見ての通り「もしザメンホフがエスペラントを作る時に語彙をラテン語から取っていたらどうなっていたか。」です。なんで語彙をラテン語から取らなかったんでしょうね? 動植物の学名はラテン語から作られるルールになっているし、ヨーロッパ諸語の単語の中にもラテン語由来のものは多いはずなので、大分身近なものと言えるのにラテン語から語彙を持ってこなかったのは不可解です。

ラテン語の文法が難しいというのはその通りなのですが、なら文法だけ簡易化してしまえば良いではないかと。実際、エスペラントの後に「無活用ラテン語」が出てきているので、同じ発想はあったようです。でも流行ってないですね。まぁ、既にエスペラントが流行っていた時期っぽいので、人気が持っていかれてたんですかね。順序が逆だったら、どうなっていたか分からないですね。

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