coi rodo mi'e .slaimsan.
0. 初めに
X(旧Twitter)でサーラル語という人工言語があり、しかもその文法書が出版されているという情報を聞いて、今回Amazonで本を注文しました。届いて読んでみたので、いつものごとく速習シリーズをやっていきます。
今回の底本は『入門 サーラル語』(サーラル語会著、ISBN978-4-8150-1812-2
)です。ISBNがあるって良いな。
買った後に教えてもらったのですが、名前が変わって「めつラング」になってたようです。ここでは底本に従ってサーラル語と呼称することにします。
1.文字と発音
1-1. 文字
ラテン文字を使う。独自の文字などは今のところ設定されていない。
文字の名前は、母音は頭に "l-" を付けたもの、子音は末尾に "-al" を付けたもの。
1-2. 発音
1-2a. 母音
ラテン文字 | 音価 |
---|---|
a | ä̝ |
i | i |
o | ɔ̝ |
e | ɛ̝ |
u | ɯ̹ |
大体日本語と同じように発音しておけば良い。しかしこの母音の並び、アルカっぽさある。
1-2b. 子音
唇音 | 歯音 | 歯茎硬口蓋/硬口蓋音 | 軟口蓋音 | 声門音 | |
---|---|---|---|---|---|
破裂音 | p b | t d | k ɡ | ||
破擦音 | t͡s | t͡ɕ d͡ʑ | h | ||
摩擦音 | f v | s z | ɕ | ||
鼻音 | m | n | |||
はじき音 | ɾ | ɾj | |||
接近音 | j | ɰ |
大体日本語や英語の通り発音しておけば良い。
wがwではなくɰになっているが、wと対立するわけではないので、その辺り混同してても不都合はないように思われる。
1-2c. 発音に注意を要する文字
ラテン文字 | 音価 |
---|---|
c | t͡s |
j | d͡ʑ |
l | ɾ |
q | t͡ɕ |
r | ɾj |
w | ɰ |
x | ɕ |
y | j |
lとrの発音は特に注意!
なお、後ろに母音が来ないhは黙字になるという説明が底本にあるが、辞書にそのような単語は見当たらなかった。辞書には内容語しか記載がないため、もしかしたら機能語に黙字のhがあるのかもしれないが、底本の中にもそのような機能語は見当たらない。
1-3. 音節構造
基本的には子音と母音が交互に並び、子音連続は少ないらしい。辞書を見る限り内容語には子音連続は無く、一部の機能語に稀に子音連続がある。
1-4. アクセント
アクセントは常に第一母音に置かれる。
固定アクセントは学習性が高まるから良いよね。
1-5. リエゾンとアンシェヌマン
前の語が子音終わりで、次の語が母音始まりの時は繋げて読むアンシェヌマンが起きる。内容語は母音で終わるものしか見当たらないが、機能語は子音で終わるものが多数あるので、機能語を使うときに注意すれば良い。
末尾で黙字になる可能性のある h のみリエゾンが起きる可能性があるが、今のところ機能語にも内容語にも h で終わる単語が見当たらないため、実質的にリエゾンという現象は無いように見える。(もしそういう単語が見つかったら教えてください。)
2. 名詞
2-1. 代名詞
代名詞に「位相」がある。アルカっぽさある。
底本の中では「位相」という用語は使われていないが、思想がアルカのものと同じように感じられたため、今回はこの用語を使用する。
人称 | 位相 | 単語 |
---|---|---|
一人称 | 標準 | w |
一人称 | 子供 | mip |
一人称 | 荒め | gag |
一人称 | 老人、田舎 | j |
二人称 | 標準 | jok |
二人称 | 親しげ | nit |
二人称 | 荒め | yud |
三人称 | 生き物(?) | xaq |
四人称(?) | - | qezz |
「誰」や「何」を表す疑問詞は guret とのこと。再帰は同じ代名詞を繰り返して表すとのこと。
三人称は「生き物」とだけ書いてある。おそらく、生き物にはこの xaq を使い、物には後述の指示語を使うという体系なのではないだろうか。
四人称は全く説明が無いので、使い方は不明。
2-2. 指示語
意味 | 単語 |
---|---|
これ | ey |
それ、あれ | an |
どれ | yop |
ここ | le |
そこ、あそこ | pop |
どこ | cal |
日本語の「こそあど」が基本になってて、中称遠称が英語の様になっている形と考えられる。
2-3. 一般名詞
名詞は語尾に -a を付ける。
(辞書によると 土地が bace となっている。これが語幹だとすると、文中では bacea となるということだろうか?例文が全くないため、確認することができない。)
複数の語尾(?)として -xe が、対格の語尾(?)として -nu が底本に書かれている。しかし説明が足りないように見え、いくつか疑問点がある。
- 名詞が複数対格の場合どうするか。
- 代名詞や指示語に複数・対格標識は付くか。
ちなみに上記の語尾の説明は、底本の中では「品詞」の項目の中で説明されており、品詞が語尾で判断できる旨が説明されている。そして語尾の表は、名詞、形容詞、副詞、動詞(不定、過去、現在、未来、条件、命令)が並べて表にされている。ここはエスペラントの影響がみられる。
2-4. 合成語
合成語は2語を単純に組み合わせて作るとのこと。主要部は後ろ側。
3. 形容詞と副詞
形容詞は語尾に -i を付け、副詞は -e を付けるとのこと。形容詞には複数と対格の語尾もあるとのこと。
さて、この本は全体的に説明が少ないので、やはりいくつか疑問が出てくる。
- 名詞と同様に、複数対格の場合どうするか。
- 修飾してる名詞の数・格に合わせて変化するのか。
- 形容詞は名詞に前置するのか後置するのか。
推測するに、この辺りはエスペラントと同様なのではないだろうか。
4. 数詞
数 | 単語 |
---|---|
1 | paq |
2 | ram |
3 | seix |
4 | rouz |
5 | seir |
6 | siax |
7 | ames |
8 | vilus |
9 | vales |
0 | zilen |
00 | zal |
000 | zozol |
数字は一桁ずつ読まれると底本には書いてある。やはり例文が無いので推測になるが、 "123" は "paq ram seix" と読んで「百二十三」の意味になるということであろう。(ロジバンと同じ方式と言うと分かる人には分かるかもしれない。)
ゼロだけは2桁と3桁同時に言う語が用意されている。
なお品詞の項目になぜか量に関する語がオマケとして記載されているのでここで紹介しておく。
意味 | 単語 |
---|---|
X倍 | X buy |
X分のY | Y-in X |
X組、Xセット | X po |
ここでも例文は無いので、数字に付けるものなのかは推測であることを注記しておく。
5. 前置詞
前置詞は句の前に置いて色々な意味を表すとのこと。例によって例文はないため、厳密なところは不明。底本にリストがあったので、下記に書き出しておく。
意味 | 単語 |
---|---|
~の | ony |
~も | asy |
~から | igy |
~まで | umy |
~とともに | epy |
~なしで | ayay |
~の手段で | ikiy |
~のために、~に対して、~に賛成して | okoy |
~へ、~に(場所) | esey |
~に(時) | uy |
~に面して、~に反対して | geny |
~のほかに | alamy |
~のそばを通って | ixiy |
~について | ufy |
~ゆえに | ocoly |
~の中に | ojoy |
~の上に | ejey |
~の下に | ujuy |
~のかわりに | ijiy |
~のわきに | ajay |
~を通り過ぎて、~中ずっと | yeny |
~の向こうに | yoby |
~の間 | yasy |
~の中から、~より | yidy |
~の外 | yuhy |
~の周辺、~の頃 | vadey |
~の量 | veday |
~ずつ | gagay |
語尾が y で統一されているので、何となく見分けられそうである。
6. 動詞
6-1. 語順
SVO語順が主に使われるとのこと。他の語順も許容されそうな書き方だが例文がないので、詳しくは分からない。
6-2. 動詞の語尾と時制・法
動詞を表す語尾があり、それで判別できる。動詞に使われる語尾は以下。
時制・法 | 語尾 |
---|---|
不定 | -o |
過去 | -ut |
現在 | -af |
未来 | -on |
条件 | -is |
命令 | -u |
ここはエスペラントの影響がみられる。
自動詞化の語尾 ec を更に付けることができるとのこと。
6-3. 否定とコピュラ
否定は前置詞 no を使うとのこと。
コピュラ動詞の語根は en とのこと。これに時制や法の語尾が付くと思われる。
コピュラの否定は、 no en とはならずに、専用の単語 ges を使うとのこと。否定のコピュラに専用の単語を使うのもアルカの影響が考えられる。
6-4. 受動態と使役
受動態や使役を表す時は、下記の語を動詞の頭につなげるとのこと。
意味 | 接頭辞 |
---|---|
受動 | de |
使役 | kil |
使役(迷惑感) | kol |
迷惑感の使役がどういう意味なのかは、やはり例文がないため詳しくは分からない。
7. 文などを繋ぐ表現
7-1. 接続詞
語句同士をつなぐのが接続詞とのこと。
意味 | 接頭辞 |
---|---|
~と | tab |
~か | kakii |
~や | usa |
~しかし、~ただし | hoy |
7-2. 関係代名詞
接続詞 jir を使って関係詞句を形成するらしい。関係形容詞や関係副詞であっても jir を使うとのこと。しかし例文が無いので、なんとも分からない部分が多い。
7-3. 比較の表現
比較の表現には下記のものが使われるとのこと。
意味 | 表現 |
---|---|
比較(~より…) | … yoo esey (kakii ~) |
最上級(一番上に~) | aa ~ |
最下級(一番下に~) | oo ~ |
同等(同じくらい~) | ii ~ ii |
やはり例文がないので、正直どこに何を置くのかが分からず。
8. 文末に置くもの
8-1. 疑問文
文末に ke を置いて文末を上がり調子にすることで疑問文にできる。ただしカジュアルには ke を省いても良いらしい。
8-2. 気持ちの表現
話者の気持ちを表す語を文末に置くことができる。ただし、フィクションの中での使用が主で、日常生活ではあまり使わないとのこと。アニメキャラなどが使ういわゆるキャラ語尾のようなものと推測される。
話者の位相を表すような雰囲気があり、アルカの影響と考えられる。
気持ちを表す語のリストは下記。
意味 | 単語 |
---|---|
優しめ | yoo |
荒め | bos |
幼め、ぶりっこ | mem |
老人、田舎 | jia |
紳士、淑女 | waw |
お嬢様 | papam |
9. 語彙
語彙は辞書を参照。
10. おわりに
解説の端々にも書きましたが、アルカやエスペラントの影響を受けていそうな文法構成でした。過去の人工言語をよく研究しているのだろうと思います。
しかし本に全く例文がないため、文法の細かいところで解釈があっているのか分からない部分が多かったです。また語彙もほとんど書いていないため、本を読んだだけでは挨拶すらできない状態で、なかなか厳しいものがありました。インターネット上にもあまり情報は無いので、これから情報が出てくることに期待したいです。
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