・過酷な地域の様相について。お題
苛烈な気候によって、歴史的に独特の言語や文化が形成されてきた……とある地域。
過酷な気候を持つその地域は、特殊なエネルギー源によって産業革命を成し遂げ、高い生活水準を手に入れたという。
さて、産業革命によってこの地域の言語や文化はどのように変質したのでしょうか?
(ケッペンの気候区分のA区分,B区分,E区分など)
・気候によって形成された独特の言語や文化。
・特殊なエネルギー源の詳細。
・産業革命による言語や文化への影響。
これらを説明してください。
Abstract
Daltasという架空世界のとある地域の言語である、Daltas語。
Daltasは火山によるスモッグと乾燥した気候により荒廃している。しかし汽水域では肥沃な土が存在するため、古代は農業文明とコミュニケーション重視の言語が芽生えた。
産業革命後、多様な人種が流れ込んだDaltasでは既存の言語が発達していった。
目次
0.世界について
1.過酷な地域「Daltas」について
2.産業革命以前のDaltas
3.産業革命
4.産業革命後のDaltas
5.最後に
0.世界について
以下の世界(以下、Geliaと呼称)は私たちの生活する世界と近しい世界である。時間や気候、生態系などが存在している。
私たちの生活する世界と異なる主な点は、
・Geliaの形状は球ではなく平面(俗にいう地球平面説の世界)
・大陸や海洋の形状が異なる
・構成する元素が異なる
ことの3つである。
0.1.元素について
元素は以下の8種類が存在している。Gelia内の物質はこれらの組み合わせにより成り立っている。
番号 | 名称 | 略称 | 性質 |
---|---|---|---|
1 | Logiam | Lg | |
2 | Heliqam | Hq | |
3 | Geldam | Gd | |
4 | Sorwam | Sw | |
5 | Acaivam | Av | |
6 | Rurbam | Rb | |
7 | Firyam | Fy | |
8 | Kissam | Ks |
また、これらの元素は以下のような図によってまとめることができる。この図と隣り合う元素ほど結合しようとする性質があり、反対に対面となる元素ほど反発しようとする性質がある。
これらの元素が結合したひとまとまりを分子と呼ぶ。物質はこれら分子がまとまった物である。また、分子の中に何の元素がどれだけ含まれているかを表記する方法として、化合式というものが用いられている。
以下に主要な物質の化合式を挙げる。
名称 | 化合式 | 概要 |
---|---|---|
水 | Av₂ | 生命活動において非常に重要な液体。海洋の主成分 |
LgFy | 生命活動において非常に重要な気体。空気中に30%程含まれている | |
RbFyKs | 空気中に70%程含まれている気体 | |
酸 | Gd₂Av₃ | 火山付近の河川に含まれる物質 |
塩 | Fy₂Av₃ | 海洋や生体に含まれる物質 |
養基 | Gd₂Sw | 植物の成長を助ける固体 |
フィリアム | Fy₂ | 導電性の高い気体 |
酸と塩の水溶液を等量混ぜると、それらが反応し水と養基とフィリアムが得られる。これを中和反応という。反応は以下の化学反応式で表現される。
Gd₂Av₃ + Fy₂SwAv₃ → Gd₂Sw + Fy₂ + 3Av₂
また、この元素には電素と核素と呼ばれるもので構成されている。
上の図のように、元素の粒子の中に核素と呼ばれる核があり、その周りをオーブ状の電素がまとわりついている。
元素の種類は核素の種類によって変化する。
0.2.地理について
Geliaは以下のような地形となっている。
水色は海洋、青色は河川を表し、緑色から茶色へと変化するごとに標高が高くなってゆく。
海洋面よりも標高の高い陸地のうち、特に面積が広いものは大陸と呼ばれている。GeliaではEstalgia大陸とVaxelia大陸の二つである。また、大陸以外の陸地を島と呼ぶ。
海洋を構成する海水には水(Av₂)が97%、塩(Fy₂SwAv₃)が3%含まれている。ちなみに、生理塩水(ヒトの体液と等しい浸透圧を持つ塩水溶液)は水(Av₂)が99.1%、塩(Fy₂SwAv₃)が0.9%である。そのため、ヒトが海水を飲むと脱水症状に陥る。
Geliaでは場所によって気候が異なる。この気候を区分したものが以下の気候区分である。
※以下の地図の矢印は風の向きを指している。
色 | 略称 | 気候 | 特徴 |
---|---|---|---|
赤 | Aj | 熱帯密林気候 | 一年を通して暑く密林が広がる気候 |
紫 | Ar | 熱帯多雨気候 | 雨が非常に多く暑い気候 |
黄 | Bd | 乾燥砂漠気候 | 乾燥しており砂漠が広がる気候 |
橙 | Bw | 乾燥荒廃気候 | 乾燥しており地表に植生が全く見られない気候 |
草 | Ca | 温暖乾燥気候 | 温暖で雨の少ない気候 |
緑 | Cr | 温暖多雨気候 | 温暖で非常に雨の多い気候 |
水 | Da | 冷涼乾燥気候 | 一年を通して冷たく、冬季には雪の降る気候 |
青 | Ei | 寒帯氷雪気候 | 非常に寒冷しており雪と氷が広がる気候 |
人間が居住し活動できる場所をエクメーネ、居住し活動できない場所をアネクメーネと呼称する。
0.3.生物について
生物は以下のように分類される。
植物類 | ||
---|---|---|
種子植物 | 有花植物 | 種子で繁殖し花を持つ植物 |
無花植物 | 花を持たず種子をつくる植物 | |
胞子植物 | 軟藻植物 | 水中や空中を浮遊し生活する植物 |
蘚苔植物 | 岩や土の上を広がるように生活する植物 |
菌類 | ||
---|---|---|
繁菌類 | 同種が集まり生活する菌類 | |
単菌類 | 変形菌類 | 広がって繁殖する菌類 |
分裂菌類 | 分裂により繁殖する菌類 |
動物類 | ||
---|---|---|
脊椎動物類 | 哺乳動物類 | 乳で子を育てる動物 |
鳥獣動物類 | 羽毛と翼をもつ動物 | |
爬生動物類 | 外界と体温を一定に保つ動物 | |
無脊椎動物類 | 軟体動物類 | 柔軟性に富んだ身体を持つ動物 |
節足動物類 | 外骨格と関節を持つ動物 |
1.過酷な地域「Daltas」について
Daltas語が公用語のDaltasはEstalgia大陸の南東部に位置する地域である。
大半がアネクメーネに属する過酷な場所であるが、一部の地域では古代から人が生活していた。
先に、Estalgia大陸について解説する。
Estalgia大陸には北東にEstoris山脈、南にAlgis山脈、その間に挟まるようにしてSirta高地があり、そこからいくつかの川が流れている。また、北西部にはWeaker平野、南東部にはDaltas平野が広がっている。
Daltas平野は山地に囲まれた、陸の孤島のような存在であるために独自の文化が発達している。
紫色:熱帯多雨気候
橙色:乾燥荒廃気候
赤色:熱帯密林気候
水色:冷涼乾燥気候
Estalgia大陸は南北から山脈に風が吹き、海と山脈に挟まれた地域は熱帯多雨気候に分類される。反対に山脈に囲まれたDaltas平野は乾燥荒廃気候、山脈に囲まれていないWeaker平野は熱帯密林気候に分類される。また、Estoris山脈やAlgis山脈、Sirta高地の大半の部分は冷涼乾燥気候に分類される。
Daltasは南北をEstoris山脈とAlgis山脈に囲まれているため、非常に乾燥し降水量が少ない。また、付近には火山が多数存在するため火山性スモッグが多発し、一年を通して日射量が少ない。
Daltas平野を流れる河川は二つあり、Sirta高地から海へと流れるNeal川とAlgis山脈から流れNeal川と合流するCoryestal川である。この川はすべて火山の影響により酸が非常に多く含まれている。
2.産業革命以前のDaltas
2.1.地理について
先述した通り、Daltasは非常に乾燥しており、火山の影響で河川の酸性度が高く、火山性スモッグが多発する。そのため大半の場所はアネクメーネに属する。
植生はほとんど見られず、沿岸部や河川付近にはNial科の植物が分布している。
Nial科は無花植物類に分類される。
Daltasで生まれた初めての文明は、Neal川の汽水域付近で発達したRar-Daltas文明である。
Neal川は火山の影響で酸が多量に含まれており農業用水や飲料水として適さないが、汽水域では海水に含まれる塩と中和反応を起こし無害化される。また、その際に発生する養基(Gd₂Sw)は非常に優秀な肥料になるため、この地域で文明が発達した。
人々はこの場所で、Nial科のPeppanaと呼ばれる作物を栽培し、それを主食とした。
飲料・農業用水は地下水か汽水域の水を用いた。
2.2.言語について
過酷な地でありながらも農業によって発達したRar-Daltas文明ではRar-Daltas語が話されていた。
語順:VO
音素:/a/ /i/ /u/ /e/ /o/
/k/ /s/ /ʃ/ /t/ /n/ /m/ /ɹ/ /l/ /ʤ/ /v/ /d/ /b/ /p/
Rar-Daltas語には主語と文字がない。これは火山性スモッグが頻繁に発生するDaltasにおいて、簡潔なコミュニケーション手段が必要とされていたためである。
2.2.1.動詞の活用
Rar-Daltas語は動詞の後に特定の語を付け加えてその文の意味を変えることができる。反対に、文の種類を変えるために語順が変わることはない。
活用方法は以下のとおりである。
意味 | 追加語 | 例文 |
---|---|---|
現在 | 変化なし | /ɹoː/(行く) |
過去 | /an/+V | /an ɹoː/(行った) |
未来 | /to/+V | /to ɹoː/(行く予定) |
意志 | 変化なし | /ɹoː/(行く) |
疑問 | V+/s/ | /ɹoːs/(行く?) |
命令 | V+/ta/ | /ɹoːta/(行け) |
否定 | V+/v/ | /ɹoːv/(行くな) |
仮定 | V+/n/ | /ɹoːn/(行くと) |
可能 | V+/l/ | /ɹoːl/(行ける) |
否定命令 | V+/vta/ | /ɹoːvta/(行くな) |
2.2.2.修飾
形容詞などの修飾詞は被修飾詞の後ろにつなげる。
ex)古い家。
/ʤelis jiːs/ ./ʤelis/:家 /jiːs/:古い
2.2.3.能動態と受動態
Rar-Daltas語には主語がないため、受動態などといった特定の文は表現できない。これはこの言語が発話でのコミュニケーションに重きを置いているためである。
2.2.4.例文
ex)Peppanaを収穫する。
/kalfa pepaːna/.Kalfa:収穫する
ex)あそこに行け。
/ɹoːta oː/./ɹoː/:行く /oː/:あそこ
ex)あそこに行くと、Peppanaが収穫できる。
/ɹoːn oː/, /kalfal pepaːna/./ɹoː/:行く /oː/:あそこ /kalfa/:収穫する
3.産業革命
ここではDaltasに関係するものを抜粋する。
3.1.第二次産業革命
近代になり動力が蒸気機関となった頃、とある人物がフィリアム(Fy₂)に金属よりも高い導電性があることを発見した。
このフィリアムを製造するには酸と塩の中和反応が一般的であり、酸と塩を効率よく収集できる場所こそがDaltasであった。以降、Daltasがフィリアムの主な製造地となった。
酸と塩の中和反応には水とフィリアムの他に養基も生成される。この養基を肥料として育てた植物を加工してパラリア(俗にいうプラスチック)と呼ばれる可塑性に富んだ材料が作られた。
このパラリアとフィリアムを組合わせ、長距離通信や高度な計算をすることのできる電子機器類が次々に発明された。
フィリアム機関とパラリアが発明され実用化されたことを第二次産業革命と呼ぶ。
第二次産業革命後、DaltasはVaxelia大陸の東部に位置するBratisの植民地となり、Daltas自治領と呼ばれるようになった。
3.2.Daltasのエクメーネ化
第二次産業革命後、Geliaに電子機器が広がった。これによりDaltasはフィリアムとパラリアの主要な生産地となったが、過酷な環境のため労働力が大幅に増加しなかった。
労働力を増加させるため、Daltasを支配していたBratisはFaur-Daltas計画を実行した。
この計画はDaltasの一部地域をドームで覆い、人工的な居住区を造るというものである。結果的にこの計画は成功し、Daltasの以下の地域(以下Faur-Daltas地区と呼称)にドームが建造された。
これによりDaltasの一部の地域はエクメーネ化を果たし、人々の交流が活発になった。
4.産業革命後のDaltas
第二次産業革命後、フィリアムと養基の生産の拠点となったDaltasの人口は爆発的に増加した。また、それに続くように人々の生活基盤も整えられていった。
4.1.生活
人々が暮らすFaur-Daltas地区ではドームにより火山性スモッグの危害が無くなった。
また、第二次産業革命以前は地下水をくみ上げたものが水道を流れていたが、現在では酸と塩の中和反応によって生成された水と地下水を混ぜ合わせたものが水道水となっている。
4.2.言語について
産業革命後、人種の多様化によりRar-Daltas語は変化していった。産業革命後によく使用されたRar-Daltas語はBratis-Daltas語と呼ばれるようになった。
また、Bratisの影響によりアルファベットが文字として用いられるようになった。
語順:VOS
音素:/a/ /i/ /u/ /e/ /o/
/k/ /s/ /ʃ/ /t/ /n/ /m/ /ɹ/ /l/ /ʤ/ /v/ /d/ /b/ /p/
文字:a i u e o
k s š t n m r l g v d b p
Rar-Daltas語との相違点は主語と文字があることである。外来の言語が導入され主語が付け加えられるようになった。しかし、主語は省略されることもある。
4.2.1.動詞の活用
Bratis-Daltas語の動詞の活用はRar-Daltas語と相違点はない。
活用方法は以下のとおりである。
意味 | 追加語 | 例文 |
---|---|---|
現在 | 変化なし | roa(行く) |
過去 | an'+V | an'roa(行った) |
未来 | to'+V | to'roa(行く予定) |
意志 | 変化なし | roa(行く) |
疑問 | V+s | roas?(行く?) |
命令 | V+tta | roatta(行け) |
否定 | V+v | roav(行くな) |
仮定 | V+n | roan(行くと) |
可能 | V+l | roal(行ける) |
否定命令 | V+vtta | roavtta(行くな) |
4.2.2.修飾
Rar-Daltas語と同様、形容詞などの修飾詞は被修飾詞の後ろにつなげる。
ex)古い家
Gelies easGelies:家 eas:古い
ex)事故を起こした車
Velbar an'kahta actatVelbar:車 kahta:起こす actat:事故
4.2.3.能動態と受動態
Bratis-Daltas語の文は基本的に能動態である。受動態を表現する場合、動詞の前に「Sal」を付け加える。
ex)私は雨に驚かされた。
Salbarta taes lous.Barta:驚かせる taes:雨 lous:私
4.2.4.例文
ex)私はPeppanaを収穫する。
Kalfa peppana lous.Kalfa:収穫する lous:私
ex)あなたはあそこに行きなさい。
Roatta oae velt.roa:行く oae:あそこ velt:あなた
ex)あなたはあそこに行くと、Peppanaが収穫できる。
Roan oae, kalfal peppana velt.roa:行く oae:あそこ Kalfa:収穫する velt:あなた
ex)フィリアムは酸と塩から作られる。
Us karde foae acrima i salsyma Firyamis.Karde:作る foae:~から acrima:収穫する i:~と~ salsyma:塩 フィリアム:Firyamis
5.最後に
私自身、以前から架空の元素や物理化学を考えてはいたのですが、それを用いるのはルール的にどうなのか、と考え完全オリジナルのものを作りました。
言語の説明が世界観説明に比べて少ないのは気のせいです。
難しいですね。2週間で制作するというのは。
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