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人工言語コンペ 第8回 提出作品

この記事は人工言語コンペ2024年夏 (第8回) 提出作品です。


課題

自然言語には発話の構成要素が初めから終わりに向かって一次元的に配列されているという線条性と呼ばれる性質があります。

ここで、線条性に抗い、二次元的な言語を作ってみてください。(もっと多次元な言語を作れるというのなら、それも可能です)。


まえがき

いや今回クッッッッッッソムズいな!?!?
二次元的な言語を作れということで、皆視覚的言語を作ってきそうだけど、私作字とかデザインとかのセンスないし、そもそもどうやって線条性を排すればいいのか分かんないし、すごい悩みました。
結果、以下の二点を重視した言語を制作することにしました。

1. キーボードで入力できること
そのまんまの意味ですね。できればオリジナルの文字で表記したかったけど、私の力では難しいので漢字を用いることにしました。アルファベットやひらがなを用いることも視野に入れましたが、漢字は正方形で配列しやすい上、種類も豊富なので採用に至りました。

2. 文単位の線条性のみを排すること
これは、文の一次元性を排除することは重点に置くけど、文章レベル (複数の文の並列するとき) の一次元性については諦めるよということです。

恐らく、文単位の線条性は超越できても、それ以上は難しいですね。文章単位となってくると、時間の前後関係や因果関係といった内容が多分に含まれてきます。時間、因果といった概念自体が一次元的ですから、それを二次元で表すとなると、ちょっと私には想像できません。

文単位なら、時間軸状の一点の出来事を表す場合が多いので、述語に対する項の配置など、二次元に展開できる可能性があります。

では本編入りまーす


概要

ジュウロク語

ジュウロク語の文は、縦横4×4、計16個の漢字を以下のように配列した形式で表現される。音声は持たず、視覚的な表現のみを用いた言語である。

5 6 7 8
9 1 2 10
11 3 4 12
13 14 15 16

漢字の位置する16のスロットにはそれぞれ格などの文法範疇が割り振られている。中央の4つは述語とそれに関わる文法範疇を表し、周囲の12スロットは述語の項の格を表す。

  1. 述語
  2. アスペクト
  3. 証拠性
  4. 主格
  5. 共格 (動作の随伴者)
  6. 処格 (動作の起こる場所)
  7. 因格 (動作の原因・使役者)
  8. 奪格 (移動・変化・時間の起点)
  9. 受益格 (動作の受益者)
  10. 様格 (動作の様子)
  11. 与格 (移動・変化・時間の着点)
  12. 対格
  13. 経格 (移動の経由地・変化の途中段階・期間)
  14. 時格 (動作の起こる時点)
  15. 具格 (手段・道具)

スロット2 アスペクト

スロット2はアスペクトを表す。テンスは、スロット15の時格で表現する。

表記 訳例
通時 いつも~している
未然 ~しようとしている
進行 ~している
完了 すでに~した

また、スロット15と組み合わせることで「今日」「来月」のような表現ができる。

2\15
今日 今月 今年
昨日 先月 去年
明日 来月 来年
毎日 毎月 毎年

スロット3 証拠性

スロット3は証拠性を表す。

表記 訳例
直接経験 (特に訳さない)
一般論 ~と言われている
伝聞 ~だそうだ・~であるらしい
推量 ~だろう
推定 ~であるようだ・~であるみたいだ
意志 ~しようと思っている
仮定 (条件文で使用)
無根拠 ~な気がする

スロット4

スロット4は法を表す。後続の文との論理関係を表す表現も含まれる。

表記 訳例
肯定叙述 ~だ、である
否定叙述 ~でない
命令 ~しろ
禁止 ~するな
疑問 ~か
順接 ~なので
逆接 ~だが
条件 ~ならば

スロットが空所の場合

述語の性質上、特定のスロットを使用しない場合、または項を明示したくない場合は、そのスロットに「一」を挿入する。


自動詞表現

自動詞表現は、スロット13に「己」を挿入することで表現する。


例文

1.私は (習慣的に) りんごを食べる。

我一一一
一食毎一
一直述一
果一一一 

2.彼は明日友達と家から公園を通って駅まで行くそうだ。

彼友一一
家移明一
一伝叙駅
己園日一

3.外にいると、誰かが物陰から私を見ている感じがする。

人一外一
陰見在一
一恣述一
我一一一 

4.月にウサギが住んでいるなら、太陽に猫が住んでいるはずだ。

兎一一一 猫一一一 
一住常一 一住常一
一仮件月 一推叙日
己一一一 己一一一

5.ものすごく飢えて死にそうなので、私のために食べ物を車で街まで送ってくれ。

我一一飢 君一一一 
一死未一 一移未我
超識件一 一志令街
己一一一 食一一車


あとがき

はい、というわけでジュウロク語でした。今回は言語のどの側面の一次元性に着目するのかが焦点でしたが、私が着目したのは述語に対する項の配置のしかたでした。

正直修飾表現とか複合語とか関係節とかどうするの?という気持ちですが、恐らく文を分けて表現する必要があるでしょうね。文を分けるとやっぱり一次元的になって、全然二次元じゃないじゃん……ってなると思います。やっぱ文章単位での一次元性の解消が、二次元的な言語の大きな課題なんじゃないでしょうか。

ではでは~!!

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