2026年冬第14回人工言語コンペ
明けましておめでとうございます(遅い)
むかしは、魔法は念じて発動するのが普通だった。どれだけ魔力があっても、念力がなければ、魔法は使えなかった。今や魔法は杖に入ったプログラムで制御され、念力がなくとも言葉で発動できる。私はそれを場力(Nalimipua)と名付けた(「場力論」より)
「今から場力の授業を始めます。
さて、皆さんは場力についてどれくらい知っていますか? 」
先生の声に、新品の杖を握った生徒たちの期待と緊張が入り混じる。
すると、一人の生徒が勝手に立ち上がり、言った。
「はい、場力は目に見えない、物を動かしたり変化させたりする“エネルギー”の一種です。小さな粒子が場を動かすことで、場力が流れます」
ざわついていた場が静かになる。
先生が続けて「そうですね、正解です。アスタナさん、立たなくていいですよ、座ってください」と告げ、答えた生徒――アスタナはドヤ顔で座った。
「では、教科書の5ページを開いてください」
場力学は、魔女カザンに造られた杖の研究から発展してきました。
かつて魔法と呼ばれていた『場力』は、誰もが使えるものではありませんでした。魔法は、無詠唱魔法が使える特権階級のものでした。魔女カザンは、これまであやふやだった魔法現象を場力と名付け、その物体を動かしたり変化させる仕組みを理論化し、現在場力学の基礎を築きました。また、言葉で場力を操作する装置として「杖」も開発しました。その後、多くの魔法使いによる場力研究と試行錯誤のおかげで、私たち現代人は場力による恩恵を受けられているのです。
「皆さん、読めましたか? 次は、実際に場力を使っていきましょう! と言いたいところですが、杖を使うには『イルツ語』を学ぶ必要があります。1年生の皆さんはまずイルツ語の授業からです」
生徒席からブーイングが飛ぶ。先生は大きな声で「皆さん、静かに。場力は危険なものです。イルツ語を学ぶことは、安全のためなのです」と告げた。
「ですが……このまま語学を始めると半分近くの生徒は寝てしまうので、杖で実習をしながらイルツ語を学んで行きましょう」
生徒席から歓声が上がる。
「では、最初に基本の指示文を見せます。Nattala i liimalta ――staana! (/nátːala.i.ɾíːmalta.ɕtáːna/)」
先生が杖を振り、呪文を唱えると、杖が一瞬ポッと青く光る。生徒たちが驚く。
「これは場力を集め、そのまま放出する指示文です。では、最初の単語を覚えましょう」
先生は黒板に大きく『staana、私は発動する』と書いた。
「これは、とてもとても大事な言葉です。あらゆる呪文はこの言葉で終わります。この言葉がなければ場力は発動しません。それでは皆さん、私の後に続いてこう言ってください。 Nattala i liimalta」
生徒たちが「Nattala i liimalta(ナッタラ・ィリーマルタ)」と復唱する。
「それでは実際に発動してみましょう。杖を持ち、Nattala i liimaltaと言ってください。それから、staana」
生徒たちが一斉に「Nattala i liimalta staana(ナッタラ・ィリーマルタ・シュターナ)」と言う。
すると生徒たちそれぞれの杖が、青く光る。
そんな中にうまく発動できず、杖を振り回す1人の生徒――マルクがいた。
「ナッタラィリーマルタスターナ!!ナッタラィリーマルタスターナ!ナッタラィリーマルタスターナ!」
隣のマルクが杖を振り回すのを、アスタナは見て注意した。「ちょっとちょっと!ストップストップ!そんなに振り回したら危ないじゃない!それに発音も違ってる、あなたのはスターナ、正しくは、シュターナ」そして軽々と杖を光らせてみせた。マルクはそれを見て悔しくなり、ムキになって「Nattala i liima staana」と言った。杖全体が青く光り、杖が燃えて消滅する。あまりの出来事に、場の空気は静まり返り、マルクの顔は杖のように青ざめた。周りの生徒の笑い声があがる。
先生はそれを見て「こういうことがあるから、よくイルツ語を学ぶ必要があります」と呆れた調子で言った。
説明とか文法パート(プラバしないで!)
今回のお題は皆さん知っての通りです。もう見飽きましたよね?
最初の小説とかで大方わかってもらえたと思いますが、簡単に世界の説明をします。
- この世界には、魔法があります。かつて魔法は、無詠唱魔法が使える特権階級が独占していました。魔女カザン(注.魔女は博士号みたいなもの)が、言葉で魔法を使える杖をつくり、場力学という学問を立ち上げ、魔法を感覚から理論に変えてしまいました。結果的に、世界で魔法使いによる王権貴族を倒す革命が起きたり、国が分裂したり、何だかんだで世界の技術が100年くらい進みました。そんな色々やった魔女カザンが生きていた時代の言語かつ杖のための言語が今回の主人公『イルツ語』です。イルツ語は魔法・場力協会によって、世界共通杖規格(MTLO)になっています。
イルツ語の説明(難しくないよ)
基本語順はSVOです。杖の呪文として使う時は、Sが省略されがちです。
音
母音はa,e,i,o,uで、子音はs,t,l,k,n,m,j,w,f,p,st,tz,dです。基本はローマ字読みですが、jはや行の/j/、stはシュトゥで/ɕt/、tzはツァ行の/ts/です。同じ母音が連続したら長音になり、同じ子音が連続したら長子音になります。例として、イルツ語はIltz(イルツ)、杖はliima(リーマ)、発動はstaana(シュターナ)のようになります。
とりあえず最低限の用語
まず覚えるべきはstaanaです。この言葉は、「私が発動」を意味し、あらゆる呪文を発動するのに使います。
次にliima。これは杖を意味します。
小説に出てきたNatta、放出も覚えましょう。
ここで楽しい文法タイム
文法は先ほど説明したように語順はSVOで、呪文では多くの場合Sを省略します。
まずは小説に登場した基本の呪文Nattala i liimalta staanaについて分解していきましょう。
まず、Nattaは放出を意味しますが、これにくっついてるlaは何でしょう?これは、限度辞です。とても弱く、弱く、中くらい、強く、とても強く……のような発動の強さの上限値を動詞に接尾辞としてつけることで表せます。上限値のなかで、魔法使いの熟度や匙加減で発動の強さが決定するのです。なお精密に発動するときは数字も使えます。
一覧
| Iltz | 日本語 |
|---|---|
| ka | とても弱く |
| la | 弱く |
| jun | 中くらい |
| maa | 強く |
| mosse | とても強く |
| malaajokana | 無制限に |
次にNattalaの正体がわかったところで、次はiについて。これは与格マーカで、日本語の「〜に」「〜へ」を意味します。対格マーカはuです。この与格と対格を間違えると、呪文の指示対象が逆転したりすることがあるので注意が必要です。
次にliimaltaです。liimaは杖ですね。ではltaは何でしょうか?これは「〜の先端」を意味する接辞です。つまりliimaltaは「杖の先端」を意味します。はい、ここでとあることに気づいた方もいるかと思います。小説に出てきたマルクくんが「Nattala i liima staana」と言っていましたね。ltaが抜けています。この場合、対象はliima、杖全体になってしまうのです。だから彼の杖は燃えてしまったんですね。 ltaのような接辞を部位辞と呼びます。いくつか見てみましょう。
| Iltz | 日本語 |
|---|---|
| lta | 先端(杖専用語句) |
| mota | 上下で半分にした時の上 |
| kata | 上下で半分にした時の下 |
| danko | 使用者の前方 |
| kanko | 使用者の上方 |
| penaako | 使用者の右方 |
| fulaako | 使用者の左方 |
| na | 私 |
最後にstaanaです。staaで発動を意味します。naは「私が」を意味します。このNaは代名詞の私、としても使えます。「私が発動する」と杖に宣言すると、発動できる仕組みになっています。
これで、文法の基礎は分かりましたね。あとは単語を学べば色々できます。
完走できなかった感想
いかがだったでしょうか?皆さんが楽しんで読んでくださったなら幸いです。私は、前回参加時に続き、また提出が遅れてしまって本当にすみませんという気持ちです。こんな筆者みたいにならないように、みんなは提出物は早くすませよう。
それでは、Junduproitz(イルツ語で"さようなら")
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