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ンソピハ!
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投稿

パニパニ!(ミニマル系人工言語レビュー第4回)

na sai!
こんにちは、ンソピハでございます。

今回は、「英語を駆逐するためにできた言語」パニパニを紹介します!
(パニパニをリクエストしてくださった方、ありがとうございます!)

見出し画像は、パニパニのロゴ1です。

パニパニ(pa ni pa ni)は、しろすけ2号氏が2023年6月21日にXで発表した冗談言語です。
なんと、語彙数が17しかありません。

パニパニの解説は、次のような書き出しから始まります。

今、「世界の共通語はなんですか?」という質問をすると、多くの人は「英語。」と答えます。
よく「英語は簡単だから世界の共通語になったんだ。」という人がいるのですが、英語という言語は、綴り通りに読まない、複数形なのに単数扱い、「三単現」という謎ルールがあって謎の "s" をつける ... 思えばこの言語のどこが簡単なのでしょう?
そこで、パニパニの制作者は考えました。「「英語、駆逐したい。」」と。
パニパニ ( pa ni pa ni ) は、こうした背景で、「英語を駆逐するためにできた言語」です。
総学習時間は1時間 〜 2時間とされています。誰でも気軽に学習できる、それがこの言語の最大の特徴です。

非常にキャッチーな冒頭ですよね~
この投稿は、2万8千いいねという、人工言語としてはまれに見る大反響を巻き起こしました。

では、そんなパニパニを、私の独断と偏見でレビューしていきましょう!2

典拠

下記のスレッド以外を典拠とする場合は、出典を明記しています。

発音

母音は/a, i, u/の三つ。

子音は、以下の通り:
Image description
(筆者の作成した表。具体的な音価について言及がなかったので、発音は推測による。)

音節構造は(C)V(n)。母音で始まる単語はありません。(母音連続は二重母音として分析することもできるかもしれません。もしそうであれば、音節構造はCV(n)になります。)母音連続にはaiとuiがあります。音節末に来られる子音は/n/のみ。

……閉音節や母音連続を避ければ、さらにミニマルな音韻論になったのになあという気はします。でも、作品の雰囲気に合った良い体系だと思います。3

文字

ラテン文字の他に、パニパニ用の表語文字や点字もあります。

公式の点字表記ができあがっているのは、すごく良いなと思いました。視覚障がい者の方にも便利です。

表語文字も、愛らしくて素敵です。(愛らしすぎて、書き間違えたときに消すのを少しためらっちゃうかも……笑)

文法

かなりユニークな文法です。
たとえば他動詞文は、SOSVもしくはVSOSのような言い方をします。

……ただ、これだと言いづらいですよね。
実際は、次のように2文に分けることが多いそうです:

  • mika na mika sin. na pa ni pa ni.
  • ミカ ナ ミカ シン。 ナ パ ニ パ ニ。
  • ミカ それ ミカ 使う。 それ パ ニ パ ニ。
  • 「ミカはパニパニを使います」

直訳すると、「ミカはそれを使います。それはパニパニです。」と言っているわけですね。

このほかにも、パニパニ文法は語の繰り返しを多用します。
それによって、かわいらしい語感ができているというわけです!

語彙

全ての語は、CV, CVn, CVVのいずれかの音節構造を取ります4

語彙数はたったの17個。非常にミニマルな体系です。

語彙数が少ないのなら、1語1語の意味が広いのでしょうか?
……むしろ、この語数のわりには意味が狭めだ、と個人的には感じました。
たとえば、sinシンは「使う、使用」、paiパイは「軽い、軽さ、簡単、簡単なこと」を意味します。

では以下に、個人的に興味深いなと思った語を挙げます:

・kinキン(得る、食べる、飲む)
トキポナだと〈得る〉は、kama jo(持つようになる)のように、連語で表現することが多いです。1語になっていることが興味深いですね。〈食べる〉〈飲む〉の意があるのも楽しいです。

・maマ(いる、ある、生きている)
・maiマイ(生物)
maiという語があるのだから、maiに「生きている」という意味を加えればいい気がするのですが、なぜかmaに加えられています。これについては、作者の意図がよく分かりませんでした……。

・paパ(言う、話す、聞く、書く、描く、見る、読む、送信する、受信する、感じる、刺激する、刺激を受ける、ことば、言語、音、音楽、文字、形、絵、写真、刺激)
非常に意味の広い言葉です。原義は「送受信・刺激」であると言います。……私の作っている人工言語でも、〈話す〉と〈聞く〉は同じ語で表されるので、親近感を覚えました。

話者

パニパニは一時めちゃくちゃ流行ったそうです。作者以外の方々によるパニパニ作文も、Xで調べると多数ヒットします。

学習資料の分かりやすさ・簡潔さが、ブームの大きな要因だと思います。なんと、たったの10ページしかありません。それをさらに短くした4ページ版さえあります。文体も平易で、親しみやすいです。

しかし、ブームはもう過ぎたようで、現在「パニパニ」と検索しても、上位に出てくるのは全然関係ないものばかり……

パニパニは、Discordに話者コミュニティもあります5
驚くべきことに、このサーバーの主要言語はパニパニです!
人工言語のサーバーって、日本語や英語などのメタ言語での会話が主流になりがちなので、これは素晴らしいことだと思います。
しかし、残念ながら、サーバーとしてはあまり盛り上がっていないようです……。(今数えてみたところ、サーバーに送信されたメッセージ数は全部で85個でした6。一度しか数えていないので、数え間違えはあるかもしれません。)

レビューまとめ

さて、レビュっていきましょう。

かわいさ:かわいいと思います。開音節の多さ、言葉の繰り返し……、極めつけは、パニパニ用表語文字ですね。かわいさランキングは、文句なしの暫定1位です!

おもしろさ:めっちゃバズってたので、たぶんめっちゃ面白いんだと思います(?)。ただ、個人的に、物足りなく感じるところがあります。……語彙数の少ない言語を見慣れているからかもしれません。私は、語源の面白いニョンペルミュのほうが好きです。おもしろさランキングは暫定4位です。

シンプルさ:比較的シンプルだと思います。ただ、音韻論はもっとシンプルにできます。語彙についても、1語1語の意味範囲がそこまで広くないので、シンプルというよりも殺風景な印象を受けました。シンプルさランキングは暫定2位です。

使いやすさ:パニパニは、安定した話者コミュニティの形成には失敗しているように思われます。やはり、それが冗談言語としての性(さが)なのでしょう……。使いやすさ暫定3位です。

学びやすさ:学習は非常に簡単そうです。公式の資料が簡潔で読みやすい! アラズ語に次いで、学びやすさランキング暫定2位です。

Image description

総合得点は13、総合ランキングでは暫定2位です!(おめでとー)

Image description

次回予告

真ウーンラング語(True Oonlang)のリクエストも頂いているので、次回はそれを紹介しようと思います!
海外版アラズ語みたいな言語です。

引き続き、リクエスト募集中です~


  1. https://x.com/shirosuke_2/status/1711947495285412346 

  2. なお、パニパニにはpanipani 2.5とpanipani 3.0があるようですが、ここでは前者のみをレビューします。 

  3. これについて作者はで、「発音がより自然言語に近くなるようにつくりた」かったのだ、と述べています。ただ、自然言語にも開音節のみの言語はあるので、そこは不思議です……。 

  4. 外来の固有名詞などについては未調査。 

  5. https://x.com/shirosuke_2/status/1677521597417291776 

  6. Discordシステムからの連絡を除く。 

Latest comments (6)

たたむ
 
higoli profile image
ヒゴーリ

はじめまして!
是非Letanisについてもレビューしていただきたいです

たたむ
 
nsopikha profile image
ンソピハ!

返信遅れてしまいすみません!
ありがとうございます、ぜひ取り上げさせていただきます!
ビアムインや人工言語くふもリクエストにいただいているので、そのあとになるかもしれません。
英語圏の人工言語の供給、とてもありがたいです!

たたむ
 
epikijetesantakalu profile image
epikijetesantakalu

半分冗談で言った真ウーンラング語本当にやるんだ…
嬉しい

たたむ
 
nsopikha profile image
ンソピハ!

リクエストはなんでもやってくぞーってノリでいったほうが、他の方からもどんどんリクエスト頂けそうだし!(メタいメタい)

たたむ
 
shirosuke_2 profile image
しろすけ2号

レビューありがとうございます!

記事に取り上げていただけることを昨日知って驚きました。
楽しく読ませていただきました。

(-- 以下余談 --)
ma と mai については、正直私も統合してよかったなと (公開後に) 思いました。

pa ni pa ni 1.0 では単語数が20 くらいだったのですが、これを友人に紹介してみて、話しているうちに「単語数を素数にしてきもちわるくしてやろう」という悪ノリ(?)が生まれ、19、そして17 という数に落ち着きました (できあがったものはむしろかわいかったです)。

ma と mai までは気が回りませんでしたが、次に小さな素数は13 で、さすがにそこまで削れる自信はないので、結果的にはよかったのかなとも思います (加えて、ma とmai が音韻的にも意味範囲的にも適度に似ているので、いい具合にバランスがとれている気がします)。

たたむ
 
nsopikha profile image
ンソピハ!

作者の方からコメントいただけて嬉しいです!
なるほど、そういう経緯だったのですね。納得しました!
たしかに、発音が似てるのも素敵ですよね。少ない語彙の中で、良いアクセントになっていると思います!