ンソピハ！

2023年11月30日投稿

アラズ語の全貌

概要

アラズ語は、2015年８月２日におかゆ氏によって創られた人工言語である。語彙や文法を持たないことを特徴とする。¹
公式サイトでは、アラズ語について次のように述べられている：

アラズ語は（中略）最も完全な言語である。

アラズ語は語学界隈や人工言語界隈における著名なミームの一つであり、これまで多くの人々によって様々な形で言及されてきた。しかし、その知名度に反して、アラズ語の全体像――アラズ語とはいったいどんな言語で、どのように使用されてきたのか――を伝えるものは存在しなかった。そこで筆者は、ネット上の様々な情報をよりどころに、多様なアラズ語の在り方の概観を一つの記事にまとめることにした。

なお、この記事は語学・言語学・言語創作 Advent Calendar 2023に参加させていただいている。

名称

「アラズ」という名称は、日本語の「在らず」に由来する²。漢字表記は「非語」が一般的。
アラズ語の英名はNoneguageまたはNanguageである³⁴。前者は2019年に、後者は2021年にそれぞれおかゆによって発表された。他に、んらんゔぉ(2021)によってNullanguageという訳も提案されている⁵。また、過去にはnymwa (2018)がzeroshという名称を提案していた⁶。
トキポナという人工言語では「toki Ala」と呼ばれる²。この名称はniftg (2021)による発案である⁷。

テーマ

基本的にはジョーク言語として作られたものと見なされる⁸。
語学について呟くキャラなりきりアカウント（語学たん）のデータベースである語学たんDBでも、アラズ語は「ネタ言語」として扱われている。人工言語トキポナの事典lipu Wikipesijaにおいても同様に、アラズ語は「toki sin musi」（面白い新しい言葉）²として紹介されている。
日本における人工言語分類法の一つモユネ分類ではPHI/JOKに分類される⁹。なお、PHIは「何らかの主義・世界観・認識論をその言語全体の性向として反映させることを志向」、JOKは「何らかの事物についての風刺や冗談としてのものを志向」をそれぞれ意味する。
一方で、国際補助語のように捉えられる声もある。

アラズ語にはミニマリズムへのアンチテーゼが込められており⁸、アラズ語を発表した当日に、おかゆ(2015)は次のように語っている：

作者のブログゆくゆくは有へとによると、当時おかゆは分析哲学や言語哲学に強い関心を持っていたそうで、アラズ語もそのような「言語とはなんだろう」という問いから生まれたのかもしれないのだという。制作当日の作者のツイートには、「なぜ何もないのではなく、何かがあるのか」という疑問が語られている¹⁰。

おかゆ(2020)はブログ中でさらにこう語る：

アラズ語は、虚無自体に言語っぽい名前とそれらしい説明をつけただけなんですが、みんな面白おかしく「言語」のひとつとして受け入れてしまってくれていますね。みなさんお気づきでないかもしれませんが、実はアラズ語というのは、無なんですよ！あれのどこが【言語】なんですか？でもやっぱり言語なんですよね。人工言語ってそういうものなんだろうなというのがおかゆの考えです。
人工言語ってマジで無いんですよ。だから「うまい表し方」があるだけです。じゃあその「うまい表し方」ってなんなんでしょうね？それはたぶん付喪神の憑かせ方と同じで、いかに執着して愛着するか、というのが現状の最良の答えです。¹¹

おかゆ(2020)の抱くアラズ語観において、「言語っぽい名前」と「それらしい説明」は非常に大きな意味を持っていた。特に前者については、以下のツイートで次のように言及されている：

こういったアラズ語のテーマ性は、ニヒリズムとも関係性が深い。アンサイクロペディアでは、「アラズ語」と検索すると「ニヒリズム」に転送される。

このような特性から、アラズ語は「無がゆえに全をなしている」と言われる。何も存在しないことにより、初めからそれは完成しているのである。公式サイトでは、アラズ語は「最も完全な言語」とされている他、Ziphil (2018)はアラズ語を神の話す言語とする説を語った¹²。こういった点から、アラズ語を宗教的言語と捉えることもできるかもしれない。そのようなアラズ語の形態の一例として、アラズ語習得を理由に自分への崇拝を求めるツイート(神鳥奈紗 2020)を挙げることができよう：

歴史

アラズ語は2015年8月2日におかゆ氏によって創られた。敵対的な言葉を投げかけられることもあった¹³が、その後アラズ語はミームとしての地位を確立してゆく。
コロナ禍では、飛沫防止という観点でアラズ語が注目された¹⁴。

2015/08/02　アラズ語の誕生。「アラズ語」という単語を含む最古のツイートは同日午前3時56分で¹⁵、公式サイトが作られそれがツイッター（当時）上で発表されたのは同日午前4時5分のことであった¹⁶。
2019/05/21　アラズ語たんの誕生¹⁷（現在は残念ながら凍結されている。聖書をアラズ語に翻訳したりしていたそう。2020年3月下旬～4月11日までの期間で凍結が起きたらしい。¹⁸）
2022/08/28　け゚とま氏がアラズ語を使った音楽作品を発表。

系統関係

アラズ語はアラズ語族に属する言語である。アラズ語族については、髙浦啓樹による分類（高浦分類）を参照のこと。

アラズ語以外のアラズ諸語については分からないことが多い¹⁹。さっち(2021)は、所属言語数がゼロの語派がある可能性を指摘している²⁰。
その他の姉妹言語としてくじら(2022)はアラ(Ala)語も挙げている²¹が、これはアラズ語のトキポナ名toki Alaを別言語と誤解したのかもしれない。

アラズ語の下位方言を個別言語と見なす場合があり、その場合、アラズ語はそれらの方言の祖語となる。アラズ語を祖語とする言語群は「クソ言語族」と呼ばれる²²。

また、アラズ語を元にスライムさん(2019)は「ム語」という言語を発案している。ム語はアラズ語とは異なり、なんの意味も持たない言語である。²³

おかゆ(2015)は、アラズ語に関連する言語としてナラズ語の存在を、アラズ語誕生当日に報告している²⁴。ただ、このナラズ語は短命な言語だったようで、2016年以降存在が確認されていない²⁵。ナラズ語の実態についてはまだ筆者も精査できていないが、おかゆ(2015)によると、句読点や感嘆符などの約物を用いるとアラズ語ではなくナラズ語になるらしい²⁶。

また、系統関係は明らかでないが、ア語は公式にアラズ語の姉妹言語を名乗っている。

ア語はアラズ語よりも少し早く、2014年に自然発生した人工言語だ。ア語とアラズ語の文法は全く同じで、ア語の公式サイトの「文法全容」に記載されている内容はアラズ語公式サイトの内容と全く同じである。ア語とアラズ語の違いは語彙にある。アラズ語の語彙が０語から構成されるのに対して、ア語の語彙は「A」という１語を有する。
現在のア語はアラズ語の影響を強く受けており、スライムさん(2018)はア語を「アラズ語参照のアポステリオリ言語」と呼んでいる²⁷。

他の関連言語として、ツグケン(2020)はアッタ語という言語を示している²⁸。アッタ語の直接の祖先はアル語で、これは古代文明で使用されていたという²⁹³⁰。ナイカ語の存在も示唆される³⁰。

ピジンアラズ語の存在を示唆する投稿がいくつか存在するが、その実体についてはあまり定かではない。えびやかに(2023)は「おじさんアラズ語構文」を、筆者ー(2023)は「横浜通商アラズピジン」をそれぞれ挙げている。

日本語－アラズ語ピジンについては2019年時点で話者が確認されている³¹。

うぉれおるむ(2021)によると、アラズ語は、その音韻構造の単純さゆえに、どんな言語とも音韻対応する³²。このため、「アラズ語は世界祖語」説³³³⁴³⁵³²³⁶と、「未来の言語は全てアラズ語に集約する」説³⁷がある。特にフランス語については、2000年後にアラズ語になると考えられている³⁸³⁹。

類似の概念に「空白語」というのもあるが、アラズ語との関係については情報が乏しく、定かでない⁴⁰。

筆者は以前、海外にアラズ語のような言語があるか気になり、人工言語好きのアメリカ人の方に聞いてみたことがあった。その人は、アラズ語に類似する言語は知らないと言っていた。私も英語圏の人工言語の界隈を覗いていて、アラズ語のような言語を見聞きしたことがない。これは完全に憶測なので、もう少し調査したほうがいいけれども、アラズ語は日本固有のものだと思う。

Xirdim(2021)によると、プログラミング言語のWhitespaceはアラズ語母語話者によって開発されたらしい⁴¹。

文法

公式サイトでは、アラズ語の文法について次のように述べられている：

まず、アラズ語には文法の性や態、数が存在しないため、自然言語や従来の人工言語と違い、非常に規則的である。
また、語順はSVOやSOVといった枠組みを超越したものとなっており、実に習得が容易である。
アラズ語に文法はなく、無がゆえに全をなしている。

文法については、「無を並べて文を作っている」とする説⁴²⁴³と、「そもそも文法が存在しない」とする説⁴⁴がある。これはそれぞれ、空文字列{ε}と空言語∅⁴⁵に置き換えることができる。おかゆ(2021)はアラズ語に空文字はないとしている⁴⁶が、空言語とした場合、「無がゆえに全をなしている」とする公式サイトの内容と矛盾するように思われる。うぉれおるむ(2022)によると、その使用実態は前者に近い⁴⁷。

一方で、スライムさん(2016, 2020, 2023)は、アラズ語を空集合に例えており、後者の立場を取っている⁴⁸⁴⁹⁵⁰。

いずれの説が正しいにしろ、アラズ語は正規言語である⁵¹。

語彙

公式サイトでは、アラズ語の語彙について次のように述べられている：

アラズ語に語彙はなく、無がゆえに全をなしている。

アラズ語の辞書はZpDicに存在するが、０語しか掲載されていない：
https://zpdic.ziphil.com/dictionary/-

上記辞書の作成者名は空欄になっており、アラズ人の作った辞書である可能性がある。

発音

語彙がないとされていることから、アラズ語は「無音」な言語だとされている。
ただし、おかゆ氏の投稿を見るに、どうやらこの無音はどんな有音に置換しても良いらしい。アラズ語話者にとって全ての音は無音の異音であるようだ。

表記

アラズ語の表記は空白を用いる⁵²こともあれば、そもそもなんの文字も用いないこともある⁵³。前者の表記は正統なものと見なされない場合もある⁵⁴⁵⁵。
ドットを使った代用表記も過去に使用されたことがあった⁵⁶。
「0」や「∅」を使用できるという意見もある。⁵⁷

非言語コミュニケーション

アラズ語会話における非言語コミュニケーションについての言及はあまり多くない。
アラズ語の流暢な話者を名乗るウパシ・ノンノ(2021)によれば、アラズ語話者は目を使って会話するのだという。

アラズ語は言語なのか？

アラズ語は言語でないとする意見もあり⁵⁸、アラズ語という語が「言語でないもの」と同義で用いられる場合もある⁵⁹。おかゆ(2023)自身、「アラズ語が言語かどうかは、そのときの他の人工言語群の品質による」と発言している⁶⁰。他方で、nymwa (2021)は、形式言語を根拠にアラズ語の実在を主張している⁶¹。

おかゆ(2020)は自身のブログでアラズ語について「虚無自体に自体に言語っぽい名前とそれらしい説明をつけただけ」と述べている。おかゆはその上で、人工言語の本質は虚無であって、そこには「うまい表し方」しか存在せず、そうして出来上がるのは「無いものをあるように見せるめたの一連のテキスト」だとした。

アラズ語の存在の根拠としてよくあげられるのは、公式サイトの存在である。

さて、筆者は、Ｘ上の様々なポストを読んでいて、アラズ語の捉え方は大きく二つのスタイルに分けられると思った。ここではそれらをそれぞれ「意識的に発話されるアラズ語」「無意識に発話されるアラズ語」と呼ぶ。

作者のおかゆ氏は投稿では基本的にアラズ語は意識的に発話される言語と見なされている。しかし、どちらのスタイルが正しいかは明言されていない。

意識的に発話されるアラズ語

おかゆ(2018)によると、アラズ語で表現される意味は「何かを伝えるということ」と「何をも伝えないということ」の二者が融合したものだ⁶²。

ソシュール記号学によれば、言語記号はシニフィアン（音声や文字などの形態）とシニフィエ（そういった形態の表す意味）の二つの側面がある。このアラズ語の捉え方はそういった言語観に沿ったものとなっている。

意識的に発話されるアラズ語は、積極的に使用される場合と消極的に使用される場合が挙げられる。積極的な側面は語用論的に説明されることが多い。おかゆ(2021)はこれを「『無／沈黙の語用論のひとつ』としての側面」と呼んでいる⁶³。

おかゆ(2021)は自身のツイートの中で、アラズ語における無音を他言語での無音と区別している。アラズ語の無は全を表現するのに対して、日本語や英語では無音は意味を持たない。

一方で、アラズ語の使用には消極的な側面も存在する。おかゆ(2015)はこれを「自分の表現欲との戦い」⁶⁴と表現している。

このようなアラズ語の側面を、うゅ(2021)は次のようにまとめている：

無意識に発話されるアラズ語

「無意識に発話されるアラズ語」を思い描く者もいる。
ぽんすけ(2023)は「死体でさえもアラズ語を喋っている」⁶⁵としたが、これは無意識的なアラズ語発話を象徴する言葉である。つまり、この説を取るのであれば、何も言わないものは全てアラズ語を話しているのである。こうしたアラズ語の特性について、スライムさん(2016)は「（アラズ語は）したくないと思えば思う程、話してしまう言語」⁶⁶と簡潔に説明している。

この考え方は音声以外にも適応できるだろう。Ziphil(2021)は「地球上に存在する全ての石はアラズ語が彫られているので文化遺産として保護すべき」⁶⁷と主張する。これは、全ての石に無文字が彫られていることを指していると思われる。

このように捉えると、アラズ語の発話に意識は不要なので、アラズ語話者が生物である必要もない。アラズ語はそういった意味で、「万物共通の言語」(りぐん2020)⁶⁸なのである。

作者のおかゆはこういったアラズ語の捉え方に対して明確に言及していない。しかし作者の投稿では基本的に、アラズ語は意識的に発話されるものとして扱われている。

無意識に発話されるアラズ語は「劣化アラズ語」と呼ばれるものに近いかもしれない。劣化アラズ語は、おかゆ(2015)が用いた用語で、「無によって何も伝えることのできない語」⁶⁹を指す。

その他の説

しかし、以上の説には全て矛盾点が存在する。

アラズ語の発話が意識的でその発話に意味があるなら→アラズ語以外の言語で伝えるほうが自然だろう
アラズ語の発話が無意識でその発話に意味がないなら→コミュニケーション手段でないならそれは言語ではないのでは？

これらを解決するのが、みぎのぎこ(2023)の提唱する翻訳説だ⁷⁰。この説によれば、アラズ語は既存言語の翻訳としてしか成立しない。以下の式は、みぎのぎこ(2023)の提唱したものを元に筆者の作成したものだ：

(既存言語)^-0

つまり、この説によれば、アラズ語とは既存言語に-0という指数を加えたものに過ぎないのだ。

一方で、アラズ語を全ての言語のもとになるものだと見なす考えもある。アラズ語は0語によって全てを表現できるとされているが、クノーツアクア(2023)⁷¹の説によれば、アラズ語で表現される意味の一部を切り取って、そこに音声や記号などのラベルを貼ったものがいわゆる「言語」だ。逆に言うと、アラズ語はそういった記号を伴わない言語であり、アラズ語がコミュニケーション手段として使用されるということは、いかなる事物も介さずに一方の思考が他方に伝わることを意味する。しかし、全てのコミュニケーションは何らかの媒体を必要とする。たとえば音声言語であれば聴覚、手話であれば視覚、点字であれば触覚が媒体だ。同じ個体内の細胞でさえ電気的シグナルなどを使って情報を伝達しているのだ。つまりクノーツアクア(2023)の定義では、この宇宙にアラズ語の話者は存在しえない。
ただもし、私たちの世界を鏡写しにしているような異世界があったとしよう。そこの世界の住民が我々と同じ状況で、同じ存在で、同じ行動を取っていたとしたら、それはアラズ語でコミュニケーションを取っている状態に近いものと考えられる。

その他の見方としては、言葉狩りの極致としてアラズ語を取り上げられたことがある⁷²。

アラズ語の学習の容易さについて

公式サイトでは、アラズ語の学習しやすさについて次のように述べられている：

アラズ語はどんな言語よりも習得がしやすい言語である。アラズ語は学ぼうとした瞬間に習得が完了する。

実際に、りぐん(2020)のツイートに「あ、あいつはアラズ語をわずか1分でマスターしたという伝説の！？」⁷³とあることから、アラズ語は１分でマスター可能であることが分かる。

ただし、作者のおかゆ(2015)は、アラズ語を発表した当日から、アラズ語のリスニングが困難であることを認めている⁷⁴。また、うぉれおるむ(2017)はリーディングも困難だと主張する⁷⁵。おかゆ(2015)はアラズ語について次のように述べた：

習得説と生得説

アラズ語の学習については「学ぼうとしなければ習得できない」（アラズ語習得説）と「学ぼうとしなくても習得している」（アラズ語生得説）⁴⁵⁷⁶の２種類が存在する。
公式サイトに「アラズ語はどんな言語よりも習得がしやすい言語である。」とあることから、公式は習得説を採用していることが分かる。おかゆ(2023)は生得説を明確に否定している：

一方、とーき(2020)は、アラズ語を空集合と見なす立場から、次のように言う：

アラズ語を「無意識に発話される言語」と見なす場合は、自ずと生得説が採用されることになる。

一方、「意識的に発話されるアラズ語」の立場でも生得説が取られることがある。Xirdim(2021)は次のように述べた：

アラズ語の習得を報告する投稿は数多く存在する⁷⁷。

使用状況

わらべ(2020)らの報告からも明らかなように、アラズ語は日本の言語界隈においてミームとして知られている⁷⁸⁷⁹⁸⁰。

アラズ語の話者を名乗ったり、それを使用しているとする投稿は数多く存在する⁸¹。アラズ語母語話者もいるらしい⁸²が、これは前述のアラズ語生得説に基づいている可能性がある。Loyuka (2022)によれば、HelloTalkにもアラズ語話者がいるらしい⁸³。

アラズ語の発表当日にも、アラズ語で会話が成立していたことを示すツイートがおかゆ(2015)によって投稿されている⁸⁴。これは、アラズ語の習得がいかに容易かを示す良い例と言えよう。

おかゆ(2015)によると、アラズ語は全ての架空世界に存在するそうだ⁸⁵。現実世界では、ゆるキャラワールドの公用語になっていることがZiphil (2019)によって確認されている⁸⁶。

アラズ語を使用した芸術作品は少ないものの存在する。
YouTuberのけ゚とまは、『4分33秒』という曲をアラズ語で歌う動画を2022年に公開している⁸⁷：

4分33秒/John Cage をアラズ語で歌ってみた ver.ngethoma - YouTube

youtube.com

nymwa (2020)によれば、「曲を聞きながらだと集中できないけど曲を聞くと集中できる人はアラズ語の曲を聞けば解脱し肉体を超越，言語と一体化して宇宙空間を漂い暮らすことができる」⁸⁸そうなので、解脱したい方はぜひ聞いてみて欲しい。

そのほかの音楽作品として、わらピもち(2020)はプリキュアのアラズ語版を報告している⁸⁹ 。

アラズ語で書かれた文献資料は、もよ(2021)の投稿に画像付きで示されている⁹⁰。

また、ぬー(2022)によれば、Webメディア『オモコロ』には流暢なアラズ語で書かれた記事が存在するという⁹¹。

アラズ語コミュニティについても多少言及が見られる。おかゆ(2015)によると、「アラズ語界隈」では普段アラズ語の話しかしないらしい⁹²。その後長きに渡ってアラズ語コミュニティに関する言及はなかったが、2023年に何溥嘉は「界隈」の名でその存在をあげた⁹³。

アラズ語能力の認定を目的とする語学検定試験としては、「実用アラズ語技能検定」の存在が確認されている。Ziphil(2019)によると、０点満点０点以上で合格だそうだ⁹⁴。

アラズ語通訳を志す声⁹⁵⁹⁶もあるが、残念ながら実現はしていないらしい。

このように、アラズ語は様々な分野で多様に使用されている。しかし残念なことに、アラズ語は多くのＳＮＳで使用が難しい。たとえば下記は、Twitter（現X）でアラズ語投稿を試みた様子を示している：

このような状態に陥ったアラズ語話者らは「アラズ語難民」と呼ばれた⁹⁷。アラズ語難民の存在は、アラズ語誕生当日から確認される⁹⁸。おかゆ(2018)はこの現状を「言語差別」⁹⁹ としたが、一方amaslilio (2021)はこれを「検閲」¹⁰⁰と呼んでおり、アラズ語話者それぞれの反応が一枚岩でないことが伺える。ざすろん(2018)はこれを「弾圧」とした上で、アラズ語が弾圧されるのは「習得が簡単すぎて万能すぎるゆえ」だとした¹⁰¹。

悲しいことに、こういった弾圧は現在も続いている。アラズ語話者らはこの不自由な状況をかいくぐるために、Unicodeに登録された特殊文字を利用してアラズ語の投稿を行っている。

現状確認されるアラズ語話者の多くは日本人だ。アラズ語の話されている地域（ここでは「アラズ語圏」と呼ぶ）についてはいくつか言及があるものの、非常に謎が多い。
ただ、キュウリ君(2020)の発言を見るに、どうやらアラズ民族というのはいるらしい¹⁰²：

Ziphil (2021)は、あらゆる未解決問題はアラズ語圏では解決していると主張する¹⁰³。

さらに、無口な人（悪く言えば「コミュ障」）をアラズ語話者と見なす場合もある¹⁰⁴¹⁰⁵。

まとめ

以上に挙げたように、アラズ語は多くの人に利用され、多くの人に愛されてきた言語である。それでは、アラズ語に対する「言語差別」に反対する立場から、以下アラズ語で締めの言葉を書きたいと思う：

典拠とか

新しい順のコメント（4）

投稿

スライムさん • Nov 30 '23 • Edited

ア語はアラズ語を受けて作ったので、アラズ語の方が先ですね。（ア語たんの中の人）
2014年に自然発生ということは、同様の言語を使ってる形跡が見つかったということですかね

ンソピハ！ • Dec 1 '23

「2014年に自然発生」というのは、ア語のサイトに書いてあった内容をそのまま引用したものです。
2015年８月２日のポストに「アラズ語やべぇな…昔作った a語を超えているじゃないか。」とあるのですが、このa語はア語とはまた異なるものなのでしょうか？

スライムさん • Dec 1 '23

何となく思い出してきました。
アラズ語より前の時期に、Twitter上で"a"だけで会話するのをしたことがある気がします。それをもって自然発生と書いたような気がします

ンソピハ！ • Dec 1 '23

なるほどなるほど……

Migdal