去年(2024年)の9月にカルデール式ローマ字というのを作りました。
今でも日頃から使っています。
わたし漢字廃止論とかにロマン感じちゃうタイプなので、人に見せないもの(日記やメモなど)は日本語でも基本的に表音文字のみで書いているんですよね。
手書きでは自作の架空文字を、PC上ではカルデール式を使います。
てなわけで、使っているうちに色々細部が変わってきたカルデール式の綴字法を改めてまとめたいと思います。
「日本語の新しい表記法」とかでガチで日用されているケースってあんまないので、貴重ですよ!?
目次
使用例
どんな文字なのか……。実物をお見せしましょう!
以下、芥川龍之介の「蜘蛛の糸」の冒頭です:
Áru hi no kotó de gozaimásu. Oxakasama wa Gokuraku no hasuike no fuqí o, hitóri de búrabura oaruki ni nátte iraxxaimáxita. Ike no náka ni saite iru hasu no haná wa, minna tama no yóu ni maxxíro de, sono mannaka ni áru kin’iro no zúi kara wa, nántomo ienai yói niói ga, taemanáku átari e afúrete orimásu. Gokuraku wa qoudo ása na no de gozaimaxóu.
Yagate Oxakasama wa sono ike no fuqí ni otatazumi ni nátte, mizu no omoté o outte iru hasu no ha no aidá kara, fúto xita no yousu o goran ni narimáxita. Kono Gokuraku no hasuike no xitá wa, qoudo Jigoku no soko ni atatte orimásu kara, súixou no yóu na mizu o sukitóuxite, Sanzu no Kawá ya Hári no Yamá no kéxiki ga, qoudo nozokimégane o míru yóu ni, hakkíri to miéru no de gozaimásu.
Suruto sono Jigoku no soko ni, Kandata to yuu otokó ga hitóri, hoka no zainin to ixxo ni ugomé'ite iru súgata ga, ome ni tomarimáxita. Kono Kandata to yuu otokó wa, hito o koroxitári ié ni hí o cúketari, iroiro ákuji o hataraita oudórobou de gozaimásu ga, sore dé mo tatta hitócu, yói kotó o itáxita obóe ga gozaimásu. To mouximásu no wa, áru tokí kono otokó ga fukái hayaxi no náka o tourimásu to, qíisana kúmo ga ippiki, miqibata o hátte yukú no ga miemáxita. Soko de Kandata wa sassoku axí o agete, fumikorosóu to itaximáxita ga, “Iya, iya, kore mo qiisainágara, ínoqi no áru monó ni qigainái. Sono ínoqi o múyami ni tóru to yuu kotó wa, íkura nándemo kawaisóu da.” to, kou kyuu ni omoikáexite, tóutou sono kúmo o korosazu ni tasukéte yattá kara de gozaimásu.
Oxakasama wa Jigoku no yousu o goran ni narinágara, kono Kandata ní wa kúmo o tasukéta kotó ga áru no o oomoidaxi ni narimáxita. Souxite soredake no yói kotó o xita mukúi ni wa, dekíru nara, kono otokó o Jigokú kara sukuidáxite yaróu to okangae ni narimáxita. Saiwai, sóba o mimásu to, hisui no yóu na iro o xita hasu no ha no ué ni, Gokuraku no kúmo ga ippiki, ucukuxíi gin’iro no íto o kákete orimásu. Oxakasama wa sono kúmo no íto o sotto ote ni otori ni nátte, tama no yóu na xirahasu no aidá kara, háruka xitá ni áru Jigoku no soko e, massúgu ni sore o ooroxi nasaimáxita.
文化的背景
カルデール式は、パラレルワールドの日本で普及しているかもしれない綴字法です。
カルデールさんが作ったのかもしれません。しらんけど。
でも、そんな設定はわりかしどうでもよくて、現実問題わたしは実用の文字としてこの表記法を使っています。
(ちなみに「カルデール」という名前は、フランス革命暦という暦法で9月3日を指す「Cardère」に由来します。たぶんその日に原案を思いついたんだと思います。覚えてないけど。)
カルデール式は、わたしのアイデンティティーを示すシンボルの一つになっています。
普段から架空言語や架空文字を使っていると、自分のアイデンティティーを身近に、具体的に意識しやすくなります。アイデンティティークライシスに陥っている方におすすめの療法(?)です。
ほんと個人的に愛着のある文字です。カルデール式大好き。
honé(骨)とか、deáu(出会う)とか、ícumo(いつも)とか、こういう綴り好き。
カルデール式の目標と主な特徴
わたしの日本語(首都圏方言)の発音に沿った表記を目指しています。
要はザ・表音主義です。
どんくらい表音主義かというと、ピッチアクセントも表記するくらいです:
háxi(箸)、haxí(橋)、haxi(端)
(とはいえ、ASCIIしか打てないときもあると思いますし、アクセント記号は省略してもいいです。無アクセント地域だってありますもんね。)
日用するので、今使っているキーボードで打ちづらい文字は使いません。
具体的には、USインターナショナル配列というキーボードで出る文字だけ使います。
あと、打鍵数も増えすぎないように気をつけています。
ベースはヘボン式です。
(日本式・訓令式派の漢字廃止論者のみなさま、申し訳ありません! 異端ながらわたしはヘボン式のほうが好きです。現代日本語の「ティ」をt'iと書くよりtiと書いたほうが個人的にしっくりくるんです。)
主な特徴をざっくりまとめます:
- CQXが拼音みたいにそれぞれツァ行、チャ行、シャ行を表します。
- 長音は原則、aa, ii, uu, ei, ouと書きます。エ段オ段に注意。
- アクセント核をアキュートアクセント(´)で示します。
綴り方まとめ!

(カルデール式の拍一覧。なお黒塗りは、自分の日本語で通用されないもの。)
次の文字を使います:abcdefghijkmnopqrstuwxyz
LとVは使いません。
アクセント付き母音字も使います:áéíóú
アポストロフィー(')も使います。
――さて、肝心の綴字法ですが、しばらくMigdalでカキカキしていたところ、Cosenseでやったほうが見やすくまとめられそうだったので、そちらに譲ります:
https://scrapbox.io/nsopikha-public/Karudeiruxiki_no_cuzurikat%C3%A1
(音韻論やアクセントについて前提知識のない方には読みづらいかもしれません。すみません。もう少し分かりやすくしたのも、そのうち気が向いたら書くかもしれません。)
同音異義語について思うこと
最後に、同音異義語について私見を述べます。
結論から言いますと、同音異義語はあまり気にならないです。
カルデール式で文章を書くときは、言葉選びとかあまり気にせず漢語和語外来語問わず気楽に使っていますが、読み返しても同音異義語で迷うことはほとんどないです。
たまにあっても、文脈ですぐ分かります。
さて、同音異義語は日本語の表音文字化の障壁の一つでした。
漢字廃止論においても、漢語はしばしば忌まれました。漢語には同音異義語が多いですし、それから特に戦前の漢字廃止論はナショナリズムに結びついていたからです。たとえばカナモジカイでも「コトバ選び/コトバ直し」を提唱しています。
しかしカルデール式では現代日本語に定着した漢語や外来語を使い続けても良いと思います。日常での使用においてはほとんど困りません。
ピッチアクセントを表記していると、口語を話すときとだいたい同じ感覚になります。たとえば、「動詞」はdouxi、「同士」「同志」はdóuxiです。「葉」「歯」もha, háと書き分けますから、口語と同じく区別できます。逆に、「辛い(からい/つらい)」みたいな同形異音語はなくなります。
もちろん、生物学用語の「族」と「属」のように、漢字を使わないことで混乱をきたすものもあります。特に専門用語は、音読を想定していないものも多いですね。漢字仮名交じり文を転写するときに同音異義語で混乱しそうなものがあれば、漢字を括弧書きしたりもします。
とはいえ、日記やメモで私的利用しているぶんにはやっぱりさして困りません。さきほどの生物学用語でしたら、学名使えばいいですし。
「ばけがく(化学)」、「わたくしりつ(私立)」のような、いわゆる「説明読み」は、身近なものから積極的に用いていきたいです。
最近は、規準を「のりじゅん」、基準を「もとじゅん」と読むことを知りました。こういうの好きです。
まとめると、多少の同音異義語は自然言語あるあるのcolexificationとして愛でつつ、どうしても区別したいものに限って言葉選びを工夫すれば良いと思います。
最後に一言
Karudeiruxiki dáisuki <3
Kyóumi no áru hitó wa, kyónen to íma to de cuzurikatá ga dóu kawattá ka mikurabete miyóu!
kyónen no kíji
(Kyónen no jibun, fucuu ni akusentohyóuki misúttetari xitéte hazukaxíi w)
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