お詫び
急用が入ったので日本語文の訳がない所が多少あると思います。
誠にごめんなさい
kityru kadlyur hatari ana haprolya.
昔、草原には偉大なる光があった。
gupyru hatari haprolya nabapydu abidugidunu nabapyo baharu kodur hidlyadu.
光は草原を愛し、年がら年中酒を飲み、歌を歌って過ごしていた。
anri kityru nabipa pynikuna ana haprolya ku.
また、その草原には青い肌の雌牛がいた。
badlydu nabipa ku ana ku gardu bidpya harodina hari inagura hari ana.
この雌牛は草原をさすらい、野蛮であれ愚鈍であれ草原の人々を育てていた。
hiptu kibudu hatari kodur nabipa pynikuna gahadu nabipa ku gapilya nihalyuna.
そしてある時、光と青い肌の雌牛は交わり、その雌牛は玉肌の乙女を産み落とした。
dpyuniru kibidugi huba gapilya ku arutadpyono kibidugi ku tagutyrohu-hatari huba banidu arutiri.
この乙女の子孫は自らを[arutadpyono]と名乗り、その末裔こそがかの偉大なる[tagutyrohu-hatari]である。
これはアルタビョノという遊牧民が書き記した『歴史』の冒頭文です。
『歴史』はこの遊牧民が自らの言語で筆記した歴史書であり、遊牧民たちの王族の栄華が誇り高く描写されています。
今回は彼らの言語であるアルタビョノ語を解説しつつ、彼らの歴史も文献を通じて解説しようという記事です。
基礎的な文法と音韻
文章を見る前に、まずは言語の特性を理解しましょう。
語順はVSO語順であり、孤立語です。
形容詞は後置します。
音韻も見てみましょう。
| 母音 | 前舌 | 中舌 | 後舌 |
|---|---|---|---|
| 狭 | i | u | |
| 中 | o | ||
| 広 | a |
| 子音 | 両唇 | 歯茎 | 歯茎側面 | 口蓋 | 声門 |
|---|---|---|---|---|---|
| 破裂音 | p/b | t/d | k/g | ||
| 鼻音 | n | ||||
| 摩擦音 | h | ||||
| たたき | ɾ | ||||
| 吸着 | (dpy)ʘ̃/(py)ʘ | (ty)ǃ | (dly)ǁ̃/(ly)ǁ |
少ないですね……
両唇鼻音/m/や歯茎摩擦音/s/さえありません。
開音節も閉音節もある言語ですが、/ǃ/は子音単体の音素でしか現れません。
つまり、母音と関わらないということです。
言語の使用
動詞は「-du」で終わる「du動詞」と「-ru」で終わる「ru動詞」の二種類の動詞があります。
「-du」でも「-ru」でもなければ、動詞ではないというコトです。
「ru動詞」は動作でないことが多いですが、気にしなくて良いです。
複文はhubaで作ります。
(コピュラを表す動詞はない)kibidugi ku tagutyrohu-hatari huba banidu arutiri.
この子孫は、偉大さで知られているタグチロフ=ハタリである。
また、形容詞は「不変化形容詞」と「語尾変化形容詞」の二種類があります。
「不変化形容詞」はそのまま名詞の後ろにくっつける形容詞です。
それに対して「語尾変化形容詞」は修飾する名詞の語尾に合わせて音素を追加する形容詞です。
nabipa 雌牛 / nihalyi 宝石
nugur 古い・老いた(不変化形容詞) / punikun 青い(語尾変化形容詞)nabipa nugur --> 老いた雌牛
nihalya nugur --> 古い宝石
nabipa pynikuna --> 青い肌の雌牛
nihalyi pynikuni --> 青い宝石
動詞の標識(例えば否定)などは、形容詞に分類されています。
gupyru 愛する / agir ~ない
gupyru nihalyi --> 宝石を愛する
gupyru agir nihalyi --> 宝石を愛さない
第一章[tagutyrohu-hatari]を抜粋
agiru gahadihi huba tagutyrohu-hatari nahalyar.
[tagutyrohu-hatari]は、その生まれも並大抵ではなかった。
gahadu hardunu guhun dini.
彼は嵐の日に生まれたという。
igaru pahi hanari huba dini guhun gahadu hiptu dpyniru kibida ku hanari.
彼を生んだとき、彼の母親は嵐の雷光を見たために、この子どもは[hanari]と呼ばれた。
banugidu hatynar hanari adagi huba honurdu.
[hanari]は若くして騎乗に優れ、弓の心得ある男だった。
anri adagi huba gupyru balyi ohu dpyugaro niba ginadu nupyigarunu baba huba hituru hatynar ohu kibidugi ku.
また、自然や動物を愛する男であり、年若きときに拾った犬をその子孫も含め育てたとか。
oratydu hanari hikra banini huba arutadpyono kigor lyagodu.
[hanari]は成人する前に[arutadpyono]の他の人々を征服した。
odiri kirinudu burha kigor lyurabaridu hiptagi hobaru agir okadi hataruni hupyo kuhu.
つまり、親元を離れる前に部族を一つにまとめ上げたが、これは彼の偉業の八つにも入らない。
タグチロフ=ハタリ、本名をハナリといいます(紛らわしいことですが)。
彼は、その後様々な改革を為します。
駅伝制の整備、軍の結成、官僚制整備、研究機関の設置、戸籍の制作……
彼がいかに強大な国家を作ろうとしていたか。それが分かりますね。
ちなみになぜ「八つ」なのかと思うかもしれませんが……
これは単純に、国の聖数が8だからです。
彼らが8を大事にしている、と言い換えても良いかもしれません。
さて、ハナリは諸部族をまとめ上げ、帝国を築いた傑物です。
それを語る文章を見ていきましょう。
holydu guhun nugi donihi huba dobori gidu kodur karnaru.
晩年、彼は、部族が力を合わせて話し合える同盟を作った。
kityru dobori huba dpyuniru tyhari ohu ahipi.
草原には[tyhari]だとか[ahipi]と呼ばれる部族がいた。
biru hanari hobu hugodu doberi banini kodur kirinudu ganalyda huba ku.
[hanari]は、それらの力を結集して異民族に対抗する必要があると考えた。
nobaru dobori ku banini hiptagi holydu napyuridonihi kodur dohodu hordonihi.
彼ら民族は対立していたが、[hanari]は婚姻同盟を用いて[napyuridonihi](遊牧同盟)を設立した。
kityru dobori banini huba dahani ohu kidari ana haprolya ibur.
草原の外には[dahani]や[kidari]などの異民族が居た。
nitydu ganalyda huba hanari hiptu dpyuniru napyuridonihi hanari niba tagutyrohu-hatari binahin harpidu.
[hanari]の軍勢はそれらに打ち勝ち、死後[[napyuridonihi]]は[hanari]に[tagutyrohu-hatari]の称号を与えた。
holydu anukara huba arutadpyono.
彼は[arutadpyono]による帝国を建造したのだ。
ナピュリドニヒの創設、ダハニに対する勝利、キダリ人への勝利なども彼の功績です。
これらによってハナリはアルタビョノを主体とする帝国を建造したと言えるからです。
ハナリの死後、その帝国は四人兄弟の末子であるニピュカに継承されました。
ニピュカは帝国の版図を広げ、多くのダハニの都市を屈服させました。
しかし、早死にしたことによって、ニピュカの子供同士で王位を争う内戦状態になってしまったのです。
それを制したのはハナリの二番目の男児の息子ダトゥハでした。
彼は遊牧同盟から「ハタリ」の称号を与えられ、ダトゥハ=ハタリと名乗りました。
そして彼は幼い頃からダハニの先進的な文化に慣れていたので、ダハニ文化の優れた部分を国家に取り入れようとしたのです。
第四章[datuha-hatari]を抜粋
hanaru datuha-hatari hobu gigadu barhopyaru ana dpyono ku.
「この土地を貿易港にしよう」と[datuha-hatari]は言った。
ku hanarohu biri huba biri huba hikra ibur.
それは遊牧民の価値観から離れた提案であった。
noburu napyuridonihi hiptagi biru hobu.
[napyuridonihi]は動揺したが、彼の理屈はこうであった。
gigadu hipyar anagi huba kirinudu gipydi ohu hubaru binadlyi.
「我々の研究成果の集積所、戸籍の保管場所、そういった物を作らなければならない。」
guniru anukara hiptu agiru lyanirunu anukara hubri.
「もはや帝国は巨大であり、人の手にあるものではなくなりつつある。」
gigadu hikradanto huba danto hubarun pori kutypya.
その妥当さゆえに、我々の都市、[hikradanto]は建設された。
hiptu donihidu gipydilya kidana ohu gihini kidani abidur danto ku lyuran haprolya ohu ibur.
そして、その都市には国内や国外から、多くの学者や商人が集まった。
purtydu danto ty bunari huba ku anagibo hupyo rinu.
都市は繁栄し、都市の税収が我々の礎の一つとなった。
このように、ダトゥハ=ハタリは定住民の文化を導入することによって、国家の強化を図ろうとしました。
しかし、それを良く思わない遊牧民も当然いました。
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[datuha-hatari]は動揺を隠せなかった。
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[tyhari]の遊牧民が蜂起を起こしたのだ。
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現在では、この反乱は「[bihura]の乱」と呼ばれている。
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この反乱は、[dahani]の官僚である[bihura]が主導し、[tyhari]の遊牧民がその不満を爆発させたことで起こった。
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この反乱はすぐに鎮圧されたが、反[dahani]、反[dahani]文化を主張する遊牧民が現れた。
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また、[datuha-hatari]が[dahani]の文化を受容しているために、反皇帝の遊牧民が現れ[hikradanto]も攻撃された。
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[datuha-hatari]はこれを鎮圧しようとしたが、病気にかかってしまい、殆ど寝たきりになってしまった。
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そして、遙か西方に住むという[bagara]人のよからぬ噂を聞いたせいで、血を吐いて死んだ。
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「[bagara]人で、[pyataga-huba-dini](嵐の王)とでも呼ぶべき恐ろしい男が西方からダハニを制圧している。」
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「彼はそれがなんであれ、敵ならば皆殺しにしている」
このようにして、ダトゥハ=ハタリは死亡し、彼の唯一の男児であるダノが
ダノ=ハタリとして即位しました。
意外な、あっけない結末を迎えることになります。
第五章 [dano-hatari]を抜粋
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[dano-hatari]は突然苦境に立たされた。
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理解していたことではあろうが、内憂外患の対処を一挙に為す必要がある。
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[dano-hatari]は、外患への対処を先に行った。
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「嵐の王」の使者が[hikradanto]に来ていたからだ。
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「我々の敵は必ず屈服させる。[dahani]は我々の敵だった。さて、あなた方は敵か? 通行の許可を求める」
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[dano-hatari]は否定した。
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「いいえ。私と私の部下に限れば敵ではない」
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使者はその言葉に疑問を呈し、[dano-hatari]は答える。
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「我々に対する反逆者が領域にいる。そのために、我々の敵はあなた方の敵となるかもしれない」
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使者は言葉を残して立ち去った。
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「我々の目的は領域の通行である。我々を襲う者は殺すだけだ」
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「嵐の王」は理性的だった。
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[dano-hatari]は内憂の対処に専念することが出来た。
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反皇帝の軍勢の一部が「嵐の王」に襲いかかり、その数を減らしたことも、[dano-hatari]には良いことであった。
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そうして反乱を鎮圧した[dano-hatari]は、反[dahani]主義者との折衷案として、協約を結んだ。
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新しい文字を作り、戸籍や本を[dahani]の言語ではなく、自らの言語で書くというものだった。
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そして、[dano-hatari]は反乱を鎮圧する際に「嵐の王」と同盟を結んでいた。
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それを理由に、[bagara]人の文字を参考にして、新しい文字を作り出した。
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その文字によって、この[nibiri](『歴史』のこと)も筆記されている。
hatari atahdu.
[hatari]の威光は永遠に朽ちることがない。
dpyabiru igan kibidugi huba dano-hatari hatari.
[dano-hatari]の子孫にも威光は相続されるだろう。
このようにして、『歴史』は筆記されたという訳です。
辞書に使われている、見慣れない文字はこのとき作られたのですね。
ちなみに、この民族は後世でも国家を存続させ続け、長い間存在感を放っていました。
しかし結局、多くの国家と同様にアルタビョノの帝国も、外敵によって滅んでしましました。
栄枯盛衰、Agiru atahdu(滅びないものはない)。

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